「おい戦兎! なんであそこにお前がいるんだよ!? しかも言ってる事が正義の仮面ライダーと真逆じゃねぇか!」
「ちょっと万丈、人があらすじやってるのに邪魔しないの。それにあのビルドは俺じゃないし。どう見たって偽物だってわかるでしょうが」
「えっ? でもスパークリングに変身してるし、専用武器もちゃんと出してるし、声もお前だし……」
「お前、俺をなんだと思ってるんだ。いやさ、気持ちはわからなくもないよ? だって万丈だし」
「あ。その言い草、さては俺をバカにしてんな? なめんなよ。最初はわからなくても戦えば見破れる自身はあるぜ。伊達に付き合い長くないからな」
「はいはい。あと“自身”じゃなくて“自信”な。誤字注意」
「うっせぇ。わかってるよ、んな事」
以上、異次元宇宙の地球より中継。
「ほらぁー! お前と駄弁ってるせいであらすじの時間なくなったじゃん!」
「知るか! てか俺にもあらすじ紹介させろ! いいだろ少しぐらい!」
「だからその時間すらないの! あーもー! 三羽ガラスがトランスチームシステム使ってるから試しに覗いてみたのに、結局あっちの世界の仕様はわからず終いだ!! 俺のワクワク返してぇぇぇぇぇ!!」
北都三羽ガラス、トランスチームの戦士ルート突入。何百周も掛けて機械類を勉強したため、ハザードレベル固定仕様は解除済。
ナイトローグの全身のパイプから高温の蒸気がビルドに吹き付ける。二刀のブレードはホークガトリンガーを容易く切り捨て、ビルドはビートクローザーを代わりに召喚。だが、ナイトローグの猛攻に徐々に押し込まれる。
けたたましく剣を斬り結び、ビルドがナイトローグを蹴り飛ばした。踵を引き摺りながら吹き飛ぶ彼を追い掛け、袈裟斬りしようとしたところでカウンターを受ける。
一足早く、ニ振りのヒート刃がビルドを斬り付ける。しかし、ビルドは怯まない。ナイトローグの腹部を深々と殴り、そのまま頭上に持ち上げてはドリルクラッシャーでかっ飛ばす。次いで跳躍するが、宙で姿勢を直したナイトローグに蹴り返される。追撃は不発に終わった。
よろめきながらも着地し、フルボトルをドリルクラッシャーにセットするビルド。瞬間、ナイトローグが投げてきたスチームブレードに妨害された。さっと避けるものの、背後にナイトローグが霧ワープしてくる。宙に舞うスチームブレードを掴み、ビルドに斬り掛かる。
それをビルドは、後ろを振り向かないままビートクローザーで受け止めた。目にも止まらぬスピードでドリルクラッシャーを一閃する。ふとフルボトルを放り捨ててしまうが気にしない。機械仕掛けの最凶の錐が、ガラ空きになったナイトローグの脇腹に命中する――はずだった。
「何ッ!?」
白煙に紛れたかのように姿を消すナイトローグ。次の瞬間には、彼はビルドの隣に現れていた。咄嗟にビルドは反応し、薙ぎ払ったビートクローザーが空振る。今度は何の前触れもなく頭上から降りてきた。
ビートクローザーの刀身は踏み倒され、面食らうビルドをナイトローグが全力でブレードで穿つ。ビルドの身体はくの字に曲がり、間髪入れずに剣を投げ捨てたナイトローグは殴打を叩き込む。
その拳一発が先程食らったものとは比べものにならず、重たく響く打突でビルドは思うように動きが取れなくなる。体の良いサンドバッグとなり、次に背中を肘打ちで打たれ、地面に崩れ落ちる。その際、ビートクローザーが奪われた。
呻くビルドはすぐに立ち上がれない。そこを容赦なく蹴り飛ばしたナイトローグは、またもや武器を後ろに投げ捨てる。
赤青白のトリコロールの戦士は無様に地面を転がっていく。遂にドリルクラッシャーを手放し、舌打ちしながら起き上がると禁断のトリガーを手にする。
「ハァ……ハァ……だったらぁ!!」
『ハザードオン!』
ハザードトリガーをビルドドライバーにセットし、最初から飛ばしていく。
『ドンテンカン! ドーンテンカン! ガタガタゴットンズッタンズタン!』
