ナイトローグの再評価を目指す話   作:erif tellab

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「前回までのあらすじ。エニグマから帰還したナイトローグたち。戦いの傷は癒えきらぬまま、遠方のロシアでは叡智の炎が牙を向く。彼らに与えられた安らぎの時間は、本当にほんの少しだけだった」

「おい、蘭。何かしこまって言ってんだ?」

「あっ、おじいちゃん。今ね、あらすじ紹介のお仕事中なの。一夏さんから手伝って欲しいって言われたから」

「おお、そうか。ところでよ、弾の奴どうしてあんな格好に変身してたんだ? 俺たちに黙っててよ」

「ううん、私も何が何だか……」

「チッ、仕方ねぇ。こりゃあアイツと会えたらまず説教だな」

「うん、思いっきりやっちゃって!」

「だってよぉ、弾!! 孫娘に期待かけられちゃあ、応えない訳には行かないよなぁ!!」






「……」

〈プシュー

「あっ、コイツ!? 厳さん! 弾の野郎逃げやがりました!!」

「何ぃ〜!? 数馬、捕まえてこいッ!! 捕まえたら後で飯を奢ってやる!!」

「マジっすか! じゃあー、チャーハンと餃子と回鍋肉で! 行ってきまーす!」



(擬似)ライダーウォーズ開戦

 ロシア被爆の報は、瞬く間に世界へ広がった。どうやら、撃った核弾頭がエニグマの展開したワープゲートで反射されたらしい。スクエアスマッシュの能力応用によるものと見て良いだろう。これでエニグマ破壊を狙うなら、近付くしか方法が限られる。それでも数十に渡る核攻撃に耐えた辺り、それも非現実的だ。

 素直にIS学園で待機していたおかげで、この事実が世間に知らされるよりも早く察知する事ができた。普通なら情報統制されているようなものを、一体どこのマスコミが嗅ぎ付けたのか。案の定、世間は大騒ぎである。

 これを受けて、つい先日までエニグマと関わりのあった学園側は緊急会議を開始。引き続き厳戒態勢は敷かれ、勝手に出て行かないようにと織斑先生が俺に釘を刺すと、そそくさと会議室へ向かっていった。一夏たちにも俺が勝手な真似をしないよう見張れと言い付けているので、自由行動は思いっきり制限されていた。怪我の事もあり、だいたいナギさんか京水が隣にいる。

 

 わかっているじゃないか。俺が契約書や法といった紙切れ・言葉一つで抑えられる男ではない事を。無論、回復優先でエニグマに殴り込むつもりは当分ないが、こうなったら一人で何でもかんでもやろうとは思わない。皆と一緒に戦おう。ソロの限界を思い知った。

 その数時間後、人気のないラウンジでたむろする俺たちの元に、山田先生がブロス兄弟を連れてやって来た。人質にされていた弾の家族は念密な健康診断がなされ、今は別の場所で泊まってもらっているとの事。まだ彼は家族と会えていない。

 一方で数馬は、頭の悪い事に家族を霧ワープでエジプトに逃がしていたらしい。目下、彼の家族は捜索中である。

 

 そんなこんなで本人たちも交えながら山田先生の説明が続く。タッグトーナメントや福音事件などの乱入の件で二人は頭を下げて謝罪したりもしたが、事情を知った今となっては誰もその事をあまり気に留める事はなく。割りと裏切りのダメージが大きいはずの一夏が快く許した事もあって、皆が彼に免じたりとギクシャクとしていた雰囲気は容易く打ち砕かれた。弾と一夏曰く、喧嘩やら殴り合いは十分すぎるほどやったらしい。エニグマで。

 俺? リベンジでエンジンブロスに圧勝したし、もうそれほど恨んでもいないので過去の事は水に流した。死者が出ていれば、また違っていただろうが。

 そうして、ようやく自己紹介がなされる。

 

「――という訳で、監視付きでしばらく厄介になります。御手洗数馬です」

 

「五反田弾だ。よろしく」

 

 続けて、二人とは初対面となる箒さんたちも名乗りを上げていく。一通り互いの自己紹介が済ますと、仰々しいように数馬が嘆き悲しんだ。

 

