ナイトローグの再評価を目指す話   作:erif tellab

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「前回のあらすじ。トランスチームシステムを失った弦人たちの元に、石倉レオから三つの新型ビルドドライバーが送られる。しかし、頭では理解しても、ナイトローグを裏切りたくない一心でそれを拒絶してしまう弦人。その時、概念的存在に近い方のナイトローグにより、内なる世界へと招かれた。そこで真のナイトローグ足らしめるための試練を、つまりナイトローグになるためにナイトローグを斬る事を強いられる」

「葛城博士。俺も何度も原稿読んだんですが、後半の下りがやっぱり意味不明です」

「安心して下さい、石倉君。私もです。命名方式に関しては、例え中身や見た目が違っても同じ名前を継ぐケースが多いのですがね」

「ところで怪我の具合はどうですか? どてっ腹をあの歯車量産機に貫かれた」

「はい。サイコロフルボトルの出目のインチキ効果がなければ、間違いなく手遅れでした。それでもベッドの上から動けませんが」

「そこのところはご安心を! このレオナルド、全身全霊を以て貴方をお守りします! 私の作った新型ビルドドライバーは世界一! 一万人の歯車野郎どもが押し寄せても、サイコローグでひと捻りにしてやりますから! 平行して地球脱出用の超時空戦闘母艦マザー・メタトロンも作っておきます! さぁ、ディナータイムだ! 死んで喰われろ!」シュシュッ

「テンション高いですね。一応、期待しないでおきます」





Imitation rider → Masked rider

 医務室に漂うアルコールの匂いが鼻に突き刺ささる。大勢を収容できるほどのスペースではないので、集められているのはより重傷を負った者に限られている。箒とシャルロットは、ベッドの上で静かに眠っていた。

 命に別状はないとの事。見舞いに来た一夏は以前にもセシリアと鈴音が同じような事になっていたと思い出すが、今回はその比ではない。いくらこの学園の医療技術が優れ、傷一つ残さず完治できると言っても、限度はある。自分が大切に思っている人が傷付くのは、見るに堪えない。

 一方で千冬の方は案の定、面会を断られた。全身に渡って大量出血し、意識不明の重体と言う。数馬の時とは異なり、異変を察知した教員部隊が助太刀に入った事で止めをもらう事はなかった。

 

 箒たちの寝顔は人形のように美しく、硬かった。生気はあまり感じられず、白雪姫もこんな風に一度死んでいたのだろうかと、とりとめもなく考える。こうして、じっと誰かの寝顔を見つめる事はあまりなかった。

 毒リンゴを食べて死んだ人がキスで蘇るのはお伽話だけだ。実際に必要なのは現場の医療で、専門医でも何でもない、戦うだけが取り柄の自分が彼女たちにできる事は一つもない。無事に回復を祈り、見守るしかなかった。

 今もまだ、数馬は手術を受けている最中だろう。見た目の怪我では彼の方がずっと重い。あの時、変身解除された反動で戦えなくなった自分は黙って眺める事しかできなかった。その悔しさが未だに残り、吐血する友が目の前で死ぬかもしれない瞬間がとても恐ろしく感じた。そして自分がいないところで、守りたいと思っていた人々が倒れている。

 

「箒……シャル……」

 

 当然、呼び掛けても二人は目を覚まさない。唇を噛み締めると、鉄の味が口の中に広がる。

 蘭の人となりはよく知っていた。決して誰かを傷付けるような悪い人間ではなく、むしろ周りに優しく接してあげられる子だ。女子学園に通っているにしては、女尊男卑に染まった性悪さもない。兄の弾とは喧嘩するほど仲が良かった。

 だからこそ、蘭が敵対した事に驚きを隠せないでいる。何かの間違いだと信じたかったが、現実は違った。金色の槍士に変身した彼女に大勢がやられた。死者が出ていないのは奇跡である。

 最上魁星が言っていた。外部装置のチョーカーで彼女に洗脳を施したと。弾もその言葉にどこか思い当たる節があったようで、もしも真実であれば無力な自分以上に許せない悪辣な行為である。洗脳による心身喪失状態であろうが、一度誰かを殺めればその事実は一生消える事なく付き纏ってくる。蘭を人殺しにはさせられなかった。

 

 やがて医務室を出ていく。特に当てもなく歩いていると、途中で弾と出会った。

 冷めた表情とは裏腹に、その瞳には並々ならない熱いマグマのような意志を感じる。かつての軽かった雰囲気がもはや懐かしくなるほど、彼は変わっていた。

 

