ViVid Contrail   作:にこにこみ

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乱戦の先は

「どららららぁ!!」

 

森の跡地を疾走するのはチームワイルドファングのダイ。 恐らく何も考えず、ただの猪突猛進でイット達を掻き乱していた。

 

「アイスメイク——(フロア)!」

 

「んなもん効かん!」

 

「ウソ!?」

 

ネイトが地面に氷を張り、突進を止めようとするが……ダイの体重と脚力で床にヒビが入り、変わらず走ってくる。

 

「どわああ!!」

 

「ネイトさーん!」

 

「この……うあっ!」

 

ネイトが吹き飛ばされ、アインハルトも弾き返されてしまう。その間にエディがアラに殴りかかるも……

 

「そう易々と取らせはしません!」

 

「ウワ!」

 

「業炎撃!」

 

「せいっ!」

 

炎を纏った太刀を斬り下ろすも、アラは槍を叩きつける勢いで後ろに大きく飛び退く。 その前にイットが納刀して構え、落下の瞬間を狙い斬撃を放とうとしたが……

 

「——走っ!」

 

「なっ!?」

 

抜刀した瞬間、アラは空中で脚を動かし……空を走るかのように移動して斬撃を避け、そのままダイの肩に飛び乗る。

 

「行ってらっ……しゃい!」

 

「ぶはーーー!!」

 

槍の穂と棒を繋げる口金の部分を両手で持ち、ゴルフをするように振り上げ……逆に自身が吹き飛ぶダイをぶっ飛ばした。

 

しかも床は氷のため、アイスホッケーのように滑りながら突進して来る。 再び迫る巨体を前に、ネイトが再度前に出る。

 

「止められねえのなら……こうするまでだ!」

 

今回創り出したのは低めの氷のすべり台。 ダイは勢いのまますべり台を登り……そのままイット達を飛び越えて行ってしまった。

 

「おあああーー……!」

 

「よし、行くよ!」

 

「はい!」

 

「うーん、流石にこの戦法は見飽きちゃったかな?」

 

何度も巨体ノックを受けていれば嫌でも身体が慣れる。 兎にも角にもイット達はダイが戻って来るまでにアラを抑えようとする。

 

「烈風旋!」

 

素早く槍を振り回し風を巻き込みながら前進、イット達の中心に向かって斬り込み……

 

「月光斬!」

 

さらに槍を大きく力を込めて振り回し、円を描くように周囲一帯を斬る。

 

「っ……」

 

「続けて、満月斬り!」

 

右薙ぎから左薙ぎへ。 また円を描くように槍を振るう。 初撃をギリギリで回避してからの二撃目だったので、反撃に転じようとした所を止められてしまう。

 

「まだまだ!!」

 

イットはよろめいてたたらを踏みながらも太刀を納刀し、魔力を高めて行く。

 

「——陸の型・緋空斬!!」

 

渾身の抜刀と共に放たれた燃え盛る斬撃。 斬撃の幅は広く速度も速い、一直線でアラに向かって行く。

 

「梨花!」

 

円錐形の障壁を作り、飛来して来る炎の斬撃を打ち消すように防がれる。 すると、イットは息を荒げながら膝をついてしまう。

 

「くっ……流石に……この技には魔力が……」

 

「イットさん!」

 

「——よくもやってくれたなぁー!!」

 

と、そこへ飛んで行ったダイが激走しながら戻ってきた。

 

「もう戻ってきたぞ!?」

 

「ワタシがやる! 後はよろしくナ!」

 

エディがダイの前に立ち、大きく手を振って目立つようにアピールする。

 

「こっちだヨ、猪さん!」

 

「俺は猪じゃねえー!!」

 

いとも簡単に挑発に乗るダイ。 エディはイット達の元を離れるとダイもエディを追いかける。

 

しばらく走り、エディは立ち止まってダイと向かい合う。

 

「ふう……」

 

「どらららららぁ!!」

 

迫り来るダイを前に……エディは目を閉じて脱力、ゆっくりと両手を上げる。

 

「無駄無駄ぁ! そんなちっこい体で止められる訳ないよい!!」

 

