ViVid Contrail   作:にこにこみ

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合流と飢えた獅子

今度は意図して、またはぐれ離れになったチームツバサクロニクル。 その矢先にイット、アインハルト、ネイトは王虎城の3人組と鉢合わせし……今は3箇所で一対一の攻防が繰り広げられていた。

 

そのうちの1つ、イットとハオが互いの武器を振るい、刃をぶつけ合って火花を散らしていた。

 

「破っ!」

 

「っ……!」

 

ハオによって振り下ろされた青龍刀は地を砕く。 イットは受けようとしたが太刀が耐えられないと悟ると回避した。

 

「はあーー!」

 

続けて振り抜かれる青龍刀を避け、先程立っていた場所の背後にあった木が斬られ倒木される。

 

力任せに振り回しても問題ない青龍刀と違い、太刀は技で振るう……同じ剣であるも耐久性に差がありイットは防御する事が出来ず、回避をする事で大幅に体力が削られていた。

 

(このままじゃ……)

 

《クゥン……》

 

防御が徐々に削られて行き、シオンも苦しそうな声で鳴く。

 

「この程度か、八葉の使い手!」

 

「………………」

 

距離を置いて太刀を鞘に納め。 イットは目を閉じて息を整え、居合いの構えを取った。

 

「勝負を捨てたか!」

 

隙だらけになったイットを見て畳み掛けるハオ。 そして青龍刀が振り下ろされた瞬間……イットは柄を握り締めながら開眼した。

 

「八葉一刀流……伍の型——」

 

「ぁ……」

 

「残月!!」

 

ほんの刹那の交差……イットはハオに背を向けながら太刀を振り抜いていた。 そしてハオの胸に斜め一文字が刻み込まれ……

 

「弧月斬!」

 

追撃とばかりに振り返り際に太刀を振り抜き斬撃を飛ばし、十文字を刻みハオはグラリと身体を揺らすと……静かに倒れ伏した。

 

「っ……はあはあ……」

 

気が抜け、フラリと倒れそうになった所をすんでのところで太刀を地にさして耐える。

 

「あんあん!」

 

「は、はは……まだまだ修行が足りないけど、世界は広いな。 こんな強敵がいるなんて……」

 

自分もまだまだだと感じながらも、イットはふらふらと立ち上がった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

2つ目、アインハルト対ウォウ。 2人は木々の合間を走りながら……というより、一方的にアインハルトが逃げていた。

 

「ハアハア!」

 

「はあっ!」

 

「うあっ……!」

 

追い打ちをかけるウォウのうねるような、密にした嵐のような攻撃にアインハルトは防御と後退するだけで精一杯だった。

 

「ま、まだまだ……」

 

「せいっ!」

 

反撃に転じようと腰を落として構えを取ろうとするも、その前にウォウが下から潜り込み、足払いとかち上げで体勢を崩される。

 

「うぅ……」

 

「地に足付かず。 覇王流はルーフェン武術と似て大地を踏みしめて力を得る……対策も容易だ。 それはお前にも言えることだが、実力に差がある」

 

そこでウォウは距離を置いて構えを解き、目を細めてボロボロのアインハルトを見つめふ

 

「相当な修練を積んでいるようだが……経験と身体の動かし方が合っていないように見える」

 

「———!」

 

いかにアインハルトが過去の覇王の記憶を持っていたとしても、それが自身の身についていなければ意味がない……そして、イット達と出会うまで1人で修練を積んでいたため、記憶では何度もあるが、実際には対人経験はほとんど無かった。

 

「何やら事情がありそうだが、その是非は問うまい」

 

それ以上の言葉は不要。 代わりに拳を構え……魔力を一気に解放した。

 

「決めさせてもらう……覚悟しろ!!」

 

「っ……しゃ、遮波!!」

 

大地を揺るがすくらいに踏みしめ、ウォウは強い捻りを加えて突進してきた。 その威力は言うなれば振り子によって迫って来る鉄球の如し……だが、アインハルトもむざむざと受ける訳にもいかない。

 

一回転して力を溜め、両手を揃えて左手の裏拳、右手の掌底を同時に繰り出し。 突進による衝撃を殺しつつ吹き飛ばされ、アインハルトはウォウから距離を取った。

 

「ハァ! ハァ!」

 

「まだそれだけの力が残っていたか。 だがまさしく虫の息だな。 覇王に敬意を表し、手加減はせん……これで終わりだ!」

 

