ナイトローグの再評価を目指す話   作:erif tellab

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「前回までのナイトローグ。ブラッドスタークが良い事をしているという前代未聞の事態に、多くの人間が度肝を抜いた。その上、特に何か悪さを企んでいる訳ではないのでなおさらだった。……あ、カラーミソのCM」

『火星で発見されたタチバナさん!? が引き起こしたコレクッテモイイカナ? の悲劇より――』『ごちゃごちゃしたのは好きじゃない』 『ヤベーイ!』

「……今、三組のクラス代表がチラッと出たような……」

「お邪魔しまーす……簪ちゃん、いる?」

「っ!」

「あぁっ、逃げないで! お願い、お姉ちゃんの話聞いて?」

「……なら、相応の態度があるはず」

眼鏡をくいっとしながら人差し指を下に向ける簪の図

「へ? う、嘘でしょ……? そんな……あの簪ちゃんが……頑なに土下座要求……?」

「それじゃ」

「待って簪ちゃん! カムバーック! ………………おのれナイトローグぅぅぅ!!」






「おのれディケイドぉぉぉ!!」


生徒会長とナイトローグの夏休み

 今日で八月。本日も晴天。ただしゲリラ豪雨には気を付けるべし。とある街の中を俺は歩いていく。本人だとバレないように伊達メガネと帽子をした上で。先程かき氷を買ってきたが、店員は俺を見ても特に目立った反応をしなかったので変装は上手く行っている……はず。腕輪はまた外させてもらった。

 この辺りの地理は徹底的に頭の中に叩き込んである。ここから二キロもない場所には例の謎施設が存在している。刑務所に隣接している場所だ。さすがに内部構造まではわからなかったので、バットフルボトルの特性を利用したぶっつけ本番の潜入となる。シャカシャカ振って超音波センサーの真似事をし、狭い範囲ながらも中を把握する。実際にこれで移動している物や人もわかるのだから、なかなか便利だ。

 

 なので、随分前から俺を尾行している不審者たちの存在も早くから感づけられた。仮病外出の時とは違って正規にモノレールや電車を使ったから、足取りを掴むのも容易いか。一般人に扮している黒服の皆さんにはお疲れ様と労いたい。

 

 きっと監視だけでなく俺に不審者が寄り付かないように守ってくれているのだろう。むしろそうであった方が気が楽だ。だから俺が木から降りられなくなった猫を助けたり、重い荷物を持つおばあちゃんを助けたり、カツアゲ現場を押さえたりする度にいちいちビクビクするのはやめてほしい。まだナイトローグにならないから平気だ。

 さてと、夜まで時間が残っているから適当に暇を潰してくるか。昼間だと行きがどうしても目立つ。帰りは霧ワープで解決するが。

 すると、背後から何者かが忍び寄ってくる感じがした。気配は音はない。たまたま、ポケットの下でバットフルボトルを握っていたおかげで察知できた。

 

「だーれだ――」

 

 女の声だ。そのまま後ろから俺の視界を塞ごうと手を伸ばしてきたので、咄嗟に前へ一歩大きく逃げる。

 

「んもう。せっかくお姉さんが仲良くしようと思って来たのにー」

 

 振り返ってみれば、そこにはIS学園の夏制服を着た女子がいた。ネクタイの色からして二学年。不服そうにしている女子は、俺の顔をマジマジと見ているところりと表情を変えた。

 

「あらやだ。そんなに警戒しなくてもいいわよ? はじめまして、日室弦人くん。私は二年生の更識楯無。IS学園の生徒会長です♪」

 

 次いでパッと開かれる扇子。生徒会長と聞いて安堵……するはずもなく、完全に気配を絶って近づいてきたなら話は別だ。とても一般人とは思えない。方向性は違うが、まるで織斑先生のようだ。

 警戒心を持ちつつ、俺も挨拶を交わす。生徒会長のフルネームは前にも耳にした覚えがあっても、実際に姿を確認した事はない。黒服の皆さんの動きにも注意。

 

