ViVid Contrail   作:にこにこみ

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集いし獣達 後編

順調にメンバーを集め、顔合わせととある事を思いついたイットは、エディを含めた5人を旧機動六課の訓練シュミレーターに集めた。

 

現在シュミレーターには廃棄都市が投影されており、イット達以外は興味深そうに周りをキョロキョロしている。

 

「は、初めまして。 ミウラ・リナルディです」

 

「アインハルト・ストラトス。 どうかよろしくお願いします」

 

そして、新しく入った2人は初顔の面々に挨拶をした。

 

「ユミナ・アンクレイヴです。 改めましてよろしくね、アインハルトさん」

 

「ええ、よろしくお願いします、ユミナさん」

 

「それでイット、なんで俺達をこんな所に集めたんだ?」

 

「顔合わせや大会へ向けての特訓をするなら近場に訓練場があったはずですが……」

 

「場所は借りられても相手がいないでしょう? ちょっとツテを使ってね、そのうち相手が来るけど……先ずはお互いの戦い方を見せ合おう」

 

6人はポジションなどを決めるためにそれぞれの得物を見せ合うと……イットは苦笑いをして皆を見回す。

 

「流派が違う徒手格闘が4人で魔法と格闘の半々が1人、そして太刀が1人……見事に偏っているな」

 

「徒手格闘にしても覇王流、シューティングアーツ、ルーフェン武術、我流……こうしてみればバラバラだけど……」

 

「うーん……そういえば、皆って変身魔法は使えるの?」

 

唐突に、ユミナがそう質問した。 今言う変身魔法とは姿を変えるものではなく、身体を成長させるという意味合いが強い。 その問いにイット達は全員頷いた。

 

「身体が大きい方が戦う時何かと重宝するからな」

 

「どうやら全員使えるようですね」

 

「私のは変身魔法というより……武装形態ですが……」

 

「あれ? そういえばアインハルトさん、デバイスは?」

 

ミウラはデバイスも持っていなさそうに見えるアインハルトにそう質問し、本人はキョトンとした顔になる。

 

「え……持っていませんが……」

 

「アッチャー……大会に出場するには安全のために規定ランクのデバイスを所持していないといけないんだ」

 

「イットも作る予定だが……今から間に合うか?」

 

「聞いてみるよ。 アインハルトの魔法体系はは古代ベルカ式だったよね?」

 

「は、はい」

 

「なら、はやて母さんに相談してみるよ。 なんとか大会前には用意できると思うよ」

 

このメンバーの中でデバイスを持っていないのはイット、エディ、アインハルトの3名。 大会が始まる前に用意しないといけなくなっている。

 

と、彼らが今後について相談していると……シュミレーター内に誰が入ってきた。

 

「お待たせ、イット」

 

「久しぶり、元気だった?」

 

歩いてきたのは物優しそうなツンツンした茶髪と藍色の瞳の青年と、小柄で白いセミロングの髪とワインレッドの瞳少女だった。

 

「ソーマさん、サーシャさん!」

 

「帰って来たとは隊長から聞いていたけど、また強くなったようだね」

 

「これは油断できないかもしれませんね」

 

2人はアインハルト達の前に出て自己紹介をした。

 

「君達とは初めましてだね。 時空管理局、異界対策課所属、ソーマ・アルセイフ。 以後よろしくお願いね」

 

「同じく、異界対策課所属のサーシャ・エクリプスです。

 

「は、初めまして……」

 

「い、異界対策課……本物だ」

 

「ま、まさか……」

 

アインハルト達は彼らがここに来た理由を理解し、イットは答えを口にした。

 

「今日は実力を図るため、俺達6人とソーマさん達2人で練習試合をします」

 

「え、ええええぇっ!?」

 

ミウラの絶叫も当然、今即席で集まったばかりと言ってもいい6人が歴戦の魔導師を相手に出来るとは思えなかった。

 

「い、いきなり過ぎじゃないの?」

 

