もんむす・くえすと!の女の子たちがやって来てしまった件について 作:森野熊漢
今年の夏は暑いですね。コミケとかもありましたが、どうでしたか。
私はコミケに行きたいという気持ちは持ちつつも、場所が遠いので今年も行きませんでした。代わりにFGOで終わらない鯖フェスをしていますが(まだ4周目)
まだまだ暑いので熱中症にはお気をつけください。
「準備は出来てるかああああ!」
『おおおおおおおおおぉぉぉぉ!』
湧き上がる歓声。止まらない興奮。離れた場所からでも感じる熱気。
「お前ら!美味い料理を作る気持ちは十分かぁ⁉︎」
『おおおおおぉぉぉぉ!』
「輝に栄養は十分与えられそうかぁ⁉︎」
『当然だあああぁぁぁ!』
「ならば、これより第一回ポ魔城料理大会を開催するぜえええぇぇ!」
『っしゃあああぁぁぁぁぁ!』
「……え、何これ」
端に設けられた長机の一席にて、俺はそう呟くことしかできなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ん、んん……?」
「あ、輝さん! 起きましたか!」
ぼんやりする頭で、見覚えのある天井だなとか思っていると、傍から声がした。
目をやると、そこには黒色のナース帽と服に身を包んだ小柄な少女。
「ナビス……?」
「あ、きちんと認識はされてるみたいですね!」
ただしこの少女、サキュバスである。
ぼうっと彼女の顔を見ていると、ナビスは慣れた手つきで俺の額に手を当て、温度計を腋に挟み込ませた。
さすがナーキュバス、手際がいい。
「……熱はまだ少しありそうですね。食欲の方はどうです?」
「……少しはある、かな」
「なら、症状は良くなっていますね。一安心です。点滴も外せそうですね」
言われて初めて気が付いたのだが、左手に点滴が刺さってた。
「そういえば、なんで俺はナビスの世話になってるんだ?」
「あー……覚えてませんか? 輝さん、熱中症で倒れたんですよ」
「マジか。ここ数日体調悪かったのって熱中症だったのか」
ここ最近はすごく暑かった。プールの水が熱くて入れないということが起こるくらい暑かった。
だというのに、「電力消費を出来るだけ抑えてくれ」という上からの要請により、職場のほとんどが冷房も使えない状態だった。
「いや、それでもしっかり水分は採ってたぞ? なのになんで」
「……輝さん、それ本気で言ってます?」
なんでナビスは半目で俺を見てるのだろう。
「熱中症になる原因として、よく言われるのはなんでしょうか、輝さん」
急にクイズが始まった。
「ん? そりゃ水分不足だろ」
「そうです、では何故水分が足りなくなるのでしょうか」
「……汗、だな」
一瞬それ以外の排泄物のことも頭をよぎったが、まあ一番の理由はこれしかないよな。
「はい、それも正解です。では、その汗は水しか含まれていませんか?」
「それはないだろ」
「そうですよね。それが答えです」
「……???」
「わかってないって顔ですね……。ヒントは舐めたらどんな味がしますか?」
「そりゃあしょっぱい……あ、塩分か」
「そうです。まあ実際は塩分だけでなく、色々な栄養素も含まれているのですが……とりあえず、バカ正直に水しかとってなかったから、というのが一番ですね」
ここで、はぁ、と溜息をついてナビスは続ける。
「さて、話は変わりますが……輝さんはここ最近、ご飯を食べてましたか?」
「ここ最近……?」
「そうですね、体調が悪いと自覚された少し前からです」
そうだな、その時はたしか……。
「いや、忙しくて時間がなかったのと暑くて食欲がなかったから割と抜いてたな……」
「やっぱり」
給食も昼休みに用事が入ったりしてその時間に食べられず、後から食べようにも暑くて食欲が無くて他の先生に頼んじゃったんだよな。
「い、一応ゼリーとかは軽く口にはしていたぞ」
10秒チャージで有名なアレである。まあ三日おきに一個程度だが。
「輝さん、完全に栄養不足ですよ。ご自身が倒れられたあたりの症状を覚えてます?」
「まず俺、倒れたのか……それすら覚えてないんだが……ええと、確か食ってもないのに吐き気が止まらなくて、飲んだ水分を吐き戻してたっけか」
「まさに栄養不足ですね。塩分諸々足りてません。まあ、それも点滴である程度までは回復させることができましたが……」
マジか、点滴ってすげえんだな。
「しかし、食欲がなかったんだから仕方ないだろう……」
「食欲がないからって、そこで口にしなかったから悪化の一方をたどったんですよ」
ぐうの音も出ない。
「……まあ、七尾さんたちから相談は受けていたのですが、身体を休めることと栄養を取ることくらいしか、回復手段がありませんからねえ。彼女たちには伝えておいたのですが、聞きませんでした?」
「……はい、毎日のように言われてました」
忙しさと食欲のなさを言い訳に、ご飯を少ししか食べていなかった。食欲のなさを我慢してもっとしっかり食べておけばよかったな。
「まあ、食欲がない時に食べろと言われても厳しいのはわかります。……では、食欲が無くても「あ、これなら食べれる」とか、「これ食べたい!」って気持ちになれるものがあればどうでしょうか」
「確かに……それなら俺も無理なく食べられるかもしれないな」
食欲がないってのは、俺の場合は気持ち的なものだ。それを上回る「食べたい」気持ちを与えてくれるものなら、いいのかもしれない。
