ナイトローグの再評価を目指す話   作:erif tellab

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光芒 ―unite― 前編

 しばらく歩を進めると、夕闇の空が広がる頂上へと出た。辺り一帯は均一に切り整えられた芝生の景色が続き、その先に柱やアーチなどの巨大で簡素なオブジェが複数存在する。ナイトローグとブラッドスタークが向かうそこに、EVOLカイザーは佇んでいた。

 

「来たか。早速で悪いが、バーンハザードスマッシュの遺したフルボトルを返してもらおうか」

 

「断る」

 

 EVOLカイザーの要求には応じない。ナイトローグは即答する。

 

「そのフルボトルから、あの少年を生き返らせてやろうと言ってもか? 私ならそれが可能だ」

 

 それこそ、命を大事にする者なら唾棄すべき言葉だった。

 

「それ以上、人の命を安くするな……!!」

 

 怒りで語気が強まる。どんなに時代が移り変わろうとも、破壊と比べて創造は格段に難しい。生命を作り出す事さえ、クローン技術が登場したのは歴史全体で見て最近の出来事だ。

 おおよそ全ての生命は、割りと呆気なくその生涯に幕を閉じる事がしばしばある。単なる風邪でも正しく処方をしなければ命の危険に繋がり、大切な器官が一つでもダメになるだけで長く生きられなくなる。無邪気で純粋無垢な子供たちに踏み潰される蟻のように、たちまち死んでしまう。それは他の動物たちに置き換えても結果は変わらない。

 自然の摂理で見れば、そんな事は日常茶飯事に過ぎない。地球全体で見れば、例え大量虐殺が引き起こされてもちっぽけな命たちがポツンと消えた程度の感想だ。感じる事は何もないはず。しかし、自分たち人間は知性や感情を得ている。善悪という概念が生まれたりもすれば、あらゆる物事をシンプルに帰結させる事はない。むしろ、ちっぽけでかけがえのないものだからこそ、大切に守らなければならないという考えもできる。エニグマに突入してきている面々は間違いなく、その中の一員と言えた。

 静かに怒るナイトローグに、EVOLカイザーをそっと溜息をつく。やれやれと言う風に肩をすくめ、常人とは逸した思考を以てしてナイトローグたちの琴線を何気なしに撫で回していく。

 

「交渉のつもりだったのだが、あっさり蹴るか。救える人間を即座に諦めるとは、これではどちらが命を冒涜しているかわからないな。いや、他者からの承認がなければ自己も保てない脆弱な者を救う価値などないか」

 

「一度死んだ人間の命は戻らない。生き返る手段があるからって、簡単に誰かを殺せるあなたの方が異常よ! どうせクローンってオチなんでしょ? わっかりやっすい!」

 

「バグスターウイルスを応用すれば、正真正銘の本人が蘇生できる。……と言っても、ブラッドスタークには説明してもわからん話か」

 

 声を荒上げるブラッドスタークへの説明を中途半端に切り上げるEVOLカイザー。無論、キッチリ説明しても正しく理解できるのはナイトローグのみ。死者蘇生などという、そんな都合の良いものを実証もなしに信じる事のできる人間など、そうそういやしない。

 当然、そんな彼の譲歩を聞き入れるつもりはナイトローグには毛頭なかった。ただでさえ、あの少年を救う事ができなかったのだ。せめて、化物でありたがった彼を突き放すのではなく、人間として引き留めさせてあげたい。バグスター化させてしまえば、今度こそ少年は元に戻れなくなる。殺す事でしか救えなくなる段階まで真っ逆さまに落ちてしまう。

 最初から成立の目処は立ってはいなかった交渉が決裂し、三人は一斉に戦闘態勢に移る。揃ってビルドドライバーを腰に巻いている彼らを見て、EVOLカイザーは嘲笑した。

 

「白式以外の侵入者はドライバー使いに成り下がったか。それを破壊すれば攻略は容易い」

 