「それによくお願いできたね? 異界対策課といえば管理局一忙しい部署で有名なのに」

 

「依頼を出したからね」

 

アインハルト達の前にイットはメイフォンを差し出した。 画面には異界対策課へ練習試合の依頼書が表示されていた。

 

異界対策課の主な勤務内容は市民から怪異の脅威から守ること、なのだが……対策課設立当初から業務内容が色々と捻じ曲がっており。 今では市民からの依頼を請け負いつつ怪異に対処する、なんて事になっている。

 

「よく通ったね」

 

「俺もそう思う」

 

「管理局で1番人気のある部署とは聞いていますが……その分の仕事量が半端ないとも聞いています」

 

「けど必ずと言っていいほど大成するとか。 書類仕事をしているオペレーターが凄腕になったとかなんとか」

 

「しかも、なんでも今はその膨大な人脈で適切な人材を確保し、他社に推薦して……就職活動の手伝いもしているとかなんとか」

 

「あ、あはは……」

 

「間違ってはいないけど……なんだかやっぱり複雑かな……」

 

事実とはいえ、自分達の仕事に妙な噂がついてしまっている事にソーマとサーシャは思わず苦笑いする。

 

「それでは依頼の内容を説明します。 お2人に頼みたいのは俺達6人との模擬戦の相手……それで間違いはないですよね?」

 

「うん。 間違いないよ」

 

「では、5分後に開始しますので配置についてください」

 

両チームは配置につき、その間にイット達は作戦会議をした。

 

「それでどうすんだ? いくら2人だけと言っても相手はあの天剣授受者と海鏡(つきひがい)だぞ」

 

「真正面に向かって行ったら勝ち目はまず無いでしょう」

 

「ふうん? あの2人そんなに強いのカ?」

 

「強いも何も……3年前の事件で活躍した人達ですよ。 僕達が束になっても……」

 

「ですが、それでもやるしかありません。 これが私達の始まりです」

 

アインハルトは拳を握りながらそう答えた。 その言葉にイット達も鼓舞された。

 

「ああ、そうだな。 勝ち目のない初陣……やってやろう」

 

「……そういえば、チームの名前はもう決めたのですか?」

 

「そういえば……誰が考えるんだ?」

 

「それはエディじゃなかったのか?」

 

「ワタシはセンス無いからイットに任せたヨ」

 

「……そうだな……1つ、候補があるな」

 

「それは何という名前なのですか?」

 

「うーん……模擬戦が終わってから教えるよ」

 

「えー? 気になりますよー」

 

そうこうしているうちに定刻になり、ユミナが通信を開いた。

 

『それでは模擬戦を始めます。 審判は私、ユミナが務めます! それでは両チーム、構え——始め!」

 

ユミナの合図で模擬戦は開始され、6人は同時に駆け出した。

 

「さっき話した通りソーマさんが前衛、サーシャさんが後衛という隊列を組む。 最初に狙うは援護支援が出来るサーシャさんだ!」

 

「では、手筈通りに」

 

「おう!」

 

「頑張るよ!」

 

「皆さん、お気をつけて!」

 

エディとミウラ以外は前進し、そして2人は左右に別れて別のルートを走った。

 

そして別れたすぐに……進行方向の先にソーマの姿を発見した。

 

「いた!」

 

「まだ距離がありますが……」

 

「——全員警戒! すぐに来るよ!」

 

「え……」

 

遠くに見えたソーマらしき人影が……消えた瞬間イット達の前に現れた。

 

「なっ!?」

 

「っ!」

 

驚く暇もなくイットがソーマに斬りかかる。 ソーマもそれに反応し太刀を受け止め、横から放たれたフォンの蹴りを太刀を弾きながら後退した避ける。

 

「あの距離を一瞬で!?」

 

「さすがは天剣授受者……こちらの予想を遥かに超えてくれます」

 

「はあっ!!」

 

アインハルトが飛び出して拳打を繰り出し、刀身の平で受け止められたが続けて身体を捻って蹴りを放ったが……

 