「……どうも。日室です」

 

「顔が硬いわね。お姉さんの美貌を前にして緊張してるのかしら? ほら、もっとリラックスー」

 

「いえ、結構です。どうぞ本題へ」

 

 やんわりと断れば、途端に泣く仕草を始める会長。嘘泣きなのはわかりきっていた。

 

「うう……何だか辛辣。お姉さんショック……」

 

 だが次の瞬間、嘘泣きが通じないと判断したのか気を取り直す。それでもどこかムスッとしているが、今から始まる話に支障はきたさなかった。

 

「キミって結構マジメなんだね。なら良いわ、話も早いし。ここじゃなんだから、あそこの喫茶店に行かないかしら? こんなに暑いと流石にお姉さんもへばっちゃう」

 

 そう言う会長の額には汗が流れている。今日はムシムシとした暑さだから当然か。少なくとも人間みたいで良かった。……何故か、比較対象で地球外生命体と織斑先生を思い浮かんでしまった。

 いつまでも猛暑に晒されたくない気持ちはわかる。俺もその提案に応じ、そそくさと会長が指差しした喫茶店の中へと避難する。注文も互いに冷たい飲み物を頼み、奥の方の席で改めて彼女と向き合った。

 

「じゃあ改めまして、日室くん。まずはこの封筒の中身見てもらえる? あ、ババ抜きしてるみたいに他の人には見えないようにしてね」

 

 そうして手渡された封筒の中身を確認する。そこには何枚か写真が入っていて、写しているのはどこかの工場の内部だった。ベルトコンベアやエレベーター、見慣れないものなどが様々。流し見していると、視界の端で珍妙な物体が見つかる。

 それはどこか、ガトリングとかの銃身パーツに見えた。組み立ては手作業。続けて写真を変えて、中身の配線やフレームが剥き出しとなっているガーディアンの姿を目にする。今までネット上とかで見たものとは異なり、四肢や関節がゴツい気がする。

 

「武器……?」

 

「それね、スマホの部品とか建築材とか作ってる工場で撮ったの。言わなくても通じると思うけど、何かおかしいよね?」

 

 口を挟んできた会長の言葉に俺は頷く。写真を封筒へと戻し、それを彼女に返却する。

 

「それは……かなり黒いですね」

 

「うん、私もそう思ったよ。でもね、もっと不思議なのは、どうしてキミの山勘がこんなにも的中したのかって事。そう言えば、あの夜の悪党の出自もかなり謎に包まれてるよね? もしかしたらって想像すると、お姉さん気になるなー。そこのところ、どうなの?」

 

 少し小悪魔気味な雰囲気を醸し出す会長は、にぱーとそう言ってのけた。それは個人的にもあまり触れて欲しくない部分ではあるが、確かにカイザーシステムとトランスチームシステムの繋がりは疑りかねない。これほど成果が出るのは出来すぎている。

 まず俺が南波の人間とかに思われるのが自然だな。残念ながら、それを完全に否定するだけの証拠はない。忘れがちだが、無人島生活していた俺はこの世界において死んだと思われていた人間なんだ。そんな奴がナイトローグを手にしたのだから、どう足掻いてもグレーから抜け出せない。

 はぁ……。溜め息が出るが、上手い事やっていくしかない。こんな喫茶店でそんな話ができるならと信じるが、敢えて言葉を選んで口を開く。

 

「どうも何も、全てそっちに伝わってる事の通りだと思いますよ? どんな家電品やゲームだって取扱説明書は付き物です」

 

 そうやってしばらく見つめ合い、先に会長がふっと笑って緊張感が解けていく。しかし――

 

「そう。それじゃ良いわ。次の話をしましょう。実はキミが外出する際に、織斑先生から面倒事を起こさないように見張ってろに言われてるの。わかる? 今にも関羽や呂布、本多忠勝を霊媒しそうな織斑先生の顔」

 

