ナイトローグの再評価を目指す話   作:erif tellab

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「前回までのあらすじ! 分断されたシャルロット・ナギペア! 割りと殺意高めの通路に転移してしまうが、迫り来る敵をそつなく撃破! やはり俺の作ったブラッドスタークの出来は上々だ! これを誰かに説明したい……邪魔される事なく説明したい!」

「あーん、クマちゃん逃げないでよー!」

「クマクマうるせぇー!! いい加減ブチ切れるぞゴラァーっ!!」シャカシャカ

コオロギ サイコロ ロストマッチ!

「俺のジェットスライガーのプレゼン邪魔するとか、篠ノ之束ぜってぇ許さねぇ! お前はディナー! 俺のディナー!」

「あっ、スマッシュだ」

「Kisyaaaaaaaa!!」

「「邪魔ぁ!!」」

「Abaaaa!?」

なんやかんやで戦いには参加している二人の図。ベアッガイ軍団も参戦済。



切り裂け、白の騎士

 およそ外からの砲撃などの被害が届かないであろう、エニグマ中枢部付近。最上魁星印の空間圧縮技術により、その区画には一通りの生活環境はおろか、工業施設まで完備している。

 ここで活動しているのは、警備服仕様のガーディアンたちであった。住居区画にいる人間など皆無に等しいが、安定した警備に当たらせるのであればスマッシュよりも有用な存在となる。その他のセキュリティも完備しており、下手な軍事施設より守りが固い。

 そして中枢部付近が唯一、エニグマの構造変化が効かない場所でもある。現在進行形でエニグマは白いパンドラボックスの力によって魔改造の真っ最中だが、核や心臓、脳といった貴重な部位は容易に変化させるのが困難なもの。また、外部からの侵入阻止をまず優先しているのも理由の一つだ。

 

 そんな中、明らかに挙動がおかしいガーディアンが一体、廊下を歩いていく。素人からしてみれば違いはわからずとも、機械に詳しい人間なら何かしらの違和感を覚えるのは確実。それでも、怪しまれないように極力成り済ましている様子ではある。

 その不審ガーディアンが行く先には、独房が存在する。設置されている監視カメラには臆せず堂々と進み、入り口の前で警備している門番のガーディアンの横を素通りしていく。

 

「……」

 

 すると、門番に肩をガシッと掴まれた。それから頭部の無機質な視線が交差し、しばらくの間静寂が続く。

 その後、肩に置かれた門番の手を機械的な動作で振り払った不審ガーディアンは、遂に独房へと続くドアを勝手に開けた。これに門番はすかさず、持っていたセーフガードライフルの銃口を不審ガーディアンに突き付ける。

 

「……!」

 

 驚いた不審ガーディアンは動きを止め、門番を凝視し始める。しかし、いつまで経っても門番は銃を下げてくれない。試しにドアを閉めてみると銃は下げられるが、もう一度開ければ同じ事が繰り返される。

 これで物事は並行線となった。繰り返しの作業については門番は別に苦とも思わない訳だが、一方で不審ガーディアンは全く違う。まるで門番を挑発するかのようにドアの開閉をひたすら連続して行い、されども無駄だと悟ればグッと握る拳の力が強くなる。それは単純な機械には見られない、実に人間味のある素振りだ。

 

 バゴォッ!!

 

 そのため、いつの間にかフルボトルを手にした拳で門番を殴り倒しても、大して驚かれるような出来事ではなかった。突然殴られた門番は即座に戦闘態勢へ移るものの、不審ガーディアンにライフルを奪われては銃剣で頭部を一閃。銃剣の適していない技で、頭部はあっさり斬り裂かれた。

 半分になった頭と共にボディは崩れ落ち、損傷箇所からスパークが散る。

 

「斬鉄……遂にできてしまった……」

 

 それから、とうとう言葉を漏らした不審ガーディアンは独房エリアへと進んでいった。奪ったライフルを両手持ちで、そそくさと早歩きする。中には他のガーディアンが見当たらなかった。

