ナイトローグの再評価を目指す話   作:erif tellab

34 / 77
「前回までのナイトローグ。水落ちした日室弦人は無人島に漂流し、発信器付きの腕輪も外れてヒャッホイと喜ぶ暇もなく、カイザーリバース略してRカイザーと遭遇。ギガントスクエアの初見殺し技で受けたダメージを引き摺りながら戦ったら、ボコボコにされた」

「なぁ。長い事漂流してたんなら熱中症とか脱水症状にかかってもおかしくないよな?」

「当たり前だろ。だがナイトローグを目指す者が、命に関わる病気ごときで立ち止まっていられるか」

「おいバカ! なにやってんだ!? マジで死ぬからやめとけよ!」

「バカなのはお前だ、一夏。ナイトローグは不滅。死なない。例え死んでも皆の心の中で生き続ける。そうしてナイトローグは伝承されていくんだ!」

「……ごめん。それがお前の平常運転だったな。自分は二の次。でも熱中症なら立ち止まれ」


提供
仮面ライダービルド クマテレビフォーム
財団B




銀の福音フェーズ4

 紆余曲折あって作戦室へと招かれた葛城リョウは、生物の怪人スマッシュ化現象について一通りの説明を行った。石倉レオとの通信も交えて、過去のマウス実験で得たスマッシュたちのデータを開示する。ちなみに、束は既にどこかへと消え去っていた。

 データにはシンプルに怪力となっている個体もあれば、空間断切などの特殊能力を持つ個体が運良く記載されていた。その大半がスマッシュ化直後に死亡してしまっているが、トランスチームシステムその他の解析で何気なく命を張った甲斐はあった。

 目標は福音の性能を踏襲しているスマッシュの超強化個体、ギガントスクエアハザード。スマッシュ化に併せる巨大化も実験データは織り込み済みであり、ある程度の計算で相手の戦闘力は推し測れた。

 無論、ネビュラガス関連で眉をひそめ、その事で非難を上げる者もいたが、葛城たちが根気よく回答する事で難なく終息した。

 

「ネビュラガス投与については遺伝子検査をパスできたごく僅かな者のみと、安全面を徹底して厳正に臨んでいます。それと被験者第一号の石倉くん以降は改良した装置により、ほとんどナノマシン投与と大差なくなりました」

 

『その名も‘’快適にネビュラガス浴びようぜカプセル”!! ネビュラガスを特殊な液体に溶かしてヌクヌクに気持ち良くさせて、一切の苦痛を味わせないようにしたぞ! 代わりにネビュラガスをゆっくり優しく馴染ませるから、めちゃくちゃ時間掛かる! 壊されたら困るからスマッシュ化耐性のない人間はお断りだ!』

 

「それ、ドラゴンボールで見た事あるデザインなんだが。大怪我した悟空が入っていた回復ポットまんまなんだが」

 

 モニターに写る投与装置の姿に千冬の突っ込みが入る。しかし、暢気に話している場合ではない。次の瞬間には気持ちを切り替え、ずれた話の線路を元に戻す。

 

「それがどうしてISもろとも作用したのかは気になるが、この話は後だ。問題はどうやって撃破するか……」

 

 ギガントスクエアがシールドエネルギーを動力源にしているなら、集中放火なり何なりでエネルギー切れを起こせばいい。だが、語られたナイトローグの初陣内容から考えれば、絶対防御は使わずに純粋な物理的・圧倒的防御力で終始耐えようとする可能性が高い。それはもはや倒す・無力化などという生ぬるいものではなく、殺すつもりで臨まなければならない段階だ。通常のISバトルとは一線を科す。

 そのため、再び一夏たち専用機持ちをぶつけるべきか迷う。曲がりなりにも彼らは未成年の生徒。軍人のラウラなら覚悟をあっさり決めて任務に従事するだろうが、生憎とシャルロットと同じく機体ダメージは深刻。怪獣退治に送るにはリスクが高すぎる。今回のケースは最悪、倒せば福音の搭乗者が消滅するかもしれないのだから。

