ナイトローグの再評価を目指す話   作:erif tellab

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「前回のナイトローグ……スピーzzz」

「寝るな寝るな。赤羽起きろ。あっ、だめだこりゃ」

「じゃあ僕が代わり。えー、バイカイザーに苦戦を強いられるナイトローグとマッドローグ。その窮地を救うかのように続々と仲間たちが現れ、ブロス兄弟も味方に。始まったライダーリンチにバイカイザーは数の利で劣勢となり、トドメのライダーキックで大爆発するのであった」

「そして俺たち北都三羽ガラスはというと……可愛い女の子になっていた」

「うん。この周回だけ、なんだかいつもよりもカオスになってるし。赤ちゃんは現実逃避しちゃうし。もう散々だよ!! これならいつものようにエボルトと戦って死んだ方がマシだったよ!! なんで僕たちでアイドルプロデュースしてるのアイツ!?」

「もしかしたら、この周が一番生存率が高いのかもしれないな……」

「青ちゃんも目を遠くしないでさぁ!! ダメだよ、身体は女の子でも心が男なの忘れちゃあ!! ほら、エボルトにこの怒りをぶつけて!! せーの!」

「「「エボルトォォォォォォォ!!」」」

北都三羽ガラス生存戦略、女の子ルート突入。なお、これが一番生存率高い模様。




進化する皇帝

 今から数十年後の最上魁星は、不老不死の研究に没頭していた。まだ観測器にしか過ぎなかったエニグマで覗き込んだ数多の並行世界から発見した、数々の不老不死の生命体に触発された形である。なんて事はない。どのようにすれば不老不死を実現できるのか、研究対象として興味を持っただけである。

 単なる不老と長命に限れば、その種族は両手では収まりきらない数になる。ウルフェン、マーマン、フランケン、レジェンドルガ、ファンガイア。キバの世界だけでこれだけが揃っている。

 

 一方でブレイドの世界にいるアンデッドは文字通りの不死。一応、血は流れるので執拗な熱核攻撃などを行えば滅却する可能性も否定できないが、まず現実的ではない。これは事実上の不老不死と捉えても問題なかった。一部の絶望した人間から生まれる、怪人ファントムの一体である《フェニックス》も然りだ。ファントムに関しては怪人化を経由してしまうが、曲がりなりにもヒトが不老不死を得た貴重な証例となる。

 しかし、どの世界を観測しても、ヒトをやめないまま不老不死に至った者が存在しなかった。ある者は禁断の果実を食べて神となり、ある者は魂を情報化させて生物にも感染する新型コンピュータウィルスの統制者となった。純粋なヒトのままでの不老不死が存在しない事に最上はふと疑問を覚え、失望し、ならばと自力で編み出す事にしたのだった。

 そうして試行錯誤の果て、二つの異なる並行世界同士を融合させて不老不死になるプランが生み出された。不老はともかく不死の概念、ヒトとは何かをどう解釈するかで他にも様々な方法が考えられたが、とにかく効果が一番高いと推測されるのがそれだった。

 

 その原理を掻い摘まんで説明すると、それぞれの地球の記憶にある自身同士を融合させるのに莫大なエネルギーが必要、という事になる。記憶とは時間。時間とは歴史。これにより、タイムパラドックスによる消滅を逃れる事ができる。第一段階であるタイムパラドックスの攻略は、それで解決する。

 だが、時の運行云々の事象は大抵ヒトに拠るもの。まだヒトが進化しきっていない太古の時代では地球そのものの記憶が頼りになると考察した。実際、時の列車の駅が人々の記憶で紡がれた場所に限るのであれば、恐竜のいる時代まで遡れるはずがない。いくら特異点が存在しようとも、たった一人では周りから忘れられた見知らぬ他人をタイムパラドックスによる消滅から戻す事が叶わないのだから。もはや学術的観点から推し量るしかない・実際の光景など知らない太古の時代に、どうしてアクシデントという形でも駅として通過できようか。

 

 それは地球が記憶していたからと仮定すれば、すんなりと納得できる。同時に地球そのものが特異点ではないが、確かに情報は詳らかに残されている。地球の本棚だ。ガイアメモリが内包された記憶とも、密接に関係している。