 なら都合が良いと言わんばかりに、不審ガーディアンの動きが良くなった。使われていない独房は次々とスルーしていき、鍵が掛けられている部屋を探していく。

 

「もしもーし、誰かいますかー? ドアバンしますねー?」

 

 目当ての部屋を見つけるや否や、スライド式のドアをうるさく叩く不審ガーディアン。程なくして、中から「だ、誰!?」と慌てふためく声が出てきた。

「ビンゴ!」と心の中で叫んだ不審ガーディアンは、ゼロ距離からライフルで施錠部分を撃ち抜き、破壊する。中で悲鳴が飛んだとしてもお構いなし。ドアを突破すると、ズケズケと独房内へ入っていった。

 

「ひぇ……!」

 

 独房――と言ってもスイートルーム並みの豪華さ――にいたのは、赤みがかった黒髪にバンダナを着けていた少女だった。少女は武装している不審ガーディアンを目にして怯えている。逃げ場はどこにもなく、武器になりそうなものも近くにはない。壁の端まで逃げ惑い、青ざめる。

 しかし――

 

「あっ、ごめん。仮面外すわ」

 

「え?」

 

 そう言って不審ガーディアンはおもむろに頭部を外す。晒された素顔と聞き覚えのある彼の声に、少女はふと呆けてしまった。

 

「か、数馬さん?」

 

「どうも、弾妹。数馬です。助けに来たから準備よろしく」

 

 不審ガーディアンの正体は、御手洗数馬だった。少女の名は、弾の妹である蘭。予想だにしなかった助っ人の登場に、彼女は思わず話に食い付いた。

 

「助け!? 本当ですか!?」

 

「ああ。弾から聞いた話だとおじさんおばさんたちも捕まってんだろ? このバカ広い部屋にいないの?」

 

「はい! 多分、私とは別々の部屋に。あの、ところでバ……兄さんは?」

 

「俺とは別行動。詳しい話は後でしようぜ。こちとら急いで脱出したい気分なんだ。ここだとワープもできんし。荷物は?」

 

「ありません」

 

「よし。じゃあ次は親御さんたちの独房を訪問しよう。着いてきな」

 

 蘭にとっては緊迫した状況であるのに、あまりにも平然としていられる数馬の様子に彼女は戸惑いを隠し切れない。だが、その普通ではない雰囲気が逆に、この状況下において頼り甲斐があるように感じた。本物のライフルを持った数馬におずおずとしながらも、意を決して彼の後ろを着いていく。

 廊下に出た二人は、周囲に誰もいないとわかって一安心する。警報の類も作動していない。

 次に駆け足で移動し、前方を数馬が走る。ライフルの持ち方は、武器に関して詳しくない蘭にも上手だと印象を与えるものだった。

 

「あの、数馬さん」

 

「何?」

 

 突然、彼に言葉を投げ掛ける蘭。数馬も素っ気なく返事をしながら、彼女の言葉に耳を傾ける。

 

「さっきの明るさ、以前の兄さんみたいでした。今じゃ落ち着いているけど、雰囲気が入れ替わったような……数馬さんもこんな感じじゃなかったですよね? 気付いたら宇都宮に飛ばされたりもするし……いえ、そもそもなんで数馬さんがこんなところに……」

 

「……」

 

 数馬は黙ったまま答えない。やがて施錠された独房の前に到着すると、重々しく口を開いた。

 

「……それは、生きて帰ってからで。もしもーし! 誰かいませんかー! 私メリーです! ドアバンしに来ましたー!」

 

 そして誤魔化すかのように、目の前の事に集中した。

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 IS学園のアリーナを模した決闘広場に、リモコンブロスは静かに佇む。そこにやって来たのは、ピットから姿を表す一夏だった。

 

「弾……」

 

 このエリアに飛ばされた突入チームは一夏のみ。彼がリモコンブロスを見つけると早速、会話を試みる。

 しかし、リモコンブロスの返答は言葉ではなく銃撃だった。百メートル以上先からネビュラスチームガンを数発撃ち、一夏はそれを避けて広場に降りた。

 