 ISの強みである搭乗者の保護機能。これがギガントスクエア変異時に消え失せていれば、前線に出る者には人命を奪う覚悟を確実にしてもらわなければならない。今の福音に生命のセーフティネットがあるかどうかは疑わしい。

 

 ならば性能が落ち着いている量産機部隊で挑むべきか、高性能かつ数が揃っている専用機部隊で挑むべきか。幸い、ギガントスクエアが鈍足になったおかげでISバトルで重要な機動力の差は解消されている。これならパッケージなしの量産機でもまともに戦える。火力も補いようはある。

 数瞬、千冬は帰還したばかりの教え子たちの姿を思い出す。特に独断専行が目立っていた箒は、出撃前とは打って変わって気持ちが深く沈んでいた。一夏も弦人の未帰還に酷く衝撃を受け、その気持ちはセシリアや鈴音などの面々も抱いていた。優しい心のケアが壊滅的に下手だと自覚している分だけ、スパルタ以外の方法がなかなか思い浮かばない己を激しく呪う。

 しかし、まだ自分にできる事は残されている。それもお得意の筋力方面で。まずは直面している危機から払い除けようと、彼女は声を響かせた。

 

「次の出撃、私も出させてもらう。今度は我々の番だ」

 

 専用機がないだけで何もできない時間は終わった。

 

 

 ※

 

 

 箒は一人、砂浜で静かに立ち尽くしていた。特に何かを眺めたい訳ではない。先ほどの福音との戦闘を思い出しては、何度も自己嫌悪に陥る。

 世界で唯一の第四世代IS、紅椿というわかりやすい強大な力を手にして浮かれていたのは言わずもがなだ。色々な建前を抜きにして一夏と共に戦えるというのが嬉しく、恋の争いで置いてきぼりを食らう事もない。その力を自覚して心を律しようとするよりも先に、存分に振るいたくなる衝動にも駆られた。これでは律するための剣道をしてきた意味がなくなる。

 極めつけはエンジンブロス撃破寸前に一夏に止められた事と、殿になった弦人が帰って来なかった事だ。もっと理性が働いていれば醜態を見せなくて済んだと後悔しても遅く、ただただ自分が嫌になる。強さには憧れているが、暴力をしたいのではない。暴力がどれだけ容易に人としての貴賤を決めるのかをよく知っている。

 

(私は……最低だ……)

 

 非は自分にあるが、どうしても紅椿を手に入れなければと仮定の話を考え、責任を他者に押し付けたくなる。気を楽にしたかった。いっその事、ほとんど姉のコネで得た紅椿を返上しようとさえ思える。どのみち、自力で得たものではないのだから。

 

「はぁー、わっかりやすいわねぇ」

 

 その時、後ろからあからさまな口調で鈴音がやって来た。咄嗟に振り返っては困惑する箒に構わず、彼女は言葉を続ける。

 

「一人で突っ走って、勝手に棒立ちになって、弦人も帰って来なくて、それで落ち込んでますポーズ? ……ざけんじゃないわよ!」

 

 箒の胸ぐらを掴み、無理やり顔を近づかせる鈴音。箒は心苦しさのあまりに、鈴音の目を直視できなかった。

 

「こっち見なさい! 気持ちは私たちだって同じよ! でもね、まだやるべき事は残ってる。弦人を探しに行ったり、仇を取りに行ったりとか。メソメソしてたって何の意味はないの!」

 

 捲し立てる鈴音の言葉は至極真っ当だ。箒もそれを理解しているが、すっかり怖じ気ついていた。竦む声をどうにか絞り出し、自分の後ろ向きな意志を示す。

 

「……私は……もうISには乗らない」

 

 パァン!