 すなわち、地球の記憶から個人の情報を抽出するのは不可能ではない。抽出したそれを莫大なエネルギーで補えば、より強く鮮明な人々の記憶に頼らずとも存在が確立できる。その補い方は、記憶の内包者を擬似的な特異点にする《ゼロノスカード》を参考にした。

 

 こうして理論は整い、後は実証するのみとなった。過程で自分以外の生命が全て犠牲になるが、結果的にそれらの世界は最初から無かった=犠牲なんて出なかったという事に落ち着くので、とりわけ良心の呵責は小さかった。全人類を短命のオルフェノクに進化させて絶滅させるのとどちらがしたいと問われれば、間違いなく不老不死のための並行世界融合を選択する。

 手始めに、最上は対象の並行世界に半身を送り込んだ。ここでは自身の感情のどれかを代償にしている。今回は比較的取り戻しやすい喜の感情を欠落させた。

 

「ヒャハハ、ファンキー!」

 

 しばらくすると、巨大組織と接触した半身はみるみるうちに高い地位を獲得。その頭脳と技術で組織に貢献する一方で、エニグマ建造などの準備を進めていた。

 しかし――

 

「とおっ!! ライダーキック!!」

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 志半ば、半身の野望はその世界の仮面ライダーの手により潰えた。やたらと強い、腹部に大いなる石を埋め込んだ漆黒の仮面ライダーだった。

 これは少し楽観視していた。始めは生身の人間であればこの典型的な仮面ライダーに手を下される事もないだろうとタカを括っていたが、それを盾に機動兵器に乗り込んで一方的に追い詰める戦法が通じず、意外と容赦なかった。

 

 このままでは行けない。もっとコンパクトで、仮面ライダーにも引けを取らない自衛手段を確保しておく必要がある。それを発端に開発したのが《カイザーシステム》であった。プランにも修正を加え、バグスターウィルスの抗体を自身の肉体に投与する。

 これで半身を送り込む際にカイザーシステムを持ち込ませれば、いざという時の自衛力不足は解消された。巨大組織に頼っておんぶに抱っこでは、仮面ライダーというイレギュラーに対処しきれない。見縊っていたと反省し、次は障害排除を徹底的に実行した。すると――

 

「俺は銀河の王子! RX、コスモライダー!」

 

 どういう訳か敵の強化に一役買ってしまった。しかも自分の知らない未知のフォームである。まだ世界融合できない段階で、再び半身はこの仮面ライダーにやられた。

 しかし、まだ二度の失敗である。科学とはトライ&エラーの繰り返し。ついでに対象の並行世界は、なるべく自分の住んでいる世界と限りなく類似していなければならない。手強そうな相手がいない世界を探すとなると、それは既に死の星になっているか、猿の惑星になっているか、惑星要塞になっているか、実に極端である。こうなると歪な融合のリスクは回避できない。

 なので彼は諦めず、三度目の挑戦に挑んだ。しかし――

 

「Black!」

 

「Black RX!」

 

「ロボライダー!」

 

「バイオライダー!」

 

「シャドームーン!」

 

 次に待ち受けていたのは、真の地獄絵図であった。ただでさえ倒すのも宇宙に追放するのも一苦労なのに、やや簡単な《変身能力強奪》を行っただけでこのしっぺ返しである。もちろん、Lカイザーに変身した半身はあっさり死んだ。

 以下、再挑戦のダイジェストとなる。

 

『ファイナルカメンライド』

 

「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 総勢二十名以上の仮面ライダー最強フォームの必殺技を受けて死亡。

 

「我が名は牙狼ッ!! 黄金騎士だッ!!」

 

「こんなはずではぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 ようやく仮面ライダーのいない手頃な世界を見つけた折、魔獣ホラーに憑依されてしまう。自我は保ったままだが人外になってしまったので見切りをつけて観察していると、さんざん世界を混乱に陥れた上で黄金騎士に討滅された。

 

「レオパルドン! ソードビッカー!」

 

「ぎょええぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 地獄からの使者スパイダーマンが召喚した巨大ロボにより、秒殺。

 

「プリキュアオールスターズ!!」

 

「五十五対一だとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 横浜みなとみらいで騒ぎを起こしたら、偶然居合わせた彼女たちと戦う事になって敗北。浄化技で死亡。

 

「ティガァー!!」

 

「ダイナァー!!」

 

