ナイトローグの再評価を目指す話   作:erif tellab

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ナイトローグの海の日

 あの後、奪取したネビュラスチームガンは解析に回され、俺は京水の言い分を静かに聞いた。ネビュラガスは投与されたが、時期的にはレオナルド博士より後との事。遺伝子検査をパスしたから実験段階まであっさり踏み切ったらしい。

 

「てへ♪ ワタシ、頑張りました!」

 

「うん、お前はすごい子だ。叱っていい?」

 

「ウェルカム! できるなら激しく! 優しくじゃなくて激しく!」

 

「はぁ……」

 

 カイザーシステムはともかく、俺とナイトローグが捕まった時点でこうなるのは自明の理だ。トランスチームシステムの魅力の証明である。

 科学の発明そのものに罪はない。だがG-4然り、スクラッシュドライバー然り、扱う者や開発者に相応の責任が生まれる。ネビュラガス投与の時点で十二分に人道から逸れているが、安全重視で臨んでくれただけマシか。俺もけじめの付け方をそろそろ考えておかないと。もしもの時は……。

 それはさておき、話によるとナギさんもやってしまっていたらしい。その人の決意をとやかく言うつもりはないが、取り敢えず二人には無言のデコピンで済ませた。危険な真似をよくする。事前にIS学園へ通達済みとか、怖すぎだろ。本当にサプライズだよ。

 ひとまず、お世話になった先端物質学研究所の被害が出ていても、怪我人や死傷者がいなかったのは幸いだった。スマッシュ化から解除された二人の研究員は捕まり、取り調べを受けている。だが、記憶の混濁が酷いそうだから時間が掛かるようだ。仕方ない。

 

 そんなこんなで数日が経過し、現在。待ちに待った一学年の合宿が訪れる。目的地へ移動するバスから見えるのは、どこまでも広がっている青い海だ。

 季節は夏。プールでも泳いで涼みたいと思うこの頃。年甲斐もなくはしゃぎそうだ。

 だが、その前に一学年全員泊まるために貸し切った旅館へ。エントランスで女将さんと軽く挨拶を交わした後は、生徒たちは各々に当てられた部屋に向かっていく。ちなみに俺と一夏は、まさかの織斑先生と同室であった。

 

「これアレだよね? 俺がコスプレナイトローグやったら織斑先生に目をつけられるパターンだよね? 至近距離で」

 

「そう考えると生きた心地しないよな。これじゃボチボチみんなで楽しくUNOもできねぇ。初日は自由時間なのに」

 

「聞こえてるぞ、貴様ら」

 

 部屋の隅で一夏とひそひそ話をするが、あいにく織斑先生は地獄耳だったようだ。二人で苦笑しながら、場の空気をうやむやにする。

 それからは着替えを持って、別館の更衣室へと移動した。途中で地面に刺さった人参を見つけたりしたが、俺はそんな事よりも早く海に行きたい気分だったので、人参に興味を抱いた一夏を放置する事になった。奥へ奥へと進み、さっさと水着に着替える。水着のイメージはナイトローグだ。

 例のブツも取り出し、準備完了。男子更衣室から飛び出し、すぐ近くにある女子更衣室の前をローリングで素通りする。

 

「ヤダー! イユの水着大胆すぎるよー! それで千翼くんをイチコロにするつもり?」

 

「そ、そんなんじゃないよ!」

 

「カーッ! どいつもこいつも色気づきやがって!」

 

 中での女子同士の会話なんて聞こえない。聞こえない。耳に悪いからな。

 

「うおっ!? お前弦人か!? その装備何だ!?」

 

「先に行ってるぞ、一夏! 海が俺を呼んでいる!」

 

 その調子で一夏と擦れ違い、瞬く間に外へ。視界に飛び込んでくるのは、サンサンと照らされる日光を反射して眩しくなっている砂浜と、その先にある海だ。一歩踏み込めば、足の裏から砂の熱がジンジン伝わる。

 海で遊ぶなんていつぶりだろうか。泳ぐ前に準備体操をするが、突如として横から水を掛けられる。水は外気にさらされていたせいか、少しぬるかった。

 即座に振り向いてみれば、そこにはトランスチームガンを模した水鉄砲を持っている京水がいた。ニコニコと幻想世界の月のように笑っている彼女が着ているのは、黄色のワンショルダー水着だった。肩に掛かる紐が片方ないだけで、やけに露出度が高いと錯覚してしまう。