 

 すると、全力で頬を叩かれた。箒は叩かれたところを抑えながら、瞳の奥で真っ赤な炎を燃やす鈴音の顔を窺う。

 

「専用機持ちってのはね、相応の務めがあるの。遊びでやってるんじゃない。アンタ専用機もらえて喜んでたけど、本当にそんなワガママが許されると思ってるの? だとしたら……能天気にも程がある」

 

 代表候補生の言葉は説得力に溢れており、それが余計に箒を黙らせる。現実問題を突きつけられ、反論の余地もない。

 

「それとも何? アンタは肝心な時に戦えない臆病者なの? なら別にいいけど、誰がアンタの代わりに戦うと思う? ……一夏よ」

 

「――っ!?」

 

「アイツはバカで、お人好しで、朴念人で、空気読めない時もあるけど、人一倍仲間思いなの。だから福音が化け物に生まれ変わった時、何もできないまま弦人を置き去りにしたのを誰よりも後悔してる。悔しく思ってる。二人は親友なんだから当然よ。でも、一夏だけじゃどうしようもない。弦人が死んだかすらわかってないのに、アタシたちがぼさっとしててどうするの!?」

 

 遂に一夏の名前も出され、黙るのにも限界が訪れる。半ば開き直るようにして、箒は溜めていた思いを吐き出した。

 

「なら……どうすればいいのだ!? 私は力に溺れた。簡単に我を見失った! ……同じ過ちは繰り返さない、汚名返上とは誓える。しかし敵はまた進化した。仲間もやられた。本当の意味で戦えるなら、私だって戦う!」

 

 それは怒りへと変化していき、ようやく鈴音と真正面から向き合う。互いに睨み続けるのも束の間、ほっと息をついた鈴音はダルそうに表情を変えた。

 

「あぁー、やっとやる気になったか」

 

「な、何?」

 

「じゃあいいや。一夏! セシリア! いつまで隠れてんの?」

 

 呆気に取られた箒をよそに、鈴音は明後日の方角へ呼び掛ける。しばらくすると、近くの岩陰から二人が出てきた。

 思わず箒は面食らい、そこに一夏がよそよそしい様子で話し掛けてきた。

 

「箒?」

 

「な、あ……ぬ、盗み聞きとはけしからんぞ一夏ぁ!!」

 

「わ、わりぃ!」

 

 ふと我に返った箒が頬を赤らめさせながら怒り、反射で一夏は謝る。それから箒は気まずくなって顔を背けるが、一夏が目の前に立つとうっかり振り向いてしまう。

 

「言いたい事は鈴にほとんど言われちまった。その調子なら、もう大丈夫っぽいな」

 

 そう言って優しく微笑む一夏に箒は何も答えられず、恥ずかしそうにコクりと頷いた。それでもシンプルに「すまなかった」と口にするが、それ以上は言葉が綴れない。

 そして、二人だけになりつつある空間をセシリアは咳払いしながら破壊した。間に割って入り、話を本題へと移す。

 

「ゴホン! ……お二人とも、時間が惜しいですわよ? 今、シャルロットさんとラウラさんが情報収集に出ています。もうすぐで敵の位置情報も掴めて――」

 

「ほう? それでどうするつもりだ?」

 

 その瞬間、馴染みのある鬼女教師の声に全員が凍り付いた。ゆっくりと声がした方向を見てみれば――

 

「ううぅ……」

 

「すまない……皆……!」

 

 軽傷とはいえ包帯を巻いている怪我人のシャルロットとラウラにアイアンクローを決め、その二人をまじまじと見せつけるかのように連行する千冬の姿があった。瞬く間に一夏たちは戦慄し、千冬は冷たく告げる。

 

「安心しろ。逃げられない程度に手加減している。怪我人なのに何やら不審な動きをしていたからな。ダメじゃないか、大人しく身体を休めなければ。勝手に出撃など言語道断だ」

 

「ち、千冬姉、違うんだ! これには訳が――」

 

「ん?」

 

「すみません! “織斑先生”でした! すみません!」

 

 一夏の弁明虚しく、千冬に威圧されるや否やすごすごと引き下がる。

 終わった。もうダメだ、おしまいだ。自分たちの目論見がバレていると察した彼らは、そんな真っ暗な思いを抱いた。

 しかし、次に千冬が放った言葉は彼らの予想を越えたものだった。

 

