ドリーミングガール♪ 恋のシミュレーション♪ 乙女はいつもときめきクライシス♪
学年別トーナメント当日。準備のためにアリーナの廊下を早走りで進んでいると、ボーデヴィッヒさんと出会った。俺はすかさず彼女の横を通り抜けようとするが、呼び止められる。
「貴様。そう言えばナイトローグだったな」
「……何の用ですか?」
相手の冷ややかな口調に、俺はプレッシャーを覚える。これから始まるのは笑って済むような話ではない事が、容易に想像できた。
「随分とくだらない事に使っているのだな。一々装着しなくても済む仕事にまで使うとは。ゴミ拾いは誰だってできる」
「誰だってしない事です、逆に言えば。気がつけば、タバコの吸殻とかがたくさん落ちてる」
「……ふん。兵器を平和ボケに使うとは、貴様も底が知れるな」
「愛と平和のために使えば争いの道具も喜ぶさ。結局、綺麗事を目指していくのが一番だ」
会話はそれっきりだった。ボーデヴィッヒさんは何も答えず、俺を一瞥して去っていく。嫌な感じだ。タッグが決まっていない人用のくじ引きがなければ、今回のイベントはもれなくボッチだぞ。コミュニケーションは大事にするべきだ。
それから俺は京水と合流し、自分たちの出番が回るまで試合を見ようと観客席まで移動する。今日は珍しく、他の馴染みの三人はいなかった。
「なになに? ラウラと会ったの? それで?」
「軽く挨拶を交わしただけだ。それ以外はなんにも」
その際、京水にボーデヴィッヒさんと出会った事を告げたが、この話題はあっという間に終わった。あの歳で軍人をやっていて法的に大丈夫なのかとお互い疑問に思ったが、きっとどこぞの研究所の所属で形式上は軍に保護されているのだろうと適当に考えた。
試合のトーナメント表は、シード込み四つのブロックに分かれている。俺たちと一夏・デュノアさんペア、ボーデヴィッヒさん・篠ノ之さんペアは同じブロックに位置し、順調に勝てば彼らの内のどちらかと決勝の部隊に上がれる。また、彼らが衝突できるのは準決勝の時だった。ボーデヴィッヒさんと少なからず因縁がある一夏は、なおさら負けていられないだろう。
ではこれより、俺たちが準決勝までいい感じに勝った分をダイジェストで送ります。
第一回戦目。京水は打鉄を装着し、俺はナイトローグ開運フォームに変身する。相手は二人とも、ラファール・リヴァイヴを装着していた。
「ドロップ、ファイア、ジェミニ! 全て私のパクりじゃないか!!」
「サクヤちゃん、落ち着いて!?」
サクヤちゃんと呼ばれたハーフ顔の少女が、相方の子に何度も諌められる。トーナメント表にはサクヤ・タチバナと書かれていたが、恐らく俺の考えすぎだろう。橘ギャレンと同一人物のはずがない。
「逃げたわね? ナイフ振り回して。刃物は危ないからダメ! ぜぇぇぇったい、ダメ!」
「ひぃ!? ご、ごめんなさい!?」
「かにばさみ……ニーホールド!」
「きゃあぁぁぁぁ!?」
相方の戦闘力は語るまでもなく低かった。京水が終始優勢を保ち、彼女にかにばさみニーホールドを決める。
しかし、問題はタチバナさんだった。相方がやられるや否や、俺たち二人相手にとてつもない粘りを見せる。更には自作だろうか、ギャレンラウザーそっくりな小銃を使いつつ肉弾戦を挑んできた。
『ドロップ、ファイア、ジェミニ。バーニングディバイド』
「ザヨゴォォォォォォ!!」