 

「当たった当たった。まんまと食らったわね? 弦人ちゃん――きゃっ!?」

 

 俺はお返しに、腰に提げていたポンプアクション式ショットガン仕様の水鉄砲――適当にガバナーとでも呼ぼう――を撃った。ショットガンの特性上、近距離でダントツに威力を発揮する。銃口より大きな水球が放たれ、真正面から京水に当たった。

 その時、身を庇うようにして両腕を回す彼女が、なんだかセクシーに感じた。たわわと実っている胸に目が行きそうになるのを堪えて、ガバナーを仕舞う。

 

「弾丸の味はどうだ」

 

「水鉄砲だけどね。それにしても弦人ちゃん、スッゴい装備ねー。腰のベルト脇のホルダーの中身は?」

 

「本物のトランスチームガン。安全装置はちゃんとしてある。あと、バススロットを悪用して他の水鉄砲も入れてる。例えば、ホラ」

 

「あら、ロケットランチャー」

 

「ブラズマボンバー改めアクアボンバー。さぁ、掛かってこい! 海に向かって突撃だぁー!」

 

「あぁ、弦人ちゃんだけズルいわ! ワタシにも分けてよー!」

 

 そうして京水との水の撃ち合いが始まった。海には足の付け根に届く程度の深さまで近づき、海岸線に沿って彼女から後ろ走りで逃げる。俗に言う引き撃ちだ。

 アクアボンバーから発射されるのは大量の水球。それは真っ直ぐ飛ばず、放物線を描きながら下の水面へたちまち落ちていく。着弾時に水飛沫が発生し、射手の俺ごと京水を巻き込む。

 

「「のわーっ!?」」

 

 次いで、天高く飛んだ水飛沫の勢いがなくなり、ちょっとした小雨が降り注ぐ。それは浴びていてなかなか気持ち良く、冷たくて最高だった。

 直後、その場にへたりこんだ京水と一緒に笑い声を上げた。

 

「「アハハハハハハハハハ!」」

 

 お互いに指を差し、さりげなく京水が水鉄砲を撃つ。対して俺は、地面に垂直となるようにしてアクアボンバーの砲口を上げて、引き金を引く。俺たちの頭上から水が落ちてくるのは一秒にも満たなかった。

 

「きゃー! 冷たーい!」

 

「まだだ! チタニアバトルキャノン!」

 

 アクアボンバーをしまった次の瞬間、俺は機関砲仕様の水鉄砲とチューブで繋がっている貯水バッグを背負う。難点は移動速度の低下だが、射程距離がその分だけ伸びているので楽しい。あと、長射程を実現するには放水タイプでないと限界があったのはここだけの話。

 だが間髪入れずに、どこからともなく無数の水滴が俺たちを襲ってきた。明らかに人為的な攻撃に周囲を見渡せば、水風船をこれでもかと運んでいるナギさんを発見した。

 髪型はいつものロングヘアーではなく、サイドテールで纏めている。水着は緑のチューブトップだ。京水に負けじと言わんばかりに胸元を強調しているが、その差は歴然。なお、身長は余裕で勝っている。

 何やら怒っている様子だが、この貼り付いてくる感じは好きになれない。よくよく注視すれば、嫉妬の眼差しで京水を睨んでいるのがわかる。ゆっくり水風船を片手の中に収めれば、京水に話し掛ける。

 

「泉さん……抜け駆けは良くないと思うんだ」

 

「何言ってるの? 女なら奪うくらいの気持ちでなきゃ!」

 

「……それもそうだね!」

 

 刹那、京水に焚き付けられたナギさんは問答無用で俺たちに水風船を投げつける。水風船は途中から割れて、中から水の散弾が出てくる。

 避ける間もなかった。足元が小波に捕まり、一歩一歩が重くなる。散弾は全て当たってくる事はなくとも、冷たい水を浴びる事に変わりはない。水飛沫が辺り一面に飛び散り、俺と京水はナギさんから逃げ出す。

 

「かんしゃく玉だ! これかんしゃく玉だ!」

 

「弦人ちゃん! 真後ろ真後ろ!」

 