「あぁ……まさか、かの有名なIS学園に訪れる事ができるなんて。しかし今が夏休みかつ非常時で誰もいないのが悲しい。ものすごく悲しい! 女の花園見れないとか、最上ぜってぇ許さねぇ!!」

 

「数馬、静かにしてくれ。知り合いが恥晒すのはちょっと……」

 

「何言ってんだ! お前も前はIS学園に入る事になった一夏を羨ましがってたくせに! 本当にいきなり変わったよなぁ〜」

 

「いや、随分前に遊びに行ってた時の弾は今の数馬みたいな感じだったぞ。まぁ十中八九、ウソだったんだろうけど。てか数馬もこんなんだっけ? むしろ逆転してない? もしかして入れ替わった?」

 

 喜怒哀楽の激しい数馬と素っ気ない様子の弾に、一言呟く一夏。それに反応した数馬が真顔になった瞬間、格好良く次の言葉を言い放った。

 

「どうせ入れ替わるなら女の子がいい」

 

「いい声で言えば良いってものじゃない」

 

「あっ、いつもの調子に戻った」

 

 いや、まだ俺にはその違いはわからない。だが、今のが一夏の知っている二人なのだろう。一見しただけでも、かなりの仲であるのが十分に伝わる。

 そうして男友達の雑談がとりとめもなく始まり、横で眺めていたデュノアさんと箒さんが顔を見合わせる。

 

「一夏の男友達って聞いていたけど、仲良さげだね。本当にさっきまで敵だったのが信じられないぐらいに」

 

「それに生き生きとしている。やはり同性と異性では接し方も変わるらしい。正直、いささか疎外感を覚えるな」

 

「うん」

 

 彼女たちの話している事は至極当然だろう。普段の学校生活のテンションとは異なり、弾と数馬に質問責めされている一夏の横顔は満更でもなさそうに綻んでいる。俺と他愛のない話を交わしていた時以上だ。付き合いの長さと、友情度の違いである。

 やはり、女性ばかりという環境は相当なストレスになるものだ。ナイトローグである俺はともかく、思春期の男子にはキツイものがある。下世話な話すら、ままならないのだから。

 すると、一旦質問責めを区切った数馬が箒さんたちに話し掛けてきた。

 

「あぁ〜、えーっと、篠ノ之さんにデュノアさん。コイツ本人だけから普段の学校生活聞くのもアレだから、補足する感じで話してくれない? きっと何か面白い事やらかしてるはずなんだよ、一夏の事だから。何でもいい、聞かせてくれ。コイツの黒歴史を暴く」

 

「数馬お前な! 待て箒、シャル。数馬の言葉に耳を貸すな。頼む、俺だって知られたくない秘密が――」

 

「七月の初め頃、ラウラに全裸で夜這いされていた」

 

「箒ぃーッ!?」

 

「えっ、ラウラが!?」

 

 意外にも箒さんが非情に徹してきた。一夏の異様な鈍感ぶりに業を煮やすのはわからなくもないが、これは少しあんまりな仕打ちの気もする。と言うよりラウラさんの夜這いとか、俺も初耳だ。

 悲壮感に包まれた表情の一夏と、驚きのあまりに呆然とするデュノアさん。すぐ近くで静かに耳を傾けていた山田先生も、目を白黒とさせている。箒さんのカミングアウトに、数馬がここぞとばかりに騒ぎ立てた。

 

「弾! 今、ここにいない知らない女子の名前が出たぞぉー!! 限りなくギルティだぜ、こいつぁー!!」

 

「耳元で叫ぶな。てか……」

 

 嫌そうに数馬から離れた弾は直後、神妙な面持ちで一夏の顔を見つめる。その目は何やら、呆れを通り越して笑っているようだった。

 

「おい何だ弾、その顔は。笑うなら堂々と……シャル? どうした急に? だんだん目が怖くなって……」

 

「うん、わかってるよ。ラウラの事だから本当に寝てただけで、別に一線は超えてないんだよね? ……ソッカ、ソッカ」

 

「イケない! シャルロットちゃんが病む呪文を唱えだしたわ! ダメよぉー!! 一夏ちゃんを背中から刺すのはぁー!!」

 

