もんむす・くえすと!の女の子たちがやって来てしまった件について 作:森野熊漢
お待たせしました。久しぶりすぎて、どう書きたいのかわからなくなってました。スランプですね。
どうもお久しぶりです。高梨輝です。職業は戦士(職業レベル2)です。
なんやかんやあった料理バトルから数日後、俺は自分の世界の街を歩いていた。
「ねえ輝。ここからどのくらい歩けば着くの?」
「あー、そうだな、大体10分くらいか」
ただし、一人ではない。横に目を向けると眩い金髪が目に入った。
「に、しても帽子をかぶってきて正解だったな」
「私はかぶり慣れてないからちょっと違和感があるんだけど」
「そう言うな、耳を隠すのに使えるのがそれしかなかったんだから」
「耳当てでもよかったんじゃない?」
「お前この真夏にあんなの着けるの? 倒れるよ?」
「……そうね、誰かさんみたいなことになったらたまったものではないわね」
「おい、俺を見ながら言うな」
まったくこいつは……。……あ、そうだ。
「すまん、言い忘れてたな」
「何かしら?」
「その帽子もそうだけど、服装。よく似合ってるよ、クローディア」
俺の言葉に、彼女……エルフのクローディアは顔を背けた。
いつもの緑を基調とした服ではなく、白っぽいワンピースタイプの服に大きめの白い帽子。ちょっといいところのお嬢様のような恰好をしていてとてもよく似合っている。腰あたりには小さな肩掛けバッグが揺れている。
「そ、そう? 輝がそう言うならそういうことにしといてあげるわよ」
「いや、それ自分で言うっておかしくない?」
「ふん! ほら、早く行くわよ! エスコートしてくれるんでしょ?」
「はいはい、わかってますよ」
そんなやり取りをし、俺は彼女の手を引いて目的地へと向かう。
少しだけ、ほんの少しだけど俺の手を握り返してくれるのを感じ、どこか嬉しく思っている自分がいた。
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到着したのは、映画館。最近巷で流行っている映画を見に来たというわけだ。
ちなみに言い出したのはクローディア。俺の部屋に来た時に偶然、テレビのCMでやってるのを目にし、行きたいと言い出したわけだ。
正直、最初は断った。休日はただでさえ
たまには家でゆっくりゴロゴロしてたいじゃないか。
そう伝えると、クローディアは「……優勝賞品使うから」と宣った。その瞬間俺の休日の一日はクローディアのものになった。
ちなみに優勝賞品というのは、この間の料理対決の時のである。俺はこの存在にしばらくは恐怖して過ごさなければならないのだろう。
なぜか?それは、優勝賞品を手にしたのが五人いるからだ。メンツは参加選手全員。
甲乙つけ難い料理の数々に俺は順位など付けられず、「みんな一番だよチクショウ」と言ってしまったんだ。当然非難轟轟。大ブーイングが起きたさ。
途方に暮れた俺に司会のジェシー(ジェネラルマーメイドさん)が自分にまかせるように言ってきた。
きっとみんなが納得するような案を出してくれると信じて頼むと、彼女は一つの案をみんなに提示した。
「優勝者には『一日輝と好きに過ごせる権利』を贈呈」と。
これに俺以外のメンバーが大盛り上がり。
俺はというと、その盛り上がりを邪魔する勇気が出ず、見ているしかできなかった……。
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「ちょっと、聞いてるの?輝!」
「ふぇっ?」
間抜けな声を出しつつクローディアのほうを見ると、眉間に皺が寄っていた。
……どうしたんだ一体。
「私の言ってたこと、ちゃんと聞いてたの?」
「あー、すまん、聞いてなかったわ」
正直に答えると、ぷくっと頬を膨らませた。かわいい……じゃなくて、どうやら怒ってらっしゃるようだ。いや、かわいいけど。
「いやほら、クローディアと出かけるってなったきっかけを思い出しててな」
「きっかけ……ああ、料理対決?」
「……まあ、そうだな」
そこから派生した、というか。俺の言動がきっかけになったから間違ってはないな。
「輝がみんな一番って言ったから、みんなのお願いを一つ聞くってなったのよね」
「そうなんだよなあ……」
割とこれが憂鬱だったりする。無理難題を突き付けられたりしないだろうかーとか。干物にならないだろうかーとか。
「輝は……私と出かけるの、嫌だったかしら……?」
俺の顔が曇ったからだろうか。沈んだ表情で彼女は問うてきた。
「そうだな。お願いを聞くってのは正直気が進まないが……クローディアと出かけるのが嫌とか、そんなことは思ってないぞ」
手で彼女の頭を優しく撫でながらそう告げる。
実際、まだ少ししか時間は経ってないが面倒とか嫌とかいう感情は微塵もない。あ、出かけるまでは面倒には感じてたけど、これは予定が決まってからその日の活動になるまでに感じるものであり、相手がどうとかは特にないので勘違いしないでほしい。ゆっくり休める休日を欲する身となってから、何かしらの予定を入れると、それこそ自分で決めた予定であっても面倒と感じてしまうのだ。
「そ、そう……よかった」
小声で何かしら呟いていたがよく聞き取れなかった。多分怒ってはない……と思う。
いや、怒ってるか? 耳が赤いし。あれか。急に頭、というか髪の毛を触ったからか。
そう思い手を止め、触り心地のいい髪の毛から離れようとしたが。
「……もうちょっと」
怒ってるはずのクローディアが何故か俺の手を自分の頭の上に抑えてきた。
……もうちょっとって言ってるし、別にいいんだよな?