『Are you ready?』
「変身!」
『アンコントロールスイッチ! ブラックハザード! ヤベーイ!』
レバーを回し、周囲を囲む漆黒のプレス機がビルドを挟み込む。その中から現れたのは、スパークリングのハザードフォームであった。唯一黒く染まっていない双眼は憤怒で輝き、再度トリガーのスイッチを押しながらナイトローグへ迫る。
『マックスハザードオン!』
『オーバーフロー!』
ビルドの渾身の右ストレートがナイトローグの頬に炸裂する。右拳に纏う毒々しい溶剤は装甲を徐々に浸徹していく。
だが、ドライバーから衝撃を受けると共に、身動きが途端に取れなくなる。いつの間にかドリルクラッシャーを回収していたナイトローグが、その柄をハザードトリガーに強くぶつけたのだった。
「う、動けない……だとぉ!?」
これにビルドは慌てふためき、四枚翼を広げたナイトローグは大きく後退する。ドリルクラッシャーを捨て、スチームブレードとライフルを拾っていく。
「その状態で自我を保つのは流石だ。しかし……」
やがてナイトローグは空に羽ばたき、ビルドを一瞥した。順にスチームブレードのバルブを回し、二本ともアイススチームを発動する。
「勝負を焦ったな、スパークリング!!」
そして、下方向へ螺旋状に包まった翼に冷気を纏わせ、急降下。凍てつく一陣の風となり、ビルドに飛翔斬を放った。
避けられないビルドは真正面から飛翔斬を食らい、炸裂する氷霧を全身に散らしながら大きく吹き飛んだ。その威力にハザードトリガーはあっさりドライバーから外れ、ビルドの元から離れていく。
ハザードフォームが解け、元のスパークリングの姿に戻る。うつ伏せの状態で地面と激突し、よろよろと起きる足元は覚束ない。
「俺が……スパークリングがナイトローグに……負ける? そんな……そんな事……」
信じられないという風に、ビルドは口ごもる。両手で顔に触れ、次に激しい感情を露わにする。
それは憎悪だった。絶対的優位性が破綻し、間を置かずにドン底へと落とされる。底辺の存在に下剋上された事が、ビルドに激しい憎悪を抱かせた。そんな事は傍から見ていたナイトローグも瞬時に理解できており、かと言って無用な情けは掛けなかった。ブレードとライフルを仕舞い、テニスボールとラケットを持つ。
一瞬、ナイトローグのその行為にビルドは唖然とした。しかし、いざ球が打たれると仮面越しでも伝わるほどに顔を青ざめさせる。ショットの瞬間に衝撃波が走り、球は波動を帯びてビルドを空の彼方まで乱暴に運んでいく。
「ネガの世界に帰れ! 偽りの仮面ライダー!」
「ナ、ナイトローグ風情があぁぁぁぁーっ!?」
過去最高の威力で放たれた波動球がみぞおちに入り、空を映す壁に張り付けられたビルドは断末魔を上げる。すぐに波動球は力を失うが、完全に埋め込んだ胸部の穴から零れ落ちる事はない。
まさに死に体。指一本すら動かず、俯く顔に影が落ちる。陥没穴が出来上がった壁から徐々に身体は剥がれ落ち、力無く落下しようとしたところでボソッと呟いた。
「どう……だ……殺すのは……楽しい、だろ……?」
するとビルドの身体がスマッシュに変化し、爆発四散。合わせて、地上に放置されたビルドウェポンも消滅した。
それを見届けたナイトローグは、颯爽と強化形態を解除した。ほっと一息つき、ラケットを仕舞う。形だけでもスパークリングに勝利した事に思いを馳せた。
スパークリングとの勝負の理想は、できるなら本人が良かった。だが、それは当然叶わない夢。ならば、曲がりなりにも実現した事に良しとする他ない。初めから実現性皆無に等しかったのだ。仮に中途半端だとしても、こうして機会を設けられた事に喜びが少しだけ込み上げる。
なるほど、たしかに中途半端だ。ビルドのあの言葉が嫌にも突き刺さるが、省みるのは後からでもできる。今、優先すべきは――
