ViVid Contrail   作:にこにこみ

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野獣の牙

心身ともに休み、十分に気力を取り戻したイット達は移動を始め。 森の中を歩いている。

 

今度ははぐれ離れにならないように周囲を警戒しながら進んでいた。

 

「なーなー、今どこに向かっているんダ?」

 

「とりあえず中心に向かいながら開けた場所に向かっている。 目立つ所に行けば鉢合わせする可能性は高いからな」

 

「逆にリスクも高くなります。 奇襲、不意打ちには気をつけましょう」

 

「はい」

 

残りチームが少なくとはいえ、ここまで残っているという事は相当の手練れ……気を緩めずに森の中を前へと進む。 その時、ネイトが異変を感じた。

 

「…………? なんだ……空気が」

 

「ネイト?」

 

「どうかしたんですか?」

 

「いや急に空気が乾燥して……」

 

「——アタ!?」

 

すると、突然エディの軽い悲鳴が聞こえてくる。 エディは木の前で首を傾げながら片手をさすっていた。

 

「エディ、何しているんだ」

 

「イヤ、木に触ったらいきなりバチッて、来たんだヨ」

 

「バチッてって……静電気じゃあるましい」

 

「静電気……? 木でですか?」

 

不思議に思ったイットは近くの木に近寄り、木を調べ始めた。 すると、ある点に気がつく。

 

「この木……伝動効率が高い。 導体だぞ!」

 

「導体って……木がですか?」

 

「! この急激な空気の乾燥……皆! すぐに戦闘態勢に——」

 

次の瞬間……周辺の木々がバチバチと電撃を起こし始め、イット達は雷撃に襲われる。

 

「きゃあっ!?」

 

「ぐうっ!」

 

「こ、この雷撃は……」

 

「バリアジャケットの絶縁性を突破するなんて……!」

 

「アイスメイク——(アックス)!」

 

雷撃が襲いかかる中、ネイトが氷の斧を創り出し……振り回して周辺の木々を伐採した。

 

「ふう、コンダクタの森ってそういう事かよ」

 

「電導性の高い木が立ち並ぶ森……電気の魔力変換資質がある者に対しては有利なフィールドでしたね」

 

「ここは危ない。 すぐにここから……」

 

「——逃がさねえよ」

 

「うわっ!?」

 

次の瞬間……一陣の強風が吹く。 その風は嵐のような風ですぐに止む。 イット達は顔を覆っていた腕から身を起こすと……

 

「なっ!?」

 

「木が……森が、一瞬で!」

 

イット達は地面がでこぼこに荒れた平野のど真ん中に立っていた。 よく見回すと遠く離れた場所、辺りを囲むように木々が乱雑に積み上がっていた。

 

「あの一瞬で森だけを……」

 

「しかもワタシ達を一切傷付けずに、ナ」

 

「こりゃそうとうヤベーのにぶつかっちまったようだ」

 

この惨劇に冷や汗を流していると、上空から複数人の人影が風を纏いながら降りて来た。

 

「ちょっとシュウさん! 森を吹き飛ばすとさっきの戦法が使えなくなるんですけど!?」

 

「うるせえ。 見えない場所からチマチマなぶるのは性に合わねえんだ」

 

「流石シュウさん! 男前です!」

 

「えっと……短気なだけでは?」

 

「さあね?」

 

人数は5人。 何やら揉めており、騒ぎながら降下、イット達の前に降り立った。

 

「あ! あ、あなたはっ!!」

 

「やあ、また会ったね」

 

「という事は、彼らが……!」

 

「チーム、ワイルドファング……」

 

その中にエディ達の知る人物、アウロラ・イグニスがいた。 つまり、この5人はメイヤ・ニーヴァを抜いたチーム・ワイルドファングだった。

 

「メイヤをのしたのがどんな奴か期待していたが……とんだ期待外れだったな」

 

「な、なんだトォ!?」

 

「期待外れかどうかは……これを受けてから聞いてもらいます!!」

 

リーダーらしき緑髪の少年……シュウ・レオーネの言葉に少し頭に来たようで、アインハルトが身を大きく捻り上げ……

 

「——覇王風迅掌!!」

 

突きを繰り出すようにその場で掌底を放ち、旋風が巻き起こりワイルドファングに向かって飛来する。

 

「ふん」

 