ゆっくりと左脚を下げるエディを見て、受け止めると見たダイは無駄な足掻きとばかりにエディに向けて衝突し……

 

「どらぁ!?」

 

「はあああぁ……」

 

エディがダイの肩を掴むと、エディはダイに押されてそのまま滑るようにバックしていく。 原因は、ネイトが張った氷の床。

 

ダイに氷の床は無意味でも進行方向の氷を砕ける訳もない。 エディは意図的に誘導しており……彼女の背後はまだ傷付いている氷が無く、抵抗なく滑って行く。

 

そして、エディは右手をダイの腹部に押し当て、一気に左脚を踏みしめて氷の床にヒビを入れ……

 

「——フンっ!!」

 

「どふぁ!?」

 

ヒビを入れた事で左脚が地面を踏みしめて滑るのが止まり、ダイの腹部に右手が大きく沈んでいき……ダイは昏倒してしまった。

 

エディは攻撃をしていない……ダイが自分から添えられていた掌底に突っ込んだだけである。

 

「……イッターーー!! この人太りスギ! 全身が折れそうだヨーー!!」

 

何もしてないとはいえ、ダイの突進を文字通り全身で受け止める行為……エディは骨が軋むのを感じながらのたうち回った。

 

「ダイ君……まだまだ、私は負けません!」

 

「そう来なくちゃ」

 

「まだ、油断してはいけません!」

 

「ぐっ——!!」

 

その時、突然イットが苦悶の表情を見せ、胸を押さえながらうずくまってしまう。

 

「ぐううっ!! ま、不味い……さっきの技でかなり魔力を……!」

 

「イ、イット?」

 

「どうしたんだいきなり?」

 

「これは……《鬼神の力》! 暴走しかけています!」

 

「ええっ!?」

 

すると、徐々にイットから赤黒い魔力が溢れ出して来た。 イットは溢れ出る力を押さえつけようと必死に堪える。 と、その時、いきなりアラが驚愕した顔をして誰かと話し出す。

 

「…………! (ハク)さま、お出でなされるのですか?」

 

「…………? いきなり何を……?」

 

「どうやら、あなたの力に興味を引かれたようですね」

 

アラは両手を突き出すように槍を水平に構えて目を閉じる。 するとアラからイットと似た魔力が出始める。

 

「こ、この力は……一体」

 

「はあああぁ——はっ!!」

 

呼吸と呼応し、一気に解放……黒髪を止めていた簪が消えて解け、一瞬で白く染まる。 目じりや頰に紅い模様が走り、目を開けると黄色の瞳が紅く、瞳孔が獣のように縦に細長く伸びていた。 極みつきは彼女の腰から生えているように見える9本の白い毛並みの尻尾。 どうやら彼女からから発せられる魔力で形成されているようだ。

 

『「さあ、来るがよい。 小童供」』

 

その口から出た声と言葉はまるで別人……妙齢の女性のような雰囲気だった。

 

「な、何この感じ……」

 

「いきなり姿や口調が……それにあの尻尾は……」

 

「!! ねねねーー!!」

 

驚きと彼女の殺気に満ちた視線で後退り、何かを感じ取ったねねがピョンピョンと跳ねる。

 

「どうしタ、ねね?」

 

「よしよし……物凄く興奮してますね」

 

「…………! まさか……あれはイットさんと同じ、怪異の力!?」

 

ミウラがねねを抱えて撫でて落ち着かせようとするも興奮は収まらない。 ねねにはメイフォンのサーチアプリと同じ機能を持っている……それでアインハルトはあれが怪異の力だと判断する。

 

その光景を観戦していた観客や、クー達はそれぞれの表情で驚愕していた。

 

「おーおー、プロフィールで知ってはいたが、まさかここで拝めるなんてな」

 

「アリサさん、彼女は一体?」

 

「——アランシャール・パンテーラ。 彼女は“狐憑き”よ。 彼女が髪に差していた簪……あれが本体よ」

 

「狐憑きっていやぁ……ヴィータのような“猫憑き”みたいなもんか?」

 