「弾。俺――」

 

 一夏が話し掛けた瞬間、弾がネビュラスチームガンを出した。銃口は自分ではなく、上を向いている。弾はその紫の銃を横目で眺めながら、淡々と口を開く。

 

「幸い、ネビュラスチームガンなら残ってる。これさえあれば敵のところにひとっ飛びだ。俺は最上を倒して蘭を助ける。お前はどうする?」

 

「行くに決まってるだろ。蘭がまた誰かを傷付けるなら、人殺しになる前に救いたい」

 

 それは願ってもない誘いだった。

 

「止めないのか?」

 

「なんでだよ」

 

「勝ち目もないし、独断行動だ。負ける戦いにわざわざ参加するのもバカバカしい」

 

「でも負けるつもりはないんだろ? 俺もだよ。それにここで塞ぎ込んだら、守れるものも守れなくなる」

 

「……そうか」

 

 しばらく間を置いてから、弾は頷いた。乗り気な一夏を拒否する事なく、意外だという風な顔も元の素っ気ないものへと戻っていく。

 トランスチームガンを失った弦人たちはもう満足に戦てる力がなく、自分たち二人だけでは勝算もない。それでも譲れないものが、わざわざ言葉にしなくとも互いにあるのだと確認し合えた。次にどこかが襲われない内に、敵を叩かなければならない。

 

「あっ、いた! 一夏ちゃーん! 弾ちゃーん!」

 

 その時、どこからともなく京水が駆け寄ってきた。何気なくそちらに振り向く一夏の傍らで、ちゃん付けされた事に激しく動揺した弾が危うく転びかけた。オウム返しでボソリと「弾……“ちゃん”……?」と困惑気味に眉尻を上げるが、彼女は気にせず言葉を続ける。

 

「ちょうど良かったわ、二人揃ってて。特に弾ちゃんにお願いがあるの!」

 

「そ、そうか……」

 

 戸惑いながら答える弾は、思わず小声で一夏に話し掛ける。

 

(おい、ちゃん付けって何だ?)

 

(これが泉さん。俺も最初は変に思ってたけど、もう慣れた。本人も悪気はないみたいだし、嫌いになれない)

 

 彼のもっともな疑問を率直に返す一夏。渋々といった形で弾が納得すると、二人のそんな様子に興味を持った京水が子犬のように付け回る。

 

「なになに? いきなりコソコソ話してどうしたの?」

 

「何でもない。それより弾の用事って?」

 

「あっ、そうそう! ちょっとね、一緒に戦ってくれるのならぁーって思って……ハイ!!」

 

 そう言って京水はビルドドライバーを取り出した。

 

 

 

 

 

 

 傷はのんびり治す暇がない。生傷が癒えないまま、ナギは彼と同じように飲み薬で痛みを誤魔化す。人体実験の影響で遥かに丈夫になっていなければ、命はなかったかのようにさえ思える。

 ここになって今更、黒を基調にした戦闘ジャケットで身に包む。変身すれば服装は関係なくなるとは言え、変身解除させられるほどの大ダメージを受けてからは反省した。ISに乗る時のように、戦いやすい格好でいた方が色々楽で済むという事を。ボロボロになった私服の自分を親が見れば、間違いなく良い顔をしない。

 

「じゃーん」

 

 弦人の前で、彼とお揃いの戦闘ジャケットを着こなしたナギは披露する。ホットパンツに膝当て、太ももにナイフベルトを巻き付け、走りやすさを重視している。邪魔な布地を取り払った脚部の健康的な肌が露出し、上着も脱げば陸上の時と変わらない格好となれた。

 笑顔で明るく振る舞う様は、頭に巻かれた包帯などの悲惨さを感じさせない。Vサインを決めて、目だけで語り掛ける形で弦人に感想を求める。彼もまた、長袖長ズボンとキッチリ決めていた。

 

「……夏に長袖って暑くない?」

 

「うん、暑いね。――って、違う!!」

 

 期待していたのとは違った言葉に自分もそう感じていただけあって、うっかり頷いてしまった。くわっと否定すれば、弦人は「似合ってる」と軽く口にするだけでそそくさと横を通り過ぎようとする。

 求めていたのは正にそれであるが、あまりにもあっさりしすぎであった。状況が緊迫しているだけにナギはそれ以上の我儘や贅沢は言わずに、一応はそれで満足して彼に付いて行く。着ている戦闘ジャケットは夏仕様であるので、そこそこ風通しは良かった。