「行くぞ、スターク」

 

「おう!」

 

 ナイトローグはスチームブレードを、ブラッドスタークはビートクローザーを手に突撃を開始する。対してEVOLカイザーは己の余裕と優位を誇示するかのように、素手で迎え撃った。

 手刀と剣がぶつかり合う。腕部の非常識な耐久力を前に切断は叶わず、単に真正面から攻めるだけではEVOLカイザーの防御は崩せない。ナイトローグたちが交差させた剣を片手であっさり受け止め、逆に数発の殴打と蹴りを素早く放つ。僅かに後退りした二人は左右に散り、周囲にある柱を足場にし、とにかく不規則に跳び回ってEVOLカイザーに攻め掛かる。

 若干、戦闘の優劣が変化する。背後から迫るブラッドスタークをEVOLカイザーが地面に叩き落とした刹那、ナイトローグがスタンプのように何度も蹴り付けてきた。それを受け流せば、今度は真下からブラッドスタークのアッパーが飛び出る。顎と拳が微かに触れ、ビートクローザーが振られるよりも早く彼女を殴り飛ばす。

 

 ブラッドスタークがそそくさと受け身を取るのも束の間、EVOLカイザーの全身が赤い残像となって激しくブレる。瞬きした瞬間には、二人の身体が転がされる。受け身を取る暇もなく、揃って宙に大きく舞う。EVOLカイザーが残像ワープを止める気配はない。

 この時、不意にもナイトローグとブラッドスタークは背中合わせとなった。浮遊感に包まれた中、EVOLカイザーが接近してくるのを辛抱強く待つ。ナイトローグの目前に赤い光が高速で詰め寄ってくるや否や、拳を振りかぶってくる寸前に朧げだったEVOLカイザーの肉体が実体化する。相手の攻撃よりもコンマ数秒早く、ナイトローグはスチームブレードを突き出した。

 みぞおちを穿たれ、EVOLカイザーは大きく仰け反る。即座に残像ワープを再開するものの、次の狙いであるブラッドスタークにも反撃をもらってしまう。三度目、今度は二人同時に叩き潰さんとするが、やはりカウンターを決められる。地に落ちたEVOLカイザーの元へ、ナイトローグたちが降り立った。

 

「ぐっ……! 見切っただと……!?」

 

「もう目が肥えた!」

 

『スペシャルチューン!』

 

 そう答えたブラッドスタークは、ナイトローグから渡されたエンジンフルボトルをビートクローザーにセット。柄部分のレバーを二回引く。

 

『ヒッパレー! ヒッパレー! ミリオンスラッシュ!』

 

 刀身から翠炎の火炎弾が放たれる。EVOLカイザーは間一髪でそれを腕で弾くと、突如としてナイトローグに後ろを立たれてしまった。近くを黒い煙がゆっくりと霧散していく。

 いつの間にかエレキスチームを発動させた刃を、真上に跳躍して避けるEVOLカイザー。そこを間髪入れずに柄を三回引いたブラッドスタークが、自身の身体にも翠炎を纏わせながら斬撃を連続で放った。

 

『メガスラッシュ!』

 

 数多の物質を焼き斬る業炎は両腕でガードされる。しかし、二発目の斬撃はナイトローグの方へと向かった。EVOLカイザーとは対照的に、その翠炎は彼を燃やし尽くす事はない。それどころか、炎を受け入れたナイトローグはブラッドスタークと同じようにブレイズアップモードへと移行していた。纏った炎の色も、翠から紫へ変化する。

 炎の加護を得た二人の身体能力が強化され、ほんの一瞬でEVOLカイザーに近づき、すれ違い様に斬り付ける。それは単に斬り傷を与えるだけでなく、じわじわと獲物を弱らせる猛毒の如くEVOLカイザーの装甲を浸食していく。

 

「チッ……舐めるなぁっ!!」

 