「討伐されて残滓しか残ってないヴィータとは違い、彼女の身にはまだSランク級グリムグリードが宿っているわ。とはいえ危険な存在でもない……お互いが共存し合っているのよ」

 

「つまり、彼女自身やその周りに危険はないのですね?」

 

「今の所は、ね。 それよりもイットよ。 少し不味いわね……」

 

空間ディスプレイに映るイットからは赤黒い魔力が電撃のように漏れ出している。 必死になって抑えようとしているが、もし戦闘にでも巻き込まれでもすれば……

 

そんな心配も他所に、豹変したアラはアインハルト達に襲いかかって行く。

 

「話には聞いていた《鬼神の力》……なんでいきなり出てきたんだ?」

 

「あの力が出てくるのは大抵、あの子の精神状態が不安定な時や身体に大きなダメージを受けた時と……魔力の枯渇が起きている時よ」

 

「つまり、あの技で魔力をほぼ使い果たし……鬼神の魔力が表面に出てきてしまった、ということですか」

 

「ええ。 最悪、強制的な危険してもらうしかなくなるけど……」

 

固唾を飲んで戦況を見守る大人達。

 

『「そぉれ」』

 

「っ……」

 

『「どうだ?」』

 

「あ!」

 

アラの力、技、速さ共に飛躍的に上がっており、防戦一方だった。

 

「イットさん! 大丈夫ですか!?」

 

「おい、持病持ちなんて聞いてねぇぞ!」

 

「——くっ! はあ、はあ……あ、危なかった……もう少しで呑まれる所だった」

 

鬼神の力を抑えることに集中していたイットから次第に赤黒い魔力が収まって行き……留める事に成功したが、大量の体力を消耗してしまった。

 

「『どうした? その程度かえ?』」

 

「っ……なんて覇気。 かなり上位の怪異が憑いているようですが……」

 

「『来ぬのなら……こちらから行くぞ!』」

 

神速の如く、アラの姿が掻き消え……

 

「『はあああぁ——はえへぁ……」

 

「え……」

 

「んん?」

 

次に姿を見せたのはイットの目の前で、髪が元の黒髪に戻りながら倒れていた。 先程の覇気や尻尾も消えて無くなり、呆気に取られる。

 

「……ぉ……お……おぉ……」

 

「お?」

 

「……お腹……すい……た……」

 

その言葉を最後に、地面に突っ伏してしまった。 するとアラの側に狐を模した簪が出現し、カランと音を鳴らして地に落ちた。

 

「……な、なんじゃソリャ……?」

 

「どうやらあの力を使うには色々と問題があったようだな」

 

「今回はそれに救われました。 でも……」

 

思う事があるのか、アインハルトは浮かない表情を見せる。 と、その時……

 

「うわあああ!!」

 

「くっ……」

 

どこからともなくミウラとフォンが吹き飛ばされてきた。 突然の事にお互いに驚く中、フォンはイットを見ると目を見開かせる。

 

「ミウラさん、フォンさん!」

 

「…………! なんて魔力の淀み……イットさん、一体何が……」

 

「そ、それは……」

 

「まあ、それは後にしましょう」

 

有無言わさずフォンはイットの背後に回って身を起こし、掌を背中に当てる。

 

「コオオォ——活っ!」

 

「おっ!?」

 

呼気と同時に気力を流すように掌底を入れられる。

 

「活を入れました。 気分はどうですか?」

 

「……凄い。 さっきまでの倦怠感が無くなって、スッキリした気分だ」

 

何事もなくスクッと立ち上がり、その様子を皆に見せる。

 

「……あ! それより、ミウラ達がここに吹っ飛んできたという事は……」

 

「あ」

 

次の瞬間……風の斬撃が飛来してきた。

 

「どわああ!?」

 

「なんて風……!」

 

「最初の空気砲の奴とは比べ物にならないナ」

 

ズボンのポケットに手を入れながら歩いてきたシュウは、倒れているアラとダイに一瞥すると、イラついたように舌を鳴らす。

 

「チッ、他の奴らはやられたか」

 

「これはしてやられたと言っていいのかな」

 