「織斑、篠ノ之、オルコット、凰は作戦室に集合。デュノア、ボーデヴィッヒは部屋に戻れ。どのみち機体ダメージCなら戦いに出せん」

 

「えっ、それって……」

 

「次の作戦に参加できるかどうかは貴様ら次第だ。状況は変わったが、せめて福音の第三形態について話は聞いておきたい。急げよ」

 

 思いがけない言葉に反応した箒に、千冬はそれだけ言い残すとシャルロットたちを連れ去っていった。しばらくは全員、狐につままれたように微動だにしなかったが、内容をしっかり理解し終えると真っ先に作戦室へ駆け出した。

 

「ところで鈴。バカとか空気読めないとか、さすがに言い過ぎなんじゃないのか?」

 

「何よ、朴念人は本当の事でしょ」

 

「確かにな」

 

「それだけはどうも否定しようがありません」

 

「何だよ、二人まで!?」

 

 

 ※

 

 

 七月七日、十四時○○分。弦人の捜索と並行して、陸地から百キロ以上離れた沖合いをゆっくりと進むギガントスクエアの討伐作戦が決行された。予定している戦闘区域の周囲の封鎖などに人員を割かれているため、実際に戦うISの数は六機。一夏、箒、セシリア、鈴音。そして千冬の打鉄と、真耶のラファール・リヴァイヴである。今回の作戦に当たって、ラファールにはありったけの重火器を装備させている。

 もしも彼らが負ければ後方で申し訳程度の防衛ラインを張っている部隊に任せる事になるが、その時は世界最強の属するチームを敗北させた化け物に敵うとはとても考えにくい。そんな事態は絶対に回避しなければならなかった。

 

 一夏たちの参戦は、ブリーフィング時にしっかりとスマッシュ化――これまた機密事項なので漏らしたら人生が詰む――を説明した上でだ。

 ギガントスクエアを倒したら、福音の搭乗者ごと消滅するかもしれない。そんな可能性に生徒一同は始めこそ躊躇っていたが、このまま放置しても状況が悪くなるだけなのは確実。また、悪い未来を恐れて何もしない・スマッシュ化した人間を助けないという愚行は誰しも看過できるものではなかった。

 動かなければ始まらない。ならば、その生命を助ける事を諦めない。つい先ほど辛酸を舐めたばかりの一夏はとにかく前向きに考え、勇気を以て覚悟を決めた。弦人の事も含めて、良い未来を掴めるなら全力を尽くす。他の三人もそんな一夏に釣られつつ、確たる己の芯を胸に参戦を決意した。

 

 

 かくして、本日二度目の出撃が果たされた。一方その頃、旅館の一室にて。

 

「チーズ蒸しパンになりたい……」

 

「大丈夫、弦人ちゃんは死なない。あっ、でも酵素がないわ! どうしましょう! どうしましょう!? 困りすぎてもう、エクストリィィィィィィィム!!」

 

 一般生徒に敷かれた待機命令を破ったナギと京水は、身柄の拘束として同じ部屋に突っ込まれていた。本当なら機密の情報取得量が多いナギは別の部屋に行くべきなのだが、一ヶ所にまとめた方が監視も楽だと判断された。そもそも、教員の多くが《銀の福音》の対処に追われているので、割く人数は最低限にしたいと言うのが本音だった。

 

 無論、ナギが京水に話をすれば機密も何もなくなるが、そうなれば情報量の格差がなくなるだけで結果的には変わらない。この二人にしっかりと釘を刺しておけば、機密漏洩は今度こそあり得ないのだから。

 しかし、そんな二人を室内で見張っている教師はまさに頭を抱えた。ナギは「チーズ蒸しパン」と呟きながら畳の上に死体の如く倒れ、作戦経過を彼女から伝えられた京水は情緒不安定になっている。もちろん、こんな厳戒状況下で騒ぎ立てれば他の生徒たちにも不安を煽らせるだけなので、暴れる京水の口を塞いで静かにさせた。