だが、リーダーらしき少年が腕を軽く払うと……いとも容易く旋風が掻き消されてしまった。

 

「なっ!?」

 

「にゃー!」

 

「洒落くせぇ!!」

 

反撃とばかりシュウは片手をイット達に向けてかざし……強烈な風を発射する。

 

「弧影斬!!」

 

「抜剣・鳶!!」

 

即座にデバイスを起動して戦闘態勢に入ったイットとミウラは飛ぶ斬撃を飛ばし、襲って来た風を斬り裂いた。

 

遅れてアインハルト達もデバイスを起動し、その間にワイルドファングのメンバーに周囲を囲まれてしまう。

 

「さあ、狩りの時間だ。 せいぜい足掻けよ、面白くないからなぁ!!」

 

「…………! 狩りに楽しみは必要ナイ!! 狩りは生きる為の矜持、道楽を求めるなんて許せナイ!!」

 

「それに、俺らはそう易々と狩られるつもりはねぇぞ!」

 

「シュウさんに手出しさせねえ! このダイ・ハードセルが相手になってやる!!」

 

シュウの言葉に乗せられエディとネイトが走り出し、シュウの前に太った少年……ダイ・ハードセルが立ち塞がる。

 

「先程は遅れをとりましたが、今回は取りに行かせてもらいます!」

 

「いいよ……かかって来るといいよ」

 

「僕だって負けっぱなしは嫌です!」

 

先程の戦いでいいようにされたアウロラに向かってフォンとミウラが駆ける。

 

「君達の相手は僕達だ」

 

「よろしくお願いします」

 

そして、イットとアインハルトの前にルーフェン風の衣装を着て槍を持った腰まである黒髪をポニーテールにそて簪を指している少女と、白いフード付きの丈が膝を隠すほどあるローブを着た金髪の少年が立ち塞がる。

 

「アランシャール・パンテーラです。礼に始まり、礼に終わります」

 

「リラン・キックス。 さっきの挨拶はどうだったかな?」

 

「……神崎 一兎。 という事はあの雷撃は君から放たれたんだな?」

 

「アインハルト・ストラトスです。 あの野獣のような人もそうですが、かなりの手練れのようです」

 

「お褒め頂きありがとうございます。 では……行きます!!」

 

宣言と同時にアランシャールが目にも留まらぬ速さで駆け出す。

 

「やっ!」

 

「っ……!」

 

接近と同時に高速で2段突き、からの薙ぎ払いでアインハルトを攻撃。 アインハルトは手甲や足で防ぎ、反撃に転じ距離を詰める。 近距離で槍は満足に振るえないのを見越しての行動だったが……

 

「やっ!」

 

「きゃっ!」

 

地面から天に向けて落ちるように雷がアインハルトの前に落雷。 衝撃で軽く吹き飛ばされる。

 

「はあっ!」

 

「効きません!」

 

その間にアラに接近したイットは太刀を振るうも、簡単に防がれてしまう。 と、その時……

 

「——どわああああ!!」

 

「って、うわっ!?」

 

「あう!?」

 

突然、イットとアラに向けてネイトが風に吹き飛ばされて来た。 イット達は砲弾のように飛んで来たネイトもろとも吹き飛ばされる。

 

「い、いたた……」

 

「な、何をしているんだネイト」

 

「いや、ありゃヤベェよ。 ガチでこの大会最強と言ってもいいんじゃねえか?」

 

「——アオダイショウ!!」

 

そこへ、変な叫び声をしながらエディが隣に吹っ飛ばされてきた。

 

「エディ。 大丈夫か?」

 

「そんな事は後! 来るヨ!!」

 

「どららららぁ!!」

 

エディを追いかけるようにダイが土煙を上げるほど全速力で走ってきた。

 

突進と見たイット達は散開して避ける。 進路を変えないダイはその場にいたチームメイトのアラに向かって行ったが……

 

「よいしょっ、と……」

 

「え……」

 

「ん〜〜……しょっ!!」

 

「ぶほーー!!」

 

アラは槍を地面に突き刺し、棒を大きく引っ張ってしならせ……ピンボールを弾くように走ってきたダイの腹部に容赦なくしならせた棒をぶつけた。

 

それのおかげでダイはイットに向かって岩石のごとく飛んで行く。 避け切る事が出来なかったイットは太刀を防御に構え……受け止める。

 