「弾、話の一つや二つぐらい待てよ!」

 

「語る舌は持たない」

 

「それって余裕がないからか!? 実力差の話じゃない。もっとこう精神的に追い込まれたり、誰かを人質に取られたり!!」

 

 一夏がそう言い放った瞬間だけ、銃撃が止む。程なくして連射が再開され、戦闘ではなく会話をしたい一夏はひたすら回避に徹した。

 

「だったらどうする」

 

 《フルボトル! ファンキーアタック!》

 

 リモコンブロスは淡々とフルボトルをネビュラスチームガンに装填。引き金を引けば、銃口から一発の誘導ロケット弾が放たれた。

 さっと雪片弍型を構えて斬り払いの姿勢を示す一夏だが、ロケット弾がたちまち子弾をばら撒くのを見て即座に横へとステップ。それから大量の散弾が追尾してくるのを把握し、大きく空中を舞って全弾をかわしきった。当たらなかった爆発物は全て、役目を果たせなかったミサイルのように失速しては自爆する。

 

 直後、リモコンブロスは中身の成分が無くなったフルボトルを捨てた。もう片方の手で静かにスチームブレードを構え、急接近してきた一夏の斬撃を受け止める。

 振り落とされた雪片弍型は十分な威力と加速が込められていた。思わずリモコンブロスはスチームブレードの峰部分をネビュラスチームガンの持ち手で支え、しっかりと地に足を着けて踏ん張る。

 

「親友が困ってたら力になりたいと思うのは普通だろ! くだらない事は抜きにして!」

 

 そう叫ぶ一夏は反撃の暇を与えまいと、立て続けに剣を繰り出していく。巧みにホバリングを駆使し、アドバンテージであるリーチを活かす。並みの歩術では不可能な動きで、どんどん相手の死角を突く。

 だが、対するリモコンブロスは己の身体一つでことごとく一夏の攻撃を避け続けた。距離を離そうと踏むステップは、高速ホバリングする白式の速度と容易に並び、何よりも被弾面積が小さい。彼の滑らかな身体捌きも相まって、回避率は格段に高くなっていた。

 

「絶対にあり得ないはずなんだ! お前がナイトローグと同じ、ISのバリエーション機を使ってるなんて! 絶対に何かあったに違いないって!! IS適性のある俺と違って、普通の人間なんだから!!」

 

 一夏の断言が辺りに木霊する。そして、渾身の上段斬りを――スチームブレードで受け流された。

 間髪入れずに跳躍したリモコンブロスは、一夏の顔面を二、三度蹴っては刺突を繰り出した。圧倒的な怪力によって白式は後ろに転がり飛ばされ、受け身を取って起き上がるまでネビュラスチームガンの光弾を数発受ける。その後、何食わぬ顔で立ち上がるとリモコンブロスの銃撃を次々と斬り払った。

 ひとたびリモコンブロスがネビュラスチームガンを下げると、二人の間はたちまち嫌な静寂に包まれる。しばらく睨み合い、リモコンブロスの方から口を開く。

 

「……もっともな推察だな。だが、コレをISだと勘違いしているのが聞いてて笑える。絶対防御とか、搭乗者保護とか、カイザーシステムはそんな親切なものじゃない」

 

「何?」

 

「一夏、いきなり日常であり得ない出来事が起きたらどうする? 悪霊に祟られたとか、一度死んで蘇ったとか。それを信じる人間なんてそうそういない。荒唐無稽だからだ。現に街でスマッシュが出た時、誰かが実際に殺されるまでコスプレか何かだと誰もが信じて疑わなかった。俺はその一部始終を見たぜ。空想と現実の線引きが強すぎたんだ。殺された人の危機感が薄かったのも無理はない。呑気にスマホで写真を撮ってて……」

 