 ナイトローグたちが再び攻撃を加える直前、EVOLカイザーは周囲に赤いバリアを張る。炎を帯びる剣とバリアが衝突しあい、やがて力負けした二人の身体が大きく弾き飛ばされる。その勢いでブレイズアップモードも解けてしまった。

 二人が起き上がる最中もEVOLカイザーはバリアを張ったまま、その中に閉じこもる。互いに顔を見合わせたナイトローグとブラッドスタークがもう一度立ち向かって来た時に、バリア内部に変化が訪れた。

 おぞましい漆黒の稲光が迸る。バリア解除と共にそれは周囲に衝撃波を飛ばし、辺り一帯に建てられているオブジェをあらかた破壊し尽くす。身を屈めて衝撃波を忍んだナイトローグたちが顔を上げると、そこにはフェーズ3へと進化したEVOLカイザーがいた。同時に、彼の身体から液状の何かが一つ放出される。

 

「ロットロ!?」

 

 目の前に転がってきたそれを見て、ナイトローグが驚愕する。スライム状態でありながらも猫の面影を残しているそれは、まさしくロットロであった。以前に会った時とは大きく違い、酷く衰弱している。命は風前の灯火かのように思えた。

 

「SOLUからブラッド族の遺伝子を完全に引き抜いた。直にそいつは息絶え、そして私は再び進化を始める」

 

 そう言うEVOLカイザーに、ナイトローグは優しくロットロを手のひらに乗せる。目と鼻の先で小さな命が死んでいく事に、彼の隣に立つブラッドスタークも動揺を隠せない。ナイトローグの手の中で鼓動を続けるSOLUの生命が、だんだん消え去っていく。

 

「急激な進化の先には死しか待っていない。だから私は敢えて緩やかな進化を選んだ。そのために必要なのは現在開発中のロストスマッシュと、死亡した所有者が限界まで力を引き出したフルボトルの吸収。殺せる場面があったのに貴様たちを生かしたのはそれが理由だ」

 

 特に求められている訳でもないのに、淡々と話し続けるEVOLカイザー。その声に並々ならない憤りが込められているのは、誰が聞いても明白だった。

 

「だが、やはり仮面ライダーを放置するのはリスクが大きすぎる。飼いならすならスマッシュで十分。……理不尽な奇跡などうんざりだッ!! 二度と正義だなんだとほざけないよう痛めつけてくれるッ!!」

 

 そして、間を置かずにフェーズ4へと至った。それに応じてエニグマも上昇しながら、人型の戦闘形態へと変形していく。一気に頂上の傾斜が高くなり、遂に足が地面から離れたナイトローグとブラッドスタークは一緒に翼を広げる。

 

「弦人! 鏡さん!」

 

 その直後、遅れて白式HSが現場に駆け付けてきた。ヘルブロスも気絶した蘭を大事に抱えながら、この外へと出てくる。

 

「白式、ヘルブロス、インフェルシス。まだ貴様たちは要らん。ここで退場だ」

 

 だが、EVOLカイザーにあっさりと冷酷な宣告を下される。赤い光の壁が彼ら三人をエニグマから追い出し、スカイウォール内に自身諸共ナイトローグとブラッドスタークを閉じ込めた。遥か上空まで勢い良く上り詰めたエニグマは、頭上に展開したワープゲートを爪先まで下ろして日本の地から消え去る。

 

 

 

 エニグマの新たな空間転移先は、太平洋のど真ん中。おもむろに海の中へ脚を沈めていくエニグマの内部で、改めてナイトローグたちはEVOLカイザーと対峙していた。足場などどこにもない、無限に距離が続く暗黒空間へと導かれて。

 瀕死のロットロを、ナイトローグはエンプティボトルの中へと逃がす。それを懐へと仕舞えば、一先ず安心だ。

 

「スターク。もう一度ブレイズアップモードできるか?」

 

「できるよ。けどちょっと疲れる」

 