「ダメだぁ! バトルキャノンが重すぎる!」

 

 真っ先にナギさんから距離を取ったのは京水だった。俺は装備品の重量のおかげでドン亀となり、悠々と追い付いてきたナギさんに何度もかんしゃく玉をぶつけられる。

 

「ちょっ、冷たい!」

 

「えいえい」

 

「無慈悲!?」

 

 完全に遊ばれていた。俺が海方面へ転んでも、追い打ちを掛けてくるばかり。京水が近づこうとすれば、ナギさんが標的を変えて追い払う。京水の水鉄砲では、射程距離で彼女の投擲物には叶わない。

 

「ナギさん、落ち着いて! めっちゃ落ち着いて!」

 

「私は落ち着いてるよ、弦人くん?」

 

「嘘だ! あっ、水着似合ってるよ! サイドテールも新鮮で、普段と違った可愛らしさがある!」

 

 すると、新たにかんしゃく玉を持った手がピタリと止まった。最初は呆けた顔をしていたナギさんだが、徐々に照れ始める。

 チャンス到来。俺はすかさずバトルキャノンを構え直して、放水を決める。

 

「今だ!」

 

「わっ!? ズルい!」

 

 至近距離からの放水にナギさんの身体が飲み込まれる。どんな抵抗も虚しく、彼女は尻餅をついた。

 

「ふぅー、ようやく立ち上がれる――」

 

 そう呟きながら俺が浜辺へと戻ろうとする寸前、気がつけば京水に這い寄られていた。いきなりの事態に俺は上半身を水面を出したまま固まり、京水はむすっとした表情でさらに近づいてくる。さらりと両腕を前で組んでいるものだから、押し出されるようになっている部位を余計に意識してしまう。

 これはいけない。どうにか彼女と目を合わせるようにする。まるで、俺から話し出すのを待ちわびているようだった。

 数秒も経てば、一体何を言ってほしいのか合点がいく。俺は恐る恐る、口を動かした。

 

「……すごく着こなしてると思う。背伸びしてるって感じじゃなくて、なんて言うか、その……セクシー」

 

「ホント? えへへ♪」

 

 そして、ニンマリと喜びの色を見せるのだった。可愛く見えてしまった自分に、どこか不覚を覚える。

 

「弦人くん! 私も忘れないでよね!」

 

 そうこうしているとナギさんも来て、京水の隣にちょこんと座る。それから俺と互いに視線を交わすが、何故か恥ずかしくて顔を背けてしまった。

 

「よし! 私の勝ち!」

 

「あれ? これ、そういう勝負?」

 

「うん!」

 

 ナギさんは大きく頷くと、程なくしてガッツポーズを見せる。してやられた。

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 水鉄砲合戦が一段落すれば、少し休憩を挟む。我ながら柄でもなくはしゃぎすぎた。戦闘以外で疲れるなんて久しぶりだ。

 

「ヒムロ~ン!」

 

 その時、キグルミを着たのほほんさんが簪さんを連れてやって来た。彼女も相変わらずの格好である。一方で簪さんはワンピースタイプの白い水着だ。

 

「どうも。のほほんさん、それ暑くないの?」

 

「平気だよ~。それよりも、ホラ! 変身!」

 

「……あっ、そういえば」

 

 のほほんさんに言われて、俺はようやく思い出す。バスに乗った最初の頃の話だ。簪さんにナイトローグの変身シーンを見せてほしいと頼まれていたのだった。

 

「でもさ、それって課外授業がある二日目の話じゃなかったっけ? 今はダメでしょ」

 

「だけどかんちゃんが『海に行きたくない~』って。『ナイトローグがいないと旅館に引きこもる~』って」

 

「……本音。私そこまで言ってない」

 

「ホラ、しょんぼりしてる~。ね、ヒムロン。お願い!」

 

 おもむろにジト目になる簪さんと、袖が長すぎて隠れている両手を合わせて頭を下げるのほほんさん。俺の名前が呼ばれた時点で簪さんの機嫌が悪かったのは察せたが、悪化させたのは恐らく君の不用意な発言のせいだ。

 しかし、簪さんをじっと観察すれば、その手にビデオカメラを持っている事から期待感を抱いているのが窺える。ただ、それに応えようにも本物ナイトローグに変身すれば再び法を破る事になる。どうするべきか。

 もちろん、こんな事もあろうかと別の手段を用意してある。それで彼女が満足してくれるかはわからないが、せっかくの海だ。ナイトローグならば、楽しい思い出の一つや二つを与えられなくてどうする?