「なるほど……よし、わかりました。では私は少し席を外しますね。輝さんはまだ万全ではないと思いますから、ベッドでゆっくりしていてください。何かあればメイドさんに言ってもらえれば」
「わかった。トイレとかは勝手に行っても?」
「点滴はしっかり一緒に持って行ってくださったら大丈夫ですよ」
そう言って、ナビスはどこかに走り去っていった。それを見届けた俺は、再びゆっくり目を瞑った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うん、原因というか、きっかけはナビスか」
「……なんだか心外な言い方をされた気がしますが、そうですね。ただ、ここまでの大事にするつもりはなかったのですが……」
俺の横に座るナビスが若干遠い目をしていた。
今さっき気付いたのだが、俺たちが席に着くように言われたここは審査員席らしい。やけに本格的だなおい。
「んで、結構席が空いてるんだが、これは?」
「あー、どうやら開会式で挨拶をするために待機させられてるようですね」
そこまでするのかよ。どこまでこの取り組みに本気出してるんだ。
「あ、ナビスさん、後でこちらにて挨拶をお願いしますね。輝さんも」
「わかりました! よろしくお願いします」
「それでは、後程!」
あれ、俺には言うだけ言って返事を返させてくれないの?
さっさと戻っていくデビルファイターのレジーナの姿を見て、心中で涙した。
「よっしゃあ!盛り上がってきたところでルール説明だ!」
ちなみに、さっきから暑苦しい司会をしているのは妖鬼のくれはである。料理とは無関係そうだけど、きっとこういうので盛り上げるのに適任そうだったからって理由で抜擢されたんだろうな。すごく活き活きとしてるし。
「ルール説明はジェネラルマーメイド、ジェシーからさせてもらうわよ」
そしてジェシーさん!あんたもノリノリか!
「今回のコンセプトは「暑い中でも食べたくなる、栄養のある料理」よ。まあコンセプトっていうか、この大会が開かれた理由がこれなんだけど……。あ、わかってると思うけど、劇物とか、非常識なことは無しよ。この大会に出る以上そんなものを使う奴がいるとは思えないけど……まあ、適当に頑張りなさい。応援してるわ」
『うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!』
最後、投げやりだなおい。
「……ったく、私も本当なら参加したかったのに……」
おい、小声で何か呟いてるのがマイクに入ってるぞ。はっきりは聞こえなかったけど大丈夫か?
あ、歓声で聴こえてないから大丈夫そうだな。
「っしゃあ、では今回の参加者を発表するぜ!まずは一番!頼れるうさぎのお姉さん!バーニーだ!」
「うふふふ、よろしくお願いしますね」
おっ、バーニーさんが参戦するのか。ポ魔城内のバーでも働いてる彼女は料理も上手だから期待できるな。
「続いて二番!その味付けは師匠譲りか?プチラミアのプチだ!」
「頑張るわよ!」
次はプチか。割とこの大会は料理の得意な人が出てるのか。思った以上に期待できるかもしれん。
「三番!その怪力は自前の料理の賜物か?ミノタウロス娘のミナ!」
「おっしゃあ!まぁかせぇとけえええええ!」
なんだろう、彼女が作る料理が大体絞れた気がする。
「四番!実は男を落とすために修行中? そんな噂があるぜ! エルフのクローディア!」
「誰よ!そんな噂を流したの!出てきなさい!」
……なんだろう、一概に否定できない気がするのは俺だけだろうか。頑張れ、クローディア。俺は応援してるぞ。
「さあ、ラストの五番!カサンドラの頼れる懐刀!メイドスキュラのランだ!」
「メイドとしての腕、見せて差し上げましょう」
メイドとしての自信がすごいな。……あ、むこうでケイトさんが睨んでる気がするが、一体何があったんだ。
「さて、これで出そろって……え、もう一枚?えーっと、怪しげな魔法で何でも解決!ウィッチ……って、ダメだ!」
「なんでだよ、別にいいじゃないか」
「お前は怪しげな魔術やらクスリやらを入れかねないっていうブラックリストに載ってる……と言われてる!」
「なんだよそりゃあ……不公平だねえ」
「……あたしはよく知らんけどな、自分の行いを振り返ってみたらいいと思うぜ」
あ、ウィッチが目を逸らした。
そして彼女はそのまま誰かに引きずられていった。
さて、そろそろ残りの人の挨拶か。
一番手は……ああ、やっぱりこの手のイベントなら絶対こっち側にいるだろうと思ったわ。
「喜べ、余に貴様らの料理を食してもらえるのだからな。存分に腕を振るうがいい」
「……その背格好では、魔王の威厳はやっぱりないですね。ただただ惨めなだけです」
「ふん、貴様も自分の恰好を改めて見るがいい。ここまで力のない奴にふんぞりかえられて、天使共もさぞ不快だろうな」
「……私はこの恰好でもきちんと理解してくれる優秀な部下がいます。あなたとは違うんです」
……なんかどこかで聞き覚えのある台詞だな。……そんなことよりも、アリスとイリアスはこの場でも喧嘩か。
「うがー、喧嘩はよくないのだ!」
「そうね、というよりみんなの邪魔になってるじゃない……」
「うっ……」
「失礼しました……」
なんでパピとヴァニラに窘められてるんだあいつらは……。信じられるかい?あれでも魔王と神なんだぜ……?