 ヒエッ……はい来た、織斑先生の手先。と言うより先生、あなたがそう指示したのであればこの会長は本当に裏社会の人間系だと認識しても良いんですね? 差し支えないんですね? 疑惑がもう確信に変わったぞ。

 

「ウフフッ。ようやく表情が変わった。それでね、キミがどうしても悪い事しちゃうなら、私もそれを全力で追って止めないといけないの。例えば謎の施設に不法侵入とか、潜入とか、調査とか」

 

 ふと脳内に浮かんだ織斑先生に戦慄していたのをからかわれ、釘も刺される。おまけに開かれた扇子には、俺の今の心情を当てるかのように“戦慄”と書かれていた。名護さんやホテルおじさんに通じる何かを感じた。

 俺の反応を楽しんだ会長は「しかし」と一拍起き、扇子を仕舞って余裕さを崩さずに話を続ける。

 

「それは日室くんが一人になる時の話。私も一緒にいれば……そうね。ガクンと行動範囲は広がるわ。それはもう、エベレストの山頂や地の底でも。なんなら二人で本格的な怪盗ごっこもやってみない? お姉さん、キミの力を頼りにするかも?」

 

 直後、妖艶的にポーズを決めた会長は不敵の笑みを浮かべる。それとは裏腹に言葉に含めた何かしらの意は、奇妙にも冗談とは思えなかった。話の前後を考えて、脳内では次第に彼女の目的が鮮明にされつつあった。もしかして――

 

 

 

 

 

 

 

 午後七時になれば、流石に夏でも陽は完全に沈む。周りを見れば、数多の街灯や営業中の店の光で夜空の星たちは輝きが霞んでいる。悠々と昇る真っ白な月の自己主張がとりわけ激しかった。

 そんな中、俺は会長と一緒に人気がない場所へと移動していた。謎の施設への潜入予定時間は刻一刻と迫っており、俺たち二人以外にも別動隊がクラッキング等でサポートしてくれるとの事。彼女の口から暗部だと言われた時は唖然としたが、ここまでの流れが実に鮮やかだったので現実味が増す。

 そして、俺の同行が許された一番の理由が霧ワープである。身も蓋もない。潜入中、プロである彼女から常にサポートされるのは間違いなしだ。足を引っ張るような真似はしたくない。全力で臨もう。

 

「会長、こっちの準備はできました」

 

「待って。なにその格好」

 

 そう申告すれば、すかさず会長から突っ込まれる。

 格好だと? いや、何もおかしいはずがない。会長だって潜入直前にも関わらず、衣装はIS学園の制服のまま。おまけに専用機持ちだと聞いている。ならば、黒いマスク・シルクハット・スーツでバッチリ決めた俺もセーフだ。トランスチームガンを片手でクルクル回しながら取り出し、手短に弁明する。

 

「快盗スタイルです。予告状も出しときますか? “貴社の知的財産権をいただきます”って」

 

「うん、わかった。それじゃ暗部のスペシャリストからアドバイスしてあげる。マントとシルクハットが邪魔になるから今すぐ着替えて来なさい。それは玄人向けよ。キミには無理。あと、予告状は出さないから」

 

 間髪入れずに会長が一刀両断してきた。心なしか声の調子が冷たい。トランスチームガンを見た瞬間に目が怖くなった気もする。

 そうか。プロがそこまで言うのなら大人しく従おう。快盗スタイルからシアン色イメージのカジュアルな格好にとっとと着替え、最後にコスプレナイトローグの仮面を被る。

 

「そのサンレッドスタイルもやめなさい?」

 

 これも駄目、か……。相変わらず会長は怒っているような感じだった。渋々仮面を仕舞い、落ち込みそうになる気分を変えようと夜空を見上げる。それはかつての無人島で見た景色と違って、そこにあるはずの星の大半が息づいていなかった。真っ暗すぎて、これはこれで悲しくなりそうだ。

 

「ほーら。そんなにショボくれないの!」

 

