ナイトローグの再評価を目指す話   作:erif tellab

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こんなのは嫌だ。エボルトの攻略法。

・巨大なタコに襲われる悪夢を見せて寝不足などの健康被害を誘発。そこで一気に畳みかける。

・オクトバスオクトバスフルフルボトルを作って戦う。

とにかく精神的に攻めるのが大切。戦いはノリのいい者が制する。


銀の福音フェーズ3

『作戦は失敗。以後、状況に変化があれば招集する。各自現状待機だ』

 

 ナイトローグ以外の作戦メンバーが旅館前に帰投した後、待っていたのは千冬のその言葉だった。最後に戻ってきた一夏は紅椿のエネルギー切れを起こした箒を横に降ろし、通信越しに声を荒げる。

 

「待ってくれ、千冬姉! 弦人がまだ帰ってきてない!」

 

『こちらでも日室のシグナルロストを確認した。すぐに捜索隊を向かわせる』

 

「ロストって……それじゃ……」

 

『とにかく今は休め。白式のエネルギーも尽きかけているだろう? ……戦場に予想外はつきものだ』

 

 最後の千冬の憂いを孕んだ言葉に一夏は途端に口をつぐみ、何も言えなくなる。すぐにでも日室を助けに行きたいという思いと合理的な思考がぶつかり、結局は理性が己の突発的な行動を押し留めた。白式を待機状態にし、ぎゅっと拳を握りしめる。

 千冬の言う通り、ブロス兄弟とエンジンブロスのレッドカラーの乱入は予想外だった。加えて、せっかく撃墜まで追い込んだ銀の福音が更なる変身を遂げて、凶悪な巨大兵器と化した。ここまで来れば、憤りを通り越して呆れ果ててしまう。やるせなさがとてつもなかった。

 ともかく、今の自分のコンディションでは何も成す事ができない。半ば殿として自分たちを逃がしてくれた日室の捜索及び救助は、大人たちに任せるしかなかった。

 

「ちくしょう……!!」

 

 歯を食い縛った一夏は、一言だけ吐き捨てる。その表情には悔しさが滲み出ていた。

 

 

 ところ変わって作戦室。各自ディスプレイと向き合っている教師たちの顔は暗く、気丈に振る舞っている千冬も目付きが少し鋭くなっていた。その視線の先には、人工衛星からのカメラを映す大型モニターが設置されている。画像と映像の主役は、既に原型を留めていない銀の福音の巨大な変異体だった。

 

「現在、目標は本州へとゆっくり進行中。今までのが嘘みたいに遅くなってます」

 

 沈んだ空気の中、一人の教員オペレーターが呟く。それにより、やや停滞気味だった全員の作業速度が速まっていく。

 一番最初に撤退してきたシャルロットとラウラに手当てを施すよう指示し、現地の教員部隊にはとっくにナイトローグの捜索命令を出している。後は変異体の解析を済まし、再度の作戦行動を完遂させるのみ。

 しかし、今の銀の福音はもはやISと呼べる姿なのか。そう疑問に感じた千冬は、近くにいた真耶へと話し掛ける。

 

「山田先生。君はあれがISに見えるか?」

 

「ええっと、どうでしょうか? 先日のVTシステムに似てますけどサイズが全然違います。あれだと俊敏性と機動力も欠けて、ISの強みが死んじゃいますね」

 

「だろうな。では、葛城博士を呼んできてくれ。もちろん機密に触れさせるのでその説明もな」

 

「へ? あのっ、よろしいんですか?」

 

「ああ、頼む」

 

 突拍子もない事に戸惑う真耶。それでもおずおずと了承し、作戦室から出ていった。

 その真意はただ一つ。以前に日室から話を聞いた身として、“怪人スマッシュ”と関連付けるのは容易かった。

 

「……それとそこのダンボール。何をコソコソしている?」

 

 そして、千冬は背後にあるダンボールに声を掛けた。ダンボールは存在が不自然ながらも気配を消し、千冬が言うまでほぼ完璧に作戦室内に溶け込んでいた。他の教師たちもようやくダンボールに気づき始める。

