ナイトローグの再評価を目指す話   作:erif tellab

7 / 77

タカ、フェニックス、ユーフォー。とりあえずこの三本の内のどれかをディスチャージボトルすれば、クローズチャージたちも現行のISとまともに空中戦できると思います。

第四世代? よし、エボルの出番ですね。


波動球。ナイトローグの場合……

 放課後。篠ノ之さんと剣道をしに行った一夏とは別行動を取る俺だったが、訓練機を借りようと受付に赴くと来週の月曜日まで予約一杯だと告げられたのだった。アリーナの使用は普通に認められるとの事だが、実質ぶっつけ本番でクラス代表決定戦に挑めという訳だ。

  昼休みの半ばに三年の先輩が直々にやって来て、わざわざ貴重な時間を割いてまでISの使い方を俺に教えてくれようとしていた。しかし、こうも訓練機が使用できないとなると、実技方面で教えてもらう事はほぼ不可能。その旨を告げた上で俺は先輩の申し出を差し当たりのないように断り、独自の手法で訓練に取り組む事になった。

  早速体育着に着替えた俺はテニスボールとフライパン、バットフルボトルを持って、グラウンドに堂々と降り立った。目の前にはやや高めの段差が連なるコンクリートの階段がある。その一段目の壁に目掛けて、フライパンでテニスボールを打つ。

 

「波動球! 壱式ぃ!」

 

「いや、なんで!?」

 

  瞬間、谷本さんのツッコミが炸裂するが気にしない。雑念は捨てて、波動球のために全神経を集中させる。

  谷本さんの他には鏡さんとのほほんさんが揃って、横から俺の練習を見守っている。また、俺たち四人からやや離れた位置で多くの野次馬が集まっていた。この程度の視線の量で、俺は挫けはしないぞ。 恥ずかしくない! 恥ずかしい!

  右手にはフライパン、左手にはバットフルボトルを持っている。事前にボトルを振ったおかげで全身に力がみなぎり、壁にぶつかったテニスボールは勢いを殺さないまま真っ直ぐ俺の元へ跳ね返る。スタートとしては上々の威力だと思う。

  しばらくは壱式波動球のラリーを続け、慣れとコツを覚えたところで谷本さんたちに今回の目的を教える。まだ壱式までしか打っていないため、その余裕はあった。

 

「波動球を極めれば河村先輩を三千六百メートルぐらい飛ばせる!! すなわち、波動球はISの戦いでも通用する!!」

 

「ちょっと待って! 何かおかしくない!?」

 

「波動球、弐式ぃ!」

 

  大丈夫です、谷本さん。何もおかしくありません。K.O制導入式のテニスの試合なら、こんな技はざらにあります。

  次にテニスボールを打ち返した感触から、確実に威力が上がっていると察する。ラリーを続ける右手に負担が掛かりっきりだが、まだまだ行ける。

 

「うわぁー! 私、本物の波動球なんて初めて見たよ!」

 

「本物って何!? そもそも実現できるの!?」

 

  のほほんさんから感嘆の声が溢れ、谷本さんは俺が現在習得中の波動球に対して懐疑心を抱く。どうしても信じられないというのなら、最後まで刮目せよ。百八式波動球を見事ものにしてみよう。

 

「ハッ! 駄目だよ、日室くん! フライパンじゃあ本物の波動球には至れない! しかもやってる事がむしろ手塚ゾーンだよ!」

 

「ナギ!?」

 

「いや、行ける! フライパンでも行けるぞ! 参式! 肆式! 伍式!」

 

「うわあぁぁぁ!! 音があぁぁ!?」

 

  波動球の威力上昇に比例し、コンクリートの壁とフライパン交互にぶつかるテニスボールの衝撃音が重くなる。誰よりも身近に波動球に接しているせいか、腹にずっしりと響きそうだ。

  しかし、なんのこれしき。こんな危険は最初から覚悟の上だ。波動球すら習得できないようでは、専用機を自由自在・縦横無尽に操るであろあろうオルコットさんに打ち克てないからな。