 

「ムゴゴっ!」

 

「静かにしなさいよ、全く。鏡さんを見習いなさい」

 

 京水が抵抗しなくなるのを見計らって、呆れ果てながら解放する。ナギを見習えとは言ったものの、ほとんど死体ごっこをしている彼女には困惑を隠せなかった。

 すると、突如として部屋のドアがノックされた。暇を持て余している三人の意識はそちらに集中し、特に何の声も掛けられない事に教師は首を傾げつつも、応じようとドア前まで歩いていく。

 その時だった。ドア越しに教師の耳がシャキンという金属音をキャッチしたかと思いきや、あっという間にドアが一刀の元に斬り捨てられる。その剣の間合いは幸い教師まで届いていなかったが、予想だにしない出来事に他の生徒二人も思考がフリーズする。

 

 だが、ドアが崩れた先に現れた者を目にした京水は、直ちに気持ちを切り替えて誰よりも先に身構える。

 剣を振るった人型の異形はチェスのような風貌をしていた。機械的なボディは青く、およそ生物には見えない。

 その名もミラージュスマッシュ。ただし、こことは違う世界にいた個体とは異なり、ドアの残骸が全て床に散乱するまで姿を綺麗に消していた。いわゆる視覚的なステルス能力を有しており、突拍子のない怪人の登場に全員が絶句する。

 そして、狙いを教師の背後にいるナギたちに澄ましたミラージュスマッシュは、教師を押し退ける形で部屋の中に突進した。

 

「「「うわあぁぁぁぁぁぁ!?」」」

 

 三人の悲鳴がたちまち上がり、偶然にも窓を開けっ放しにしていたのでナギは大急ぎでそこから逃走。部屋の角に追いやられそうになった京水も同じく窓へ。彼女らのいた部屋は建物の三階に位置していたが、二人は難なく飛び降りた。

 続けてミラージュスマッシュも勢い良く窓から飛び出すが、いくらなんでも力を溜めすぎたようでナギたちの頭上を大きく通り過ぎる。相手の間抜けっぷりにナギたちはうっかり足を止め、唯一部屋に残った教師が上から声を掛けた。

 

「えぇっ!? ちょっ、どうなってるの!? 泉さんたち大丈夫!?」

 

「あ、大丈夫ですー!」

 

「ウソでしょ!?」

 

 けろりと答えた京水に愕然とする教師。しかし、この間に着地したミラージュスマッシュがUターンしてくる様子を目撃したナギが、慌てながら叫ぶ。

 

「こっち来るよ!? 逃げないと!」

 

「あら、本当。――キャアアアァァァァ!?」

 

 剣をかざしながら迫るミラージュスマッシュに京水は目を見開き、ナギと一緒に旅館から離れるようにして走っていった。二人とも靴を履いていないが、不思議な事にミラージュスマッシュには追い付かれていない。

 その見事な走りぶりに教師は感心しつつ、自身の役割の本分を思い出しては通信機を取り出す。

 

「は、速い……。じゃなくて応援呼ばないと!」

 

 ただし、使った通信機は終止ノイズまみれで、とても誰かと連絡を取れるような状態ではなかった。

 

 そうこうしている内に、ナギたちとミラージュスマッシュとの距離は縮まりつつあった。いくら陸上部所属のナギでもほぼ素足でアスファルトや舗装されていない道を走るのは辛く、そもそも普段から馴れていないので限界は早い。京水も似たようなもので、逃げ切れないと悟るや否や立ち止まり、トランスチームガンとルナフルボトルを構える。

 

「泉さん!」

 

「ナギは下がってて。それじゃあ行くわよー!」

 

 《Luna》

 

「蒸血♡」

 

 《Mist match》

 

 《Luna. Lu,Luna. Fire!》

 

