もんむす・くえすと!の女の子たちがやって来てしまった件について 作:森野熊漢
次はいつ書けるかは未定です。
追記…すみません、手違いで早々に消してしまいました。復旧にも少し時間がかかりました。申し訳ありません。
まずい……」
俺こと、片梨 輝(かたなし ひかる)は呆然としていた。
いや、呆然とせざるを得なかった。
だってそうだろう。
「わーい!」
「ブーメラン、ブーメラン!」
「もう、当たるじゃない!」
「ほらほら、羊ちゃん。ダメよ飲みすぎたら」
「ひぃーっく、うさぎはうるさいのらー」
「み、水……(ビチビチ)」
「なんだ、これ……」
朝起きると我が家が、阿鼻叫喚の地獄絵図と化していたのだから。
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事の発端は、俺の謎の言動だったと思う。
俺は昔から学校の友人と「二次元に行けたらな」みたいな、到底叶うはずのないことを真剣に話し合っていたのだが。
まあ、学生時代は終わりを告げ、その後就職したものの、やはりそういうものには憧れが残っていた。だからだろうか。
とある思考に俺は至った。
「そうか、二次元をこっちに呼び寄せられたらよくね?」と。
いや、今考えたら、これまで以上に頭のおかしい発想だったと思う。しかし、この時の俺は天啓でも得たかのごとく、はしゃいでいた。
きっと疲れがピークなのとストレスがマッハだったのとその他もろもろが原因だったんだ。しんどいと現実逃避したくなるっていう人間の悲しい性だったんだ。あと酒が入ってた。
そこからの俺の行動は早かった。
まず一番俺がこちら側に呼び寄せたい二次元キャラは何か。これを考えるところから始まったのだが。
「いやまあ、当然これでしょ」
俺はリビングでノートPCを起動し、とあるフォルダを開く。
そこに書かれていたのは。
「もんむす・くえすと!ぱらどっくすRPG」
一応最近発売された中章である。あ、これ18禁だからね。よい子は18歳になるまで手を出しちゃだめだぞ!
一応本編である「もんむす・くえすと!」も同じフォルダ内にあるのだが、まあキャラの多さで言えばぱらどっくすだろうということで、俺の中で呼び出したいゲームはこれに決定。
さて、次のステップはというと。
「もんむすのみなさん、元気ですかー!」
地道に画面に向かって呼びかける。挨拶はやはり大事だからね。営業でもきちんとした挨拶から入らないといけないし。ほら、いきなり「出てこい」とか言われるよりも、きちんと挨拶から入って呼びかけた方が印象いいよね?
重ねて言うが、この時の俺は酒が入ってた。酔っ払いだったんだ。明日が休みだからって調子に乗って飲み過ぎたんだ。だからこんな頭の悪い行動をしてたんだ。
「うーん、出てこないか―、かといって、ここでプレイしたら余計に出てこないだろうしなー」
どうしたものかと考え続けること15分。
「あーもう、無理!寝る!」
さっさと寝ることにした。
PCの電源を落とすのも面倒だったのでそのままにしておく。明日休みだし、起きてから消したらいいや。
そう思いながら部屋に戻って布団にダイブ。そのまま寝てしまった。
それが大きな過ちだとも知らずに。
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「とりあえず、これどうしたらいいんだ……」
現在俺は、扉の隙間からリビングの様子を伺っている。
ぱっと見るだけでもリビングにいるメンツは。
スライム娘二体。
ハーピィ娘。
うさぎ娘。
羊娘。
頭が魚で下半身が人間な残念なマーメイド。
「どうしよう話が通じそうなのが少ししかいない!?」
俺の中で話が通じそうなのと言うと、うさぎ娘さんだけである。
何故か。順に理由を上げるならば。
スライム娘……夢中でブーメラン振り回してて会話が可能か不明。
ハーピィ娘……襲われそう。
羊娘……酔っ払いは帰ってくれないか。
残念なマーメイド……さっき即死した(戦闘不能)
「うわぁ……」
なんだろう、自分の家なのに自分が居づらい。
「あの、さっきから何されてるんですか?……一応音でそこにいらっしゃるのはわかってたのですが」
「……!」
ばれてた。仕方ないのでドアを開けて姿を現す。
「わーい」「にんげんだー」
「ん?人間?しかも男!?」
「あらあら、うふふ」
「うーい、人間ー?うえへへへ、つきあえー」
「み、みず……」
「…………」
最大限に警戒しながら俺は少しずつ近づいていく。
目的はうさぎ娘さんと話すこと、そしてPCを回収することである。
だが。
「人間だ!交尾するぞ!」
「うぉい!いきなりかよ畜生!」
ハーピィ娘にとびかかられ、なすすべなくその場に抑え込まれてしまう。
マジか、俺の貞操もここまでか……と半ばあきらめかけたその時。
「こら、よそ様に迷惑をかけない!」
「ぎゃん!」
ハーピィ娘の頭を誰かが強く叩いたらしく、ハーピィ娘は俺から離れて行った。
何事か、と俺が目を向けるとそこには。
「えっと、大丈夫でしたか? うちの仲間がすみません」
「……は?え?うそだろ?ルカさん!?」
我らがヒーロー、勇者ルカが立っていた。
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「なるほど、ここは僕たちのいた世界とは全く違う世界、と」
相手がルカさんとわかるやいなや、即座にお茶をだし、お互いの情報を交換することに決定した。
うさぎ娘さんでもよかったと言えばよかったのだが、他のもんむすが何をしてくるかわからないため、リーダー格であるルカさんと話すことで、俺の安全を守ろうと思った次第である。いや、多分大丈夫だったんだろうけど、そういう建前を使ってでもルカさんと話してみたかったとかそういうわけではないからね!
「ああ、で、ルカさんたちこそ何故こちら側に?」
「それがわからないんだ。自分の家……じゃなかった、ポケット魔王城っていう建物の中に、見覚えのない扉があって、そこに入ってみたら、ここの部屋につながってて」
「……君らが出てきたの、おそらくこれなんだけど」
言って指差したのはPCの画面。そこには大きな黒い穴が開いていた。
……これ、PC使えないよね。こんな穴が開いてたらもうだめどころじゃないよね。
「まあ、なんとか出入りはできるみたいだね」
いや、そういう問題でもないと思うんだけど。
「だけど驚いたな、まさかポ魔城でこんなことになるなんて」
「まあタルタロスでしか平行世界の移動とかはなかっただろうしねぇ」
何気なく言うと、ルカがぎょっとした風にこちらを向いた。
「タルタロスで平行世界への移動が可能なの、なんで知ってるの」
「……………………あ」
忘れてた!そういえばもんぱらではごく一部の人物しか知らないことなんだっけ!? まずった。
「ああ、えーとあれだ、俺も別世界からなんか知らんうちにそれ通り抜けて今の世界に来たみたいだから」
やっべ、適当に言ってるけどこれ大丈夫か?
「ああ、そういうことか。大変だったね…」
納得してもらえたぁ⁉︎ マジ⁉︎
って思ったけど、そうか、ルカさんの世界はタルタロスが多いし、割とそういうのもありな世界なんだろうな。
純粋なルカさんを騙したことに罪悪感を抱きながら、そんなことを思う俺だった。
スライム娘が二体いますが、まあそういうこともあるってことで。