 ようやく向こうから語り掛けられ、一夏はリモコンブロスの動向に注意しながら話を聞く。一度息継ぎを挟んだリモコンブロスは若干、俯いた。

 その仕草と言葉に、彼の心を推し測った一夏の表情に少しだけ曇りが浮かぶ。戦闘中に雑念など命取りではあるが、隠し事をしていた友人がようやく打ち明けてくれるのだ。否応なく余計に多く考えてしまう。

 それも束の間、スチームブレードを仕舞ったリモコンブロスは、代わりにギアを手にしていた。白い歯車が埋め込まれている。

 

「そして、名探偵コナンよろしく背後から黒の組織の一員に殴られて気絶したなんて、どうして信じられる? 例えお前に打ち明けても無駄になるくらいなら……」

 

 《Gear engine!》

 

 おもむろにギアエンジンをセットするリモコンブロスの姿を見て、一夏は唇を噛んだ。表情も険しくなり、先程の彼の言葉が嘘ではないと直感で認識する。悔しいという思いが、胸中を占めた。

 そして、銃口を自身に向けて引き金を引かれるや否や、次なる攻撃に備えた。だが、それは予想していたものとは違っていたと後で思い知る事になる。

 

「潤動」

 

 《ファンキーマッチ! フィーバー!》

 

 ネビュラスチームガンから音声と共に大量の黒煙がリモコンブロスの身体を包み込んだ。併せて白い歯車と青い歯車のエネルギー体が黒煙の中で連動を始め、激しい火花を散らす。それらがリモコンブロスと合体するまで、秒にも満たない。

 

 《Perfect!》

 

 やがて黒煙は霧散し、前とは全く異なる戦士の推参に一夏は面食らう。全力で回転する歯車たちは止まり、ボディだけでなく左右対称となったバイザー光を揺らめかせた。

 

 ――参上、ヘルブロス。驚きと動揺を隠せない一夏に、彼は冷たく告げる。

 

「――結局、自力でどうにかするしかない。一夏、悪い事は言わないから今すぐ帰れ。邪魔だ」

 

「帰れと言われて、素直に頷くと思ってるのかよ……!!」

 

「いいや」

 

 歯軋りして答える一夏と、冷静に佇むヘルブロス。刹那、瞬時加速を以って両者は激突した。

 

「ガハッ……!?」

 

 懐に潜り込まれた一夏の腹部に、ヘルブロスの拳が突き刺さる。絶対防御が致命傷を防いでくれるが、殴られる衝撃まで削り切れない。雪片弍型は敢えなく届かず、膝が地面に着きそうになった。

 ヘルブロスもまた、それを黙って見ているタチではなかった。嗚咽を漏らし、蹲りたい身体を必死に鞭打つ一夏を容赦なく殴り続ける。

 一夏を上空へと蹴り上げ、ジャンプ。両拳で握った鉄槌打ちを行うが寸手でかわされ、白式は空中で姿勢制御。すかさず回転斬りしてくるものの、その場に滞空したヘルブロスにいとも容易く切っ先を握られる。ヘルブロスが空を飛ぶのに、既に外付けのスラスターは必要なくなっていた。

 

 このままでは折られてしまうと感じた一夏は次いで、雪羅を撃ち込む。強力無比であるはずの荷電粒子砲は、軽々と片手で防がれた。

 

「ハァ!!」

 

 それを目の当たりにして絶句する暇もなく、一夏は大きく蹴り飛ばされた。次の瞬間には背後にヘルブロスが超スピードで回り込み、再び蹴り飛ばされる。

 そうして遂に真上から背中にロケットキックを決められ、押し込まれる形でそのまま地面と衝突した。地面には大きなクレーターが瞬時に出来上がり、崩落する土砂の中に白式が置き去りにされる。ボロボロの姿で一夏が出てくるのは数秒後だった。

 一方でヘルブロスは、全く手を休めなかった。クレーターの前で待っていた彼はボディから四枚の歯車を外し、エネルギーを滞留させた状態でそれらを宙に浮かべさせる。

 

