「跪きなさい……」
「Gyaaaaaaaaaa!?」
「また、日本からの国外逃亡犯を追い掛けていた仮面ライダーイクサのナゴと遭遇。共にチベットに蔓延るスマッシュを倒す事となる。さぁ、刮目しろ。ギャレンの新たなる力を!」
《アブゾーブクイーン。フュージョンジャック》
「ン、私も彼女には負けられないな。来い、パワーイクサー!!」
※今回、井上味強めです。
その少年は、小学六年になった時からイジメを受けるようになった。相手は女子グループで、イジメられる理由はごく単純。報復を受ける恐れがないと思われるほど少年自身が気弱だったためと、ISの登場以来、女尊男卑の風潮が広まっているせいだった。
しかし、そんな女子グループの思惑とは反対に、真っ先に少年は親や担任の教師にこの事を告げた。イジメられていると告発すれば、大人たちが助けてくれると考えて。
だが、不幸にも少年の言葉に耳を傾けてくれる者は誰一人としていなかった。イジメっ子の女子グループが全員、表では良い子だと思われるように普段から振る舞っていたからだ。
逆に少年には、特に親しい友達はいなかった。有力な証拠や証言がある訳でもなく、ほとんどのクラスメイトや教師が良い子の振りをしている彼女たちの味方をしている。受けているのが表面化しにくい陰湿なイジメである事も、彼の孤独化に拍車を掛けている。力になってくれそうな男子からは、興味すら持たれずに離れていく。
さらにダメ押しと言わんばかりに、女子グループの親が教育委員会やPTAなどに大きな影響力を持っていたのが運の尽きだった。警察やチャイルドラインに泣きながら逃げ込んでも、ふとすれば何事もなかったかのように送り返される。
ここまで来たら、少年に残された手段は僅か。自殺するのは簡単だが、学校側はおろか自分の話をまともに聞いてくれなかった親が、本気で向き合ってくれるかすら怪しい。「仮にイジメられているとしても、弱いお前が悪い」と母親にキツく言われたぐらいなのだから。
だから途方に終わるだけになる自殺は選ばない。しかし、イジメに打ち勝てる程強くなれる自信もない。
引き籠もりも考えたが、後少し我慢すれば小学校を卒業する時期でもあった。もしかしたら、進学する中学校がバラバラになってイジメは自然消滅するかもしれない。そう考えれば、幾らか気は軽くなった。
そんな淡い期待を抱きながら忍耐を続けたが、現実は非情である。イジメっ子の女子グループとは再び同じクラスとなり、遂には担任の教師やクラス全員が参加してくる始末。そこに倫理のブレーキなんてものは存在しない。皆が皆、弱い者をいたぶるのを楽しむ。入学僅か一ヶ月目で、少年は引き籠もりを決めた。
そして、あらかじめ設置していた隠しカメラを使い、イジメ現場の様子をネット上にバラ撒いた。案の定、ワイドショーでも扱われるほど炎上する事態になったが、それでも想定外だったのがイジメの真相究明に四ヶ月以上も掛かった事だった。学校側やクラスメイトが全員、口裏を合わせていたせいである。
また、ここまで事態が悪化したにも関わらず、母親はしつこく「学校に行け」と言うばかり。父親は完全に静観を決め、静かに仕事へ向かうだけ。誰も自分を守ってくれやしない。少年は自室の鍵を硬く閉じ、辛い現実から逃げ続けた。
特に非行に走った訳でもないのに、どうして。少年はどんどん人間不信に落ちていく。
ある日の夜。何か飲み物が欲しいと機を窺って部屋を出た少年は、リビングの方でとんでもない会話を耳にした。
「そんな……お願いだ! 考え直してくれ!」
「うるさいわね! もうアンタといるのはコリゴリなのよ!!」
「そういう訳だ、おっさん。観念した方が苦しまずに済むぜ?」
悲壮な声を上げる父と、怒声を浴びせる母。それと知らない男の声。
「あ……あ……せ、せめて! 息子だけでも!」
「ダメよ。保険金はあの子の分までキッチリもらうわ。本当は女の子が良かったのに、あんなの産むんじゃなかった」
瞬間、盗み聞きしていた少年はとてつもないショックを覚えた。怒っていいのか、悲しんでいいのかわからず、その母の耳を疑うような発言に茫然せずにはいられなかった。