「ぐうう……っ!!」

 

「おらああっ!!」

 

「がっ!」

 

受け止めたのはいいが、ダイは肩を突き出すように落下したため片手が空いており。 力任せの拳が顔面を捉える。

 

そして、別の場所では、ミウラとフォンがアウロラと対戦し、苦戦していた。

 

「ハンマー・シュラーク!」

 

「転泡!」

 

「ふっ」

 

ミウラの振り上げた拳とフォンの素早い足払いを紙一重で躱すアウロラ。 アウロラは最小限の動作による小攻撃で反撃、体勢を崩させ……

 

「はっ!」

 

「うわっ!」

 

「くっ!」

 

重い蹴りで2人にダメージを負わせる。 それを多々繰り返していた。

 

「このままじゃジリ損ですよ……」

 

「………………」

 

「ほう?」

 

「ちょっと、戦いはそっちだけじゃないんだよ!?」

 

と、そこでリランが横槍が入る。 電気を収束させ、巨大な雷球を作り出し。 2人に向けて発射する。

 

「……仕方ない」

 

「ミウラさん!」

 

「う、うん!」

 

アウロラを巻き込んでの攻撃。 3人は身を引いて雷球から逃れようとする、が……

 

「え……」

 

「ふっ!」

 

「っ——うわあああっ!!」

 

一瞬で先回りしてミウラの眼前に移動、蹴り飛ばし……雷球にぶつけ、ミウラは絶叫を上げる。

 

「ミウラさん!!」

 

「助けに行ったら君も巻き添えを喰らうよ? まあ、そうしてもらうけどね……!」

 

「——ン……ス……!」

 

「……む……」

 

雷撃が迸る中、その中でミウラが何かを始めており……両脚のスターセイバー……ソルレットに電撃が吸い込まれて行っている。

 

「エン……ハンス……ライトニング!!」

 

次の瞬間……雷球が弾け、ミウラが降りてきた。 全体的に少し焼けて焦げているが、ソルレットが先程の雷球のように電撃が走っていた。

 

「抜剣・武装雷鳴!!」

 

「っ!!」

 

一瞬でアウロラと距離を詰め、蹴りを入れる。 突然、アウロラは防御するが……電撃は防げず、そのままミウラが蹴り飛ばした。

 

「アウロラ! この、サイド……!」

 

「ふっ……鷹爪脚! ——はあああああっ!!」

 

フォンは高く飛び上がってから踏み込むように地面を砕き。 そして崩れた地面に両手を突っ込み……地中から巨大な岩石を引っ張り出し、それを両手に電撃を放つリランに向ける。

 

「さ、流石にそれだけの質量を防ぐ事は……」

 

「龍王……破山墜!!」

 

「うわわわわーーー!」

 

迫る岩石に背を向けて走り出すも既に手遅れ。 岩石がリランを押し潰そうとした瞬間……一陣の旋風が吹き、岩石を粉々に砕いた。

 

「なにちんたらやってやがるんだ」

 

「ノンビリしている君にだけは……」

 

「——抜剣……!」

 

助けたとはいえ、先程から風だけ使い自身は歩いている事に文句を言おうとすると……粉々になった岩の合間からミウラが現れる。

 

「えっ……」

 

「雷煌刃!!」

 

抜剣の魔力を一点に集中させてからの踵落とし。 それがリランの脳天に振り下ろされ……地面が爆散した。

 

電撃が辺りに拡散し、土煙が舞い上がる。 その中からリランが突き破って行き……最初にシュウが吹き飛ばした木々の元まで吹き飛び、そのまま動かなくなってしまった。

 

「はあっ、はあっ……や、やった……」

 

「まずは1人。 ミウラさん、休む暇はないですよ!」

 

「う、うん!」

 

休む間も無く構えを取り、アウロラとシュウと向かい合う。

 

「フン……知恵は回るようだな」

 

「お父様が言っていた。 草食動物だって生きるために必死に足掻く……彼らもただ狩られるだけの弱者ではないという事だ」

 

「フン……いいだろう。 眠れる獅子を起こしたこと、後悔させてやる……」

 

「行きます……!!」

 

ミウラが意気込む中、2人はその場で立ち尽くし……徐々に魔力が上がり始めた。

 

 

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