ナイトローグの再評価を目指す話   作:erif tellab

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「前回までのナイトローグ。弦人が戦いに向かっている一方、IS学園でスマッシュ撃滅作戦のブリーフィングを受けている一夏たち三人。京水とナギはトランスチームガンの整備待ちだから戦いに出られらるかどうか微妙。本人自体に出番はなかったわね。それはそうと……」

「魂ィィィーっ!!」

「アタシの方は呑気にあらすじやってる場合じゃないのよ!! 迂闊に出てった中国のISがネビュラガス浴びて来て、何か呂布っぽい化け物になったから相手する羽目になったんだから!!」

「魂ィィィーっ!!」

「方天画戟から竜巻連発するって頭おかしいんじゃない!? 福音の時と違ってISの動きできてるし、面倒なヤツ!! いい加減、墜ちなさいよ!!」


悪魔 / 天災の科学者

 人の気配がなく、これっぽっちも開拓されていないどこかの山奥。その中に、自然を利用して巧妙に隠されている施設がある。無論、それだけに留まらず光学迷彩といったカモフラージュに過剰すぎる技術までふんだんに使われている。

 そこが今、複数体の無人機IS《ゴーレムⅡ》によって襲撃を受けていた。肩に搭載されたビームランチャーから桃色の粒子を何十発もばらまき、迎撃ミサイルや対空砲火を潜り抜けて破壊活動を行う。途中、突然の地響きと共に地中から飛び出してきた巨大な壁に何機かが巻き込まれ、壁から放たれる赤い光に取り込まれるようにして爆散。世界がネビュラガスで騒然としている傍で、混沌とした風景が何気なく繰り広げられていた。

 そんな中、水色の機影が山肌の上を疾走する。それを追走するのは三機のゴーレムⅡ――

 

「一体全体、何がどうなってるのよ~!?」

 

 専用機《ミステリアス・レディ》を展開した楯無が、混沌を目の前にして叫ぶ。だが、無情にも叫び声は山彦と化するだけ。後ろを着いてくるゴーレムⅡは、腕部と一体化しているハンドレールガンを容赦なく撃ってくる。

 泣き言を言いながらでもゴーレムⅡたちの攻撃をヒョイヒョイ避けている辺り、楯無の実力が窺える。内一機がスラスターを思い切り吹かして彼女に肉薄すると、左腕から長大な貫徹針弾を至近距離で噛ますよりも早く蒼流旋で殴られた。受けた衝撃は殺し切れず、派手に地面に衝突する。

 一方の楯無はバレルロールを披露しつつ、視界の両端で見つけた景色の変化に気づく。瞬時加速で一気に突き抜ければ、コンマ数秒遅れて放たれたネットを無事かわす。よく確認すると、そこには光学迷彩で透明になっていたガーディアン二体がいた。

 楯無を追っていたゴーレムⅡたちは、突如目の前に現れたネットを避け切れずに飛び込んでしまった。ネットは合計百トン近くある金属の塊を容易く受け止め、間髪入れずに捕らえた獲物に高圧電流を浴びせる。脱出させる暇も与えず、たちまち二機を沈黙させた。

 

「初見殺し……ちょっとエグくない?」

 

 楯無がそう呟くと、先程殴り飛ばしたゴーレムⅡが復帰を果たしてきた。相手が弾幕を張りながら接近するのに対し、楯無はアクア・ナノマシンの盾を展開しながら突撃を敢行する。弾丸は全て水の防壁が受け止め、相対距離がほぼゼロになったところで蒼流旋を一突き。ゴーレムⅡの胸部を貫通せしめ、破損箇所から爆発を起こす敵機をそこらに振り落とす。

 すぐさま撃破確認を行い、目的地の施設へ向かう。上空には未だに地上へ砲撃を続ける機体が残っているため、極力見つからないように気を付ける。ビーム砲によって穴が空いた箇所から施設内部に潜入し、ある程度奥まで進んでいった。

 それから一時停止し、ハイパーセンサーでこまめに索敵。すると、遠くで誰かの話し声が聞き取れた。

 

 

 

 

 

 

 

 広く余裕のある地下空間。その奥にはぽっかりと空いた一つの穴があり、そこからネビュラガスと赤い光を吹き出している。穴の周囲は強化ガラスなどで隔離されており、ガラス越しに二人のカイザーが何気なく見つめていた。白いパンドラボックスは、青い方が持っている。

 そして、カツンカツンと何者かがそこにやって来た。カイザーたちが振り返ると、始めにウサミミのカチューシャと青白のエプロンドレスが目に映った。

 

「来たか。派手な訪問だな、天災よ」

 

「うん、来ちゃった。もっくん」

 

 Rカイザーがそう言った通り、姿を現したのは束だった。ニコニコと愛想を振り撒いているが、後ろに侍らせているマシーンやゴーレムⅡの存在が、どうも敵意を感じさせる。

 

「馴れ馴れしい呼び方だな。私たちを消すつもりの癖に」

 

 唐突な束のアダ名呼びに、Lカイザーは仮面の下で眉をひそめる。そのアダ名がさりげなく己の本名に近い事も相まって、目の前の兎への気に食わなさが加速する。

 だが一方で束はどこ吹く風で、そんな事はお構い無しに自分のペースで話を続ける。

 

「だって、私の作ったISに変な事してごめんなさいするようなタマじゃないでしょ? じゃあ仕方ないよね! 元々許すつもりなんてないんだけど。でもその前にさ、もっくんに聞きたい事があるの。質問いいかな? 拒否権はない!」

 

 彼女の芝居がかった動きと唯我独尊ぶり、カイザーたちは内心呆れる。二人が警戒しながら黙っていると、束がピタリと動きを止めて、真顔で次の言葉を放った。

 

