ナイトローグの再評価を目指す話   作:erif tellab

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「前回までのナイトローグ。マッドローグもどきをIS学園へと連れてきた日室弦人。スマッシュ出現だけに留まらない非常事態の中、鏡ナギや京水、一夏たちが着実に集まり、織斑先生の元でブリーフィングが開かれる。そこで乱入してきたのは天災科学者、篠ノ之束であった」

「俺も束さんの乱入にはびっくりしたぜ。しかも大怪我した状態なんて初めて見た」

「そうなんだ。ナイトローグ的にはフルボトルの件が気になるが……。一夏、試しに『ユニコーン!』って叫んでみてくれ」

「なんだよ弦人、急に振ってきて。ユニコーン? そう言えば、なんで消しゴムとユニコーンなんだろうな」

「一角消去ユニレイサーだからだよ! ほら、Harry! Harry!」

「あーもう、わかったわかった。行くぞ……スゥ……ユニ(ry 」






開幕のベルが鳴る

 気を取り直して織斑先生の話が再開される作戦室。急所を打たれた束博士はしばらくの間は悶絶し、たちまち復活すれば織斑先生の眼光に萎縮して自ずから正座する有り様。織斑先生からフルボトル等の件に触れるまで、口にチャックをしていた。俺たちも黙っていた。

 束博士から譲り受けたUSBメモリを端末に挿せば、次々に割れていく最上の隠れ家の数々。中には亡国企業とかいうテロリストの拠点もとばっちりで束博士に殲滅されたようで、日本の至るところでバツ印が刻まれている。

 さらにダメ押しとして、GPSを利用した最上の位置情報の把握。さすがは天災と言われるだけが、ここまでできたのなら最上の追撃を単独でしていても良いはずである。だとすると、あの怪我は……。

 

「――そして、このフルボトルの事だが……」

 

「ハイハイ、待ってましたちーちゃん! 説明させて!」

 

 ようやく話題が変わると、束博士は目の色を変えて立ち上がる。その変わり身の速さに織斑先生は溜め息をつきつつも、軽い手の仕草だけで発言許可を示した。

 

「ジャジャーン♪ 消しゴムフルボトルとユニコーンフルボトル〜。ナイトローグとかもっくんのを参考に独学で完成させたけど、どうして消しゴムとユニコーンになったのかは束さんでも意味不明なのだよ。えっへん」

 

「胸を張る事か」

 

「ちーちゃん焦らない焦らない。スゴイのはここからだよ。なんと!! このフルボトル!! 白式に二本同時で挿せばとんでもなく強化されるのだ〜!! やったね、いっくん! 今よりもっと強くなれるよ!」

 

「え……?」

 

 二本……挿し……? まさかの発言に一夏は間の抜けた声を出す。それもそうだ。白式にフルボトル二本を挿すなんて、俺も耳を疑った。直挿しはハード系列のスマッシュに変身する印象として強すぎる。

 

「んでこの映像見て。フルボトル挿した後のビフォーアフター。ここじゃ狭すぎるから出来ないけど、ホラ。外見とサイズがこんなにも変わるよ?」

 

 続けて立体型ディスプレイの操作を行う束博士。指し示されるのは今の白式の姿と、変身後とされる新たな姿だ。

 変身後の白式は全身装甲と化し、身長は二メートル以下まで小型化を果たしている。ウィングスラスターや近接ブレード、左腕の複合盾(ツインブレイカー感が強くなっている)は健在だが、ほぼ疑似ライダーと呼んでも差し支えないだろう。顔にはライダーらしい複眼があり、まるで羽根のついた兜を被っているようだ。

 また、フルボトルの装填部位は左腕部。イメージはビルドジーニアスの腕デザインだ。

 

「これって……どこかで……」

 

 その二つを見比べた一夏はぼそっと呟く。俺はこの姿を見て、同じ疑似ライダーであるオルタナティブを連想した。オルタナティブっぽいと言うには、余りにも純白すぎるが。

 

「姉さん、このアフターの姿……白騎士では?」

 

「いいね、箒ちゃん。スゴクいい。でも白騎士とは全然レベルが違うんだ。左腕部にスロットされる二本のボトルと、左手甲には据え置きの複合兵装《ツインブレイカー》。雪羅みたいにビームシールド張ったりビーム撃ったりする他にも、レイジングピーマーの操作でナックルに! さらにツインブレイカーにボトルをセットすれば、ボトルに応じた特殊攻撃が可能!! さらにさらにっ!!」

 

 箒さんの質問でさらに気を良くした束博士は、どんどんテンションを上げながら説明をしていく。遂にツインブレイカーと言ってしまったか……。だが野暮な事は言わないでおこう。