「待って、それは勘違いだよ京水! 一夏にそんな事しないから!」

 

「ああ、その件に関しては私が既に成敗した」

 

「やめろぉーっ!! 聞かれてる人数少なくないからやめろぉーっ!!」

 

 白昼堂々と暴露される秘密に一夏は大きく項垂れた。山田先生がこっそりと「後でボーデヴィッヒさんは指導ですね」と小声で漏らしたのを俺は聞き逃さない。あの銀髪眼帯少女がIS学園に戻ってきた時には、ささやかに菓子類でも送ってあげよう。ヒヨコのサブレとか。

 それにしてもこれは、一夏に対してとてつもない罰ゲームである。程なくして一夏は数馬に掴み掛かり、その口を閉じようと何度も揺さぶる。最初はゲラゲラ笑っていた数馬も徐々に余裕がなくなり、弾たちが仲裁するまで一夏にひたすら“ごめん”と呪文のように連呼していた。

 空気の軽さが、先日の事件を思わせないほどにまで明るく一変した。ムードメーカーが京水以外にも増えたおかげだ。いつまでも暗く気落ちしている場合ではないが、傍から見ているだけのこちら側も気分が和らぐのはありがたい。その様子にナギさんが、俺へ言葉を投げ掛ける。

 

「だってさ、弦人くん」

 

「流言飛語はしないと約束する。ところで煙銃戦隊スチームレンジャーなんてどうだ? 谷本さんのゴライダーは却下」

 

「そんな! 仮面戦隊ゴライダーのどこがダメなの!?」

 

 提案された命名を一蹴した俺に、谷本さんが狼狽える。

 一方で俺、ナギさん、谷本さんの三人は、安静にしている間の暇つぶしとして、未だペーパープランであるナイトローグの一般社団法人化の設立案を煮詰めいていた。NPO法人ではダメだ。どうしようもなく救いのない悪人や怪人の参加を法的に拒む事ができなくなる。

 アレコレと誰かを助けるために何度も法(大半が軽犯罪)を犯してきたのだ。突き詰めれば無国籍、無戸籍でも生きていける自信はあるが、社会を味方に付けられた時の心強さは否定できないし、捨てたものでもない。いくら明日のパンツと少しのお金さえあれば生きていける人だって、誰かとの繋がりを断った人生を送る訳ではないのだ。むしろ、自ら手を取り合っていくスタイルである。

 

 その傍らで給与やら事業費、管理費などの金銭問題も浮かび上がるのは、実に悩ましい。曲がりなりにも仕事として成立させる場合の弊害だ。無人島ゼロ円生活を五年も続けていた身としては、とっくの昔に金銭に頼らない生き方が染み付いている。

 すなわち、モノが無ければ買うのではなく作る。お金を作るのは二の次、既に無人島生活から抜け出しているので効率的にできる事は割り切って行う。贅沢を言うなら、ゼロ円で人助け専門のボランティア企業を建てたい。社員は俺一人でも構わない所存だ。

 その前段階として、こうして三人で企業名を考えていた。ゴライダーという名前に拘る谷本さんに、俺も同じく拘りを以って反論する。

 

「ゴライダーを勝手に名乗るのは俺自身が許さないから。と言うより、谷本さんのネーミングセンス色々な意味ですごいな!?」

 

「癒子が出したのを纏めると、未確認生命体対策班、アギトの会、ライオトルーパーズ、BOARD、猛士、素晴らしき青空の会、仮面ライダー部、ビートライダーズ、etc。……なんだろう、ものすごく採用しちゃいけないっていう心のブレーキが働く」

 

「うぅ、真面目に考えたのに……じゃあ炎神戦隊――」

 

「それもダメ」

 

「救急戦隊キュウレンジャー!」

 

「九人もいない」

 

「あと何か混ざってる気もする」

 

 しかし、名前決めの時点で話し合いは早速暗礁に乗り掛かった。特に俺が知っているスーパー戦隊が作品として存在していないのにも関わらず、こうもピンポイントで思い浮かんでくる谷本さんにはある意味、畏敬の念を覚える。ロットロの件から一段落、気持ちを落ち着かせただけでこうなるとは。