 だが、いくら待ってもダンボールは微動だにしなかった。痺れを切らした千冬は容赦なくダンボールに掴み掛かり、適当に投げ捨てる。

 

「あっ」

 

「……鏡か」

 

 ダンボールの中に潜んでいたのはナギだった。千冬から見下ろされる形になったナギは、まるで狼に睨まれた兎のように怯えた。

 

 

 ※

 

 

 ふと目を覚ませば、ナイトローグの変身が解けた状態で俺は砂浜に横たわっていた。身体の節々が悲鳴を上げるが、それを我慢して起き上がる。右手には知っての通り、紛失したはずのトランスチームガンが握られていた。半ズボンのポケットにはバットとエンジンのフルボトルが入っている。

 しかし、発信器付きの腕輪はすっかり外れていた。浸水で中身がやられたのか、オートロックが死んでいる。

 辺りを見回してみるが、どことも知れない島だった。地平線には陸が一切浮かんでおらず、陽射しは午後を迎えている感じだ。

 

 あの後、俺は巨大化スクエアスマッシュハザード――長いからギガントスクエア――の弾幕にやられて水落した。記憶はそこで途絶えているが、ろくに腹を空かせていないので一日も経過していないはず。腕輪が壊れた事で、生身でずっと気絶していた俺の居場所が作戦室に把握されていないと考えられる。あの怪獣がまだ生きているなら捜索も難しいだろうし、この瞬間まで誰にも拾われていないのは不思議ではないか。

 いや、そう言えばカイザーリバースは――

 

「目覚めたか?」

 

 突如、年季の入った男性の声が聞こえてきた。周りには誰もいなかったはず。警戒心を跳ね上げた俺は急いで方向転換し、トランスチームガンをしっかり構える。

 そこには科学者らしく白衣を纏った壮年の男がいた。背はすらりと伸びていて、黒い短髪の中に混ざる白髪が目立つ。

 そして、彼の姿にとんでもなく見覚えがあった俺は、驚きのあまりに思わずその名前を口にしてしまった。

 

「最上……魅星……?」

 

「ほう。私の名前を知っているか、日室弦人」

 

 俺は慌てて片手で口を塞ぐがもう遅い。名前を当てられた最上は、感心したような口振りで俺の名を呼ぶ。適当にオーケンとでも呼ぶべきだった、ちくしょう。

 

「そう警戒するな。私は君に一つ質問したいだけ。君の使うトランスチームシステム……それをどこで手にした? 誰がカイザーシステムのマイナーチェンジを作った? システムだけがあっても環境が整ってなければ、そもそも変身すらできないはずだ」

 

 それも全部葛城巧って奴の仕業なんだ……とバカ正直に答える訳にも行かず、天の声のせいにしても納得してもらえる回答ではない。目の前にいる最上が平行世界の存在をきっちり証明できているなら話は別だが、間違いなくややこしくなる。この最上の左半身がサイボーグ化されていないから、余計にその見当が付きにくい。

 まず、下手な受け答えは躊躇してしまう。例えバグスターウイルスがなくともカイザーシステム自体は成立するみたいだから、平行世界融合するマンの最上だと確信するには至らない。そもそも、ネビュラガスとスカイウォールの源泉がこの世界にあるかどうかも疑わしい。あっても同時にブラッド族の存在を示すから困るけど。

 

「だんまり……か」

 

 結果、俺はひたすら無言を貫く事にした。そっと溜め息を着いた最上は、渋々といった様子でネビュラスチームガンとギアエンジンを取り出す。よくよく考えたら、この壮年最上は青ではなく赤いカイザーに変身していたから、根本から俺の知っている人物とは違っている。余計な事は喋らないで正解だった。

 最上がギアエンジンをネビュラスチームガンにセットしようとしたところで、俺はすかさず発砲。ネビュラスチームガンを打ち落として変身キャンセルを狙ったが、人間とは思えない反応速度で光弾を回避される。

 

 《Gear engine!》

 

 ダメかっ……! 遅れて俺もバットフルボトルを取り出し、トランスチームガンにセットする。

 

 《Bat》

 