 すると横から俺を元気づけてくる会長。どの口がと存分に言いそうになるのを抑えるが、それでも少しは口から零れてしまう。

 

「……別にいいじゃないですか。ナイトローグだって……ナイトローグだって……。ナイトローグを見るなり目付き変えて、何か恨みでも持ってるんですか?」

 

 次の瞬間、会長は不意を突かれたような顔をした。すぐに笑顔を新しく張り付けるものの、とても暗部とは思えない呆気なさだ。気まずい空気がやって来る。

 俺が不可解に思っていると、やがて会長は苦笑する。それから、ばつが悪そうにしながら話始める。

 

「えっーとね……いえ! あくまで勝手な理由なの! だけどね……」

 

 そんなこんなで聞き始める事、数分。結論から言わせてもらうと、決定的な仲違いの原因はずっと昔の会長の失言にあった。加えて、最近の簪さんの変化についても言及し、何と言うか俺は呆れるしかなかった。

 

「とうとう妹が無言で土下座要求してきたのはナイトローグが悪いって何ですか? あなたに非があるならとっとと謝るべきですよ。てかさりげなく簪さんと会長って姉妹だったんですね」

 

「うっ……。そ、それはわかってるわよ。でも簪ちゃんの方から逃げてっちゃうし、ようやく話す機会出来たかなーって思ったら、メガネくいってしながら人差し指下に向けるんだもの。もうびっくりしすぎてお姉さん怖くて――あ、この話は簪ちゃんに言わないでね? お願い!」

 

 そう言って頼み込む会長の姿から、やはり人の子だという一面が見えた。これが妹に対して口下手を働かせて傷付けたなんて、全く想像もつかない。

 

「他人の秘密はしっかり守るので安心してください。それと、事をいつまでも先伸ばしにするのはオススメしませんよ? 仲直りは早いに越した事はありません」

 

「ぜ、善処するわ……。でも、土下座かぁ……」

 

 その呟きの後に会長はしょんぼりとなる。まるで愛孫に嫌われたおじいちゃんのようなオーラを出していた。

 しかし、それも一瞬だけの話だった。俺が瞬きした直後には背筋を伸ばし、顔付きも仕事人のものへと変わる。

 

「……よし! それじゃわだかまりもなくなったところだし、そろそろ行くとしますか!」

 

 かくして、俺たちの潜入作戦が始まった。目標が謎の施設なのでやる事はガサ入れに極めて近くなるが、それでトントン拍子に物事が進められれば儲けものだ。

 

 

 




Q.おのれディケイドぉぉぉ!!

A.姉に対する簪ちゃんの我が少し強くなりました。ナイトローグ相談所のおかげで。



Q.遠くから見守るSPやらの人たち

A.

黒服その一「変身するなよ……変身するなよ……」

黒服その二(変身させたら俺たちにとばっちりくるんだろうなぁ。でも変身理由のことごとくが不起訴ものだから地味に嫌らしいんだよなぁ。てかなんでアイツ外出させた)

黒服その三(変身しないよな? 木から降りられない猫助けるために変身しないよな? 泣いてる子どもを泣き止ますために変身しないよな? 街に出た鹿を山に帰すために変身しないよな? コンビニに行く感覚で不良グループ同士の抗争の介入はしないよな? 太平洋ど真ん中に集まってるマイクロプラスチックを殲滅しに行かないよな? スバル島の海抜増やしに行かないよな? カンボジアの地雷回収しに行かないよな? どうか遵法してくれ、お願いだ )

黒服その四(サインどうやって貰おう……)



Q.みーたんの精神年齢、よくよく考えれば12歳ぐらいだと今更気づいた。おのれエボルト。

A.エボルトのプロデュースのせいでみーたんを見る目が変わってしまいそうです。



Q.ブラッドスターク、スーツ改造されてないってよ

A.やめてください。ナイトローグが発狂してしまいます。

ナイトローグ「嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁ!!」
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