「死ななければ安い」

 

 ブラッドスタークと短く言葉を交わし、再度ブレイズアップモードを発動した彼女から炎を受け取る。暗黒空間に二つの灯火がほんのりと現れ、闇を仄かに照らす。

 

「無駄だ! その程度で星狩りの力には敵わん!」

 

 構えるEVOLカイザーの背後に無数の光球が現れる。光球を基点にし、夥しい量のビーム砲撃が降り注がれた。咄嗟に回避行動を取ったナイトローグたちは、弾幕の中を掻い潜りながら敵の元へ着実に近付いていく。

 しかし、EVOLカイザーは彼らに近付かれる事を良しとしなかった。自身も後ろへ下がっていく一方で、大量のフォレストシーカーを放つ。偵察機に過ぎない球体状のそれは正方形のワープゲートを潜り抜けて射出されるだけでなく、たちまちプレス機の姿へと変化していく。

 正面の砲撃。四方八方から無尽蔵に襲い掛かってくる飛来物。衝突しようとするプレス機の威力は尋常ではなく、一度当たれば攻撃の荒波に飲み込まれかねない。

 ブラッドスタークの全方位をプレス機が囲む。彼女はスティングヴァイパーを器用に扱い、さっと自分の周りに崩壊毒を撒く。その中目掛けて飛んでいくプレス機が次々と自滅していくが、崩壊毒の量が足りない。物量で容易く突破され、胴に直撃を受けた彼女の身体が跳ねた。

 

「あぅっ!」

 

 前後左右より飛来する、ペアを組んだプレス機が立て続けに彼女を何度も押し潰す。執拗にビルドドライバーを狙い、破壊を試みる。

 どうにかこのパターンから抜け出そうとするブラッドスタークだが、立方体の形でワープゲートに全方位を大きく囲われる。全てのワープゲートの先には、鏡写しのように自分の姿があった。加えて、この結界内に一つだけ出現した新たな小さい出入り口から、ビーム弾幕が乱反射される。

 遠慮なしにビームやプレス機の飛び交う景色が俄然うるさくなり、狭苦しさは倍増する。躱す度に弾幕密度は引き上げられ、煙幕を纏った空間転移を実行しても元いた場所に留められる。一秒経過する度に、密閉された強化ガラスの水槽に水没させられる人間のように、逃げ場が奪われていく。どれほど弾幕を叩き落としても、焼け石に水だった。

 

「スターク!」

 

『Ready go! ボルテックアタック!』

 

 急速に引き返してきたナイトローグが、ビルドドライバーのレバーを回す。漆黒の翼から紫炎の刃が限りなく伸ばされ、ワープゲート同士を結び付けるラインを正確に斬り裂く。

 その僅かな隙間からブラッドスタークが一目散に飛び出してきた。それを追い掛けるかのように、結界内部を延々と彷徨っていた弾幕が一斉に溢れ出す。とにかく弾幕密度は更にえげつなくなり、今度は二人ともワープゲートの結界に閉じ込められる。

 休む暇もない。ナイトローグはブラッドスタークを抱えたままその場を回転し、光の翼を振り回す。ほとんどの弾幕をあっという間に蹴散らした。

 その後、どこからともなく光球がゆったりと送られてくる。それを無視して外に出ようとした矢先、途端に融解を始めた光球にナイトローグが舌打ちした。

 

「くそっ!」

 

 光球が大爆発を起こしたのは、その直後だった。爆発の規模はワープゲートの結界をあっさり崩壊させ、紅蓮の炎を巻き上がらせながら十字架状に広がる。容赦なくナイトローグたちを焼き払って――

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒焦げとなった翼が折れ落ちる。新しく予備の翼が生成されるが、実際に使えるようになるまで時間が掛かった。翼に包まってブラッドスタークを庇ったナイトローグは、防ぎ切れなかったダメージでボロボロになりながら、無数のデブリが漂う中にいた。