その上、ラウズカードみたいなものの使用でタチバナさんが二人に分裂。空高く跳躍しながら、脚に炎を纏わせる。
「気をつけて、弦人ちゃん!」
「わかってる!」
《エレキスチーム》
スチームブレードにエレキスチームを発動させた状態で、俺は飛翔斬を発動。タチバナさんのバーニングディバイドに対抗するため、コウモリの翼にバチバチと電流を纏わせた。
「フワァァァァン!?」
結果、正面からバーニングディバイドを撃ち破った俺の勝利だった。
第二回戦。相手は打鉄二人組。タチバナさんほどの強敵がいないので楽勝だと思われたのだが――
「木手さん……あなた、どうして!?」
「最初に忠告しておきます。強い方につく。それが私のモットーです」
どういう訳か、相手ペアから裏切り者が出るのであった。裏切り者の少女はメガネをくいっとしながら、俺たちに与する。
しかし、このトーナメントはそういう戦いではない。俺と京水は無言で裏切り者を張り倒すと、裏切られた子も一緒に彼女をゲシゲシと蹴りまくるのだった。
「これそういうのじゃないから!」
「なんて事!? 見捨てるならともかく裏切るなんて!! キライだわ! トラウマを思い出すからキライだわ! 仁義はどうしたのよ!?」
「酷いよ、木手さん! 私信じてたのに!」
「アダダ! ごめんなさい! ごめんなさい!」
第三回戦目。そこには、目を疑うような光景が広がっていた。
《レ・ディ・ー》
「変身」
《フィスト・オン》
相手ペアの片割れの女子が急にイクサナックルみたいなものを腰に巻いたベルトに装填させれば、打鉄が瞬く間に真っ白に染まり、法衣のような全身装甲を追加で纏う。さながら、ただの仮面ライダーイクサだ。初っぱなからバーストモードである。追加パッケージって試合的にOKだったっけ?
視線を横にずらせば、同じく打鉄を使っている子が目を輝かせながら「ナゴさんは最高です!」と称賛している。そうか、タチバナさんに引き続いてナゴさんとも巡り合わせるか……。俺が真っ先に思い出したのと別人なのは当然だが、感慨深いものを覚える。
「キバ、お前のボタンは要らない。その命、神に返しなさい!」
「俺はキバじゃない。ナイトローグだ!」
かくして、ナゴさんとの激闘が始まった。ナゴさんの相方は京水が早々に撃破してくれたので、二対一で優勢に勝負を進められるかと思いきや ――
「キャアアアアア!?」
「京水!!」
京水がイクサナックルの電磁弾をゼロ距離でもらった上に、彼女が使っていたビームウィップを奪われてあっという間に全身を縛られる。さらに京水の打鉄のシールドエネルギーがほぼゼロにまで減らされていた。戦闘続行は期待できない。
そのまま倒れ込む京水をナゴさんは一瞥し、俺と対峙する。京水を倒しておかないのは余裕から来るのだろう。ちなみに京水はビームウィップしか武器を持っていないので、援護射撃とかはまず来ない。なんて事だ。
「弦人ちゃん気をつけて! その子手強いわ! 特に縛りが」
「だろうな!」
ISの怪力でも京水が必死にもがく事しかできていない事から、縛りのキツさは簡単に想像できる。
そのまま俺とナゴさんは激突する。彼女もイクサカリバー銃形態と近接ブレードを持っているのが妙に癪だ。トランスチームガンとスチームブレードを構える俺と変わらない。
また、心なしかパワーが従来の打鉄よりも上がっているような気がした。力勝負なら負けるつもりはないが、油断はできない。
