女の子になってしまったものの、フィリア女学院へ通うならば問題のないどころか好都合であったので、そのまま桜小路ルナ様が住まう桜屋敷へと足を運んでしまった私なのですが…どうも、予想外な方向へ事態が進行しているようです。
「…」
「…あの…矢吹さん…?」
「…」
「…うぅぅ…。」
矢吹八千代さんからのお出迎えの時に下手を打つこと無く、これからご奉仕する者として相応しい態度でご挨拶をすることができて一安心し、ルナ様に二つ返事(?)で採用していただいた後、八千代さんによる私の服飾の審査をしてくださったのですが…どうも、出来を見て固まってしまったのです。
それから、何度か話しかけてはみるものの、反応してくださる事はなく。半刻ほど、この状態が続きました。
「…小倉さん。」
「は、はい!」
「…正直、驚いています。どうしてこんなに…これならば、学院に通う必要性など無いのではないでしょうか?」
「え、えぇ…?」
そして、この八千代さんからの質問。正味な話、私にとってはルナ様にお仕えし、デザイン画を拝見させていただくのが本当の望みであり、学園へ通う事は二の次ではあるのですが…それを馬鹿正直に言うのは愚か者でしょうし、それとなくちょっぴり本音を交えながら誤魔化す事に。
「私の服飾の技術は、確かに一定の及第点にはあるものかもしれません。ですが、それだけでは駄目なんです。私には、決定的に足りないものがある…それを、私は学院へ探しに行きたいのです。」
「貴女は…えぇ、分かりました。貴女なら、安心してお嬢様を任せられるかもしれません。どうぞ、よろしくお願いします。」
「あ、い、いえいえ!こちらこそ、どうかよろしくお願いしますっ!」
どうやら私は、八千代さんからの信用を勝ち取ることに成功したようです。けれど、彼女からの期待は、もしかすると小倉朝日以上のものになってしまったかもしれません。
そんな事を、家に帰ってからりそなに話しました。
「…。」
「…な、なんでしょうか、りそな様?」
「それ。敬語、止めてください。兄に様付けされるってどんなプレイですかと、前にも言ったじゃないですか」
「…ごめん。メイドのつもりのままになってた。」
「全く、身体が女になったら今度は心がメイドですか。下の兄の順応性が高過ぎて、妹、ちょっと引いてます。」
今日のりそなの気分は、どうにも中の下のようです。
「やっぱり下の兄は優秀だったんですね。貴方の服飾を何度か見たことありますが、上の兄が見捨てたのが分からないくらいでしたから。」
「りそなにそういって貰えるのは嬉しいなぁ、ありがとう。」
「ふん。妹、怒ってます。貴方の鈍感なところは嫌いじゃないですが、私は下の兄を誰よりも認めていると思います。それなのに、『初めて認められた』みたいな顔してそんな事言われるなんて思いませんでした。」
「ええ!?そんな顔してた…?」
「はい。…なんだかますます腹が立ってきました。罰としてスカートをたくしあげてください。」
「なんでー!?」
…訂正。りそなの気分を、下の下にしてしまいました。
きっとまた続く。