 二人とも、全身に纏った炎を再び失っていた。ナイトローグと比べて、決して受けたダメージは少ないブラッドスタークが彼の心配をする。

 

「弦人くん! 生きてる!?」

 

「……ああ、だが――」

 

 彼女の両手が優しくナイトローグの頬に触れる。既に両者は満身創痍で、ブラッドスタークに至ってはビルドドライバーの損傷具合が不安だ。過去に変身デバイスの破壊で命を落としていった仮面ライダーの数は、そう少なくはない。もしも生身でこの暗黒空間に放り出されれば、ほぼ宇宙と変わらない環境で一瞬にして死に絶える事だろう。

 その遥か彼方、遠方にてEVOLカイザーは二人を見下ろす。絶対に近付かないという鋼の意志が見て取れた。彼がさっと手を動かすと、周囲に数多な映像が浮かび上がる。そこに映るのは全て、一体ずつ形態が異なる仮面ライダービルドたちであった。

 

「これはエニグマが観測している平行世界の映像だ。どの世界にも害虫のように仮面ライダーが存在している」

 

 ファイヤーヘッジホッグが火事現場の沈静化や被災地などの救命活動に勤しむ。

 キードラゴンの設立した信用金庫が一躍有名となり、絶対に破る事が不可能な金庫として世界中に知られる。共に活動するゴリラモンドは、全ての人々が宝石を手にできるようにダイヤを大量に生み出し、供給過多でダイヤの相場を大幅に下落させた。

 海賊退治する海賊電車。命懸けな海難事故に立ち向かうオクトバスライト、ハチマリン、サメバイク。タートルウォッチとコンビを組んだライオンクリーナーは見事な手腕で、海のど真ん中に溜まっているゴミを全て片付けた。

 どんな過酷な戦場であろうとも生還率120%で知られる戦場カメラマンのビートルカメラ。

 空の事故に迅速に対処するクジラジェットとホークガトリング。

 世界中に散らばる貧しい子供たちのために夢と希望を送り、そのための支援に一切手を抜かないサンタケーキ。

 自身が描いた漫画がアニメ化するほどまで大成功し、それで成した財産を躊躇なく募金に投じるニンニンコミック。アシスタントは分身。コミックマーケットに出す同人誌の価格は全てワンコイン。

 密猟者から絶滅危惧種の野生動物を守るために、シカピラミッドやキリンサイクロンが日夜奔走する。砂漠化が進む大地にローズコプターが緑を取り戻す。その頃、サイドライヤーは野生動物保護の仕事と平行して一流トリマーとなっていた。

 地球温暖化の影響で氷河が溶け、海面が上昇し、小さな島々が沈没する事を嘆いたスパイダークーラーとペンギンスケーターが、これ以上の氷河の溶解を死守する。

 ロケットパンダ、トラUFOが宇宙開発に勤しむ。異星人の侵略戦争が引き起こされた際は、フェニックスロボが先陣を切って宇宙を駆ける。終いにはドッグマイクの歌でミンメイアタックを敢行し、星間戦争を終結に導いた。

 サイバー犯罪と戦うスマホウルフ。守りたいものもなく、ただ仕事のために変身していた彼は相棒のクマテレビを通じて、多くの仲間たちと絆を深めていく。

 

 用いられるフルボトルは六十本だけではない。レジェンドミックスのボトルも使われており、動画配信サイトを通して無数の人間に呪いを掛けた貞子を倒すために、マグゴーストとおばけパーカーが協力する。

 街の事件を解決する探偵USB。人体に感染するコンピュータウイルスを完治させるゲームドクター。友情ロケットはトランスチームガンで変身したゼブラ、シザース、ハンマー、スパナと共に月面基地を組み立てていた。

 

「こんな連中に私の不老不死の実験が尽く邪魔された。どんなに殺しても、人々の心の中にある希望という漠然としたもので蘇ってくる……!!」

 