迫り来る刃と弾丸を度々避けて、何十合も剣をぶつける。小柄なナイトローグの相手は通常のISバトルより勝手が異なるはずなのに、微塵たりとも手間取る様子を感じられない。当たり前かのように、ナゴさんは俺に地上戦を臨み、近距離で仕掛けてくる。
やがて、俺は真横から近接ブレードの刀身を蹴り折った。しかし、ナゴさんも負けじと銃撃する。イクサカリバーの弾丸はトランスチームガンに当たり、その衝撃にうっかり手から落としてしまう。トランスチームガンは遥か後ろへと吹き飛んでいった。
ナゴさんは間髪入れず、イクサカリバーを剣形態にした上でフエッスルをベルトの挿入口に入れる。その手際の良さは、とても俺の邪魔が入れられるものではなかった。この瞬間での相手の必殺技キャンセルは厳しい。
背筋がぞっとする思いをしながらバックステップし、スチームブレードのバルブを大急ぎで回す。こうなれば、俺も応じるまでだ。
《イ・ク・サ・カ・リ・バー・ラ・イ・ズ・アップ》
《エレキスチーム》
二つの必殺技発動の音声が鳴り響き、アリーナ・ステージはおどろおどろしい雰囲気に包まれる。背中にどこからともなく太陽を顕現させてイクサカリバーをじっと構えるナゴさんに対し、すぐにでも駆け出す俺。そして擦れ違い様に互いの得物が振るわれ、つばぜり合おうとした瞬間――
「っ!?」
イクサジャッジメントとエレキスチームの限界まで高めたエネルギーがぶつかり、とんでもない衝撃波を生み出す。それに俺たちは為す術もなく、激しく揉まれながらそれぞれ後ろに飛ばされていった。
その中で俺はすかさず翼を小さく展開し、どうにか浮きながら着地。ナゴさんの方も受け身には成功していたが、いかんせん辺りが砂煙で酷く視界が遮られている。スチームブレードも飛ばされた弾みで明後日の方向に行っている。近くにあるのは、たまたま足元で見つけたトランスチームガンのみだ。
その時、俺に向かって何かが投げつけられてきた。容易くそれをキャッチしてみると、とても見慣れたフォルムが目に写る。クリアな薄紫色の筒に満月のレリーフ。上部のフタには、Nの表記。どう考えてもフルボトルだった。
「え? なんで?」
「弦人ちゃん、それを使って!!」
ばっと声がした方向を見てみれば、ようやくビームウィップの拘束から抜け出せた京水の姿があった。肩で息をしていて、今にも倒れそうだ。まさか、コレ投げたのお前?
すぐに質問したいところをやまやまだが、よくよく状況を確認すれば時間がない。ナゴさんを畳み掛けるなら、今が好機だ。咄嗟にこの謎フルボトルをトランスチームガンにセットし、ナゴさんに向かって引き金を引く。
《フルボトル! スチームアタック!》
その時、不思議な事が起こった。銃口から何も発射されないかと思えば、いきなり空が真っ暗になったのだ。赤黒い霧がアリーナ中を覆うや否や、消えていく。上空には太陽の代わりに月が浮かんでいた。
そして俺は、このスチームアタックの意味と効果を瞬時に察する。トランスチームガンをそっと仕舞った後は腰を落とし、X字を意識しながら両腕を前に出して力を溜める。改めてナゴさんを見据えると、彼女は突然の夜の来訪に動揺していた。キョロキョロと見回し、俺に向ける注意は散漫となっている。