 

 あの後、弦人は苦い表情でビルドドライバーを受け取った。どうしてトランスチームガンにそこまで入れ込むのかは不明だが、その愛着や拘りようは他人から見ても普通ではない。何か、自分が想像しているものよりずっと深く大きな闇がそこにあった。

 それはきっと、誰かにあまり知られたくない事なのだろう。自分だって、プライベートな情報を赤裸々に語れるほどの図太さはない。そう解釈したナギは取り敢えず彼の内に秘めた事情には触れようとはせず、向こうから話してくれるようになるまで待つ事にした。個人的に気になっているのは事実である。

 

「ナギさん、本当に最後まで付いて来る気?」

 

 すると、何食わぬ表情でそう尋ねてきた。すかさず「うん」と首を縦に振れば、今度は立ち止まって互いの顔を見合わせる。

 いつもよりも距離が近い。一瞬ドキリとするが、どこか暗く沈んだ面持ちに気をしっかりさせる。どう考えても自分の予想とは違う話が飛んでくると、何となく察した。

 

「さっきの戦いで、数馬がやられた。次も、もしかしたら俺はまた力不足で誰かを守れず犠牲にするかもしれない。俺は、ナギさんにはこの戦いから抜けて欲しいと思ってる。京水もだ。ハッキリ言って勝算は――」

 

 彼の唇にわざとらしく人差し指を当てて、言葉を遮る。少しだけ面食った弦人は、ナギの指先から逃れようと僅かに顔を逸らさせた。

 

「どんなに言われたってやる事は変わらないよ、私は。泉さんもそうだと思うし」

 

「お前が残ってくれれば、心置きなく俺は戦えると言っても?」

 

「それって確実に死んでくるヤツだよね。自分が負けても次の人がやってくれるって。ならダメだよ、死ぬ前提で行かせるのは」

 

 それこそ自分の望まない結末である。ナギが弦人と肩を並べたいのは共に死ぬためではなく、まだ見ぬ明日を生きて掴む事だ。ここで二人の青春を終わらせるには早すぎる。

 特攻隊のように命を投げ捨てるつもりなら、尚更この人を止めなければならない。誰かのために命を賭けられるのは美徳だが、死んでは未来の分まで務めを果たすのは不可能である。自分は彼に死んで欲しくなかった。

 

「それに、私はじっとしたくない。何の力もなかったら遠くから無事を祈るぐらいしかできないけど、今の私は戦える。ここで何もしない方が一番最悪な選択肢だから」

 

 彼に惹かれていなければ、こうして一緒に戦おうとも思っていない。本気で想うのならば、有言実行を貫くのならば必然の行動だ。誰にだって止める事はできないだろう。

 一度自分の思いを伝えると、考えるように弦人は目を閉じる。それから真剣な表情でナギと見つめ合えば、ナイトローグに変身している時と変わらない厳かな口調で一つ問う。

 

「じゃあ覚悟が出来てるんだな?」

 

「うん」

 

「なら約束しよう。お互いに背中を守り合って最後まで生き残る、誰も死なせないって」

 

 そうして二人は指切りした。二人の顔つきには、決して負けはしないという固い決意が込められている。正真正銘、次の戦いで最後にするつもりだった。

 

 その道中、格納庫からジェットスライガーを出そうとする時に癒子と出くわした。

 

「日室くん? ナギ?」

 

 独断行動の真っ只中を目撃されてしまった。このまま帰せば、話を聞き付けた千冬が古代の眠りから目覚めた戦闘民族のように蘇り、自身の負傷を押してまで止めてくるかもしれない。かと言って、親しい間柄であるので口封じするのも憚られる。トランスチームガンで変身できれば、麻痺を使うという選択肢さえあった。

 しかし、やってみなければわからない事もある。素直に事情を話せば、渋い表情をしながらも秘密にしてもらえるように頼めた。その際、彼女は弦人にロットロの形見である銀のフルボトルを渡した。

 

「谷本さん、これって……」

 

「お守り。これを貸すから、ちゃんと無事に帰ってきてね? でないと祟るから」

 

 “祟る”の部分を少々洒落にならないほどの真顔と語気で放つ癒子に、大切な物を預かる事になった弦人はその気持ちを受け止める。それにホッとした様子の癒子は、「それじゃ、またね」と言い残してその場を去っていった。

 第三者の登場もあっという間に過ぎ去り、準備が再開される。癒子から受け取ったフルボトルを懐に仕舞う弦人を見て、ふとナギは一つ彼にお願いをしてみた。

 

