よもや、よもや。
こんな事になろうとは、思ってもみませんでした。
えぇ、えぇ。
確かに私は、この世界を知っていましたとも。
月に寄りそう乙女の作法。私が生涯愛し、布教に努めたR-18であることが何より惜しく、しかしそうでなければならないと何度もジレンマに駆られたあのゲーム。
その世界に、しかも大蔵遊星として産まれ、これまで過ごして参りました。
勿論、困惑と葛藤だらけの毎日でありました。幼少期から屋根裏に隔離され、ハウススクーリングという日の本の国ではおおよそ罷り通らなそうな教育方針で育ったあの日々を、忘れる事はありません。…おっと、私の過去というのはおおよそ大蔵遊星と変わりないのですから、そんなに振り返る必要もないでしょう。
何はともあれ、私は衣遠お兄様に見出だされ、直々に教育を施され、そして見捨てられたという訳です。デザインというのにこの身はどうしても目がないようで、血道を上げて、それこそ寝食の時ですらデザインの事を考えていたのですが、最終的には衣遠お兄様曰く百点きっかりのものばかり。題材にはきっちり答えているけれど、つまらない。それが、私に対する最終評価でありました。
私は、衣遠お兄様に、貴方の弟はこんなものではないと示したかったのです。だからこそ、大蔵遊星が不得手とするデザインで、彼に挑んだのです。けれど、その結果があの有り様で。
だから私は、リベンジをしようと思ったのです。ジャン・ピエール・スタンレーが創立する、フィリア女学院。その理事長代理を、お兄様が勤める事は知っていました。だから、ジャンに憧れているふりをして妹のりそなを利用し、桜小路ルナ様へと奉公する約束を取り付けたのです。あの方のデザインを、間近で見ることが出来たなら、きっとそれは私のためにもなる、と。
なんと浅ましい。私は、あんなに美しいと感じていたルナ様と朝日の関係を、ただお兄様に認められたいが為だけに利用しようとしているのです。原作、と言えば良いのか、純真な大蔵遊星もとい小倉朝日からかけ離れようとしている私は、それこそバチが当たったとしても何も文句はありません。全てが終わったら、好きにされても構わない…と、思っていたのですが、残念ながらそうは上手くいかないようで、神様は早くも私に一つの罰をお与えになりました。
「…妹、ドン引きです…確かに身も心も女になれとは言いましたが、どうして本当に女になってるんですか…」
「…それは…うん、僕のほうが、聞きたいかな…」
こちらのお母様、申し訳ありません。貴方の息子は、女の子になってしまいました。
きっと続かない。