十分に力を溜め終えれば、おもむろに片足を頭の位置まで上げながら高く跳躍。翼も併用し、勢い良く上昇していく。キリの良いところで静止しては、飛び蹴りの要領で急降下する。狙いはただ一人、ナゴさんだけだ。彼女は避けようともせず、無防備に立ち尽くすばかりだった。
「たぁりゃあぁぁぁっ!!」
「ぐわあぁぁぁぁぁ!?」
いとも容易くダークネスムーンブレイクが炸裂する。蹴りを胸に受けたナゴさんは背中から強く地面にぶつかり、俺に踏まれる形となる。即座に足を離した俺は、数歩だけ後退る。地面にはナゴさんを中心にして、キバの紋章が出来上がっていた。空は明るさを取り戻し、試合終了のブザーが鳴る。俺たちの勝ちだ。
この後、使ったフルボトルを確かめると中身の成分がスッカラカンになっていた。ついでに京水を追及するが、いい感じにはぐらかされた。
第四回戦。ラファールを纏った鏡さんと、打鉄の谷本さんと激突。一回戦・三回戦に優るとも劣らない戦いが繰り広げられた。
「波動球!」
「光る球【デストラクション】!」
「皇帝ペンギン一号!」
「ファイアトルネード!」
《アイススチーム》
「飛天御剣流、土龍閃!!」
「はいアウト! それマヒャデドスだから日室くんアウト!」
「ねぇ二人して何やってるの!?」
「よそ見はいけないわよ、癒子! くーねくねーくねくねー♪」
俺と鏡さんは空中戦を挑んでいた。お互いにテニスボールやサッカーボール、ラケットを出し合い、必殺技を繰り出す。その際、アイススチームで氷塊を作った空中版土龍閃を放ったのだが、鏡さんにダメ出しされてしまう。
一方で京水たちは地上戦をしていた。アサルトライフルで引き撃ちしながら逃げ惑う谷本さんに、ウィップを持った京水が肉薄する。やがて谷本さんはウィップで身体を縛り付けられ、京水から関節技をもらう。
「キャー! 待って! 泉さん待って!」
「実はワタシ……女には厳しい」
「えっ!?」
「女には……厳しいのよぉぉぉ!!」
これで谷本さんは完全に無力化された。京水が彼女を抑えている内に、こちらも早く決着をつけなければ。鏡さんが瞬時に出現させたライフルの銃身を破壊し、徹底的に近接戦を強いらせる。バーニアを吹かしてどんなに距離を取ろうとも、決して楽はさせない。
鏡さんに残されている武装はCIWSナイフ一本のみ。俺に一発も当てられなかったグレネードランチャーは全弾撃ち尽くされたので、当に地へ捨てられている。スチームブレードより少し短い程度のナイフを構える彼女を見て、俺は心に余裕ができた。
しかし、それは大間違いだった。絶対防御の範囲を装甲や肌スレスレにまで調整していた彼女は、ギリギリ回避を実現する。完全なるコウモリたらんとしている俺とは比べるほどではないが、必死に食らいついてきた。
ただ、ラファールの的のデカさが完全に密接した状態の戦闘で足を引っ張っていた。小柄なナイトローグが懐に潜り込めば、ナイフの間合いよりも内側の位置となる。反応が一瞬遅く、逆手持ちにしたスチームブレードで容赦なく切りつける。
刃が目前にまで迫った事により、鏡さんは絶対防御越しに目を閉じる。だが、その表情からは闘志がまったく消えていない。普通の女子なら泣き出してもおかしくないというのに。
鏡さんは歯を食い縛り、この場を離脱しようとする俺の右足を咄嗟に掴んだ。掴んでいる手を破壊しようとトランスチームガンで攻撃するも、絶対防御で守られて叶わない。ヤベーイ!?