「シュウ・レオーネに、アウロラ・イグニス……」

 

さらにアウロラもやって来て、いよいよ決戦という雰囲気となってきた。

 

「さて、お互いに欲しいのはこれだね」

 

そう言って取り出したのはねねの二足の前脚……残りのパーツはイット達はミウラが胴体、エディが右後脚、イットが左後脚、自由に動いているがアインハルトが一応頭を持っている。

 

すると、アウロラは両手に持っていた前脚を放り投げ……ネイトとフォンがそれぞれの脚をキャッチする。

 

「なっ……」

 

「一体何のおつもりで?」

 

「そんな元を持っても邪魔なだけだし……全員倒した後、ゆっくりと回収させてもらう!」

 

手ぶらになったアウロラは走り出し、それと同時にイットも太刀を納刀した状態で走り出す。

 

「伍の型……」

 

「はっ!」

 

「残月!」

 

走る勢いを加えられた前蹴りを紙一重で躱し……至近距離での居合いを放った。 腹部を狙った居合いは手を交差させる事で防がれたが……一連の流れの間に、ネイトとフォンが左右から迫っていた。

 

「…………!」

 

「旋風残雲蹴!!」

 

フォンは高速で回転しながら連続で蹴りを放ち、ガードの上を何度も蹴り続けた。

 

「アイスメイク——(キューブ)!」

 

ガードで動きを止めている隙にネイトが氷の壁でアウロラを囲い込み……氷の立方体の中に閉じ込めた。

 

「大地の鉄槌!!」

 

その瞬間、真上からミウラが脚を突き出しながら落下。 氷の立方体を砕き、中のアウロラごと思いっきり踏み込んだ。

 

「ぐうっ……! せいっ!」

 

「おっと……」

 

これも防御の上だったが苦悶の表情を見せ、押し返してシュウの元まで後退する。

 

「っ……流石に慣れて来てるか」

 

「チンタラやってんじゃねえよ」

 

「だったらもう少し手伝ってくれてもバチは当たらない」

 

「フン……」

 

不機嫌そうに鼻を鳴らすと……風と共に一瞬でシュウの姿は消えてしまった。

 

「え……っ?」

 

「どこに……」

 

「…………! 上だ!!」

 

空を見上げると、遥か上空にはシュウが浮いていた。 シュウは静かに両手を広げ、天を仰いだ。 すると風が吹き、一瞬で局地的な嵐が起こり出した。

 

「ちょ! それ私も巻き込んで……!」

 

「喰らえ——嵐の八衝!」

 

次の瞬間、空が爆発し……上空から地上に向けて大量の大気が砲撃のように襲いかかってきた。

 

「なんて質量の風だ……あんなもん喰らったら!」

 

「はあああっ!!」

 

「イット、ミウラさん!!」

 

「え……」

 

襲いかかる風を前に、アインハルトは一気に魔力を高めながら拳を構え。 フォンはイットとミウラを引き寄せる。

 

「覇王——裂風掌(れっぷうしょう)!!」

 

「今です!!」

 

「うわっ!?」

 

真上に向かって放たれた掌底は衝撃波となって風を起こし、竜巻となって立ち昇る。 風と竜巻は衝突し……拮抗する事なく竜巻が押し返され、天から襲いかかった空は大地を揺るがした。

 

その衝撃はフィールド全体を揺るがす。 そして、風が止むと……嵐が吹いたそこには大きなクレーターが出来ていた。

 

「…………生き残ったか」

 

上空から見下ろすシュウの目に、アインハルト達が映る。 咄嗟にネイトが先程の氷の立方体で身を守ったようだが……跡形もなく吹き飛んでいた。 だが、それでも命からがら生き残っていた。

 

そして、アウロラも巻き添いを喰らっていた。 と、その時……シュウの頭上に影がさす。

 

「はあああっ!!」

 

「ぐはっ!」

 

蹴りを入れて来たのはミウラ……さらにその上にイットもいた。 どうやらアインハルトの技が道を作り、フォンが押し上げてシュウの攻撃を突破……あの土壇場でやり遂げたようだ。

