ViVid Contrail   作:にこにこみ

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金の明星 前編

イット達、ツバサクロニクルはチーム内の親睦を深めながら連携を強化するために第42管理世界スピナにある山岳地帯で合宿をする事になった。

 

「わあっ!」

 

「アインハルトさん! 見て見てこの景色!」

 

「はい、綺麗な場所ですね」

 

次元港のある首都から郊外付近にある地点でキャンプをすることになり。 女子達は高台から見える山の景色を見て感嘆の声を上げる。

 

「うーん! 空気が美味しいヨ。 ワタシにはちょっと都会の空気は合わないネ」

 

「確かに、辺境育ちならそう思っても仕方ないかもな」

 

「おーい! 景色眺めてないでテント張るの手伝えー!」

 

ネイトとフォンがテントを張り始めるのを見て、イット達は絶景に背を向けてネイト達の元に走った。

 

そしてすぐに人数分のテントを張り終えると、イット達は大会に向けて早速訓練を始めた。

 

「やあっ!」

 

「はっ!」

 

先ずはお互いの戦い方を知るためにローテーションで組み手を行った。

 

「そういえばイット、お前ん所の妹……今日どこ行ったか知ってるか?」

 

ネイトはイットと組み手をしている最中にそのような質問をしてした。

 

「ん? 確か友達とどこかへピクニックに行くって言ってたが……」

 

「どうやらお互い、妹の行く先を聞いてないようですね」

 

隣で聞く耳を立てていたフォンがエディの蹴りを受け流しながらそう言う。 なんでも3人の妹達は揃ってどこかに出かけているらしい。

 

「まあ、3人一緒だし、大丈夫だろう」

 

「そうだな——」

 

「はあっ!」

 

「おっと!」

 

間に割って入るように拳がイットの太刀を強打した。 そして右腕を振り上げて攻撃してきたのはアインハルトだった。

 

「3人とも、もっと集中してください」

 

「そうだそうダ! もっと気合い入れロー!」

 

「お喋りする余裕があるなら……喝を入れさせていただきます」

 

叱るように、女性陣がイット達に向かい一斉に襲い掛かった。

 

「——皆お疲れ様! ドリンクどうぞ!」

 

それから2時間後……午前の訓練を終わりにし、ユミナは用意したドリンクを6人に手渡していく。

 

休憩と訓練を何度も繰り返して少しずつ形にし行くと……いきなりどこからともなく何人もの男達が走ってきて……すぐにイット達は彼らに囲まれてしまった。

 

「う、動くな!」

 

「な、何々!? 何なんですか!?」

 

「あなた達は……一体?」

 

「う、動くなと言っただろ!」

 

「いつもいつも村を襲いやがって!」

 

村人達は怒りの眼差しでイット達を睨みつけるが、テントを張る前に近隣の村に断りを入れに行ったくらいで怒りを向けられる覚えがまるで無かった。

 

「……見たところ近隣にある村人達といった所か。 これは一体どういう事か説明してもらえますか?」

 

「黙れ! この魔物め!」

 

「魔物だと……?」

 

「何のことか分かりませんが……お話だけでも聞かせてはもらえないでしょうか?」

 

イットは説得を試みるが……男達は警戒を解くことはなかった。

 

「聞く耳持たず、だナ」

 

「……仕方ありません。 先ずは場を収め、その後に話を聞くとしましょう」

 

「全員、峰打ちで手加減をするんだ!」

 

「ひ、怯むな!」

 

「全員でかかるんだ!」

 

「うわわっ!? や、やるしかないかも!」

 

農作具を武器にして襲いかかろうとする村人達を前にし、イット達はそれぞれの獲物を構えると……

 

「——終ノ太刀……」

 

「——覇王……」

 

「——アイスメイク……」

 

「——爆龍……」

 

「——獅子王……」

 

「——抜剣……」

 

ドオオオオオオンッ!!!

 

周囲に巨大な衝撃音が轟き、砂塵が天高く舞い上がった。 そして、砂塵が晴れていくと……イットの周りには男達が倒れていた。

 

「……やり過ぎちゃったかな?」

 

「どうした? まだやるか?」

 

「くっ……くそぉ!」

 

「——待て!」

 

まだ襲いかかろうとする村人を、村長らしき老人が止めに出た。

 

「皆落ち着け! その人達は違う」

 

「そ、村長!」

 

「しかしこいつらは恐ろしい技を!」

 

「よく思い出せ。 魔物は一体のみ、それにこの子達はこの付近で修行を行うと一度村に断りに来ただろう」

 

「! い、言われてみれば……」

 

「すまんな、旅の人」

 

「チッ……一体どういう事だ?」

 

勘違いは解けたが、ネイトは苛つきを覚えながら村長に問いただした。

 

「実はこのメイナ渓谷には、恐ろしい怪異を操る謎の魔物が住んでおるのじゃ」

 

「恐ろしい……」

 

「怪異? 魔物?」

 

「な、なんか怖そう……」

 

「普段は山奥の遺跡に潜んでおるのじゃが……度々わしらの村に降りて来ては、怪異を操って暴れ回って食べ物を奪っていく」

 