「もらったぁ!!」
鏡さんが叫ぶと同時に下からナイフが鋭く斬り上げれられ、一閃を身に受ける。正中線をなぞるようにしたその斬撃は、手首に巻いてある数珠以外のご利益装備を損傷させた。
すかさず俺はセントラルチムニーで霧ワープを使い、鏡さんの拘束から脱出する。一矢報いられてしまった。
「ハァ……ハァ……どう? 日室くん」
「鏡さん、あなた……」
振り返ってみれば、鏡さんの息が荒くなっているのが確認できる。俺はまだ元気だが、彼女は既に体力が限界だろう。むしろ、ナイトローグにここまで善戦したのは称賛に値する。
それから鏡さんは俺をじっと見据えて、ゆっくり言葉を連ねた。何やら覚悟を決めたような顔だった。
「私ね、ずっと勇気が足りなかったんだ。日室くんにお弁当作ってあげるので満足してて、泉さんみたいに素直で行くのが恥ずかしかった」
「え? なんだ? 戦いの真っ最中ですよ!?」
《ライフルモード》
突然の出来事に俺は戸惑いを隠せない。ライフルモードにしたスチームブレードの銃口をかざしても、鏡さんは臆する事なく話を続ける。
「今の勢いに乗らないとダメなの! じゃないと、ずっと踏ん切りがつかなくなっちゃう!」
「精神攻撃のつもりか!」
「初めは変な人だなって思ってた! 無人島暮らしだったり、開運フォームとか、ナイトローグのお面とか作ったり、この人は私たちとは全然違うんだなって!」
「ぐはあっ!?」
鏡さんの無情な言葉が俺の心に突き刺さる。こうも真正面から言われれば、簡単に傷付いてしまう。それでも俺は負けじと、苦しみながらも耐えて彼女の話に耳を傾ける。これさえ乗り越えられれば、俺はまた一歩成長する。強くなれる。
「でも! あなたのやってる事の本質はバカにできない、しちゃいけないって事はわかる! おかしいかな? 私、日室くんの何か一生懸命に打ち込む姿がキライじゃないの!」
「っ!?」
刹那、雷の如き衝撃が俺の身に走る。ナイトローグの再評価活動を、こんなにも叫んで肯定的に見てもらう経験なんてなかった。一時は日本政府に指名手配され、警察に追われ、自衛隊に追われ、織斑先生にも追われた俺なのに。今思えば、まともに誉めてくれた人なんて京水以外にいないのではないのか?
まずい。涙腺が緩み、心が乱れそうになる。平常心を保つため、即座に手にしたバットフルボトルをひたすら振りまくる。シャカシャカという音が、俺の心を落ち着かせてくれる。
「はっ!? ダメだわ、弦人ちゃん! ナギとの戯れ合いはやめて!」
「泉さんは黙ってて! それから私は、頑張る日室くんにどんどん引き込まれていった! 気づいたら、日室くんの事を考えるだけでドキドキするようになった!!」
シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ!!
フルボトルの音では、鏡さんの言葉をちっとも遮ってくれない。大量の数式が飛び出し、アリーナ・ステージの至るところへ浮遊していく。その光景に観客席がざわざわとなり、一気に騒がしくなる。
それでも、大声で力強く喋る鏡さんを止める事はできない。俺は何度も首を横に振り、悶えながら次に備える。
「これね、アレなんだと思う! 日室くんの事……私……私……」
そこまで言って鏡さんは息を吸い込む。呼吸を整え、次第に真剣な面持ちになる。ただし、頬は完熟トマトのように真っ赤に染まっていた。そして――
「大好きなの!!」
それを聞くのも束の間、俺の頭の中は真っ白になった。ほとんど何も考えられず、先ほどの告白を脳内に反芻させる。とうとう涙腺が崩壊し、好意をまっすぐぶつけられた事で感極まる。
しかし、身体の方はどんな答えを出すのかが決まっていた。泣きたくなる気持ちに逆らい、流れるようにしてバットフルボトルをスチームブレードに装填する。客観的かつ合理的、悲観的で冷静な思考が彼女にとって酷であろう解を導き出す。
《Bat》
答えが最初から決まっているのなら、どんなに苦しくても言わなければならない。俺は引き金を引きながら、全力で声を振り絞る。
「……ごめんなさあぁぁぁぁぁぁい!!」
《スチームショット!》