「エネルギーを打ち消す白式のワンオフアビリティは面倒だ。だから――」

 

 そう言ってヘルブロスが睨むのは、肩で息をしながらヨロヨロと剣を構える一夏。闘志は消えていないが、尋常ではないダメージの蓄積で満身創痍だ。既にシールドエネルギーの容量も底を尽きかけている。

 されども、それがヘルブロスの手加減する理由にすらならない。むしろ徹底したダメ押しを実行し、明確な敵意を一夏にぶつけた。

 

「――実体物をぶちかますッ!!」

 

 前に出される両腕の動きに従って、射出される白と青の歯車たち。実体であるそれらは回避の余裕がない一夏には斬り捨てる他なく、最後の抵抗も虚しく全てをその身に受けてしまう。

 

「ぐああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 大爆発を起こし、悲鳴が上がる。機体は遥か後方の壁まで吹き飛び、勢い良く叩き付けられた。射出された歯車がヘルブロスの元へ戻ると同時に、一夏は地面にゆっくりと倒れる。その際、エネルギー切れを起こした白式は粒子化して消えていった。

 

「ハァ……ハァ……」

 

 苦しげに身体を起こそうとする一夏に、ヘルブロスは「勝負あったな」と呟く。それ以上は彼に攻撃する意思はなく、そそくさと広場から立ち去ろうとした。

 すると、ふと一夏が笑い声を上げ始めた。散々にまで打ちのめされたにも関わらず、笑いが溢れるなど妙に狂気染みている。

 

「ハハ……アハハハハ……アハハッ!!」

 

 徐々に気になり始めたヘルブロスは、足を止めて何気なく振り返った。「壊れたか?」と考えるのも束の間、顔を上げた一夏は二本のフルボトルを手にする。消しゴムとユニコーンのボトルだ。

 

「変わっちまったよなぁ、弾。最近まではバカって感じだったのに、気づけば落ち着いてる。クールでカッコイイと思うぜ、高校デビューか?」

 

 途端に軽口を叩く一夏からヘルブロスは視線を外さない。彼が特段に注視するのは、一夏の持つフルボトルだった。フルボトルがどういう代物かは、一夏よりもずっと理解していた。

 やがて一夏はフルボトルの蓋を開け、すっと息を整える。崩壊しかける涙腺を堪え、心を落ち着かせる。ヘルブロスとの間に随分と深い溝ができてしまったとしみじみに実感するのも程々にし、悲しみや絶望を打ち払う。

 代わりに胸の内に宿すのは不屈の意志と諦めないひたむきさ。覚悟を決めた一夏の瞳には、ヘルブロスが息を飲むほどの凄みを帯びていた。

 

「弾、戦わなくちゃいけないって言うなら俺も同じだ。仲間が傷付けられて、黙って見過ごす訳にはいかない」

 

「やめろ。何をする気だ?」

 

 ヘルブロスの制止を一夏は聞かない。それは逆に、彼をほっとさせた。

 

「心配してくれてるのか? だったら嬉しいけど……さぁ!!」

 

 残り僅かなシールドエネルギーで部分展開できたのは、白式の左手だけだった。手の甲にフルボトルを突き刺し、ボトルの成分内容を示す光の刻印が二つ浮かび上がる。

 

 《ユニコーン! イレイサー!》

 

 その時、一夏は光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一夏。これはどの兵器にも言える事だが、まだ試運転も信頼性も証明していないそのフルボトルを極力使うな。例え束が作ったものだとしても、細心の注意を払っておくに越した事はない。それに頼った結果死ぬのは洒落にならんからな。わかったな?』

 

 

 フルボトルを挿した瞬間、千冬に言われた事を思い出す。そんなのは当然だと端から理解していたし、クラス代表決定戦のように生易しいぶっつけ本番が許される訳でもない。命を賭けるのだから当然だ。それならむしろ、慎重に慎重を重ねてから覚悟する方が望ましい。

