ViVid Contrail   作:にこにこみ

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集いし獣達 前編

4日後——

 

週末、イットははやての紹介で夜天の騎士達が住んでいる家の近くの浜辺に向かっていた。 そこで一緒にグランド・フェスタに出場してくれるメンバーを探すために。

 

「それで誰なの、そのチームメンバーにいるたい子って?」

 

一緒にユミナも付いて来ており、誰に会いに行くのか質問した。

 

「はやて母さんの家族が道場を開いていてね。 そこの門下生の子を紹介してくれたんだ。 父さんの抜刀を習得しているみたい」

 

「はやてさんというと……なるほど、それは期待できそうだね」

 

「……あ、ザフィーラさーん!」

 

しばらくすると見覚えのある背中を見つけて声をかけながら近寄る。 振り返ったのは褐色肌の男性……盾の守護獣、ザフィーラだ。

 

「来たか。 主から話は聞いている」

 

「それで、誰なんですか? その紹介してくれる子は?」

 

その問いにザフィーラは顎で前を刺した。 釣られて前を向くと……砂浜で子ども達がシグナムを先頭にランニングをしていた。

 

「シグナムの隣を走っている少女がそうだ」

 

「あの子が……父さんの抜刀を習得している……」

 

「へぇー」

 

年はイットと同じくらいの短髪の少女……ザフィーラは“ミウラ!”と彼女を呼び、ミウラと呼ばれた少女はザフィーラの元に走って来た。

 

「なんですか、師匠?」

 

「お前に紹介したい者がいる」

 

「——初めまして、神崎 一兎です」

 

「ユミナ・アンクレイヴ、よろしくね」

 

「あ、はい! ボクはミウラ・リナルディと言います」

 

ペコリと頭を下げて自己紹介をし……ミウラはイットの名前に聞き覚えがあった。

 

「えっと……神崎って……もしかして?」

 

「うん。 父さんはレンヤだよ」

 

「わわっ、そうですか! レンヤさんには色々とお世話になってるんです!」

 

「ミウラ」

 

「あ、はい。 ごめんなさい……」

 

興奮気味になりかけたミウラをザフィーラが制し、本題に入る。

 

「それで、イットさんはボクになんのご用なんですか?」

 

「ああ。 俺は1ヶ月後に開催されるグラント・フェスタに出場するんだが……そのチームメンバーにミウラ、君に入ってもらいたい」

 

「え………………ええええぇっ!?」

 

突然の提案に、ミウラは大きな声で驚いた。 そしてミウラは驚きながらも首と両手を左右にブンブンと振る。

 

「ボ、ボクが……グラント・フェスタに!? む、無理です無理! ドジでおっちょこちょいなボクがいても迷惑になります!」

 

「はは、それは皆同じだよ。 俺も含めてチーム戦は初心者……これから連携を高めて強くなっていくんだ」

 

「うん。 私は出ないけど、精一杯フォローするよ!」

 

「いいではないか、ミウラ」

 

ランニングを終えたシグナムがミウラの肩に手を置きながらチームの参加を推奨する。

 

「今のお前に足りないのは自身だ。 仲間と一緒に戦えればお前は一回り成長できるだろう」

 

「シグナムさん……」

 

「——故に、お前達は試験を受けてもらう」

 

「へ?」

 

言うや否や、シグナムはバックステップで距離を取り……剣型のデバイス、レヴァンティンを両手に構える。

 

「イット、ミウラ。 2対2で来い……私とザフィーラが相手をしよう。 全力を尽くして来るがよい」

 

「ふう……仕方ない」

 

突然の申し出にザフィーラはため息をつきながらもシグナムの元に向かい……大太刀を抜いた。

 

「え、えええぇ!?」

 

「やれやれ……シグナムさんは昔から唐突だ」

 

「ど、どうするんですか!? 双剣を抜いたシグナムさんと、大太刀《村雨》を抜いた師匠は最強ですよ!?」

 

「君を仲間に入れるなら、俺はやる。 ミウラ、一緒に戦ってくれないか?」

 

「ふえっ!?」

 

イットのお願いにミウラは呆けた声を出し、顔を赤くするが……強く頷いた。

 

「う、うん! イットとなら師匠達からの念願の一本、取れる気がする!」

 

「俺もシグナムさんから一本、貰い受けます!」

 

イットは太刀を佩刀して抜き、ミウラは星型のデバイス……スターセイバーを限定的に起動し、両脚に甲掛を装着した。

 

「えー、コホン……僭越ながら私が立会人をさせてもらいます。 双方、構え!」

 

ユミナが立会い、他の門下生も見守る中……

 

「——始め!」

 

「ッ!!」

 

開始と同時に砂浜を蹴り、砂を巻き上げてミウラがトップスピードで飛び出した。 そのまま突進するかと思いきや、フットワークを駆使して左右に移動、ジグザグと動き撹乱しながら距離を詰める。

 

「なるほど……だが、まだ甘い!」

 