「なんでクローンでもないのに同じ人間がいるの?」

 

 その問に二人のカイザーは答えない。代わりといっては、束が勝手に自分の立てた推論を述べていく。

 

「若いもっくんベースなら老いた方がいる理由がわからないし、戸籍上も偽造された形跡はない。テロメアに異常があるとしても、最近のクローン技術でそんな失敗してる方が不自然。なら逆を考えたけど無理げだよね。二十年以上前のクローン技術なんてたかが知れてるし」

 

 すると、Lカイザーが白いパンドラボックスの力を発動させた。背後の穴がみるみる内に塞がっていき、ネビュラガスの源泉に蓋がなされる。

 

「じゃあ後は平行世界の同一人物か、過去と未來のもっくんがそろってるかになるね。前者は空間の歪みとか今のところ見つかってないし、後者はタイムパラドックスが気になるけど。ねぇねぇ、答えはどっち?」

 

 束は白いパンドラボックスにやや目が惹かれつつも、興味の視線をカイザーたちに向ける。Lカイザーは沈黙を貫くが、Rカイザーは間を置いてから反応を示す。

 

「……これは数少ない私の研究成果の一つだが、時間とは人々の記憶によって築かれていく。独学でこの結論に至るまで、長い時を費やした……」

 

 直後、二人は手のひらからパッと黒いカードをそれぞれ一枚ずつ取り出した。その表と裏に刻まれているのはEを象った赤い文字と、Rを象った青い文字。

 そんな謎のカードに天災が可愛らしくきょとんと首を傾げるのも束の間、カイザーたちは己の胸に向かってそれを突き付けた。コツンと触れる間もなく、カードを溶けるようにして肉体の内側へと入っていく。

 その時、地下空間に大量のガーディアンが突入してきた。全て重装備かつ、その重さを感じさせない程の迅速な動きで束を半包囲する。しかし――

 

「キラキラ☆ポーン」

 

 束が懐から魔法少女チックなステッキを出すや否や、突如として全てのガーディアンが見えない何かに押し潰された。あっという間にガラクタと化し、装備していた武器が誘爆を起こす。

 

「空間圧作用兵器試作五号~♪ ISでもないとミンチより酷い事になるよ! ……のはずなんだけどなぁ」

 

 彼女の振りかざすステッキの効果適用範囲は、自分たちを包囲している敵全て。想定ではISすら地べたに這いずらせる程なのだが、カイザーたちを見ればケロッとしていた。

 不満げに口を尖らせる束をよそに、カイザーたちは各々にネビュラスチームガンを持つ。束の背後にいるゴーレムⅡが自動迎撃するより早く、いつの間にか持っていた自身とは色違いのギアをスロットに装填し、引き金を引いた。

 

 《Gear engine! / Gear remocon!》

 

「「バイカイザー」」

 

 《ファンキーマッチ! フィーバー!》

 

 一瞬、二人の最上たちの姿が露になり、ゴーレムⅡのビームランチャーが火を吹く。彼らの身体は瞬時に閃光に呑まれたが、聞こえてくる変身音は絶えなかった。

 すぐさまビームが霧散し、健在である変身者を中から披露する。二人の最上はそれぞれ半身が消え失せ、歯車と黒い煙に守られながら融合を果たす。歪な融合シーンも僅かな出来事で、瞬きする頃にはとっくに戦闘スーツを身に纏っていた。

 赤と青が混ざり合い、互いに欠けていた物を補完し合う。新たに生まれたカイザーは以前のような非対称の姿ではなく、バイザーの形をU字に転換した完全体としてこの場に君臨した。

 

 《Perfect!》

 

 ――その名を、バイカイザー――

 

「……フェーズ1、完了」

 

 そう呟くバイカイザーを見て、束は敵愾心をたぎらせるよりも目をキラキラさせるのを優先した。その様子は二十を過ぎたというのに年甲斐もなく子供っぽく、ワクワクとした期待感が滲み出ている。

 

「うわぁー! なにそれー! フュージョン? ドラゴンボールみたいにフュージョンしちゃったの!? 皆の夢を実現するなんてさすがもっくんだね!」

 

 しかし、その彼女なりの純真無垢な感想を、バイカイザーは素直に聞き入れる事はしなかった。彼にとっては煽っているとしか感じられない声色を棄却し、ネビュラスチームガンの銃口を前に向けて臨戦態勢を取る。

 そして問答無用で発砲し、束に当たる直前で不可視の障壁に防がれる。攻撃を受けた束は特に動じる訳でもなく、笑顔を絶やさずに粛々と対応を取った。

 

「もう、ちーちゃんみたいに堅物でせっかちだなー。いいよ? もっくんがその気なら私も本気で行くから。束さんは細胞単位でオーバースペックなんだぞ~?」

 

 右手にスパナ、左手にドライバー。周りには複数の無人機IS。依然として生身を晒している束だが、パワードスーツ無しでの戦闘参加に躊躇はなかった。それどころかノリノリで、まさに鼻歌も奏でそうな雰囲気だった。

 

「ほざけ」

 

 バイカイザーがそれだけ言い捨てると、間もなくして武力衝突が発生した。数分も経たずに地下空間は崩壊の兆しを見せ、つい近くを通り掛かった水色のISを巻き込んでいく――

 

 

 

 




Q.今回のオリジナルスマッシュ

A.呂布スマッシュ

名前は適当。モデルは呂布トールギス。スマッシュ化してもISの機体特性が生きたままで、コイツ一体に艦隊一個が海に沈んだとか。ISスマッシュ化の理想系。この後、鈴音と激戦を繰り広げた後に撃破される。鈴音曰く、理性なく暴走していたからギリギリ勝てたとの事。
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