さて、次は……ん?誰だあの人。見たことないんだが。
「このような会に呼んでいただき、光栄でございます。料理人の一人として、皆さんの作品にしっかりと判定をさせていただきます」
「おう、忙しいのに来てくれてありがとうな!ってことで、ロストルム村のアルフォンソだ! 審査員としてはこれ以上ない人物だ!頼りにしてるぜ!」
「マジかよ、確か伝説の料理人だったよなあの人!?」
まずどうやって過去のロストルムから連れ出してきたのかが気になる。
「一応宿屋の経営はしてたからそこそこは料理できるけど……今日のこの会で、僕もいい刺激がもらえたら嬉しいよ。頑張ってね」
「ってことで、ルカだ!審査員は頼むぜ!あと、後でアタシと良いことしようぜ!」
「ストレートだね!?」
なるほど、ルカさんも審査員、と。
「あと今ここにはいないが……ああ、レジーナ。頼んだ」
「はいはい、じゃあみんなのいるところから離れてるけど、こっちを見てくれる?」
うわ、大勢に一気にこっちを向かれるとなかなかに圧があるな。もんむすだし。
「スペシャルゲスト兼審査員として、輝とナビスに来てもらってるわ。じゃあまずナビスから」
え、マジで挨拶しないといけないの?
「ええと、まずこのような会を開いていただくようお願いしたのは私ですが……思っていた以上に盛り上がってるようで嬉しいです。今回、私も審査員ということですが、ナースということで、主に栄養面だったり食べやすさだったりと、熱中症の観点から点数をつけさせてもらおうと思ってます。みなさん、頑張ってくださいね!」
「はい、ナビスありがとう。では、輝。お願いね」
ええ……こんなしっかりした挨拶の後とかハードル高いんだが?
「んーと、なんかナビスが言うには俺が熱中症が原因でこんなことになったみたいで、申し訳ない。まあ、呼ばれた以上は俺も公平な審査を出来るようにするから、頑張ってくれ」
俺から言えるのってこれくらいしかないよな。うん。
「はい、二人ともありがとう。ちなみに、今回のコンセプト「暑い中でも食べたくなる、栄養のある料理」の審査は、熱中症になった輝の審査が結構な点数を占めることになるっていうのを最初に言っておくわね」
「え、ちょ、それおかしくないか!?」
立ち上がって思わず声をあげてしまった。いや、なんで俺の責任が重大になってるんだよ。
「もちろん、他の審査員の方々の審査が軽くみられる、というわけではありません。ただ、今回のコンセプト上、まだ食欲が戻りきってない輝が食べられるか、美味しいと思ってもらえるかというのは重要なのでこういう形をとったのよ。だから輝は責任とか考えないでもいいから、素直な反応や感想を教えて? 点数はそこから考えてもらえばいいし」
まあ、気負わないでいいって言ってくれるなら、いいか……。
不安は残るが「わかった」と言い、座りなおす。まあ、確かに俺の今の状態はコンセプトにぴったりだろうから仕方ないか。
「さてさて、それではそろそろ始めますよ。出場される方は持ち場について!じゃあスタートの合図は、くれはにお願いするわね」
「よしきた! よっしゃ、準備は良いな! 時間は無制限! 料理の質を高めてもらいたいが輝が飽きる前に持って来いよ! じゃあ……はじめ!」
くれはの合図を皮切りに、料理対決が始まった。
続きはできるだけ早く出したいと思います。展開は全く考えてませんので、誰が優勝とかも考えてませんが()
評価感想等々、よろしくお願いします。私が喜びますので()