その時、スチームブレードより超高速の光弾が発射された。鏡さんは避ける間もなく、胴に超高速弾をもらった反動で後ろに大きく吹き飛び、仰向けで地面にバタリと落ちる。どう見ても姿勢制御はできていなかった。倒れた後はピクリとも動かない。
俺は急いで鏡さんの元に駆け寄る。最初は目を瞑っていた彼女だが、俺が近くに来たのを察すると力なく瞼を上げる。どこか儚げな雰囲気が漂っていた。
放り出された手を優しく握れば、鏡さんは笑って俺に話し掛けてくる。
「私……フラれちゃったね」
「ダメなんだ、鏡さん。俺はナイトローグなんだ。一番大切な人が出来てしまったら、色んな偉い人がよってたかって人質にしてくる。その時、人質の命と脅迫を天秤に掛けられたら、要求には飲んじゃいけなくなる。そうしたら……そうしたら俺は……十のために一を捨てて……!」
「うん。私、泉さんみたいに強くないもんね。あの人、この前の模擬戦でセシリアをぬるぬるにしてたし……」
「ごめん……ごめん……!」
そのまま俺は項垂れる。とにかく謝罪の言葉しか出てこなかった。それぐらいに人質の効果は抜群。少なくとも、京水ほどの手練れでなければ容易に捕まってしまう。将来を考えても、身分不詳で天涯孤独の俺は一人のままでいる方がベターだ。京水はあくまで例外で、鏡さんはか弱い一般人の域を出ていない。
すると、彼女は仮面越しの俺の頬にもう片方の手を添えてきた。その微笑みはいつまで経っても崩れない。
「悔しいな……友だち以上の関係になれないって。諦めが全然つかないや」
「鏡さん……」
彼女の瞳には、俺の姿がはっきりと写される。変なところで自信がなくてごめん。人質取られても容易く奪還するだけの気概と実力が俺にあれば……。大切な人に求めるハードルを高くするなんて、俺は最低すぎる。
「日室くん、名前で呼んでいいかな?」
「何を今更……もう好きに呼んでいいよ」
「じゃあ弦人くん。私も名前で呼んで?」
少し悩む。だが、ここで迷っていてはナイトローグとして、男として廃る。よそよそしさなど全て捨てて、俺はしっかり彼女の名前を口にする。
「ナギ……さん……」
返事はない。気がつけば彼女は目を閉じて、俺の頬に添えていた手をがくりと落としていた。軽く揺さぶっても起きる様子がない。
「ナギ? ナギ? そんな、起きろよ。なぁ? おい。おい! ……ぅうわぁぁぁぁぁぁ!!」
そんな俺の叫びは虚しく木霊し、ただ現実を知らしめるかのように試合終了のブザーが鳴り響く。勝者は俺・京水ペアであったが、こんなにも空っぽな勝利は味わった事がなかった。
「……このノリなんだぁぁぁぁ!? てか、乗り遅れたぁぁぁぁ!?」
そして、谷本さんのツッコミが遅れてやって来るのだった。
Q.カガーミーン!!
A.ウンメイノー
……もちろん、生きてます。
Q.ゲゲゲー!!
A.
サクヤ・タチバナ 女 15歳
アメリカ国籍で日本とのハーフ。金髪のオカッパヘアーだが可愛い。タッグ組んだ子の名前はサヨコで、この子は日系人。元々は不老不死を解除する方法を探すついでにギャレンの開発をしていたが、IS適性ランクがEからSSSとブレッブレなため、原因究明にIS学園へと入学。
好きなものはスパゲッティだが味音痴。モズク風呂も大好き。人をおちょくってるとぶっ飛ばすぞ!
なお、他にも「好きなものはなんですか?」と聞かれて「ニンジンのヤツですね」と返したりするなど、アホな一面も。しかし、頭は良い。
Q.7538315です!
A.小説版でキバに倒されてしまった名護さんとは何も関係ない……はず。風紀委員を設立しようにも生徒会で却下され、ひょんな事から楯無と生徒会長の座を賭けて戦った経歴がある。もちろん結果は……
「嘘だ! 私が……イクサが負けるなんて!」
後に、楯無から遊び心を伝授される。
Q.京水の女の姿が思い浮かばない。
A.お前が支援絵でも何でもいいから乙女の京水を描かないのは勝手だ。でも、そうなった場合、誰が支援絵を描くと思う? 作者だ。だが、作者には絵心がない。そうなったら皆が寄って集って作者を責める。イメージで補うしかないんだよ。
イメージは、一組教室の廊下側中央に座ってる子です。
【挿絵表示】