「警戒していた所、ここから大きな声と音が聞こえたものでな」

 

「てっきり、また魔物が現れたと思ったんだ」

 

「悪かった、すまん!」

 

勘違いだとわかり、イット達は一安心する。 すると、イット達を見た数人の村人が顔を合わせて頷いた。

 

「あんた達のその腕を見込んで頼みがある!」

 

「俺達の代わりに魔物を退治してくれないか?」

 

「わ、私達が……ですか?」

 

突然の村人達からの申し出にイット達はまた驚いてしまう。

 

「わしからも頼む。 村の者では到底、敵わなぬ。 力を貸してくれるならそれなりの礼はしよう」

 

「礼?」

 

「貧しい村ゆえ、大した礼は出来んが……」

 

「頼む、力を貸してくれ!」

 

間違いで襲っておいて体のいい話だと思うが、村人達にも事情があるため無下にする事は躊躇われる。

 

「ど、どうしましょうか?」

 

「管理世界とはいえ、勝手にそんな事をしては……」

 

「異界対策課に連絡した方がいいんじゃないのかな?」

 

「………………」

 

イット達はどうしようかあぐねいていると……ミウラが決心した目をして顔を上げた。

 

「私は……このお願いを受けたい」

 

「ミウラ?」

 

「困っている人を助ける……はやてさんに教わった事だから!」

 

「……ああ、そうだな。 対策課に連絡するにしても、怪異やその魔物の正体を暴いてからでも遅くはないだろう」

 

「おお、では!」

 

「ただし、お礼は必要ありません。 皆さんは村に魔物とやらが来ないかどうか警戒してください」

 

「感謝する!」

 

村人達が一斉に頭を下げ、イットがまあまあと手で制しながら彼らは山に向かう準備を始めた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

イット達は村人達の願いで山の遺跡に住むという怪異と魔物を調査しに霧深い山を登っていた。

 

「霧が深くなって来たな……」

 

「フウフウ、空気が少し薄い……」

 

「これぐらい余裕ネ」

 

「皆、足元に気を付けてゆっくり登ろう」

 

「これは鍛錬になりますね」

 

調査に出たのはイット達ツバサクロニクルの6人、残りの戦えないユミナはテントで留守番をしている。

 

「……ん?」

 

「これは……」

 

しばらく山を登っていると……目の前に規則的に積み上げられている岩の数々を目にし、遺跡らしき建造物を発見した。

 

「あれが魔物が住んでるつう遺跡か」

 

「何も見えませんが……」

 

その時……静寂が潜む霧の中で小石が転がる音が聞こえて来た。 イット達は音源の方に振り向くと、人影が移動するのが見えた。

 

「早速お出ましのようだな」

 

「行くぞ!」

 

影を追いかけて遺跡群の階段を登る。 すると……イット達の目の前に3つの黒い巨大な人影が現れた。

 

「なっ!?」

 

「お、大きい……!」

 

「っ……テメェが魔物か!」

 

ネイトは影に向かって叫ぶが……影達は拳を構えた。

 

「問答無用は無用ですか……」

 

「上等だぜ」

 

「俺達が相手になる」

 

影は3つ……フォン、ネイト、イットがそれぞれの前に出た。 それぞれの武器を構えるイット達……だが相手から仕掛けては来ない。 と、痺れを切らしたネイトが飛び出した。

 

「アイスメイク・槍騎兵(ランス)!」

 

無数の氷の槍を創り出し、影に向かって飛ばす。 すると……地面の一部が砂に変わっていき、砂が盛り上がって槍を防いだ。

 

「ほう……少しはやるようだな」

 

「参ります!」

 

続いてフォンが飛び出し、岩壁を飛び越えて接近すると……

 

「——そうはいかないよ!」

 

霧の中から少女の声が聞こえ、飛んで来たフォンに飛び掛かって押し飛ばした。

 

「今のは……」

 

「せいっ!」

 

フォンは受け身を取りながら飛び掛かって来た相手を不審に思い、次にイットが飛び出して太刀を振るった。

 

「なっ!?」

 

その一太刀は避けられてしまい、カウンターをもらおうとした瞬間……咄嗟に柄を前に出して防いだ。

 

「どう? 魔物さん!」

 

「……ん?」

 

何かおかしいと思い始めたイット達。 改めて霧に映る影を見ると……ツーテイルに左右に跳ねているアホ毛に下向きのツインテール……彼ら3人にはとても見覚えのあるシルエットだ。

 

「私達があなたを退治します!」

 

「成敗します!」

 

「覚悟することだね!」

 

「……この声は……」

 

「そういえば……どこに行くとは聞いてませんでしたね」

 

「——螺旋撃!」

 

イットは太刀に炎を纏わせ、切り上げて螺旋の炎で霧を巻き込んで吹き飛ばすと……

 

「きゃあっ!?」

 

「なになに!?」

 

「……あれ?」

 

霧が晴れ、大きな影の下にはコロナとリオ、そしてヴィヴィオがいた。

 

「あれ? あの子達は……」

 

「イット達の妹達だヨ」

 