「おめでとう、ナイトローグ。まさかアレを倒すとは、なかなかやるではないか」
そんな賛辞と共にバイカイザーが出現した。ナイトローグは武器を構え、相手を威嚇する。
「マッドローグをどこにした?」
「そう慌てるな。まずは感想を聞かせてもらいたい。一度に六十四人の命をその手で奪った感想を」
「何だと?」
何の事だかわからない。初めはそう疑問に感じるも、少し想像を膨らますだけである程度察してしまう。
あの時、ビルドに化けていたスマッシュは爆発四散し、跡形もなくなった。ハザードスマッシュの死亡ケースとは差異こそあるが、さほど想像に難くない。まさかと思って耳を傾けると、案の定バイカイザーが暴露してくれた。
「あの新型スマッシュは通常種六十四体を合成して作り上げた、いわばキメラだ。六十四人分の命が注ぎ込まれる訳だから、意識と人格が融合して知性と戦闘力も上がる。彼らは集合体となってまだ生きていたのだ。それを貴様は……」
その口振りはどこか、ウキウキとした感情が含まれているように感じる。目の前に立つ悪魔の科学者にナイトローグは戦慄するのも束の間、力の限り地面を蹴り出していた。
凄まじい勢いで義憤が湧き上がる。確かにあのスマッシュに手を掛けたのは紛れもなく自分自身だが、話が真実であれば救いようがなくなる段階まで押し上げたのはバイカイザー本人である。怒りとは裏腹に冷静さは欠けておらず、そのわざとめいた揺さぶりにも動じない。
あっという間にバイカイザーへ詰め寄り、二本のブレードを交差させながら斬る。対してバイカイザーは、スチームブレード一本のみで受け止めた。
「ふむ、中途半端なヒーローというのは紛れもない真実のようだ。私は人間観察も研究の一環でやっているが……貴様の行動には散々笑わされたよ。例え仮想空間だとしても、己は貫くものだろう? でなければリアリティを高めた甲斐がない」
「どの口が言う!!」
「しかし、仮面ライダーとやらはどこまでやっても心が折れないのが不思議だ。これから行う実験に私は不安を感じずにはいられない」
少しの鍔迫り合いの後、バイカイザーが剣を押し返す。ナイトローグの繰り出す刺突を次々と防御し、最後に身を屈めると刀身を地面に叩き付ける。その強力な一撃で半径数メートル以内のものが一斉に浮かび上がり、砂塵に巻かれながら足が地面に離れてしまったナイトローグを殴った。
辛うじてバイカイザーの拳を防いだナイトローグは大きく後ろへ飛ばされ、筒がなく着地する。その時、二人の間に何者かが乱入してきた。機敏な動きでナイトローグを翻弄し、激しく掴み掛かる。
その特徴的な白いシルエットを、ナイトローグは見間違う事はなかった。相変わらず寡黙を貫くマッドローグは、一度は和解したにも関らず襲い掛かってくる。数度だけ肉弾戦を交わし、バイカイザーの元へと寄り添った。
自然とニ対一の状況が出来上がり、救出対象が敵対行為をしたからと言って慌てず、ナイトローグは冷静になるよう努めていく。次にバイカイザーによって明かされる種は、なんて事はなかった。
「貴様の予習を前提として解説を進めよう。彼女に憑依しているのは宇宙生命体SOLU。しかし、そのSOLUも別の生命体に寄生されていてね。まぁ、結果的に寄生は失敗して逆に取り込まれたようだが……星を狩る種族として名高いブラッド族の遺伝子を有している」
SOLU、ブラッド族。それらは大体知っているため、驚きはあまりない。予想が確信に変わっただけだ。取るべき手段も明確化していく。
一旦バイカイザーが言い切ると、先程まで虚ろ気だったマッドローグが活動再開。もう一度ナイトローグへ殴り掛かってきた。二人のローグが剣や拳を交える間にも、バイカイザーの話は続く。
「故に、同じ星狩りの力を宿した身としては、彼を洗脳するのは非常に簡単だった。どうやらブラッド族の中でも下級だったらしい。既に意識が消滅して器官にも等しくなっていた遺伝子を取り込んだ私とは、偉く大違いだ。さて、君は彼女と満足に戦え――」