 誰もが自分の信じる道を突き進んでいる。そんな彼らの様子が気に食わなかったEVOLカイザーは、握り潰すようにして映像を次々と消滅させていく。

 

「近い将来、パンドラボックスの欠片を求めてブラッド族の残党が地球に訪れる。大国の主要者は軒並み寄生され、パンドラボックス修復の先に待っているのは地球の滅亡だ。彼らを殲滅するために不老不死を目指す私の方がよっぽど世界のために動いているのに、何故それを邪魔する? 元から命の値段は安い。全ての人間を救う事も最初から不可能だ。そしてわざわざ救う価値も必要性もない」

 

 新たに追加された未来の映像を背景に、EVOLカイザーの声が響き渡る。流される映像はどれも悲惨な争いの景色ばかりで、救いというものを微塵も感じさせない。ひたすら人間の愚かさを強調し、見る者全てをドン底まで絶望させる勢いだ。

 それを地獄と呼ぶにはレベルが高すぎる、何と形容すべきか困るほどのものだった。一から十まで都合の悪い事しか起きないように運命付けられているのかと疑ってしまう。

 そんな理解に苦しむディストピアを見せつけられ、されどナイトローグの心が揺らぐ事はなかった。ただ単純に、先程EVOLカイザーが漏らした疑問を回答していく。

 

「それは結局、お前が己の欲望と幸福だけを願っているからだ」

 

「ブラッド族のように地球は滅ぼさん」

 

「でも誰かを殺していくんでしょ? 自分のために、今ここで私と弦人くんを」

 

 即座に言葉を返すブラッドスターク。そこから会話は止まり、辺りは静寂に包まれる。しばらくして、EVOLカイザーは攻撃の手を再開した。

 

「私は貴様たちに近付かない。有史以来、人々が選んだ最適解を取るだけだ。遠くから安全に、一方的に叩きのめす」

 

 そして砲撃の嵐が猛威を振るう。今度は継続して一直線上に放たれる光線だった。数百本もの細長い光線がナイトローグたちを襲い、絵描きの筆のような動きで滑らかに素早く照準を合わせてくる。

 空振った分の光線はその先に開かれたワープゲートを通じて、上下左右から注がれる。やがて火線を集中しすぎた光線は一枚のバリアとして形成され、懸命に弾幕を避け続けるナイトローグたちの行く手を阻む。後方からもバリアが生まれ、逃げる暇もなく二枚に挟まれた。

 衝突したバリア同士は勢い良く爆ぜる。閃光が激しく煌めき、その中から二つの影が果てなき闇の向こう側へと墜落していく。それでも砲撃は止む事はなかった。

 

「フハハハハハハ! そんな無様なやられようでは私はおろか、低級のブラッド族にも敵いやしない!! さぁ、情けない声を出しながら命乞いをしろ! さすれば例え達磨になろうとも、生命維持装置に繋げて生かしといてやる!!」

 

 EVOLカイザーの口から邪悪な笑い声が溢れ出る。それに合わせるかのように弾幕の苛烈さが増していく。

 しかし、どんなに絶望的な状況に立たされようとも、ナイトローグたちの言う事は変わらなかった。圧倒的強者という立ち位置で愉悦に浸る彼の期待を裏切る形で、二人は叫ぶ。

 

「俺はナイトローグを裏切ってまでここに来た!! 今更、引き返せるものかッ!!」

 

「どんなに辛くたって、大切なものは最後まで守り切る!! 私たちはこんなところで絶対に死なないッ!!」

 

『『Ready go! ボルテックアタック/ドラゴニックフィニッシュ!』』

 

 押し寄せる極光の波を打ち破ろうと、二人合わせてライダーキックを繰り出す。ちっぽけな人間二人を光が覆い尽くしてくる中を、蛇竜と蝙蝠が一心不乱に足掻き続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時、不思議な事が起こった。 

 

 

 

 

 

 

 

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