 あどけない外見に合っていない艶かしい声を発しながら、京水はトランスチームガンから放出される霧に包まれてホールドルナへと変身する。

 直後、ミラージュスマッシュに振り下ろされた剣を白羽取りした。スーツより生み出されるパワーアシストの効果は、止めた剣を頑なに放さない。

 

「刃物を振り回すなんて、イケない子ね!」

 

 そう言ってホールドルナは、腕部に収納されているチューブを射出。チューブは一本の黄色い極太触手に変わり、ミラージュスマッシュを殴り飛ばす。その際に剣を辺りに放り捨てて、さらにポーズを決めた。

 

「太陽に代わって、お仕置きよ!」

 

 次に両腕を触手に変形させて、ミラージュスマッシュの身体をヌルヌルクネクネする。相手が隠し持っていたもう一本の剣を器用に絡め取り、また捨てる。ホールドルナに成す術がなくなった怪人は彼女に思う存分、肉体的にも精神的にも蹂躙されるのであった。

 何度も地面に叩き付けられ、振り回され、投げられてはキャッチされて。この一方的な戦いを物陰で見守るナギは、もしも自分がやられていたらと考えるとぞっと青ざめた。クネクネはまだしも、ヌルヌルはキツイ。

 そうして、ミラージュスマッシュを解放して地面に転がしたホールドルナに、とどめを決めるためにトランスチームガンを向ける。もう片方の手でルナフルボトルを数回振り、素早く装填した。

 

 《Luna》

 

「銃は好きじゃないけど、今は我慢!」

 

 《スチームブレイク!》

 

 引き金を引き、銃口から黄色の誘導弾が連射される。それらは湾曲な軌道を描きながら、ミラージュスマッシュを撃ち抜く。

 刹那、爆発が起きた。爆炎と熱風が出るのも一瞬の事で、すぐに跡形もなく消え失せる。

 

「……え?」

 

 あまりにもあっさりしていた事に加えて、手応えの弱さにホールドルナは何となく怪しんだ。自身に宿る乙女の勘が、まだ不穏を訴えている。

 何気なく辺りを見回し、ナギを見る。気が付けば彼女の後ろには、もう一体のミラージュスマッシュが忍び寄っていた。

 

「――ナギ、危ない! 後ろ!」

 

 咄嗟に呼び掛け、左手を文字通り伸ばす。呼ばれたナギは脇目も振れずに横へ跳ねて、触手の伸びる先を確保する。二体目が突き出した剣は空振りに終わった。

 だが、触手が二体目の眼前に迫った時、突如現れた三体目によって一刀両断される。ミラージュスマッシュたちの凄まじい隠密性にナギとホールドルナは恐々とした。

 

「ウソッ!? まだいたの!?」

 

 ホールドルナがそう言った矢先、一体のミラージュスマッシュの肩部ユニットが作動。二人の前で分身してやる事で、意図せずに種明かしを披露した。本体も含めた計四体のミラージュスマッシュは黙ってナギとホールドルナを包囲する。それぞれ、一対の剣を両手持ちにしている。

 数的優位を制したのはミラージュスマッシュ。個別の戦闘力も対人にしては軽くネジが飛んでいて、この中でも生身のナギが真っ先に狙われるのは定石だ。ナギも一応トランスチームガンを持ってはいるが未だに苦手意識が強く、こんな時に限ってテニスボールとラケットを持ち合わせていない。必殺打球も打てず、ホールドルナが彼女を庇う。

 

「ちょっと参ったわね。ナギ、ワタシが頑張って逃げ道作るから、先生たちの助け呼んでくれる? もしかしたら全部倒せるかもしれないけど」

 

「え? 通信しないの?」

 

「それがさっきからノイズばかりなのよ。不思議よね? 使い方合ってるはずなんだけど」

 

 ふるふると首を横に振るホールドルナ。緊張感は足りていないが、包囲しているミラージュスマッシュたちはじっと二人の出方を窺っていた。

 

「とにかく、今から張り切っちゃうわよぉー! 出血大サービス、やってみる――」

 