 白騎士。全てのISの始まり。不思議な事に、フルボトルを直挿しするISとしての第一号たる白式は、教科書などに載っている白騎士の姿とびっくりするほど似ていた。

 

「フルボトルの力で、攻撃用エネルギーと防御・活動用エネルギーがそれぞれ独立! シールドエネルギーがゼロになっても戦闘続行可能! すなわち、エネルギー切れを気にする事なく零落白夜とかが常時使えるのだ〜!! うーん、清々しくチートだね!!」

 

「マ、マジか……」

 

 その決定的な一言に強い衝撃を受ける一夏。自分からチートだと認めた束博士には、俺は呆れを通り越して声も出ない。サラリと問題解決できる科学者が少し身の回りに多いのではないだろうか。

 すると、ここまで黙って拝聴していた織斑先生が、顔をしかめさせながら束博士に尋ねる。

 

「待て、束。ボトルの直挿しだと? 中身には恐らくネビュラガスを浄化したものを詰め込んでいるのだろうが、IS越しでもとても無事に済むとは到底思えんな。日室たちのトランスチームシステムとは違いすぎる」

 

「心配ご無用! この前、白式を見せてもらったでしょ? その時のデータで消しゴムとユニコーンの相性がいい事もわかってるし、ネビュラガスを浴びたスマッシュ化とも違う。厳密に言うなら、ネビュラガス浴びてなくても変身できる安心安全のISハーフスマッシュってところかなー? でも機体特性はISから逸れないし、素でボトルの力も引き出せる。

 あっ、シールドエネルギーゼロになっても戦えるって言ったけど、その状態で大ダメージ受けたら強制変身解除に大怪我ね。そこからは物理的防御に依存してるから。核シェルター並みの防御力だけど」

 

 その回答に織斑先生は釈然としていない様子だったが、じっと束博士を見つめても相手は顔色一つ変えない。渋々といった感じで引き下がり、また溜め息をつく。

 確かに見方次第では、一夏がれっきとした実験台である。デメリット無しというところが逆に胡散臭く、信用できなく感じてしまうところもある。だが、相手は何やかんやで天災と謳われるほどの科学者。このタイミングで絶対的な戦力増強を見込めるなら、リスクの一つや二つは飲むしかない。

 それから「はい、いっくん」と束博士にフルボトル二本を渡される一夏。半信半疑といった感じだが、満更でもなさそうな気持ちが顔に薄っすらと出ている。ISハーフスマッシュとやらの仕様が魅力的であるのは、俺も内心認めざるを得なかった。本来ならこういった武装転用はあまり望ましくないと、わかっているとしても。

 

「これがあれば……。あっ、束さん。シャルや箒たちの分はないんですか?」

 

 ハッとしたかのように、一夏はボトルから視線を上げて彼女にそう聞く。しかし、当の本人は悪びれる様子のない表情で頭を下げた。

 

「ごめんね〜、二本作るだけで必要な資材使い切っちゃたんだ☆ 試作一号かつ完成品とでも言うべきだし、確保できたネビュラガスも元々少なかったし……そうだ! ナイトローグ〜、デビルスチームでネビュラガス分けてちょーだい♪」

 

 思い立ったが吉日と言うが、なんて頼み事だ!? しかもいつの間にか、俺に対する態度もやや軟化しているッ!

 勿論、そんな恐ろしい願いを叶えてやるつもりは毛頭ない。このフリーダムに生きる人は、フリーダムすぎる故に科学者としての当たり前の責任――ISを作った責任を半ば放棄している気がする。例え俺がデビルスチームを使う時があるとしても、こんな人にはおいそれとネビュラガスを一ミリリットルたりとも渡せやしなかった。

 

「だが断る」

 

「何っ!? じゃあ――」

 

「だが断る! この鏡ナギの最も好きな事の一つは、自分より強いと思ってる奴にNOと断ってやる事だ!」

 

「右に同じく! ワタシ、スチームブレード持ってないけど!」

 

「ウ~ン、ジョジョ立ちぃ〜っ!! まぁいっか」

 

 悔しがる素振りを見せるかと思いきや、束博士は意外にも簡単に諦めた。その手応えのなさにうっかり肩透かしを食らう。

 そんなこんなで、とんでもない事を言い出した束博士は直後に織斑先生から制裁のグリグリ攻撃をもらった。一応、頭部の負傷を考慮して手加減をしている模様。……ん?

