新暦77年、4月ーー
第1次元管理世界、ミッドチルダ……その中央区から北上した場所にある大型ドーム、DSAAでも使用されるドームで今宵はライブが行われていた。
『叶うなら その手の温もり 覚えて……いたいよ溢れているーー』
その中で今回の主役たる少女が電子的な青い蝶の羽を広げ、ドーム内を歌いながら飛んでいた。 少女は人間ではなく、AIによって投影され、いわゆる電脳アイドルといった存在だ。 大胆な青を基調とした和服に似た服を着て。 長い金髪を上に一纏めにしシンボルたる大きめな蝶の髪留めをカチューシャのように止めているAI……名を“
「これまでの状況は?」
そのライブを中継している放送室で、どこかの制服を着た少年が画面に映るライブを見ながらこの場の監督に状況を聞いていた。
「現状、9名を確認。 個人情報との照合を行なっています」
「くれぐれも慎重にね」
「ええ。 しかし……どういう感じなんです? あなたも何かこう……特殊な高揚感とか、そういうものを感じてたりするんですか?」
監督は少年に恐る恐る質問する。 年は監督が上なのに、まるで少年が上司なような対応だ。
「ユリシスの歌を聴いたレアスキル保有者は干渉波を出してしまうわけでしょう?」
「聖具で力を封じられている僕には、よく分からないな」
「時々思いますよ。 私にもレアスキルがあればってねえ」
ユリシスの歌には特殊な効果があり、レアスキル保有者と干渉する事が可能。 その能力を利用して彼らはなにかを始めようとしていた。 と、そこで少年は踵を返して出口に向かった。
「………後は任せたよ」
「え、見ていかれないのですか?」
「第一ビルに向かう。 妙な胸騒ぎがするんだ」
そう言い残し、少年は振り返りもせずその場を後にした。 それを確認すると監督はホッと一息吐いた。
「脅かさないでください……
彼らの目的はユリシスの能力を利用した無自覚のレアスキル保持者の検索……及び捕獲だった。
◆ ◆ ◆
同時刻ーー
『ーー事前調査通り、ユリシスのコアはヴァンデイン第一ビルにあります。直ちに急行してください』
この地区の摩天楼の上から夜景をその青い瞳で見ていた少年がいた。 腰まである長い金髪を三つ編みにし、青い特徴的な戦闘服を身に纏っている……そして彼の耳に付けている通信機から少女の声が聞こえていた。
『現在も次々にレアスキル保有者が特定されています。 コアを見つけ次第破壊、もしくは機能を停止させてください』
そこで少女は一呼吸置いて、通信機越しで口を開いた。
『コードネームGV、ミッションを開始してください』
「了解。 これよりミッションを開始する」
少年……GVは蒼い雷撃を身体から放ち、その場から消えた。 その数秒後、ミッドチルダ中央区、その一角にあるビル……ヴァンデイン・コーポレーションのビルから爆発音と共に黒煙が立ち上っていた。
そしてそのビル内の通路を1人の少年……GVが蒼い雷撃を迸らせながら駆け抜けていた。 背後からは武装したこのビルの警備隊が追っている。 GVすれ違い様にパネルに針を撃ち込み電撃を流し込み……シャッターを下ろして追っ手を振り切った。
だがすぐに正面から同じ武装の警備隊が現れ、GVは飛び上がり手に持っていた銃を構え……針を打ち出した。 針は警備隊に当たると何も起きなかったがマーカーのようなものが浮き出ていた。 それを警備隊の合間を流れるようにすり抜けながら全員に撃ち込み……
「ふっ!」
警備隊を抜けると同時に身を翻して左手をかざし、蒼い雷撃を針を通して警備隊に浴びせた。 警備隊は悲鳴も上げられず、GVは地に倒れる警備隊を見向きもせず先に進んだ。
そして指定された地下にあるポイントに辿り着き、GVは厚い鋼鉄の扉を開き中に入った。 GVは暗がり中を見渡すが……中には彼が目的とする物は無かった。
「こちらGV……コアが見当たらない」
『ポイントに間違いは?』
「間違いない。 どこかに移されたのかも……」
『……留まっては危険です。 ミッションを中止しその場から離脱してください』
ガチャ……
撤退を指示をした時……GVの背後で銃を構えられた音がした。 GVは振り返らず気を向ける。 いつの間にか警備隊が後ろにいたようだが、来るのが早過ぎた。
「……動きが読まれたみたいだ」
『! すぐに離脱してください!』
「…………………」
『? 聞こえていますか、GV!?』
通信機越しで少女は返答を願うが、GVは無言で両手を上げ……降伏を示した。 それを確認すると警備隊の1人が近付き、銃のグリップでGVの後頭部を打ちつけた。
◆ ◆ ◆
「うわあああああっ!!」
昔、僕は何かの組織に攫われ、どこかの研究所で自分のレアスキル……電流・電子を制御する
もう日付も分からなくなったとある日、僕は何かのコンテナに入れられた。 その後コンテナは何かの乗り物に乗せられて走行した。 その中には何故か小型の冷蔵庫があった。 しばらく揺られていると……突然、コンテナが大きく揺れた。 ボーッとしている時に起こった事で額を強く打ってしまったが、そのおかげでコンテナの扉が開いた。
僕は日頃の痛めつけられている身体を酷使して立ち上がり、外に出た。 そこはどこかの貨物室の中で、不自然にコンテナ前にあった2つのトランクに目を止めた。 近付いて開けてみると片方には戦闘用みたいな服が、もう片方には銃があった。 訳もわからず、けど無我夢中でボロ切れを脱ぎ捨てその服に着替え、手にズッシリくる銃を手に取った。
「うっ……」
「誰!?」
突然、コンテナから銀髪の……同い年くらいの少女がフラフラになりながら出てきた。 咄嗟に扱い慣れない銃を構える。
「た、助けて……」
「……………………」
その言葉に、僕は銃を下ろし。 少女に駆け寄った。 その間に、どこからか戦闘音が聞こえてきた。 ここにいてはまた捕まる……少女を優しく横たえ、脱出路を確保しようと通路を進む。 どうやら列車の中のようで、辺りを警戒しながら中を進み後部車両に出ると……そこでは丸いロボットが同い年くらいの男女を襲っていた。 もう何が起きているのかわからないが、無意識に銃を構え……引鉄を引いた。 すると弾丸ではなく針が射出され、狙い通りロボットのレンズに当たり、自然と左手を前に出し……
「迸れ、アームドブルー!」
自然とそう叫び、左手から蒼い電撃が迸り、電撃は誘導されるかのようにガジェットに直撃。 ガジェットは中からショートし、爆発した。 何で助けたのかは分からない……何で使い方が分かるのかも。 けど姿を見られる訳にもいかない。 銃を壁にあるパネルに向けて射出し蒼い電撃を流し来た道の隔壁を下げた。 元の場所に戻り、貨物室を改めて見回す。 目を止めたのは脱出カプセル。 瓦礫と偽装させてここから脱出しようと考えた。
「行こう。 生きる為に……」
「はい……」
僕はその少女と共脱出カプセルに入り、谷に落ちていった……
かなり短いですが、切りがいいのでここで切りました。
後編は直ぐに投稿します。