 その時、ホールドルナの頭上から不可視の存在――六体目のミラージュスマッシュが無音で踵落としをしてきた。強烈な一撃にホールドルナは昏倒しなかったものの、そのまま地面に倒れてしまう。合わせて六体目が透明化を解除し、他の四体も駆け寄ってゲシゲシとホールドルナを蹴り始めた。

 

「イタっ! イタっ! 痛い! ちょっと男子ぃぃー!?」

 

「泉さぁぁぁん!?」

 

 今度は立場が逆転して一方的にやられる番になったホールドルナに、不意打ち気味に出てきた六体目にびっくりして尻餅をついたナギが悲痛な声を上げる。

 すると、内一体の注意がナギへ向いた。分身体と目が合ったナギは、剣をちらつかせながら近づいてくる相手から逃れようと必死に後退る。尻餅をついたままで。

 

 しかし、依然としてミラージュスマッシュたちに蹴られているホールドルナの姿を視界に収めて、逃げたくなる衝動をぐっとこらえた。至近距離で未知の脅威に晒されては震える身体を気合いで抑えて、歯を食い縛ってトランスチームガンを右手に持った。

 そして甦るのは、初めて生身で発砲した時の形容し難い恐ろしさ。それで一気に印象を塗り替えられた銃器の感触。それに伴って実感した重み。あくまで競技としてしか受け止めていなかったISの授業では思い知る事もなく、何もかもが初めての経験だった。

 初めて故に戸惑い、どうして恐怖心を覚えているのか頭の整理も全然追い付かない。トランスチームガンの照準がぶれる。意識しないと、力が抜けてトランスチームガンを下ろしそうになる。

 

 それでも、ボコボコにされているホールドルナを見れば我慢できた。何よりも友達を見捨てたくないという、かえって単純な思いかつ一種の我が儘がナギを突き動かした。合理性や打算などは含まれていない。小難しい事を抜きにして、ナギは震える手に渇を入れようと一心に大声を出した。

 

「右手動けぇぇぇ!!」

 

 カチリという音に遅れて、ナギに近づいた分身体の眉間に光弾が直撃する。腹の底から出した彼女の声に負けじと着弾音が響き、かといって分身体は軽く仰け反っただけ。次の瞬間には背筋を正し、容赦なく双剣を繰り出した。

 

「ダメ! ナギ!?」

 

 それを横目で見ていたホールドルナは逃げろと促そうにも、集団で蹴られているので言葉が途中で遮られる。凶刃が一人の少女を貫くまで、刻一刻と時間が迫る。

 対してナギは最後まで諦めなかった。分身体の攻撃が速くて避けられそうにないのは確かだが、先んじてフルボトルをトランスチームガンに装填するぐらいはできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 《Cobla》

 

 《Mist match》

 

 《Co, Cobla. Cobla. Fire!》




Q.スタァァァァァク!!

A.“かがみ”繋がりでスタッグでも構いませんでした。しかし、ウンメイノーとハザードフィニッシュに定評があるクワガタは死にそうで縁起が悪いのです。あと、名前考えるのが面倒。スタッグゼニスとか安直かなぁって。レベル上昇タイミングはテニヌやテーブルテニヌ、合宿一日目の自由時間時だったり。


なお

城→フォートカノン

フクロウ→オウルシーカー

CD→超時空火星アイドル“みーたん”

これが限界


Q..アムロが乗ったガンダムに量産機のザクで挑むか、アクトザク・ゲルググJ・ジオング・バニザクの最新機で挑むか。なお、味方パイロットの搭乗機変更は不可。

A.本来の福音事件は例えると対応選択肢がそんな感じ。難しく例えると、ウッソが乗るV2アサルトバスターにザクで挑むか、ザンスパインで挑むか。更に難しくすると、ガンダムTR-6サイコ・インレやクインリィにザクで挑むか、EX-Sガンダムディープ・フォビドゥンで挑むか。しかし、相手がビグ・ザムになればザクでもジムでもやりようはある。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。