  ナイトローグ再評価活動中に起きた織斑先生との戦いで、俺はベテランのIS操縦者の実力の片鱗を身に染みるほど思い知った。とにかく、生半可な努力ではちっとも勝てまい。今日の練習が終われば、バットフルボトルの性能を最大限引き出すためにコウモリの勉強をする予定だ。

  やがて波動球は拾玖式のレベルまで昇華する。そろそろ片手で打ち続けるのが苦しくなってきたが、ここが耐えどころだ。弐拾式へと至るために、全身全霊のスマッシュを決めようとする。

 

「弐拾式ぃ!!」

 

  しかし、そうは問屋が卸さなかった。次に右手で感じたのはテニスボールを返した手応えではなく、忽然と軽くなったフライパンであった。それにコンマ数秒遅れて、右手の方から何かが壊れる音が聞こえてくる。

  改めて確認してみると、フライパンは握っていた柄以外が綺麗になくなっていた。咄嗟に後ろに振り向けば、テニスボールを最期まで健気に受け止めつつも地面に横たわる平たい鍋の姿が見えた。

 

「フライパァァァン!!」

 

「柄が折れたぁ!?」

 

  その時、俺と谷本さんの叫び声が辺り一帯に木霊する。居ても立ってもいられなくなった俺は鍋の元へ急いで駆け寄り、膝を下ろして胸元まで手繰り寄せる。

  フライパン……お前は頑張ったよ。元々、廃棄予定だったのを俺が譲り受けた形だけどさ、波動球特訓に付き合ってくれた事には感謝している。こんなにボロボロになってしまった責任は全て俺だ。自惚れる事になるのかな? もっと上手く使えればと、ついつい仮定の話を考えるのは。

  ごめん、フライパン。本当にごめん。こんな風に散らせた命を俺は無駄にしたくない。だけど、弐拾式波動球が失敗して怖くなったんだ。波動球を極められない可能性を垣間見たような気がして、俺は……僕は……私は……自分は……。

 

「ダメだ……こんなんじゃ代表候補生に……オルコットさんに勝てない。一夏にすら勝てない。せめて足元に炎を噴き出して大空に羽ばたくか、津波を纏って空を飛ぶくらいしないと……」

 

  そんな風に茫然自失する俺の前に間髪入れず、谷本さんが立ってきた。彼女はすかさず俺の肩を掴み、前後に身体を揺さぶって喝を入れる。だが――

 

「しっかりして日室くん! そこまでのレベルはテニスに愛された人達だけの次元だから! 私達には無理な話だから! 来週の勝負はテニスじゃなくてISのバトルなんだよ!?」

 

「なら……どうしろって言うんだ? 俺に残されているのはバットフルボトルと波動球、それとイクササイズのみ。もう……もうこれしか……」

 

「どうしよう。この子、すごい迷走してる」

 

  依然として俺はとてつもない動揺に襲われ、気持ちがどん底まで沈む。揺さぶるのを止めた後の谷本さんの発言も、右から左へと聞き流してしまう。

  脱力しきった身体はとうとう、フライパンを抱き抱えたまま地に伏せた。フルボトルを持っても活力は失われたままで、立ち上がる気力が湧いてこない。

  すると、谷本さんが俺を諌めるような調子でゆっくり語り掛けてきた。

 

「ねぇ? やっぱりオルコットさんに頼んでハンデをもらおう? 波動球を極めれば勝てるかもしれないけど、相手はバリバリの代表候補生なんだよ?」

 

「いや、それだけはダメだ。もしもハンデをもらって、極めた波動球で勝ったりしたら相手に言い訳ができる。後腐れなくすには完全勝利か完全敗北の二つしかないんだ! 俺は……あの人に勝ちたい……!」

 

「日室くん……」

 

  俺はその場に横たわりながら、ギリリと歯軋りする。波動球の習得に早くも躓いてしまうのがとてつもなく悔しい。せっかくの一筋の光を見失った気分だ。次に何をするべきなのが、考えが纏まらなくなる。

  ナイトローグ再評価の使命もある。男としてのプライドもある。敗北は気分的にも嫌だから自然と勝利を望んでしまうのもある。だが、そこまでの道筋がハッキリと立てられない。

 

「話は聞かせてもらったわ!」

 