それも束の間、不意に父の声が途絶えた。声が一人分欠けた事で少年は我に返り、次に殺されるのは自分だと察して玄関から外へ大急ぎで飛び出す。直後に知らない男がこちらに気付くが、追い付かれる前に自転車へ乗って逃走を果たす。
もう頭の中がグチャグチャだった。とにかく遠くへ逃げる事だけを考えて、必死に深夜の街中を自転車で駆け抜ける。
そうして疲れ果てて、適当なところで休息を取ると、巡回していた警官に呆気なく補導された。近くの交番にまで連れて行かれ、半ば泣き顔にもなっている少年に警官は訝しく思った。涙えぐむ彼の背中を優しく撫でて、事情を確かめようと慰めてくる。
しばらくして、少年は静かに先程の事件をこの警官に告げた。殺人と聞いて警官の顔付きが変わり、真摯に少年の言葉を聞き始める。
イジメられて以来、こんなにも人に優しくされるのは少年にとって初めてだった。それと同時に、人を信じられなくなった心が抑えようのない怒りを爆発させんとする。
自分が散々イジメられても何もしなかった癖に、殺人となると手のひらを返す。所詮、自分自身はそんな程度の価値しか認められていないのだと感じ、イジメで歪んだ精神が警官の温かい厚意を素直に受け付けなかった。
「何だよ……人がイジメられてるって叫んでも無視した癖に……人が殺されたって聞くと顔色変えて……」
「……君?」
ふとそんな事を呟く少年に、警官は首を傾げた。すると――
「そんな!! そんな風にされても今さら信じられるかよ警察なんて!! どうせ何もしないんだろ俺みたいに!!」
「あっ!? ま、待ちなさい!」
少年は急に立ち上がり、警官を跳ね除けて自転車へ。今度は交番から逃げ出し、沢芽市の中心まで漕いだ頃にはとうとう夜が明けた。
今の季節は夏。がむしゃらに逃げたので、これから訪れてくる酷暑を凌ぐ計画性はない。午前八時を過ぎれば気温がどんどん上がり、身一つで逃げて来た少年は自分の衝動的な行動に酷く後悔する。
その時、どこからともなく発生したネビュラガスが街を覆い、少年はその中に飲み込まれていった。
気が付くと、少年だったものはアスファルトの上で伏せていた。本当なら日射を浴びて火傷する程の高熱を帯びている地面だが、不思議な事に平気でいられた。それどころか、心地良さまで覚える始末だった。
一体、何が? とりとめも無く起き上がると、街は毒々しい色のガスで満たされていた。近くにある建物は火事に遭っており、ところどころで自動車の残骸やらが散らばっている。
こんな光景はゲームなどでしか見た事はない。尋常ではない出来事に、元少年は軽くパニックになる。
そして、忽然と目の前を横切ってきた人型の化物――スマッシュを見て、思わず叫び声を上げてしまった。
「う、うわァァァーっ!?」
元少年は腰を抜かし、無様に這いつくばりながらスマッシュから逃れようとする。対してスマッシュは彼の慌てふためいた様子に一度意識を向けるものの、すぐに興味を無くしてどこかへ去っていく。
こうしてスマッシュから逃げ切った元少年は、一軒の美容院の前へと辿り着いた。この時の彼は動転していた余り、自身に起きた変化に未だ気付けないでいた。そして、美容院前に置かれている看板の、鏡のように綺麗な銀色の土台に顔を向けて、現実を知る事となる。
先程出会った化物とは、全く違うタイプの姿。一瞬呆気に取られる元少年だったが、実際に自分の身体を確かめるや否や、その揺らぎようのない事実を認識してしまった。
「え……あ、え、あ……あ……ああ!?」
両手で顔を覆うようにして嗚咽を漏らし始める少年は、バーンスマッシュになっていた。
スマッシュに涙腺は存在しない。だが、例え涙が流れなくとも今のバーンスマッシュは泣かずにはいられない。深い悲しみが心をグッサリと抉り、どうしようもない絶望が降り掛かる。
それから泣き疲れては眠り、起きては泣いて疲れて眠ってを繰り返し、一日が終わる。もはや判断能力が低下しきって思考回路がイカれたバーンスマッシュの身体は、いつの間にか漆黒へと染まっていた。さながら、今の彼の心情を周囲に訴えているようだ。見てくれる者は誰もいないにも関わらず。
スマッシュ化して二日目の早朝。街に蔓延るネビュラガスはまだ晴れない。