 そして、今がその時だった。ヘルブロスには完全にパワー負けし、一矢報いる事すら叶わない。これでは仲間を守るなど、口先だけで終わってしまう。

 

 未知のものを使うなという千冬の言葉は一般論としてもっともであり、実の姉として我が身を案じてくれているとも受け取れる。ただでさえIS学園側は短期決戦の余裕しかないのだから、立場が上の彼女にとって完全防衛と生徒救出の両立をしなければならないのは、どれほど面倒で大変なのか。大人の都合が現場に無理難題を押し付け、非情な現実が生徒を動員しないという選択肢を潰していく。

 この場合は、学園陥落阻止が絶対条件だった。欲をかけば、無傷に済ませる。そして、防衛戦開始直後に明らかになった単純な戦力比はおよそ15:1。普通に考えて、援軍もなしに守り切るのは不可能である。ISがなければ防衛など成立し得ない。

 

 今頃、千冬も予備の訓練機で出撃しているであろう。人質救出に千冬が直々に向かうのも一つの手で確実性は高いが、世界最強の称号を持つ人間が防衛ラインで鼓舞している方が味方全体の士気は下がらない。帰る場所を守っていると考えると、不思議と心強かった。

 だからこそ、ここで倒れて姉を悲しませるのは死んでも免れたかった。僅かでも成功率を上げるために、私情を抜きにしてポテンシャルの高い専用機組を突入チームに起用させたのだ。教師ではなく生徒。大人ではなく子ども。言われずとも伝わっている彼女の思いは裏切れない。分断された仲間たちも、どこかで戦っている。

 

(ごめん、千冬姉。でも俺、男だからさ。譲れないものの一つや二つあるんだ)

 

 心の中で千冬に謝り、己を包む暖かい光がやがて終息していく。ゆっくりと瞼を開いた一夏は、最初に自身の状態を確認した。トランスチームやカイザーシステムの戦士たちと同じように、白式の面影が残っているレベルまで形状が変化していた。

 スマッシュ化の完了。しかし、本来の変化とは異なるアプローチで、上位存在である白式ハーフスマッシュへと至った。変身者の自我と意識は保ったまま。手のひらを何度も閉じ開きし、蒼玉の複眼をヘルブロスに向ける。

 

「弾、これだけは言えるぜ。ネビュラスチームガンを見せてくれれば、少なくともお前の話は信じられたって」

 

 通常のスマッシュでは考えられない白式HSの流暢な言葉に、ヘルブロスは驚く。そして、地を駆けた二人はそれぞれの拳を真正面からぶつけ合った。激突した拳同士から、二人の周囲にブワッと衝撃波が走る。

 

「スマッシュみたいな姿で自我があるのか、一夏!?」

 

「第二ラウンドだ!! 俺はまだ負けてない!!」

 

 疑問を口にするヘルブロスに対して、白式HSは啖呵を切った。単純な力勝負で負ける事なく、そのまま互いに激しく殴り合う。もはや殺し合いにも等しい過激さだが、この二人の意地の張り合いはもう収まりが付かない。どちらかが倒れるまで、とことん拳を交わす――

 

 

 






Q.ヘルブロス

A.スペックはそのまま。むしろバイカイザーがそれより強めに設定されている感じ。


Q.その頃の葛城女史

プロトビルド(ペリカン+プラズマ)「ミラージュ、ガイスト、サイブレード、フェンリル、ゴーストチェイサー、マスターレイビア、イクシオン、ダイナスト、サンダーボウ、イズナー、グローム、プラズマランチャー、アルマゲドンクラスター」

スマッシュ「Gyaaaaaa!?」


柱の上に突っ立ち、思念誘導するビーム兵器とかをひたすら連射するプロトビルドの図。狙われたスマッシュはビームのお手玉されて爆発四散する。


なお、アルマゲドンクラスターで海が一時的に燃えた模様。その際、使い勝手の悪さから盛大に自爆してしまい、何事もなかったかのようにケロリと立ち上がるが二度と使わないと心の中で誓った。あと、千冬に怒られた。

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