  突如として第三者の声が飛んでくる。谷本さんたち三人の誰でもない。どうやら、野次馬たちの中から飛び出してきた人のようだ。

 

「泉さん? どうしてここに……」

 

  顔を動かして相手の顔を確認する元気がないので、せめて耳をじっと傾ける。代わりに谷本さんが応答した。

  泉さんと言えば、確か俺と同じクラスにいた子のはず。名字までしか知らないが、廊下側の席に座っていたのを覚えている。一体、どういう風の吹き回しだろうか。

 

「ワタシも野次馬たちの中に混ざっていたの。彼の涙ぐましい努力に感動して、居ても立ってもいられなくなったわ! とにかく弦人ちゃんの特訓のコーチは任せなさい、この泉京水に!」

 

「……京水?」

 

  その名を聞いた俺はオウム返しのようにふと呟き、心当たりのある人物像を密かに思い浮かべる。

  不死身の傭兵部隊の副隊長であり、男性であるリーダーを慕う正真正銘のオカマ。関節技と鞭の扱いが得意で、T2ガイアメモリの使用でルナ・ドーパントへと変身を果たす。やたらと名言も残していた。

  しかし、頑張って視線をそちらの方に向けても、ショートボブの小柄な少女の姿を見つけるだけだった。傭兵の方と比べると容姿と性別が随分欠け離れている。面影があるのは服装ぐらいだ。上下ともにジャージを着ている。

  きっと同性同名のだけだな。フルネームを知って嫌な予感がしたが、思い過ごしだろう。

 

「本当にできるの? 少なくともデュークホームランは欲しい気がするかな。波動球と打ち合うなら」

 

  そう言う鏡さんに対して泉さんはフフンと鼻を鳴らし、意気揚々と言葉を返す。

 

「大丈夫、これでも関節技と鞭の扱いは得意だから! テニヌもイケルって! 行くわよ、弦人ちゃん!」

 

「あっ、ちょっ、待ってぇ!?」

 

「くよくよしないの。さぁ、まずは元気を出してちょーだい!」

 

  いきなり襲われると認識するや否や、俺の身体は一気に力を取り戻す。だが、立ち上がった次の瞬間には足を彼女に掴まれ、彼女が地面を転がると同時に前転の勢いを利用されて放り投げられる。

  俺はとりあえず受け身を取って体勢を整えるが、まるで訳がわからなかった。狐に化かされたような気持ちだ。荒療治すぎる。

  また、変に考え事をしたせいで泉さんが繰り出す次の一手の反応に遅れる。フライングボディプレスをもらった直後、仰向けに倒れた俺は彼女に腕の関節を極められた。

  その刹那、彼女に泉京水――男の方――の姿を重ねてしまって仕方がなかった。まだ判明されていないネビュラガスの副作用なのかなぁ……?

 

「ねぇねぇ、きょうちゃん。もしかしてそれってキン肉バスター?」

 

「えぇ、そうよ! でもガードが固くてちょっと難しいかしら……!?」

 

「わぁ! やっぱり!」

 

「キン肉バスターまではやらせないぞ!?」

 

  ついでに、危うくキン肉バスターも掛けられそうになった。華奢な身体のどこからそんなパワーが出るんだ。

 

 

 ※

 

 

  とある研究施設の奥深く。体育館のようにだだっ広い試験ルームでは、科学の鎧を全身に纏う一人の戦士が佇んでいた。右手に巨大な紫の銃を持っており、ピクリとも動かない。まるで屍のようだ。

  戦士の赤い双眼が映すものは何もない。常にうろんな目付きをしていて、一体何を考えているのかは図れない。ただ、ぼおっと正面を見据えるだけである。

  また、戦士の外装は非常に貧しく、内装剥き出しとも呼べる。全体的に黒く、顔付きは見る者の恐怖心を煽るが打たれ弱そうだ。実際、未完成であった。

  その戦士を見守る人たちは全員、試験ルームを見下ろせる部屋にいる。彼らを隔てる強化ガラスは、滅多な事ではヒビは入らない。

  そこでは一人の研究員がパソコンを操作し、室内のモニターに映像を映す。映像の主役はナイトローグとトランスチームシステムの図面であった。映像を目にしたリーダー格の男性が、近くにいた研究員にふと尋ねる。