二日目にもなると、流石にバーンスマッシュは落ち着きを取り戻していた。化物になってしまったのだと改めて自覚をするが、もう悲しくない。人間ではなくなって惜しい気持ちがあっても、イジメられていた日や親に見捨てられた時の事を思うとどうでも良くなった。
次にバーンスマッシュは、おもむろに自分の力を確認する。本能で自らの能力を理解し、右腕のバーナーの試し撃ちや身体能力のテストを行う。どの結果も実に人間離れしたもので、意図せずに強くなった事に無性な喜びを感じる。
自分は強くなった。これで誰も自分をイジメる事はない。ようやく弱い故の罪から、あの地獄から解放された。そんな風に思うと、次第にこの沢芽市の惨劇が楽園のように見えてきた。弱肉強食の原初に立ち返り、世間という概念に囚われる事も、必要とする事もない素晴らしい世界。代わりに助けてくれる者はいないが、もうそんな存在には期待しない。自分一人でやって行こう。ここには真の自由がある。
そして、古い自分の記憶を思い返していると、あの女子グループに明確な殺意の意志が目覚める。これほどの力があれば、確実に復讐する事が可能だ。一度邪心が芽生えれば最後、スマッシュとして新しく生きようとする彼を思い留まらせるものは何もない。
何故なら、正義や悪という概念は人間が勝手に決めた事だからだ。本来なら、彼が先程生きたいと願った自然界には存在しない異物である。法律もスマッシュになった以上は守る義務もなく、そもそも法律は人外の類を裁く事はできない。
ならば問題無し。派手に暴れれば警察などから射殺許可が降ろされるだろうが、そんなものはゴジラも通った道。どんなに時代が経てもこの世は純粋かつ原始的な力が制すると信じて、バーンスマッシュは動き出した。
だからこそ、それを邪魔してくるナイトローグが煩わしかった。こんなにまで取っ組み合いになるのなら、あの時に苛立ち紛れでちょっかいを出すべきではなかった。所詮は全てを救えやしないのにヒーロー気取りでいて、自分みたいに不幸な人間の存在を知らずにそのまま素通りしていくのだから、より偽善染みているようで吐き気がする。
もちろん、そこまでの完璧超人が実在しないのはわかっている。仮にいるとすれば、もはや全知全能の神の領域だ。
だが、理性でその独善的な憎しみを抑えられるのであれば、最初からスマッシュ化して歓喜する事はなかっただろう。バーンスマッシュは纏わりつくナイトローグを払おうと、音速で飛ぶには狭すぎる住宅街で幾度となく機動を細かく変える。
「どけぇ!!」
そう言いながら無茶苦茶に地上スレスレを飛び回るバーンスマッシュにナイトローグは必死に食い下がり、やがて一緒に近くの民家に盛大に衝突する。推進機構となっているバーナーにより民家は着火し、二人が派手に真っ直ぐ通り抜けた直後に炎上。この調子で三軒ほどが、この民家と同じ末路を辿る事になる。
「もう止せ!」
「うるさい!」
これ以上はさせんとナイトローグは蹴りを入れるが、手応えはない。それも束の間、バーンスマッシュが飛行の勢いに乗ったまま、怪力を以てしてナイトローグを地面に叩きつけた。黒い戦士の身体は二転三転し、脇腹から電柱に当たってようやく動きは止まる。その際、電柱は粉砕した。
一方でバーンスマッシュは器用にバーナーを操り、華麗にスピンをしながら減速。道路にピタリと着地し、ナイトローグの方を見やる。彼は脇腹を擦りながらようやく起き上がったばかりだった。
すると、自分の横に人影を見つける。それはテレビでもよく見かけていた。第二世代型のIS、打鉄だ。数はニ体。いきなりやって来た自分を見て、搭乗者の女性は呆気にとられていた。
しかし、それも一瞬だけ。すぐさま臨戦態勢に入った彼女たちは、専用の巨大アサルトライフルの銃口をバーンスマッシュに向ける。
「スマッシュだ! 攻撃開始――!」
たちまち鉛の雨を浴びせられるが、既に危険域まで強化されている彼にとっては痛くも痒くもない。それよりも、目の前で自分に攻撃を加えてくるISを見て、ただでさえ良い思い出がない女たちの記憶が掘り返される。
「IS……ISは……」
「えっ!? コイツ、喋って――」
そして自分に対する攻撃行動という逆鱗を触れられ、彼の怒りは一気に爆発した。
「敵ィィィーっ!!」