「うあっ!」

 

シグナムは放たれた蹴りを右手の剣で受け止め、左の剣で斬り返した。 それを読んでいたミウラは両手を交差させて受け止めた。

 

「ミウラ!」

 

「お前の相手は私だ」

 

援護に向かおうとイットの行手を、横から出てきた大太刀が……ザフィーラが塞ぐ。 ザフィーラは大太刀の柄を両手で掴んで構え、風を巻き起こしながら振り抜く。

 

「ッ——あっ!」

 

受け流そうとしたが、余りの威力に押し負け……イットは吹き飛ばされてしまう。 その隣にシグナムによってミウラが飛んで来た。

 

「どうした! この程度の実力で大会を勝ち抜こうなど夢のまた夢だぞ!」

 

「くっ……」

 

「まだ戦えます!」

 

「……なんでこうなったんだろう……」

 

シグナムとザフィーラの連携に、イットとミウラは奮闘するが……余りの急展開にユミナはついていけなった。

 

「フッ!」

 

シグナムは両手の剣を横に振り上げてから振り下ろすと……剣がワイヤーに繋がれながら無数に分割、蛇腹剣となった。 レヴァンティンのシュランゲフォルム……通常なら見た目以上に伸びる事が出来るのだが、今回は双剣のため実際の剣から蛇腹剣になった時と同じ長さ……約5メートルくらいの刀身の長さとなった。

 

「っ!」

 

「うおおおおっ!!」

 

その行動に警戒していると……今度はザフィーラの渾身の裂帛とともに大太刀がうねりを上げながら振り下ろされ、砂浜を叩き割った。

 

「ミウラ!」

 

「きゃっ!?」

 

迫り来る斬撃をミウラを受け止めようと身構える引き寄せながら横に飛んで避けた。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい……大丈夫です///」

 

腕の中にいるミウラに無事か話しかけ、ミウラは顔を赤くしながら頷くとイットは一安心し……シグナム達を見据える。

 

「フォローする、連携して行くぞ!」

 

「はい!!」

 

「来るか」

 

その場で納刀から抜刀……弧影斬を足元に放ち、砂を巻き上げて目隠しを行う。シグナムは二刀の蛇腹剣を交互に振るい、しなる刃の鞭が2人を襲う。

 

「っ!」

 

「スターセイバー……抜剣!」

 

《ソードオン》

 

甲掛の一部が展開し、桃色の魔力光が粒子となって放出される。 そして2人は蛇腹剣を受けずに移動して避け続ける。 武器で受けたりすればあっという間に形勢が不利になるからだ。

 

「ふんっ!」

 

大振りに振られる大太刀を、2人は加速して距離を詰め。 ザフィーラを追い抜いてシグナムの元に向かう。

 

「でやああああ!」

 

ミウラは跳躍して回転、ドリルのように脚をシグナムに向けながら突進して蛇腹剣を弾きながら直進していく。

 

「そのような単調な攻撃、通用すると——」

 

「イットさん!」

 

「ミウラ!」

 

ミウラの真後ろにピタリとくっついて付いてきていたイットが伸ばされた手を掴み……その場でミウラを振り回すように回転し、ザフィーラに向かって投げ、イットはシグナムに向かって駆ける。

 

「四の型——紅葉切り!」

 

「瞬息——抜剣・桜花!!」

 

2人は一瞬の虚をつき……イットはすれ違い側シグナムに一太刀、ミウラは特攻するように自分自身が吹き飛びながらザフィーラの腹部に蹴撃を喰らわせた。

 

「——そこまで!」

 

そこでユミナの制止が入り、勝敗が決した。 と言っても薄氷の勝利ではあるが。

 

「い、一応……勝った?」

 

「形式上では、ね。 本気を出してたら5秒も持たなかった……」

 

勝ったには勝ったが、2人は勝利を喜べなかった。

 

「……手を抜いたのか? エヴォルトをしないとは」

 

「フッ、使うまで無かっただけのこと。 それに手を抜いたのはお前にも言えたことだろう。 炎を使ってなかった」

 

「それで、どうですか? 合格点はもらえましたか?」

 

「ふむ…………及第点と言ったところか」

 

「非常に厳しいですね……」

 

顎に手を当てながら答えるシグナムに、ユミナは少し苦笑いをする。

 

「後は参加するもしないもミウラ次第だ。 お前が決めろ」

 

「え、ええっとぉ……」

 

「私としてはこれ以上にない逸材だと思うけど……どうかな?」

 

「でも……ドジでグズな僕が皆さんと一緒に戦えるかどうか……そもそも僕自身がちゃんと戦えるかどうかも……」

 

「戦えない人なんていないよ」

 

「え……」

 

「戦うか、戦わないか……その選択肢があるだけ。 俺は戦うし、ミウラとも一緒に戦いたいと思っている」

 

イットの言葉に考えさせられながらミウラは少し考え込んだ後……顔上げて答えた。

 