「ッ……」

 

トドメとばかりにウォウは一気に畳み掛けて来た。 拳を前に迫ってくるウォウに対し……アインハルトは左足を下げ、右手を前に出した。

 

「剛腕……一閃!!」

 

全てを薙ぎ払う(かいな)の一撃。 その腕がアインハルトに向かって振られようとした時……

 

「がっ!」

 

「っ〜〜〜!!」

 

アインハルトは薙ぎ払われた腕を首を下げてギリギリの所で避け、添えられていた右手がウォウの胸に食い込んだ。

 

まるでウォウが自身の力で攻撃を受けているかのように……

 

「——覇王……断空拳!」

 

その一瞬の機を狙い、アインハルトは右手から伝わった力を左足に流して踏みしめ、流れるように身体を捻って左拳に流し……アッパー気味に振り上げられた拳がウォウの顎をかち上げた。

 

その一撃は脳を揺らし、ウォウは気絶し倒れた。

 

「っ……ハアハア! ……な、何とか……退けられました、か……」

 

数秒の間左拳を振り上げた状態で静止した後、そのまま背中から地面に倒れ込んだ。

 

「はあ、はあ……」

 

《にゃあ……》

 

「ごめんなさい、ティオ。 私が不甲斐ないばかりに」

 

《にゃあ!》

 

励まそうとティオは健気にも元気よく鳴く。 その声で心が安らぐ中、アインハルトは静かに右手を胸に当てた。

 

(どこか心の中で思っていました。 これは規則に則っているただの遊びだと。 でも……彼らは真剣に、命を懸けてこの大会に挑んでいます。 その意志に応えなければいけません)

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

3つ目、ネイト対クワン。 ネイトは自身が創り上げた氷の城壁を背にしながら構えており、クワンはそのネイトの周りを泥歩で取り囲んでいた。

 

「………………」

 

「………………」

 

先程から睨み合っており、膠着状態が続く中……クワンが仕掛けてきた。

 

「ヤッ!」

 

「っとお!? アイスメイク——大剣(クレイモア)!」

 

足払いをかけてきたクワンの蹴りを跳躍して避け、その状態から氷の大剣を造り出し、振り下ろした。

 

クワンは頭上から迫る大剣を地に手を付けてバク転して避けたが……

 

「アイスメイク——(ポール)!」

 

「アブナッ!」

 

大剣から手を離し、続けて氷の棍棒を造り出しクワンめがけて突きを繰り出した。 彼女は危なげながらも身を捻って棍から避け、体勢を整えようと立ち上がり、次いで踵落としを繰り出そうとした時……

 

「にゃあ!?」

 

地を踏み込もうとして軸足を振り下ろした瞬間……足元がツルンと滑り、またもやクワンは大きく仰け反り体勢を崩した。

 

「アイスメイク(フロア)。 そして……!」

 

ネイトは自身の足の裏を凍らせる事でしっかりと固定し、一気に魔力を高め……

 

氷雪砲(アイスキャノン)!!」

 

「にゃあああああああっ!?」

 

巨大な氷の大砲を一瞬で造り出し、砲門から強烈な冷気の砲撃を放った。 その砲弾を直撃したクワンは吹き飛び、茂みの中に落ちていった。

 

「ふぅ……どうやらあの3人組の中で1番弱かったようだな。 とはいえ、気を抜いたら俺もヤバかったけどな……」

 

一息をついた後、ネイトは立ち上がった。

 

「っと、どうやら俺が最後か」

 

耳をすませば戦闘音は無く。 ネイトは氷の城壁に手を当て、粉々に砕いた。 城壁の先に向かい周囲を見回すと……イットとアインハルトが互いに怪我の治療を行っていた。

 

「おーい、そっちも終わったかー?」

 

「は、はい……なんとか……」

 

「にゃぁ……」

 

「かなり危なかったけど、何とかね……」

 

「くぅん……」

 

イットとアインハルトは激戦だったようで、互いの背に寄りかかりながら座り込んでいた。

 

「チーム王虎城……こいつらのレベルが最大だといいんだがな……」

 

「でも、他のチームも強敵揃い……ブラックシザーズだって俺達を狙っている。 少しでも体力を回復させて、早くこの場から離れよう」

 

「ええ、それと早くミウラさん達と合流しましょう」

 