今までとは比べ物にならない程のスピードで一体の打鉄に詰め寄り、まるで反応しきれていない彼女の顔にバーナーをかざす。瞬間、灼熱の極光が住宅地の一画ごと打鉄を飲み込んでいった。
「っ、お前!!」
すかさずもう一体の打鉄が、背後から近接ブレードで一閃する。しかし、刃はバーンスマッシュの首に一ミリも通らず、バキリと折れた。
その相手の防御力に搭乗者は絶句し、さらにバーナーの火炎放射が止んだ後の景色を目にして、表情を固く強張らせた。
射線上にあった建物は全て灰燼に帰し、まるで爆弾が落とされたような様子をしている。その中で直撃を受けた打鉄はというと、見るに堪えない無残な姿で横たわっていた。
装甲は焦げるどころか融解を始めていて、握っていたはずのアサルトライフルは跡形もなく消滅。肝心の人間は、酷い全身火傷を負って瞳を閉じていた。
建物が瞬時に全焼している中で、唯一原形が残っているのはISの絶対防御のおかげだろう。ほんの僅かだが、ハイパーセンサーで生命反応が確認された。
本当ならその女性の生存を喜ぶべきなのだが、生き残った彼女にその余裕はなかった。先程まで筒がなくスマッシュを倒していたというのもあって、ISを纏った事による絶対的な自信があっさり打ち砕かれた。絶対防御も出力さえ確保できれば完全な物理攻撃無効化が可能だが、使っている打鉄は競技用のリミッターが掛けられている。ここまでバーンスマッシュの攻撃力が高いのなら、絶対防御も塵に等しいかもしれない。
そんな事を悟らせるほどにまで、このバーンスマッシュの異常性は彼女に伝わった。ゆっくりと振り返るバーンスマッシュに小さく「ヒッ」と悲鳴を上げ、足を震わせながら後退る。次いで折れたブレードを捨ててアサルトライフルを再度撃つが、丸焼きにされた仲間の姿を脳裏にチラつかせてしまい恐怖心に駆られる。全弾撃ち終わり、命中した弾丸全てが有効打にならなかった後も、リロードを忘れて引き金をずっと引き続ける。
「ヤダ……ヤダ……近寄らないで!」
そして後ろを向き、バーニアを吹かす彼女だったが、それをバーンスマッシュが許さなかった。ビームと形容するのに等しい直線状の青い炎を片手間で撃ったと思いきや、見事打鉄のバーニアを熔融させる。
結果、メインの推力源を失った彼女は空への逃亡に失敗した。垣根の高さもない中途半端な位置で宙に溺れるように浮かび、すっかり恐慌状態に陥った。バーンスマッシュの二つのバーナー口が不気味に揺らめき、打鉄に向かって迸る。
「イヤァァァァァァァ!!」
攻撃が効かない。仲間がやられた。逃げ切れない。目をギュッと閉じた彼女は悲鳴を上げ、恐怖に堪えずに自身の肩を強く抱く。
すると、霧ワープしてきたナイトローグが両者の間に割って入ってきた。流石に火炎放射までは止められず、自分よりも一回り大きな打鉄を抱き抱えた直後に翼を展開。それをマントのように全身を覆わせ、相手の攻撃から身を守ろうとする。
バーナーから放たれた炎の規模は、そこらにあるガソリンスタンドの爆発四散など可愛く見えるものだった。むしろ火災旋風と呼ぶのが正しく、二人を飲み込んだ炎は空高く天へと昇っていく。
バーンスマッシュが放火を止めた後も、火災旋風は一向に消える気配はない。中に捕えている人間を完全かつ徹底的焼き殺さんと状態を維持され、その場から立ち去っていくバーンスマッシュはほくそ笑む。追撃の手がなくなった事による余裕から、今度のバーナーで飛ぶ時の速度は最初よりもゆったりとしていた。
Q.バーンハザードスマッシュ…だと…?
A.厳密には、天然由来(排出率0.1%未満)のボトル無しハザードスマッシュです。攻撃力だけならクローンスマッシュの領域に片足突っ込んでいます。
また、ローリングツインバスターライフルの真似ができる模様。キャッスルハザードスマッシュのビル薙ぎ払いビームと張り合えます。
それと、スマッシュ化耐性があってもロストボトル使えばいいなら、通常スマッシュが自力でレベル上げするという奇跡にも近い裏技とかあってもいいと思います。
天然当てたいなら回し続けるか、リセマラしましょう(外道)
お金(ネビュラガス)さえあれば
Q,親が子供殺すのかよぉっ!?
A.親だから……殺すんだよ……(用途と状況が違う)