「……はい。 やってみます、やらせてください! 僕は見つけたい、強さの意味を!」

 

「そう来なくちゃな」

 

「よろしくね、ミウラちゃん!」

 

イットは座り込むミウラに手を差し伸べ、その手を取って立ち上がった。 そこへユミナも近寄り、新しいチームメンバーを迎い入れたことに喜ぶ。

 

「そういえばミウラちゃんの抜剣って、イット君のお父さんから教えてもらったの?」

 

「あ、はい! 以前、はやてさんと一緒に教えてもらう事になって。 なんでも“この抜刀は君から教わったものだから”とかなんとかで、よく分からないですけど……」

 

「どういう意味だろう?」

 

「ザフィーラさん、何か知っていますか?」

 

「フッ……さて、どうだろうな?」

 

「???」

 

明らかになにかを知っているようだが、顔に似合わずザフィーラは笑みを浮かべながら誤魔化す。

 

「そういえば、グランド・フェスタは6人での出場でしたよね? ユミナさんは出ないとして、残りの4人はどこに?」

 

「1人は特訓中で、他の2人は最後の1人を誘いに言っているんだ」

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「えーっと……どこにいっかなぁ?」

 

同時刻……ネイトとフォンはミッド西部の郊外にある丘陵地帯を歩いていた。

 

「当てがあるのではなかったのですか?」

 

「おう。 クラスの女子からこの辺りにいるって聞いたんだが……」

 

「この辺りを、ですか……」

 

「ほらそこに道路が見えんだろ? そこを車で通った時に丘の上にそれっぽい影を見たそうだ」

 

イット達はグランド・フェスタに出場するための2人目のチームメンバー、アインハルトを誘うため学院で何度も接触していたが……その度に彼女はイット達を避けるような行動をとり、結局こんな場所にまで来ることになっていた。

 

「……お。 あの看板だな。 あの看板付近で見かけたそうだ」

 

ネイトが指差したのはここからミッドまでの距離を示す看板……フォンは辺りを見回すとと、腰を下ろして地面に手を這わせた。

 

「この足跡……形と大きさからして160前後の女子でしょう」

 

「こんな場所にそれがあるつぅことは……当たりだな」

 

人気のないここに女子の足跡……ネイトの情報は間違っていなかったようだ。 2人は周囲を歩き回り、しばらくすると……遠くから岩を砕くような音が聞こえてきた。

 

2人は駆け足で音の発生源へと向かうと、片側に岩壁がある丘の上に1人の少女が岩壁に向かって拳を放っていた。

 

「はあっ! せい!」

 

右ストレートが岩壁と衝突し、壁が砕かれて破片が飛び散っていく。 さらに軸足を捻り、回し蹴りで宙に浮いていた破片を一蹴した。

 

「ふう……」

 

パチパチパチ……

 

「?」

 

「お見事です」

 

今の一連を見ていたフォンはネイトと共に彼女の前に出ながら拍手を送った。

 

「あなた方は……同じクラスの……」

 

「お、ボッチ決め込んでいる割には覚えていたんだな」

 

「なら改めて自己紹介を。 私はフォン・ウェズリーと申します。 彼はネイト・ティミル」

 

「…………アインハルト・ストラトスです。 私に用がある様子……何用ですか?」

 

こんな辺鄙な場所まで会いに来た彼らに、アインハルトは目的を問う。

 

「私達は1ヶ月後に開催されるグランド・フェスタに出場しようと思っています。 参加メンバーは6人、そのメンバーにあなたを

 

「……それなら私ではなくても。 誰でもよろしいのでは?」

 

「やるからには優勝を狙う。 お前、隠してるつもりだが結構見え見えだぞ。 かなりの実力者だ」

 

「………………」

 

しばし考え込む……そして不意に何かを思い出し、質問した。

 

「そのチームメンバーには彼が……神崎 一兎がいますか?」

 

「ん? ああ、あいつが発案者だからな」

 

「……そうですか……」

 

参加するか否か、アインハルトは顎に手を当てて考え込む。

 

「無理にとは言いませんが……」

 

「——引き受けましょう」

 

「ん……?」

 

「その申し出、お引き受けします」

 

予想に反してアインハルトはフォン達の申し出を引き受けた。

 

「驚いたなあ……断ると思ってたんだが」

 

「私も個人で修練を積んで行くのにも限界を感じていました。 あなた方に着いていけば……何か見えるかもしれません(それに、彼についても気になりますし……)」

 

「何か言ったか?」

 

「いいえ、なにも」

 

小声で聞き取れなかったが、アインハルトは何事もなかったかのように首を横に振るう。 だが、これで彼らはようやく大会に向けて行動を開始できる。

 

「まあ何にせよこれで6人……大会に出場できるな」

 

「ええ、どうやらイット達も上手くいったようです。 この後合流しますが、アインハルトさんもどうですか?」

 

「はい。 ご同行させて頂きます」

 

アインハルトは2人の後に続き、丘陵地帯を後にした。

 

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