「あの子は……」

 

後ろにいたアインハルト達は驚いた顔をし、ヴィヴィオ達はイット達の姿を見て驚愕してから……悲しそうな顔をした。

 

「そんな……まさか……兄さん達が……」

 

「う、嘘……」

 

「フウ……太陽の光があの子達の影を霧に投影して、巨大な魔物のように見せていただけみたいですね」

 

「チッ、くだらね……」

 

「………………」

 

冷静に状況を確認するフォンと種が見えて落胆するネイトを他所に、イットは顎に手を当てて考え込む。

 

「まさかお兄ちゃん達が魔物だったなんて……」

 

「私……ショックです」

 

「はぁ?」

 

突然のヴィヴィオ達の言葉にイット達は呆然となる。 魔物を探して来たはずが自分達がその魔物と呼ばれたからだ。

 

「見損なったよ! 村を襲って食べ物を奪うなんて!」

 

「どうしてそんな事するのさ!」

 

「おっと……」

 

また飛び掛かって来たリオをフォンは軽く手を払って牽制をする。

 

「おい何言ってやがる! 俺達は何もやってねえ!」

 

「言い訳は聞きません! 何があったか知らないけど、そんな事やっちゃダメだよ!」

 

コロナが地面を手を当て、ネイトに向かって地面を隆起させ。 ネイトも地面に手を当てて凍らせて隆起を止めた。

 

「ヴィヴィオ! 俺達は村の人達に言われて魔物を探しに来ただけだ!」

 

イットは放たれるヴィヴィオのジャブを避けながら説得する。

 

「えっ!? お兄ちゃん達が魔物じゃないの?」

 

「だから違って言っているだろ!」

 

迫るジャブを避けてヴィヴィオの首根っこを掴み、2人の元に投げた。

 

「きゃん!」

 

「ヴィヴィオちゃん、大丈夫?」

 

「全く……霧に映った影が、お互いを魔物のように見せていただけだ」

 

「影? じゃあ本当の魔物は??」

 

「さて、どれが真実なのやら……」

 

また勘違いと色々と話が拗れてしまい、もう何が何だがわからなくてなってしまった……

 

「無駄足だったようだな」

 

「事前に行く所を言っていればよかったですね」

 

後悔先に立たず。 イット達はヴィヴィオ達の行く先と魔物の2つの件に対して二度手間の感じてしまった。

 

「あ! フォン兄、あの人達が!?」

 

「ああ、そういえば自己紹介をしてませんでしたね」

 

リオが背後にいたアインハルト達を目にし、それぞれの兄の前に妹が立つ形で自己紹介をした。

 

「こいつはコロナ。 俺の妹だ」

 

「初めまして! コロナ・ティミルです! 兄がお世話になってます!」

 

「この子はリオ。 私の妹です」

 

「リオ・ウェズリーって言います! よろしくお願いします!」

 

「それでこっちが……」

 

「神崎 ヴィヴィオです! エディさんについてはお兄ちゃんから聞いてます!」

 

「ワタシはエーデルガルド・バルカス。 エディって呼んでネ」

 

「初めまして。 ミウラ・リナルディです。 ヴィヴィオさんの事は、はやてさんから耳にしています」

 

「アインハルト・ストラトスです。 イットさん達に妹がいるとは聞いていましたが……3組の兄妹揃ってお友達だったとは驚きです」

 

「確かに」

 

「それで、ヴィヴィオちゃん達ももしかして村人の人達から?」

 

「はい。 私達はピクニックでこの世界に来て。 村の人達から魔物について噂になっているのを聞いて、放って置けなくてこの山に来てみたんです」

 

「でも霧がかかってて何にも見えなくて……帰ろうとした矢先にいくつもの大っきい影が来たから……」

 

「それで私達と鉢合わせに……」

 

と、そこで辺りを見回していたリオが何かを思いついた。

 

「そうだ! フォン兄、せっかくだから稽古つけてよ!」

 

「い、いきなりですね……」

 

「ここでかい?」

 

「うん。 ここってルーフェンにある霊峰みたいな感じだし、気が引き締まるんだ! ね、いいでしょ?」

 

確かに武術の修行をする時、こういう人気のない秘境で行うと心身ともに鍛えられらしい。

 

「まあ、例の魔物もいない事だしいいんじゃないかナ?」

 

「皆さんがいいのなら」

 

「ホント? やったー!」

 

そうと決まり、2人はデバイスを起動してルーフェンの民族衣装を模したバリアジャケットを纏った。

 

そして2人は遺跡にある広間の中心で向かい合い、右拳を左掌に当てて礼をしルーフェン武術の構えを取った。

 

「——始め!」

 

そしてミウラの合図で同時に駆け出し、拳や腕を交じ合わせ始めた。

 

「へぇ、やるじゃねえか」

 

「リオー! 頑張れー!」

 

「どっちも頑張ってねー!」

 

2人は流れるように拳を放ち、受け、何度も入れ替わり立ち回る。 その様子を……

 

「………………」

 

「ねー?」

 

霧がかる岩陰から2つの影が、リオとフォンの手合わせを見ていた。

 

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