 

「ここまでやるとはな……面白れぇじゃねえか!!」

 

「うわわ!」

 

「っ……」

 

風を操るシュウの前で空中戦は彼の独壇場……しかし、イットは風にその身を任せながら目を閉じ、意識を集中させる。

 

「——見えた。 風だ……追風だーーッ!!」

 

そして、開眼と同時にシュウを捉え、天高く叫ぶ。 風はシュウの手の中……その中にいる敵は問答無用で地に落とせる。 が、イットはその流れに逆らい、一気にシュウに接近する。

 

「なっ!」

 

「コオオオォ……」

 

懐に入り、呼気を高めながら円を描くように何度も斬りかかり……

 

「秘技・巻空撃!!」

 

一回転してから放たれた一撃で風を、空をシュウごと斬り裂いた。

 

横一文字に斬り裂かれたシュウは力を無くして落下し……真下にいたネイトが柔らかい性質に変化させた氷のクッションで受け止め、さらにその上に2人が落ちて来た。

 

「た、助かったぁ〜……」

 

「さすがにもう、魔力の限界だ……」

 

「え、えっと……勝った、のカ……?」

 

「紙一重、薄氷の勝利でしたが……」

 

あまり実感できないが、先程までの風が止んでいる事から戦いが終わった事を改めて実感する。

 

それから少し休んだ後、ねねパーツを確認する。

 

「これで6つ……尻尾以外のねねパーツは手に入ったね」

 

「ふう、ようやくか」

 

「さて……残るチームは——」

 

「そこまでだ!」

 

「ン?」

 

と、その時、静止の声が届いてきた。 辺りを見回すとクレーターの上に5人の男女がおり、ババーンっと登場していた。

 

「あれは……」

 

「残りのチーム、確かウィー……なんとか」

 

「ウィザーズだ!」

 

言葉がでないネイト。 リーダーらしき少年が名乗ると同時にイット達に向けて指をさした。

 

「あー……素で忘れてた」

 

「かなりの強敵でしたから……」

 

「くっ……いくらお前達が優れていようと、魔法の規模と量はこちらが上。 勝ち目はないぞ!」

 

「……典型的な魔法主義者ですね」

 

戦闘において魔法だけを重視している人を魔法主義者という。 魔力と魔法の腕だけを上げ、それ以外は疎か……怪異の出現や、《異界対策課》の活動開始以降、減少傾向にあるも、消えてはいなかったようだ。

 

「勝ち目云々より、なんで今の今まで出て来なかったんダ? コレだけ派手にやり合っていたんだから直ぐにでもこれただロ?」

 

「ぐっ……」

 

「そ、それは……」

 

「彼らの言い分を汲むのなら……圧倒的にシュウと呼ばれた彼に劣っています」

 

「卑怯とまでは言わないが、意気地無しだったわけだ」

 

「う、うるさい!」

 

図星だったのか、リーダーの少年は怒りを露わにし、魔力を込め出す。

 

「お前達は満身創痍。 これで僕達の勝利だ!」

 

「はあああ!!」

 

「喰らえーー!!」

 

怒りに任せ、問答無用で一斉に砲撃を撃ってきた。 迫る砲撃を前に……

 

「はっ!!」

 

弧影斬——

 

「はあああっ!!」

 

覇王裂風掌——

 

「とりゃああっ!!」

 

抜剣・彗星——

 

「吹っ飛べ……アホども!」

 

アイスメイク・大砲(キャノン)——

 

遠距離攻撃を持つ4人が技を放つ。 両者の攻撃がぶつかり合い……耐える間も事なく、イット達の攻撃があっさりと砲撃を破った。

 

「な、何ぃ一!?」

 

「そ、そんな……

 

「ば、馬鹿——」

 

驚きを隠せないウィザーズ。 反撃に転じる間も無く……イット達の攻撃が直撃した。

 

土煙が舞い、次第に晴れて行くと……そこには気絶して倒れるウィザーズの姿が。

 

「………………」

 

「弱っ」

 

「エ、エディさん! ダメですよ、本当の事を言っちゃ」

 