 そこで俺は、れっきとした玩具である方のトランスチームガンとバットフルボトルを取り出した。目の前の二人に視線をやり、確認を取る。

 

「取り敢えず今はコスプレ用しかできないけど……許してくれる?」

 

「私は構わないよ、明日もあるから~。かんちゃんは?」

 

「……コスプレ用?」

 

 のほほんさんに話を振られ、簪さんは首を傾げる。見当が付いていないようだ。

 

「じゃあ実演した方が早いな。カメラ回しといて。本物と遜色ない自信あるから」

 

 次いで、俺はバットフルボトルをシャカシャカ振りながらフタを開ける。簪さんが慌ててビデオカメラを構えるのを待てば、早速トランスチームガンにセットする。

 

 《Bat》

 

 流れる電子音声と待機音は、本物と比べて質が低い。これが玩具の宿命、手短な完成を目指すには妥協するしかなかった。

 

「蒸血」

 

 《Mist match!》

 

 トランスチームガンから発射されるのは、何の変鉄もない普通の黒い煙。全身がたちまち隠れていくが、このままスーツを形成していく訳ではない。

 なので、この隙にコスプレナイトローグの仮面を装着する。最近のアップデートで、仮面を被るだけで首から下のスーツが自動的に出現するところまで漕ぎ着けた。あっという間に水着から着替えて、やがて煙が霧散する。

 

 《Bat. Ba,Bat. Fire!》

 

 なお、花火の打ち上げ機構までは余裕がなくて再現できなかった。打ち上げ音がないのが物寂しい。

 視界が晴れた矢先、俯きながら肩を震わしている簪さんの姿が目に写る。

 期待に添えなかったか? 俺は一抹の不安を抱きつつ、彼女に話し掛ける。

 

「えっと、簪さん? ごめんね。花火まではちょっと無理だったんだ。本物ナイトローグなら明日で存分に披露するから――」

 

 しかし、ばっと顔を上げた彼女は予想に反して表情を輝かせていた。

 

「いえ! できれば他のポーズとかも撮らせてください!」

 

「アッハイ」

 

 こうして、簪さんの気が赴くまでビデオ撮影が続いた。スペックは生身のままな上、この暑さの中でコスプレナイトローグをするのは結構キツかった。

 

 しばらくして、再び水着姿に戻った俺は近くにあったパラソルへと避難。日陰の下でのんびり腰を下ろした。試しに耳を澄ませてみれば、砂浜に流れる波の音が周りの喧騒で掻き消される。風情もあったものではない。

 

 

「待ちなさい。泳ぐ前にイクササイズをしなさい」

 

「みんな! 海の家があるぞ! ウニもだ! これ食っていいかな?」

 

「サクヤちゃん。それ、もしかして素潜りで取ってきたヤツ?」

 

「ああ、ギャレンの特訓ついでに見つけたウニだ。よくわかったな」

 

「潮風が気持ちいい……風都の風が一番だけど」

 

「邪魔なんだよ……私の思い通りにならないものは全て!」

 

「マコトちゃん! スイカ割りでミスしたからってそんなに怒らなくても!」

 

 

 ……まぁ、はしゃいで騒ぐのが正解なのだろうけど。風都の名前が聞こえたけど空耳か? 気にしないでおこう。

 休憩もほどほどにして、今度は気ままに歩き回る。途中でビーチバレーが繰り広げられているのを見つけたので、気になって確かめてみれば織斑先生が参戦しているのがわかった。

 触らぬ神に祟りなし。静かにスルーしようとする俺だったが、ビーチバレーを観戦していた谷本さんに運悪く声を掛けられてしまう。

 

「日室くん? なんでライフセーバーの格好に水鉄砲?」

 

「一体いつから俺を日室弦人だと錯覚していた?」

 

「その言い訳は無理があると思う」

 