 それでも俺よりも一歩早く行動していた最上は、素早く引き金を引いた。向けた銃口の位置は自身の頭上だった。

 

「潤動」

 

 《ファンキー!》

 

「蒸血!」

 

 《Mist match》

 

 不意にも同時変身が決まり、どこからともなく鳴らされるエンジン音が煩わしい。すっかり全身を霧に覆われた俺とは対称的に、最上の方には赤く光る歯車が幾つも霧の中で連動していた。

 

 《Engine running gear》

 

 《Bat. Ba,bat. Fire!》

 

 砂浜でカイザーリバース――長いからRカイザーで――とナイトローグが対峙する。ともかく万全な調子ではない俺はまともにRカイザーと戦ってられないので、隙を見てから霧ワープで逃げる。わざわざ変身したのは、一夏たちを助けた時のワープ妨害(物理)をもらったばかりだから慎重になった。もし生身でやられたら簡単に死んでしまう。

 霧ワープの残弾はまだ一回分残っている。織斑先生とも通信を取りたいが、何故かノイズが酷いので却下。Rカイザーも俺とは見合うばかりで動かない。ならば――

 

「逃げる!」

 

 全身の煙筒から黒い霧を噴き出す。視界は真っ黒に染まり、次の瞬間には旅館前に移動している――はずだった。

 

「っ!?」

 

 景色が変わっていない。目の前にいるのは変わらずRカイザーただ一人。ワープキャンセルと認知するよりも早く、俺は容赦なくトランスチームガンを連射する。放たれた光弾をRカイザーは、瞬時に顕現させたスチームブレードで全て捌く。これだから銃弾切り払い民族は嫌だ。

 

「あぁ、ワープができなくて困惑しているか? その答えを教えよう」

 

 そう言ってRカイザーが片方の手で取り出したのは、特徴的な紋様が刻まれている黒い小板だ。手のひらサイズで、そこから天に目掛けてほのかな赤い光が走る。心なしか、この島の周囲に透明な赤いバリアが張られている気もする。

 その装置を壊そうと俺は照準を定めるが、Rカイザーも応じて構える。接近しない限り、無理に狙っても厳しいか。

 いや、それよりも黒い小板の既視感がすごい。あの禁忌の箱に似た匂いがプンプンする。デザインとしては見るのは初めてだが、もう嫌な予感しかしなかった。

 ダメ元で聞いてみよう。そう思った俺の気持ちを察してか、Rカイザーが喋り始める。

 

「あらゆる特殊兵装の能力を抑制する試作ジャマーだ。偶然の産物だが、ISにもよく効く。絶対防御までは無理でも十分な性能だ。ちょうど広範囲にバリア……スカイウォールが張られ、外部からの侵入を固く拒む。今回はドーム状にした事で通信妨害にも成功している」

 

 スカイウォール!?

 そのキーワードに俺はもう一度、辺りを見回す。ドーム状に展開されているが、空から地にかけてバリアの色度・彩度が濃くなっているところは確かにスカイウォールっぽさがある。というより、注意しないとドーム状とは認識できない。

 

「だが」

 

 すると、ネビュラスチームガンを使ったRカイザーが俺の背後に霧ワープしてきた。タイムラグは体感でコンマを切っている。いきなり聞いた話と違っているぞ、おい……!!

 慌てて振り向けば、そこには拳をかざすヤツの姿が。試作ジャマーと銃、剣は仕舞い、俺に殴り掛かる。

 避けられない。俺はすかさず腕で防御するものの、威力が重すぎて大きく後退ってしまう。以前味わったブロスたちとは比較にもならなかった。スーツ越しに衝撃が骨まで響き、腕が痺れる。

 

 防御は苦しすぎる。一気に追撃を仕掛けてくるRカイザーの猛攻をかわし続けるが、回避速度も足りていない。剛拳がナイトローグの装甲に掠り、すぐに被弾してしまう。

 俺の顎を狙った回し蹴りを避けた直後、回転の勢いを保持したままスチームブレードが繰り出される。その切っ先はバイザーにギリギリ届き、斬られた反動で頭が回りそうになるのを堪える。