 このラウンジにはテレビ番組を流すモニターが置かれており、とある報道番組がちょっとしたBGMにもなっている。記事にするだけならネットニュースの方が速さで軍配は上がるが、フェイクの可能性も懸念しなければならなくなる。しかし、ここは日本だ。報道の自由が行き過ぎているアメリカなら話は変わるが、信憑性においては確実な信用を置いても構わないだろう。

 この時間帯では、バラエティー番組などでダラダラとロシアの核攻撃について取り上げられている。無論、どのチャンネルも同じ事をしている訳ではなく、いつも通りの平和と日常を見せていたりする。

 平和なら良い。一人では限界のある俺が歯軋りしている間に、最上がどこかで新たな犠牲者を生み出してさえいなければ。最上の非道な行いは、例えどんな大義名分が彼にあっても食い止めるべきだ。流石に世界中の国々も、指を咥えて最上の凶行を眺めているだけではないと思うが……。

 

 すると次の瞬間、とうとう恐れていた事態がモニター画面全体を占領する形で現れた。

 

『緊急放送です! 現在、佐世保基地にて未確認勢力との交戦が勃発! 戦火はそのまま市街地にも及び、在日米軍や自衛隊だけでなく住民たちにも甚大な被害がもたらされています! 次にドローンからの中継です!』

 

 現場のキャスターがそう言うと、映像が上空から撮影されたものへと切り替わる。佐世保基地と住宅街の境界線を主に映しているが、それだけでも現地の悲惨さが伝わる。あちこちに黒煙が漂い、火災まで発生している。その規模は決して、個人が引き起こせるようなボヤ騒ぎではなかった。

 画面の端で小爆発が起きる。テールローターがやられて姿勢制御が効かなくなった軍用ヘリが突如、空中で爆発四散した。ドローンに搭載したカメラが高性能のおかげか、その残骸が地上へと降り注ぐ様子が鮮明に撮られる。

 そして、佐世保基地の開けた出入り口のど真ん中で、堂々と一人の戦士が佇んでいた。心無しか、アスファルトの地面にくっきりと残っている数多の黒い影は人の形をしている気がする。

 

 その戦士の姿は間違いなく、ヘルブロスそのものだった。カラーリングは青赤でも、白と水色でもない。どこか量産チックな雰囲気のある二色の迷彩カラーだ。徹底的に基地を破壊し尽くすその個体の他にも、新たな二体の迷彩ヘルブロスが合流してきた。

 ハザードレベル2以上ある人間など、ごく僅か。後天的に上げるとなると、よく訓練された兵士程度でもレベル2未満に終わる。それは先日のネビュラガスが散布された件で証明されている。俺が遭遇した限りでは、スマッシュ化しなかった生身の人間は見つからなかった。他の国々はよく知らないが。

 つまり、あのヘルブロス小隊の変身者全員が人間であると考えるのには、少し無理がある。あんな戦火を引き起こした最上に律儀に従う人間がいる方が驚きだ。ブロス兄弟が反逆してきたばかりなのに。

 俺なら決して裏切らないクローンに変身させる。そして最上ほどの科学者であれば、クローンヘルブロスを生産する事など造作もないだろう。一万人のクローンヘルブロス部隊なんて冗談ではない。

 

 やがて一体の量産ブロスがドローンに向けて、ネビュラスチームガンを撃つ。マズルフラッシュが起きるのも束の間、中継された映像は真っ白になった。

 この一部始終を見ていたラウンジの皆は、誰もが愕然としていた。早速の敵の行動に俺は、知らず知らずの内に握り拳を強く作っていた。

 それを見かねてか、隣にいたナギさんが無言で俺の手を掴む。言いたい事はわかる。彼女と目を合わせた俺は、衝動的になるのを押し殺してキッパリと答えた。

 

「わかってる。一人で飛び出さない」

 

 この後、織斑先生から召集が掛けられた。

 





Q.中継

A.ジオウのアギト編でも、G3ユニットがアナザーアギトに襲撃される映像が報道番組にリークされていたので、これしきのジャーナリズムはセーフ。

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