 

「ナイトローグ、か。これをどう見る?」

 

「開発中のカイザーシステムと酷似しています。ただし、工作員から送られたこのデータを見る限りでは、カイザーシステムに劣るところが幾つか散見されます。コピーにしては、トランスチームガンの独自性が強すぎますね」

 

「兎博士に悟られたにしては不可解な出来上がりだ。かと言って、こちら側のデータの流出の可能性はなかったはず……」

 

  そうしてリーダーは物思いにふける。

  彼らの目的は、独自路線によるISの量産と汎用・実用化。篠ノ之束がカイザーシステムの流用でトランスチームシステムを開発したとしても、元来の彼女の目的に沿わない代物だ。宇宙進出に重きを置いている以上、自ずからナイトローグを生み出すのは考えにくい。そもそも、ナイトローグが日本各地で精力的に人助けや慈善活動をしていた時点で意味不明だった。

  ナイトローグと篠ノ之束が協力関係にあれば、日本政府相手に白昼堂々と間抜けな捕まり方をするのはおかしい。捕まったとしても迅速に脱走したりするのが自然だ。

  つまり、両者は元から赤の他人だと判断できる。ナイトローグ逮捕から結構な時間が経過していても、日本政府や諸外国が“未知のシステム”との見解を示すのも納得が行く。流石の技術大国である日本も、瞬間移動の術は確立させていなかった。

  そのため、データ流出は特になかったと考えても良いだろうと結論付ける。外部からハッキングを受ければ必ず侵入に気付ける上に、内部からデータを取得しようにもごり押し以外では限りなく不可能に近い。それぐらいにセキュリティを徹底的に施しているとの自負が、彼らにあった。

  しかし――

 

「ネビュラガス、スマッシュ。それに“フルボトル”だと?」

 

  映像はやがて内容が進み、新たなデータが映し出される。前者二つはともかくとして、フルボトルという単語にリーダーは目を見開かせる。反応は周囲の研究員たちも同様だった。

  初めて耳にする単語だった。ネビュラガスやスマッシュ等の名称が自分たちの所属以外にも知れ渡っているのには驚きだったが、とりわけフルボトルの存在がダントツの衝撃をもたらした。敢えなく目線がフルボトルの説明文に釘付けとなる。

  その時、ガラス越しにカイザーシステムの集大成と一人向き合っていた研究員が、タブレット端末片手にリーダーへ声を掛ける。

 

「チーフ。そろそろ定期テストの時間です」

 

「ん、わかった。それではガーディアンとスマッシュを投入しろ」

 

  すると、試験ルームの開け放たれたゲートからゾロゾロと、機械兵“ガーディアン”や怪人スマッシュが登場する。それに呼応して戦士の瞳が強く発光し、起動した。戦士が改めて見渡すのは、大半がセーフガードライフルを装備した仰々しい軍団だ。

  まさしく多勢に無勢。それでも戦士は臆せずに立ち向かい、銃の照準をまっすぐ敵勢に合わせる。

  銃の正式名称は駆麟煙銃、ネビュラスチームガン。それから放たれるエネルギー弾の威力はアサルトライフル等を遥かに凌駕し、重火器に相当する。

 

 

 ――素体カイザー無人仕様、戦闘開始――

 

 




Q.カイザーシステム……一体、何難波重工なんだ? 一体、何最上なんだ?

A.トランスチームシステムのお兄さんですね。すなわち、既にこの世界におけるカイザーシステムが開発中であれば、弟分であるトランスチームシステムのナイトローグが周りからIS扱いされるのもおかしくありません(屁理屈)

この兄にして、この弟あり。某○○、狂気の小型化偏重主義と高性能化。




Q.まんま京水ですね。とち狂ったか。辞世の句を読め。介錯してやる。

A.他人の空似です(白目)






元ネタは某YouTubeにて、ビルドドライバーにガイアメモリを挿してみた動画がありまして……ルナティック(狂気)繋がりという事でここは一つ、どうでしょう?

へ? 狂気が足りない?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。