 防戦一方だと埒が明かないのはわかっている。せめてトランスチームガンで牽制するが、あろう事かRカイザーは被弾上等で突き進んできた。効いている様子がないのが嫌らしい。俺も咄嗟にスチームブレードを出し、あくまで受け流しに努める。

 

「すぐに刃こぼれするナマクラのように」

 

 Rカイザーの戦い方のキレは、まるで老いぼれといった感じはしなかった。最高にまで研がれたナイフのように鋭く、破壊力は抜群だ。気を抜けば瞬殺されるだろう。疲労感に襲われている身体に鞭を打ち、歯を食い縛りながら攻撃を捌く。

 

「まっすぐ飛ばない銃弾のように」

 

 しかし、限界はすぐに来てしまった。スチームブレードの柄底で勢い良く手首を殴られ、俺は同じブレードを落としてしまう。それからは、地に倒されるのが早かった。

 一瞬で剣に腹を突かれ、貫通しないものの衝撃がダイレクトに伝わる。痛みは身体の芯まで深く残り、立っているのがやっとというぐらいに苦しい。悶絶している暇もなく、今度は胸の辺りを全力で殴り抜かれた。身体が軽く吹き飛び、背中から砂浜の上に落ちる。

 

 《エレキスチーム》

 

「ぐああぁっ!?」

 

 そして、Rカイザーからの苛烈な放電にしばらくいたぶられた。ヤツは悠々と近づき、放電したままのスチームブレードを俺の首元に突き付ける。負けじと俺はブレード部分を掴んでやるが、びくともしなかった。

 

「ナイトローグ、君のスペックが低すぎる。だから逃げれない。だから勝てない」

 

 Rカイザーの口からキッパリとそう言い放たれる。だが、そんな事で挫けたりはしない。仮面越しに、もはや防ぎ切れていない高圧電流を浴びながらギロリと睨み付ける。そんな辛辣な言葉は真に受けて堪るものか……!

 

「ちなみにさっきの質問は私の知的好奇心を満たすもので、深い意味はない。だからこのまま君を殺しても構わない訳だ。しかし……」

 

 Rカイザーが口を閉ざすのも束の間、ふと俺たちの隣に立体映像が現れた。内容は海上に佇むギガントスクエアだ。

 

「正直に話してくれれば、この巨大型スマッシュを街に放つのを止めよう。不都合がなければ、何も問題ないはずだが?」

 

 その時、仮面の裏に隠された最上の目は笑っていると何となく思った。本当に俺が払う対価が安い。絶妙すぎて後先考えずに飛び付きたくなる。

 それでも話すには不都合が極まりすぎてならない。まず、納得が得られない可能性が高すぎなんだ。あと、カイザーシステムやその他色々引っくるめて、そもそも最上にこんな譲歩するメリットや信用はなかった。デビルスチームを使っておいて、白々しいにも程がある。絶対に嘘だ。

 わかりやすくて結構。恐らくこいつは、俺が拒否する前提でわざと茶番をしている。俺が弱いからと年甲斐もなく遊び、楽しんでいる。そこに高尚な目的や意図はない。ほとんど自由気ままな実験だ。

 だったら、俺の答えは一つだ。ここで悪魔の誘惑に負ければ、ナイトローグに汚名が掛かる。Rカイザーに勝てなければ、ナイトローグは弱いと揶揄されたまま。そして何より……。

 

 

――こいつは、ナイトローグをバカにした――

 

 

 

「いつまでも……バカにしてんなコノヤロォォォ!!」

 

 怒りを原動力に心を奮わせ、両手を使って再度渾身の力を絞り出す。電流に必死で抗い、ようやくスチームブレードの切っ先を横にずらせた。力勝負がまともに始まり、ナイトローグとRカイザーの怪力が拮抗する。

 

 《アイススチーム》

 

 ところが、Rカイザーのスチームブレード片手持ちは最後まで崩せていなかった。電流が消えたかと思いきや、急速に冷気が流れ込んでくる――




Q.グリスブリザード、プライムローグ、ブラッド、クローズマグマ、ジーニアス……

A.バットロストフルボトル省られたなぁ……。あ、マッドローグはノーカン。




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