「ガイアァー!!」

 

「アグルゥー!!」

 

「ジャンボフォーメーション!!」

 

 光の巨人が参上。仮面ライダーJを倒し、今回は上手く行きそうだと調子に乗り、強化したフォッグ・マザーを支配下に入れていたら死亡。仮面ライダーJは一度死んで蘇る。

 そして――

 

「人々の心に光ある限り、俺は何度でも蘇る!!」

 

 物理的に時間的に抹消しても復活する仮面ライダーが出てきたので、とうとう嫌気が差した。

 

 

 

 

 その頃、最上の住む世界はブラッド族の生き残りによって支配されていた。彼らの目的は、地球に焼け落ちたパンドラボックスの欠片の回収と修理。修理の役割は最上に任せられ、それが完了した時こそがブラックホールで地球が消滅する日である。正直に言って、乗り気ではなかった。

 南波重工の会長の座は、遂にサイボーグ化して永い寿命を得た南波重三郎のまま。最初は社内侵略してきたブラッド族に対抗しようと南波重工の結晶たる兵器を送り込んだが、どれも返り討ちにされて傀儡化の処分を甘んじた。ブラッド族の擬態能力を顧みれば、そのまま消されなかったのはどう考えても気が変わったとしか思えない。その南波会長のヘタレぶりに、形だけの忠誠を全力で示してきた最上は完全に愛想が尽きた。

 

 また、他者によって自分の研究が妨げられるというのは、あまりにも面白くない。大人しくパンドラボックスの修理を請け負う一方で、どうすればこの状況を打開できるかとアレコレ策を張り巡らした。最近になって出発した高官御用達の地球脱出用の艦が、ブラッド族によって撃沈されたという情報も耳にしている。あの黒い仮面ライダー並みに理不尽だ。

 結果、純粋なヒトのままでは勝ち目がないと悟り、パンドラボックスの欠片に残されていた遺伝子を取り込み、後天的なブラッド族への変異を試みた。単純に不老不死になっただけでは敵わない存在もいるので、もはやなりふり構っていられる場合ではなかった。

 

 遺伝子自体の持つ意識や人格は既に消滅していたので深刻な副作用はなかったが、完全に遺伝子を肉体に馴染ませるには最低でもハザードレベル5.0以上が要求される。それまではブラッド族固有の能力を使う事すら満足に行かず、後天的なのも相まって本来できるはずの寄生や遺伝子分離などは不可能となっていた。

 ハッキリ言って、これでは下位互換でしかなかった。ハザードレベルを上げようにも時間は足らず、生殺与奪を握られてはパンドラボックスの修理を手抜く事もできない。さらにスマッシュ製造を要求され、数々の変異した被験者たちがブラッド族に吸収されて力となっていく。実力差は開いていくばかりだ。この世界に、あの黒い仮面ライダーはいない。

 仕方ないので、世界融合プランは破棄。タイムマシンで過去の世界に渡り、過去の自分と合体する妥協案に打って出た。全ては思うがままに、誰にも邪魔される事なく、己の欲求を満たすために――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おのれベルナージュぅぅぅぅぅぅぅぅ!!』

 

 エボルドライバーを破壊され、パンドラボックスの中に逃げ込むのを阻止され、火星圏を追放。瀕死でしがみついたパンドラボックスが破損していたのが要因で、地球への大気圏突入の最中でとうとう命尽きた地球外生命体。焼かれたパンドラボックスは数多の破片となって大地に散らばり、残された彼の遺伝子は抜け殻にも等しい残滓となっていった。

 

 これは、取り込んだ遺伝子に刻まれた死の直前の記憶。こうして脳裏に流れるのは初めての事ではない。競り合いに押し負け、爆発に飲まれ、変身が解けた最上はこの記憶を思い出しながら地面に落ちていく。

 明らかに落下死しそうな高さだったが、ネビュラガスも投与しているこの肉体。数十メートル程度では致命傷にならず、ただ痛みに苦しみながら静かに横たわる。バイカイザー用のギアは遠くに放られ、ナイトローグたちに回収されてしまった。

 

「終わりだ、最上」

 