 誤魔化そうとするも、谷本さんの冷静なツッコミを前にして撃沈する。ちくしょう。

 ビーチバレーの試合の様子を眺めていると、織斑先生のスパイクを顔面に受けたボーデヴィッヒさんが奇声を上げながら海へと駆け出していった。何が起こったんだ。

 

「ん? なんだ、日室も来ていたのか」

 

 そして、恐れていた事態が発生する。とうとう織斑先生に俺の姿を見られてしまったのだった。それでも見て見ぬフリでこの場を離れようとするも、寸前に一夏に助けを求められる。

 

「弦人! ラウラの抜けた分埋めてくれないか! 千ふ……織斑先生が強すぎる!」

 

「一夏……お前、本気で勝ちに行くつもりか?」

 

「当たり前だろ! このまま負けっぱなしでいて堪るかよ!」

 

「……ならばよし!」

 

 彼の瞳に宿った炎を見れば、その熱意は容易に伝わる。俺の投げた問い掛けもあっさり返された。

 ここまで覚悟完了しているのであれば、もはや止めるのは無粋。俺も今回のナイトローグではなく、一人の男として力を貸そう。織斑先生と正面から戦うのであれば、コスプレナイトローグは色々な意味で足枷となる。暑苦しいのがイヤな訳ではない。

 そそくさと俺はコート内に入り、織斑先生チームと対峙する。一方でこちら側は一夏とデュノアさん、合わせて三人の構成となる。

 

「よろしく、デュノアさん。ところで、ボーデヴィッヒさんはなんで唐突に抜け出したの?」

 

「あはは……ラウラって意外と照れ屋さんなんだよね。一夏から真正面に言われたのが随分効いてるみたい」

 

「あー、なるほど」

 

 デュノアさんは苦笑しながら答え、俺は一瞬で腑に落ちる。軍人とは聞いていたが、水着姿を誉められる事が無縁すぎて耐性がなかったところか。

 

「二人とも! サーブが来るぞ! 山田先生だけど気を抜くな!」

 

「あっ! 織斑くん、今先生を馬鹿にしましたね!?」

 

 一夏の注意を促す声が飛び、俺とデュノアさんは気持ちを切り替えてビーチバレーに臨む。ちなみに、デュノアさんがこっそり「一夏も日室くん並みに察しが良かったらなぁ……」と呟いたのはここだけの話。

 この間にも、相手コートより山田先生がボールをサーブする。ISの扱い方は教師らしく目を見張るものがあるが、ビーチバレーは人並みといった感じだ。これなら、先制速攻を決めさえすれば勝ち目はある。

 まずはデュノアさんがボールを拾い、俺のところに回される。一夏は既にアタックの準備が出来ていた。筒がなくトスをし、

 それに合わせて、俺は腰より抜いたガバナーの水球を相手陣地へと放った。慌ただしくブロックに来た山田先生が犠牲となる。

 

「食らえー!」

 

「キャーッ!?」

 

「没収ぅーっ!」

 

 それも束の間、谷本さんが俺からガバナーを奪おうとコートに乱入してきた。横から銃身を固く掴まれ、簡単に振りほどけない。

 

「谷本さん、放して! 織斑先生が撃てない!」

 

「いや、ルール守ろうよ!? てか、その水鉄砲威力おかしくない!?」

 

「実を言うとルールはよくわかってない!」

 

「ウソでしょ!?」

 

 信じてもらえないかもしれないけど、本当なんだ。ルールブックに水鉄砲を使ってはいけないと記載されているかどうか、これっぽっちも把握していない。

 

「ほぉ?」

 

 その時、コートを隔てるネット越しに織斑先生の眼光が俺に突き刺さった。気分はさながら、蛇に睨まれた蛙のようだ。瞬間的に身動きが取れなくなり、谷本さんがこの隙にガバナーを取ってコート外へ退散していく。

 一夏のスパイクは決まっていたようで、先生チームの一人がせっせとボールを拾いに行っていた。織斑先生の睨み付けはまだ終わらず、俺は観念してアクアボンバーを取り出した。

 

「ストップ。弦人ストップ。それなんだ? ロケラン? ロケラン水鉄砲?」

 

「止めるな一夏。俺も覚悟を決めたんだ。プレイヤーへの直接攻撃がダメでも、マップ破壊ならぬコート破壊なら……!」

 

「そ、それだけは不味い! よせ! 正々堂々でいこうぜ!? 千冬姉にルール無用で挑んだら地獄にしかーー」

 

 スパァァン!!