「オラァ!!」
しかし、バイカイザーに締めの問題提起を最後まで言わせる事なく、何の躊躇いもなしにナイトローグはマッドローグを殴り飛ばした。
マッドローグの身体はバイカイザーの頭上を飛び越え、放物線を描いていく。この出来事にバイカイザーは一瞬だけ固まり、マッドローグを付け狙うナイトローグの素通りを許してしまった。数秒後、隠し切れない動揺で声を震えさせながら振り返る。
「貴様……! やはり人質にも容赦なかったのか!!」
「マッドローグを殴るのに罪悪感なしッ!! しっかりしろマッドローグ! 正気に戻れ!」
困惑の混じったバイカイザーの非難をサラリと流し、マッドローグを往復ビンタするナイトローグ。されど、見た目はマッドローグでも変身者は女子。多少の心苦しさはある。
「……ハッ! チェリーが食べたい! ……てあれ?」
だからこそ、時間も掛からずにマッドローグの洗脳が解けた事に安堵した。不思議な事に、彼女の声の不自由もなくなっている。
「そして互いの遺伝子の取り込み方が異なるから、洗脳も浅かったか……!!」
驚きの連続に、バイカイザーは二人の姿をしばらく遠目で見ている事しかできなかった。彼がこめかみを抑えている間にも、ナイトローグたちは撤退の準備を進める。
「ひ、日室くん!? 助けに来てくれたんだ!! あ、身体が勝手に動いちゃう」
「よし、なら長居は無用だ。マッドローグ、動けるな?」
「いや、動くっていうより動かされる……え? マッドローグ? そっち呼び?」
思わず聞き返すマッドローグをナイトローグは気にせず、彼女の手を掴むや否や全身のパイプから黒霧を吹かした。それはたちまち二人の身体を包み込み、この空間から離脱させる――はずだった。
霧が晴れた先で、壁に頭をぶつけるナイトローグ。居場所は依然として変わらず、バイカイザーがいる荒野だ。マッドローグは怪訝な様子で、おずおずと彼に尋ねる。
「……日室くん? 今のは?」
「すまないマッドローグ。霧ワープが防がれた」
端的にそう言って、即座にナイトローグは戦闘態勢に移行。マッドローグの前に立ち、既に気持ちを切り替えて余裕綽々と佇むバイカイザーの出方を窺う。
「エニグマは絶賛改装中だ。中心部から徐々にワープ対策を構築している。直接外に逃げられると思わない事だ」
したり顔で原因を教えるバイカイザーは仰々しく両手を横に広げ、わざと背中を見せた。あからさまな隙の露出にナイトローグは警戒し、チラリと後ろにいるマッドローグを見やる。
ここまでは順調だが、救出作戦の帰り道でさっそく暗礁に乗り掛かろうとしている。数的優位が保てていても、マッドローグを戦力とするのは初めからなるべく考慮すべきではない。それで万が一負けてしまえば、本末転倒だ。
「フン!」
バイカイザーが瞬時に構えたネビュラスチームガンを彼らに向けて放つ。同時にナイトローグもトランスチームガンで応射し、多少の被弾は覚悟でバイカイザーに肉薄していく。近距離戦の間合いまで近づくと、両者はスチームブレードを手にして斬り結んだ。
Q.今回のオリジナルスマッシュ
A.トレーススマッシュ
相手の意識によって姿を変え、ある程度の特殊能力の再現が効く。再現できるスペックの限界値はエボルフェーズ1相当。場合によっては千冬やエボルト、キルバス、テラードーパント、ダグバ、Black RX、皆をアマゾンにする青い怪人になったりするので、その時は潔く絶望しよう。
なお、量産は難しい模様。
立ち位置的にはロスト寄りのクローンスマッシュに近い。以下、戦闘力の独自解釈
クローンスマッシュ=ハザードスマッシュ×4
=ハードスマッシュ×8
=スマッシュハザード×32
=スマッシュ×64
単純にずっと4乗させると、時速50キロで散歩するタカシ君みたいな事になるのでやめました