 

「弦人ちゃん?」

 

 咄嗟にトランスチームガンとバットフルボトルを取り出した俺を訝しむ京水。だが、悠長に説明している場合ではなかった。

 何故なら、ディスプレイの端に示されている最上の現在位置が、まるでワープしたかのようにIS学園まで到達していたから――

 

「来た……!」

 

 《Bat . Mist match!》

 

 《Bat, ba, bat. Fire!》

 

 スパークは散らさない省エネ変身。視界の中で、激しくブレる赤い残像を目にする。ものすごく嫌な予感しかしないが、近くにはデュノアさんと谷本さん、ロットロがいた。俺以外、赤い残像の出現に気付けていない。

 ナイトローグに変身し、とにかく一気に駆ける。デュノアさんたちの頭上を飛び越え、人の形になりかける赤い残像の顔面へと蹴りを入れる。だが――

 

「うっ!?」

 

 蹴りは空振りに終わり、瞬時に俺の背後を取った残像は容赦ない肘鉄を一発かます。それだけで吹き飛ばされた俺の身体は作戦室の壁を破り、盛大に廊下へと転がり落ちた。

 

「んーっ!!」

 

「フシャァーッ!!」

 

 くぐもった声をする谷本さんと、威嚇するロットロの声。急いで見てみれば、彼女の口を押さえて捕まえているバイカイザーの姿があった。

 瞬時にスライム状へと変化したロットロは谷本さんに憑依し、マッドローグもどきとなる。間髪入れずに俺もバイカイザーに立ち向かうが、間に合わない。

 

「フン……」

 

 バイカイザーが鼻で笑ったかと思いきや、次の瞬間にはマッドローグもどきと一緒に姿を消してしまった。唯一俺が捉える事ができたのは、やはり赤い残像のみ。谷本さんがいた場所に残っていたのは、ヒラヒラと床に落ちていく一枚の手紙だけだった。

 

「くそっ! やられた……!!」

 

「束!!」

 

「わかってるよ、ちーちゃん。ほほいのほいと」

 

 織斑先生の一声で、切り替えた束博士は端末を操作。片手となっても凄まじい速度のタイピングで、忙しなく映像を変えていく。

 

「ごめん弦人。僕、一番近くにいたのに……!!」

 

「いや、あれは無理もない。それよりもコレは……」

 

 歯を食い縛らせたデュノアさんが、申し訳なさそうに謝ってくる。周囲に目を回せば、何が起こったのか理解できていない面子がほとんどだった。

 デュノアさんの謝罪をやんわりと聞いた俺は、次にこの謎の手紙を拾う。すると手紙は独りでに変形し、最上魁星の声を再生した。

 

『拝啓、諸君。この度、エニグマのリニューアルを記念して、君たちをこの機動要塞に招待しようかと思う。内部構造がわからなければ、ナイトローグによる直接ワープ侵入も不可能だろう。誰か一人を攫えば、君たちが招待を断らない理由付けにもなる。こちらも大量の戦力を用意して待っていよう』

 

 内容はそれだけ。最後にエニグマらしきヒトの手の形をした人工物をホログラフで示せば、とりとめもなく手紙は静かに焼失していく。

 

「これはアメリカの空母打撃群か? いや、真ん中にいるヤツが奇妙だ」

 

「あれがもっくんの言うエニグマっぽいね。艦の間に繋がれている赤い光は……もしかして操ってるのかな? うわー、だとしたらIS以外で真正面から艦隊の弾幕突っ切るの難しいね、こりゃ。数百キロ先からいつでもミサイルで一発KOされかねないよ、IS学園」

 

 その一方で、目の前のディスプレイと向き合っている大人二人。後ろから画面を覗いてみれば、幾つもの映像が飛び出てくる。衛生写真だけでなく、一体どうやって撮っているのかが不思議なアングルでの艦隊航行映像もある。映っている限り、何やら色々な艦のブリッジが軒並みやられているようだった。

 

「第一種戦闘配備! これをIS学園に対する攻撃と認定! 専用機持ちは出撃準備急げ!」

 

 織斑先生の号令の元、戦いの火蓋が切って落とされる。

 

 




Q.白式ハーフスマッシュ(以下、白式HS)

A.普通に考えて試合だと禁止指定される代物です。疑似ライダーのポジションなので、スペックが必然的に高くなりました。ビルドライダー並みに。



以下、スペックとか

・雪片弍型改
滅多に壊れないライダーウェポン並みの耐久力をゲット。ビームサーベルの仕組みは威力向上のため、レーザー系から粒子固めた系に変化。つまり鍔迫り合い可能

・雪羅(半分ツインブレイカー)
ツインブレイカーの能力そのまま追加。バリア、ビーム砲、ナックルと化する

・専用フルボトル《消しゴム》、《ユニコーン》
ツインブレイカーに挿さずとも、ある程度のスマッシュとしての能力を使用可能。消しゴムの能力はグリスが披露した通り。

・ライダーバトルの領域にようやく入門(丸腰での殴り合い)

・キバの鎧と同じく核爆発に耐えうる

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