「——脚に魔力が足りてないよ」

 

蹴りは空振り、ソーマはアインハルトの背後を取った。

 

「速すぎる!」

 

「っ……アイスメイク、大槌兵(ハンマー)!」

 

左掌に右手を乗せるように魔法を発動し、ソーマの真上に巨大なハンマーを造り上げて落下させた。

 

その際アインハルトはイットが手を掴んで引っ張り、ソーマはハンマーに押し潰された。 が……

 

「嘘……だろう……」

 

「す、凄い……」

 

ハンマーは剣の柄頭とぶつかるように止められ、切り返しで斬り上げられ真っ二つにされた。

 

「氷だろうがバター同然かよ!」

 

「——きゃあああ!」

 

「あう……!」

 

そこへ、サーシャの元に向かっていた筈のミウラとエディがイット達の元に吹っ飛んできた。

 

「エディ、ミウラ!」

 

「や、やられたヨ……」

 

「つ、強過ぎです……」

 

「——先ずは援護支援ができかつ勝つ可能性のある私から倒しに行く、そこまでは良かったけど……」

 

「少し読みを間違えたみたいだね」

 

そこで2人を吹き飛ばした、輪刀を抱えるサーシャがソーマの隣まで歩いて来た。

 

「くっ……」

 

「これが……異界対策課!」

 

「さて……それじゃあ」

 

「続けようね」

 

強敵を前に、イット達は思わず尻込みをしてしまうが……それでも果敢に2人に向かったな挑戦した。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

1時間後……

 

「はあはあ……」

 

「ゼェゼェ……」

 

「も、もう無理です……」

 

「燃え尽きたヨ……」

 

「大丈夫?」

 

結果は見るまでもなくイット達の惨敗。 6人全員は息絶え絶えになり地面に座り込んだり寝転んだりしていた。

 

「うん。 荒削りだけど皆、良い線いってるよ」

 

「これなら1ヶ月後の大会までに仕上げる事はできるけど……それだけで勝ち残れるほどグランド・フェスタは甘くないよ」

 

「そ、そうなんですか……?」

 

「イット君に模擬戦を頼まれてから少し過去の大会を調べてね。 去年の優勝チーム、ベルセルクは完璧と言っても良いほどのチームワークで勝ち進んだ強豪だよ」

 

「個々のポテンシャルならイット達も引けをとらないけど、チームワークや戦術面を入れるととても脆い……大会までに、その両面を徹底的に鍛えて行くから覚悟してね」

 

『は、はいっ!』

 

「ユミナちゃんも、戦術や医療方面を鍛えて行くからね」

 

「はい! 分かりました!」

 

自分達の弱さと弱点を身に染みらせ、今後の方針を明らかにして意気込みを新たにする。

 

「あ、それでイット君。 模擬戦に始まる前に言ってたよね? 終わったらチーム名を話してくれるって?」

 

「あ……そうだな。 ここいらで教えておくか。 と言っても、気にいるかどうかは分からないけど……」

 

「まあ早く言っちゃいなヨ」

 

期待の眼差しを向けられる中、イットは高らかにその名を呼んだ。

 

「チーム名は……年代記の翼(ツバサ・クロニクル)!」

 

過去に自分を救ってくれた人達を頭の中に思い浮かべながら……その名前を口にした。

 

「ツバサクロニクル……なんかいいですね!」

 

「ええ、心に響くような名前です」

 

「いいんじゃねえのか」

 

「私もいいと思います。 ツバサクロニクル」

 

「これで決定だネ!」

 

「それじゃあ……ツバサクロニクル! グランド・フェスタ優勝を目指して頑張ろう!」

 

『おおっ!!』

 

「おー!」

 

7人は拳を前に突き出してぶつけながら結束を固め、グランド・フェスタへの道を走り始めた。

 




チーム名を|年代記の翼〈ツバサクロニクル〉にするか|紅き翼〈カレイジャス〉にするか結構迷いました。
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