 誰よりも一歩前に出て、最上の前に立つナイトローグ。その眼差しは、罪人を裁く処刑人のように冷たかった。実際、最上には後がほぼ残されていなかった。

 IS以外に立ち並ぶトランスチームの戦士、ひいてはハーフスマッシュ。未来ではナイトローグどころか、トランスチームの存在さえ確認されていなかった。預かり知らぬところで起きたバタフライエフェクトの盛大さを噛み締め、忌まわしげに睨みを利かす。当然、誰も怖気づかない。

 ヨロヨロと膝立ちとなり、肩で息をしながら俯く。深い絶望に襲われる気分だ。

 だが、ふと自分の胸に手を当ててみると逆に笑いが込み上げてきた。最初はくつくつと笑い、その不気味さから次第に彼らを近寄り難くさせる。バッと上げた顔の表情は、狂気に染まっていた。

 

「遂になったぞ……ハザードレベル5.0ぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 そして、薙ぎ払うように取り出した赤いスチームガンを連射。瞬間的にナイトローグたちを牽制し、ようやく不自由なく使えるようになった残像ワープで大きく距離を取った。

 彼らの遥か後方に移動し、この隙に二本のギアを取り出す。フタは既に開封済み。すぐさま赤いスチームガンに装填すると、不穏な音声が流れた。

 

 《バイカイザー! ライダーシステム! エボリューション!》

 

 ようやくこちらに気づいたナイトローグが「奴に変身させるなぁ!!」と必死に叫ぶが、もう遅い。引き金を引くと思った次の瞬間には、とっくに全てが終わっていた。

 

「EVOLカイザー」

 

 《フィーバー!》

 

 銃口から飛び出したのは黒煙と、天球儀のように回転する赤・青・金の歯車。それらに包まれた最上の姿は、光が弾けると共に露わとなる。

 

 《Perfect!》

 

 生まれ変わった装甲は、王侯貴族の如き綺羅びやかさを誇るものへ。歯車の意匠は残しつつも、どこか宇宙的。頭部はバイカイザーの頃と同じだが、それ以外が完全にカイザーシステムとは特徴が異なっていた。

 

「フェーズ2、完了」

 

 変身が完了し、進化の名を冠する赤いスチームガン――エボルスチームガンを手にしたEVOLカイザーは誇らしげに呟く。

 刹那、ナイトローグたちの内輪へと瞬間移動した。驚愕させる暇を与えず、強力な爆風を発して全員一斉に吹き飛ばす。

 

「そして立て続けにフェーズ3!!」

 

 次いで、赤と青のシンメトリーな顔面が紫に染まった。他にも装甲のカラーリングが白・紫・金と変色し、星雲のイメージがより一層強まる。

 おもむろに手を空に翳せば、そこからとてつもないエネルギーを秘めた光体が浮かび上がる。その光体を箒に向けると、極太の高出力ビームとなって放たれた。キャッスルスマッシュのカタプルタキャノンとは、比べ物にもならない。

 

「箒!!」

 

 倒れ伏す箒を白式HSが咄嗟に庇う。雪羅で高出力ビームを防ぐのも束の間、全員の頭上に四角形の小さなワープゲートが出現した。そこにEVOLカイザーがエボルスチームガンを連射し、分けられた散弾が彼以外の者へ均等に降り注ぐ。

 その突然の出来事に対処できた者はいなかった。それどころか理解が追い付いていない。なす術なく被弾し、地に伏せる。

 やがて、最終的に立ち上がっているのはEVOLカイザーのみとなった。清々しくもどこか釈然できない逆転劇に彼は余韻に浸る事や満足を覚えず、聞く耳を持たれてなかろうが構わずに淡々と講釈垂れた。

 

「原初のバグスターウィルスの恩恵で、過去に存在したスマッシュの能力を再現可能となった。不老も会得し、残すは完全なる不死性だけである。後は……」

 

 そこまで喋り、蹲っているマッドローグの元へ歩み寄る。途中で呻いているナイトローグには見向きもしない。彼女を無理やり起き上がらせ、お互いの顔を近づけた。彼女の顎を持ち上げて。

 

「マッドローグ。貴様と同化するだけで、私のフェーズ4は完了する」

 

 その時、一室に過ぎないはずの偽りの荒野が大きく震撼した。

 

 

 





Q.赤いスチームガン

A.名称はエボルスチームガンに決定しました


Q.世界融合理論

A.独自解釈全開です

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