イット達は疲労を回復しようと、とにかく食べ物を口にし。 エディ達のデバイスの信号を元に歩き始めた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「——会いたかったヨーー!!」

 

「ちょ、エディ!?」

 

「無事、というわけでもなさそだな」

 

「お互い、色々あったみたいだね」

 

30分後……スタート地点の近くでようやく合流できたチームツバサクロニクル。 互いに状況と、戦果を報告し合った。

 

「ねねー!」

 

「ねね! 良かった、無事で!」

 

「にゃあー!」

 

「頭だけ、だけどな」

 

頭だけで移動し、アインハルトの元に飛び込んでいくねね。

 

その間に、ミウラがねねの胴体と左後脚をくっつけようとするが、無理だった。 恐らく全部集めるか、バラバラの原因となったロストロギアでしか戻らないのかもしれない。

 

「さて……これでねねパーツは頭、胴体、右前脚の3つ。 左前脚はあの唯我独尊娘が持っているとして……」

 

「残りは右前脚と後脚、そして尻尾ですね」

 

「この調子でイコー……と、言いたいケド……」

 

「残存チームはブラックシザー、ワイルドファング、ウィザーズの3チーム」

 

「ブラックシザーは抜くとして……狙うはワイルドファングかウィザーズのどちらかですね」

 

ブラックシザーからは序盤、左後脚を奪取したため、次の狙いは2チームに絞られる。

 

「恐らくウィザーズも2つ持っていると予想できる。 だが後回しでもいいと思う。 正直、ワイルドファングを先に相手した方がいい」

 

「その前に休みましょう。 連戦で流石に体力が……」

 

「はい……色々と気疲れしましたし……」

 

イット達はその場から移動し、スタート地点の岩山を背にして見つかりににくい場所で休息を取った。

 

「うわぁー、美味しそう!!」

 

「おにぎりもそうだケド、どこに隠し持っていたんダ?」

 

「このチョコレートケーキは?」

 

「父さんが作ってくれたザッハトルテとクレームダンジュ。 疲労回復には甘い物が一番だからって持たせてもらったんだ」

 

どこから出したかの真相はスルーし、とにかくイット達は回復するために食べ物を口にする。

 

「んー! ウマイ! 表面のコーティングされたチョコと中のふわっとしたスポンジチョコが口の中で絡み合うこの食感! そこにアクセントとして加わるアプリコットジャムの酸味がヤバイヨ!」

 

「いきなりエディが滑舌になって食レポし始めた!?」

 

「こっちのクレームダンジュも、ふわっとしたチーズケーキの中からラズベリーソースがとろっと出てきて美味しいです」

 

「……なぜ2人ともそんな解説めいた口調を?」

 

「にゃ?」

 

エディとアインハルトの説明口調に驚きつつも、とにかく回復に専念するのだった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「——がはっ!」

 

森林地帯……そこでブラックシザーのリーダーが痛烈な一撃を喰らって崩れ落ち、倒れ伏していた。

 

「マ、マジかよ……」

 

その言葉を最後に意識を落とした。 その周囲には他のメンバーもおり、同様に戦闘不能に陥っている。

 

ブラックシザーを倒したのは、ワイルドファング……1名は戦線離脱しているも、残りの5人で圧勝した。

 

「パーツを持ってない……外れのようだね」

 

「チッ……少しは歯応えがあると期待したが、こんなものか」

 

「あ! 待ってください、シュウさーん!」

 

舌打ちをして踵を返しその場を去ろうとする、ワイルドファングのリーダーらしき野性の獣のような目をした少年。 その彼を、太った少年が左前脚と右前脚を持って追いかける。

 

「残り3チーム、次は獲物は……こいつらだ」

 

空間ディスプレイに表示されたのは残り2チームの名前。 その中にあるツバサクロニクルの文字を、獲物を見つけるような目で睨みつける。

 

「もっと歯応えがあるといいんだが……」

 

「メイヤを打ち倒した相手……そして私から退いた相手、相手に不足は無いと思う」

 

「そうだと良いんだがな。 まあいい……その翼、喰らってやる。 この俺、シュウ・レオーネがな!」

 

高らかに名乗りを上げ、真っ直ぐ歩き出すと……

 

「……シュウ。 彼らはあっち」

 

探知系の魔導師が逆方向を指差し、アウロラが笑いを堪える中、シュウは無表情で反転し、その後を太った少年がワタワタしながら追いかけた。

 

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