「ミウラさんも何気に毒を吐きますね」

 

兎にも角にも、ウィザーズから残り2つの尻尾パーツを奪取すると……イット達を中心にファンファーレが鳴り響いた。

 

『試合終了ー!! 勝者、チーム・ツバサクロニクル!』

 

「や、やったーー!!」

 

「お、終わった……やっと休める」

 

「フゥ……濃い数時間でしたね」

 

「それよりも早くねねを元に戻してください!」

 

「ねねね!」

 

「あ、そういえば……ねね、ゲットだぜー?」

 

「あおーん!」

 

「にゃおーん!」

 

その後、救護班がやってきて各チームを医務室に運ばれて行き。 そんな事よりも、軋む体も忘れて、イット達はねねを元に戻そうとクーの元に走って行った。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

チーム・ツバサクロニクルが勝利したとはいえ、まだ地区大会……先の道のりは長く険しいが、とにかく今は勝利を喜び合った。

 

「ねー!」

 

「ねねー! よかったー、元に戻ってー!」

 

フィールドから地上に戻ったイット達。 テディーは五体満足に元に戻ったねねを抱きしめる。

 

「お兄ちゃん、大丈夫!? 怪我してない?」

 

「……これがそう見えるか?」

 

「全然そうは見えないよ、っと」

 

「イタタタッ!! ギブギブギブゥ!!」

 

マネージャーであるユミナが6人全員の治療や疲労を残さないためのケアを行っていた。

 

「最後は拍子抜けでしたが……それまでは1秒たりとも気を抜けない戦いでした」

 

「さすがはグラントフェスタと言った所か。 こりゃ、喜びも束の間になりそうだな」

 

「ええ、本戦ではさらに厳しい戦いになるでしょう」

 

「運の要素で勝った点が否めないな……」

 

「運も実力のうちよ」

 

そこへ保護者であるアリサが入ってきた。

 

「アリサ母さん……」

 

「運を引き寄せたのはあなた達の実力。 実力が伴ってこそ運命が生まれる……この勝利は紛れもなくあなた達のものよ」

 

「そ、そう言われると……照れてしまいます」

 

「アイタタタァ……ユミナ、容赦ないヨ……」

 

「ちゃんとストレッチしないと明日は筋肉痛になるよ。 というか、エディさんは少し体が硬いよ。 もう少し柔軟性を付けないと」

 

「それは今後の課題だな」

 

「はい。 今日の反省すべき点を直し、次に繋げて行きましょう」

 

「元気は有り余っているみてーだな」

 

そこへクーとエテルナが部屋に入ってきた。

 

「よっす、地区大会優勝おめでとさん」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「本戦の日時はおってお伝えします。 治療が済んだのなら、今日はゆっくり休んでください」

 

「分かったヨ」

 

「流石にクタクタです……」

 

それだけを伝えるとクー達は部屋を後にしようとする。 と、クーは立ち止まって顔だけ振り返る。

 

「ま、頑張れよ。 初戦敗退しても、まあ気にしなさんな」

 

そう言い残してから去っていった。

 

「そ、そうだっタ……まだ始まったばかりなんダ」

 

「地区大会優勝……嬉しいけど、まだね」

 

「うん。 あまり、この後祝勝を上げる気にはなれないね……」

 

「何言っているんですか!」

 

そこでヴィヴィオが待ったをかける。

 

「そうですよ! 優勝は優勝、ちゃんとお祝いしないと!」

 

「もう場所は決めてありますから、この後皆で行きましょう!」

 

「いや行きましょうって……強制かよ」

 

「あ、あはは……でも、またお腹も空いたし、祝勝……とまではいかなくても、何か食べには行こうよ」

 

「参戦〜!!」

 

「フフ、今日は奢ってあげるから、好きなだけ食べなさい」

 

「やったー!」

 

「リオは今日何もしてないのですから、少しは遠慮しなさい」

 

「してたもーん! ハラハラドキドキしながら見守ってたんだから!」

 

こうして、イット達、チーム・ツバサクロニクルの地区大会は終わり……次の戦いに向けて進み始めた。

 

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