「弦人くん。この戦いが終わったら、私の事“ナギ”って呼び捨てで呼んでくれる?」

 

「わかった」

 

 その予想だもしない即答に己の頭が理解を示すまで数秒を要した。その間は平然と準備を進め、ようやくイエスと答えられたのだと気付くと彼の顔をつい二度見してしまう。

 そして俄然、志半ばで倒れてしまうものかと胸に誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

 地平線の下へと太陽が沈み、茜色の空を海が綺麗に映し出す。さざ波に乗った船舶が漁から戻り、餌を求めて海面上を飛び回るカモメやうみねこの姿もいなくなる。もうすぐ夕方から夜へ時刻は進もうとしていた。

 まだ陽が沈みきっていない内に、既に東の空には月が朧げながらも健気に昇っていた。月食でも何でもない、ただの月だ。まるで吉兆を報せない、いつも通りの姿にいちいち気に掛ける者などおらず、横須賀や佐世保、沢芽市での事件を対岸の火事としか思っていない人々は普段の日常を当たり前のように過ごしていく。ある人は部活で、ある人は残業で、ある人は帰りの電車で身体を揺らされながら、夜を過ごそうとする。

 

 しかし、時に火事は対岸にまで火の粉を飛ばし、遥か遠くまで燃え移る事もある。アメリカの森林地帯を一気に焼き尽くすような大火事なら尚更だ。例え人の手で起こされなくとも、自然の猛威が火を生み出す。

 神奈川県に面した相模湾に、一隻の黒船が訪れる。黒船の全長は島一つ分と言わんばかりで、その仰々しい外見は明らかに艦船のそれである。誰がどう見ても、自衛隊の船とは思えないサイズと武装だ。ここまで自己主張が激しい艦船が世論や議会で一切取り上げられていないのもおかしく、極秘に開発を進めてきたにしては、とても秘匿しきれるようなものではないと素人目でもわかる。

 第一、それは本当に船なのか。島の間違いなのではないのか。謎の黒船の登場に、海岸線沿いでその姿を目にした人々が珍しさで集まり始める。黒船の出現は、まるでテレポートしたかのように唐突だった。

 

 そんな野次馬たちに遠くから写真を取られながら、やがて黒船は横須賀の浜辺へと真正面から接舷する。全高だけで、東京スカイツリー六本分は悠に下らない。こんな巨大すぎる建造物が実在し得るのかと、より間近で黒船を見ていた人々が思う。宇宙空間でなければ、自重で潰れるのが関の山だ。

 

 それほどの質量のほんの少しでも何かにぶつかれば、鎧袖一触で相手を破壊できる。されど黒船は浜辺を荒らさないよう、船にしてはあり得ない動きで優しく泊まる。

 その時だった。左舷側のキャリアーから、何かが一斉に飛び立ったのは。

 

 

 

 

 巡航形態となったエニグマが横須賀に到着する直前、弦人、ナギ、一夏、弾の四人は海を一望できる場所で待ち構えていた。衛星写真からエニグマが相模湾にワープしたと聞き付け、独断でここまでやって来た。

 近くに人の気配はない。すぐ後ろには、二台のジェットスライガーが停めてある。エアバイクというカテゴリだが、ロケットのように空を一直線に飛ぶ事が可能だ。わざわざこのモンスターマシーンを公道に走らせずとも、その上を飛び越えてエニグマの元まで行ける。搭載武器も単純火力だけなら十分に頼もしい。

 

 見下ろす街はエニグマが近付いているにも関わらず、信じられないほどの賑やかさだ。IS学園に艦隊が大挙した一件は日本中に知れ渡っているが、エニグマの存在自体は見事に情報規制で秘匿された。何も知らない市民が初めてエニグマを見て、どうして事前に避難しようと思えるのか。既に県庁や政府にも、この事が耳に入っているはずである。

 

「こんなに近いのに避難警報の一つもない……? どうしよう!?」

 

「その時は俺たちで避難誘導させるしかない。最初向こうから来るなら待ち構えればいいって思ってたけど、そんなに甘くなかったな……!」

 

 慌てふためくナギと一夏。エニグマのその常識外れのサイズから、なかなか距離感を掴めさせない。今、海岸沿いでエニグマを目にしている大衆たちは実際の巨体を認識できないまま、呑気にエニグマの写真をSNSなどに上げている事だろう。