 

 一夏に止められた次の瞬間、織斑先生が放ったボールが俺の顔面に直撃した。さらに、アクアボンバーの砲口を下げたまま引き金をうっかり引いてしまい、そのまま自爆する。水球が激しく地面へ衝突し、怪人栽培男の特攻に破れた戦士の如く俺は崩れ落ちた。

 

「弦人ぉぉぉぉぉ!? む、無茶しやがって……」

 

 一夏の慟哭が虚しく響く。この後、俺は谷本さんに引き摺られるようにしてコート外に連れ出された。オマケにそっとレッドカードを見せつけてきたものだから、ショックは倍増した。

 それからの試合は一方的だった。まず、織斑先生の強さが突出していたのだ。ところどころでドジを踏む山田先生を余裕でカバーし、必死に食らい付く一夏とデュノアさんを一蹴する。

 そういえば俺、授業におけるIS訓練機での模擬戦で結局勝ててなかったな。ストレス発散のサンドバッグ代わりにされている感もある。山田先生も射撃の腕がおかしかったな。投げたグレネードを撃ち抜いて爆発させるとか。いつかビームコンフューズしそう。

 かくして、試合は織斑先生チームの圧勝で終わった。後に京水とナギさんと合流し、谷本さんとも一緒にかき氷を突っつく。メロン味のシロップが、僅かばかりに俺の心を癒してくれる。

 

「ほらほら弦人ちゃん、元気出して? なんなら食べさせてあげようかしら?」

 

「わ、私も食べさせてあげるよ? 泉さんには負けてられないもん」

 

 また、京水とナギさんも俺を慰めてくれた。気持ちは嬉しいが、そのかき氷は君たちのものだ。俺の分はきっちりあるから、自分たちで食べてくれ。

 

「日室くん、ルールなら私が教えてあげるから。ね?」

 

 そう言うのは、苦笑いしながらかき氷をパクパク食べていく谷本さん。ありがとう……本当にありがとう……。

 

 

 




Q.マッドローグの不様っぶりに笑ってやった自分がいました。

A.やはり、クローズドラゴンを気合いで変身解除に追い込んだナイトローグは伊達ではなかった。内海さんのおかげで、相対的に幻徳とナイトローグの株が上がりました。ありがとう、救世主内海さん。へっぴり腰になったり、スマッシュを肉盾にしたあなたの活躍は忘れません。


Q.千翼ォ!

A.

星座イユ、15歳。幼馴染みである鷹山千翼とは恋人同士。通う学校が違うので、完全に遠距離恋愛。



鷹山千翼、15歳。アマゾン的に嵐を呼ぶ五歳児とは何ら関係はない……と思われる。親はできちゃった婚で、二人ともZECT製薬で働いている。幼馴染みはイユ以外にも、大の親友である長瀬裕樹がいる。


Q.913、ENTER

A.

草加マコト、IS学園に通う高校一年生。園田真理を聖母だと捉えていた人との関連性はない……はず。スペクターなライダーは言わずもがな。自身がマリアになってしまったとかで錯乱した過去がある。

割りと文武両道で、フェンシングと合気道が得意。馬にも乗れる。中学時代の渾名は「マコトお姉ちゃん」

また、木村沙弥というヤンデレの男の娘に追われている。だけど草加マコトなら大丈夫。


Q.ナスカ!

A.

園咲霧子。どこぞのホトムズ乗りとは関係ない。風を愛する15歳の少女。好きなものは風都くん。将来の進路は鴻上ミュージアムに就職。


Q.タチバナさんと753の水着姿は?

一年三組クラス代表のタチバナさんは仮面ライダーギャレンみたいな柄のモノキニ。背中が大胆に露出していて挑発的。やっぱりタチバナさんは一流だな。

一年五組クラス代表の753は手堅く競泳水着にパーカー。しかし、水着の柄がどう見ても仮面ライダーイクサ。最近、生徒会長の楯無からボタンをむしりとった。


この後、簪を除いてビーチバレーのクラス対抗戦が勝手に勃発。三組はチーム人数の不足を補うため、タチバナさんが二人に分裂した。

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