 先制攻撃されれば、想定される被害は尋常ではなくなる。

 すると、おどろおどろしい音が四方八方から夕闇に響き渡る。このタイミングでようやく避難警報が発せられた。エコーで「こちらは消防横須賀――」という声が些か聞き取りにくいが、四人だけで駆けずり回るよりも効果はある。後は時間との勝負だ。

 

 エニグマの巡航速度は巨体に反して素早い。数分もしない内に横須賀へと到着する。多大な犠牲を周囲に強いた忌むべき存在を弦人は見据えながら、その手に握り締めたフルボトルを見やる。

 人工型のバットフルボトルとエンジンフルボトル。思えば長い付き合いとなったその二本に感慨深いものを抱く。バットだけを一生使い続けるのかと思いきや、案外そうでもなかった。

 ポケットからは、コウモリに変形したガジェットがぴょっこりと踊り出た。同じガジェット仲間であるブラッドドラゴンと一緒に飛び回り、それぞれの持ち主の手のひらへと収まっていく。できる事なら、ビルドドライバーで変身するのは一度限りだと願いたい。

 

『『Wake Up!』』

 

 二人同時に、ガジェットにフルボトルを装填させる。変身形態となった二体の起動音がよく響く。

 この場にいるドライバー使いは一夏を除いた三名。無理に数を合わせるよりも個人を尖らせた方が良いと判断した京水は、自分のドライバーを弾へと譲って辞退した。ネビュラスチームガンのデータも入っている最新型であるため、ギア使用でも問題なく変身できた。現在、京水は鹵獲したバイカイザー用のギアとネビュラスチームガンを手に、万が一のためIS学園に残っている。

 隣で一夏は自身のボトルをよく振り、弾はギアリモコンとギアエンジン両方を取り出す。彼らより一足早く、弦人とナギはガジェットをビルドドライバーにセットした。

 

『ナイトローグ!』

 

『ブラッドドラゴン!』

 

 陽気でネイティブな男性の発声が、これから先の不安や心配を払拭させて装着者をそこはかとなく勇気付ける。

 

『ユニコーン! イレイサー!』

 

『Gear engine! Gear remocon! ファンキーマッチ!』

 

 次いでレバーを回転させる。音声だけでなく、ドライバー本体が奏でる軽快な工場音も相まって実に騒がしい。トランスチームシステムのように変身シークエンスは簡潔に済まず、シンプルにISをスマッシュ化させる一夏の傍ら、弦人たちの前後にはそれぞれドライバーから“スナップライドビルダー”が色鮮やかに延びていた。

 

『『Are you ready?』』

 

 ビルドドライバーがそう問い掛ける。肯定の代わりとして、三人は一斉に「変身」と呟いた。すかさずスナップライドビルダーが彼らを挟み込み、前後に分離されていた変身スーツを合体させていく。

 

『The king of darkness, activation “night-rouge”……yeah……』

 

『Wake Up burning!  Get, blood-dragon! Yeah!』

 

『Perfect!』

 

 変身システムを一新させた彼らの姿は、手足や頭部にビルド系列の特徴が浮きつつも元の面影をしっかり残していた。

 ナイトローグのスチームパイプは尚も健在。一見マッドローグを黒くしたような姿だが、頭部の角やコウモリ状のゴーグルはそのまま。ビルドをベースにデザインが上手に噛み合わさった三本角となっている。

 ブラッドスタークは全体的に蛇竜へと昇華した姿に変貌していた。かのクローズのように羽織ったボディアーマーには真紅のコブラの意匠が装飾され、背中には翼が小さく折り畳められている。左腕の毒針はそのまま。かつての宇宙飛行士然とした格好から、より戦闘的なイメージを抱かせた。

 ヘルブロスはナイトローグと同じく変化性に乏しい。しかし、機械が人間性を得たような瑞々しい活力を全身に漲らせていた。それに合わせて、歯車のアーマー表面に新しく描かれた金色の紋様が律動するように光る。

 四人の戦士が集い、事前に打ち合わせた通りの行動をする。ナイトローグとブラッドスタークが乗ったジェットスライガーに残りの二人がそれぞれ後ろに乗り、エニグマへ向けてアクセルを思い切り踏み締めた。

 

 





Q.新型ビルドドライバー

A.ネビュラスチームガンのデータ入りなので、ギアにも対応。


Q.バイク

A.取り敢えずアニメや漫画なら、道路交通法を気にせず公道にバイクを走らせ放題になれます。あの首都高ですらも。

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