謎に思いつつも、「……ありがと」と彼女が言うまでそのまま撫で続けるのだった。
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「うぅ、ぐずっ」
「あー、なんかこうなるのは予想はついてた」
横の席で泣くクローディアを横目にハンカチを用意する。
お、俺が泣かせたわけじゃないぞ!違うからな!
「ほら、使って」
「……ありがと」
ハンカチを受け取り、目元を拭うクローディア。
驚くことにハンカチがみるみる濡れていくのがわかる。どれだけ泣いてるんだ。
「で、どうだった?」
「ぐすっ、すごく、よかったわ……!」
どうやら満足だったらしい。まあこれだけ泣いてるし、まあ不満足ってわけではないとは思ってたが。
にしても。
「まさか、ラブストーリーものの映画を見ることになるとは思ってなかったな」
クローディアに誘われたのは、恋愛ものだったわけである。
普段まったく映画館にはいかないしレンタルすらしない、某週末にやってるロードショウ的番組のものは国民的人気を誇るアニメ映画くらいしか見ない上にその番組すら最近見に行ってない俺からしたらこのジャンルは初体験であり、新鮮であった。思わず無心で見入ってしまっていたのだが、クローディアは違ったらしい。
(映画館で手を重ねられるってほんとにあるんだな)
された当時は思わず彼女のほうを見てしまったが、当の本人はというと映画から視線をそらさない。あ、これ無意識なのかって思うと少しでも意識してしまったのが恥ずかしくなったのを覚えている。
クローディアが落ち着いたころを見計らって昼食を提案。昼の一時といい時間だったため、反対されることもなく、近くのフードコートに行くことになった。
「へえ、ここってすごくたくさんのお店があるのね」
「まあ、そうだな。割といろいろ食べられるな」
物珍しそうにあたりを眺めるクローディアに思わず笑いがこぼれてしまう。
その様子が、まるで小さな子供のようであったから……。
「で、輝は何にするの?」
「ん? 俺はそうだな、あそこの麺かな」
某九州の県の名前で出ているちゃんぽんの店を指さす。
「麺大盛りにしても値段が変わらないし、美味いしな」
「ふーん……私もそれにするわ」
「ん?いいのか?いろいろあるんだから好きなのを頼めばいいのに」
「ほら、野菜たっぷりじゃない」
そういや、それも売りにしてたな。
「それに、輝が美味しいって言うってことは安心して食べられるってことでしょ」
「いや、それは好みとかあると思うが」
「いいの、私も輝と同じのが食べたいって思ったのもあるから。チャレンジはまた今度来た時にするわ」
確かに初めての店ばかりってなると、誰かと同じものを食べたほうが安心できるってのはあるな。俺がそうだし。
クローディアに席をとっておいてもらい、その間に俺が注文。タイマーを受け取って席に着き談笑していると、時間になりタイマーが震えた。結構な音量と振動、話に夢中になってたのもあり、クローディアがかなり驚いていたのがツボに入った。真っ赤になった彼女に睨まれたのですぐに謝ったけど。
そして楽しく話しながら注文したちゃんぽんを食べ終わる。
「さて、ここからどうすっか」
クローディアが行きたがっていた映画館は行ったし、昼食も済ませた。帰ってもいいがまだ時間が早いからどうするか頭を悩ませていると、「ねえ、輝」とクローディアが声をかけてきた。
「その、行きたいところがあるんだけど……いいかしら?」
「まあ今から行ける所なら別に構わんが」
「えっとね、ここ、なんだけど」
クローディアは自分のカバンからパンフレットを取り出す。
「んっと、遊園地?」
「ええ、ちょっと行ってみたいなって」
「……少し待ってくれ」
彼女が行きたいといったのは自宅から割と近い遊園地だった。今いる場所からでも電車一本ですぐに行けるため時間的には問題はないだろう。
「……何調べてるの?」
「ん?ああ、臨時休業になってないかって」
ホームページを見たが、時に何もお知らせはなかったので大丈夫だろう。
「じゃあ行くか。もたもたしてたらすぐ閉演時間になっちまうし」
「そうね、じゃあ……はい」
急に手を差し出してきた。ふむ。
「ちょ、輝!? 何を」
「何って、手のひらをくすぐってるだけ」
急に手を出されたからやってみたんだが、どうやら求めているものは違ったらしい。その証拠にむすっとしてしまってる。
「んー、じゃあ」
「……次ボケたら叩くわよ」
「……ちなみに現在つけてるアビリティは」
「力40パーセント、乱れ打ち」
やばい、4倍返し以上のダメージをくらう。俺死んじゃう。
かといって、何を求められているのかわからない俺は立ち尽くすしかない。
「……もう、仕方ないわね」
苦笑しながらクローディアは手を伸ばし、そのやわらかい手のひらを俺の手のひらに重ねた。そのままぎゅっと握られる。
「……すまん」
「もう、ほんとよ。次からは察してよね」
「善処する」
女性と出かけるって経験が皆無だったから仕方ないとはいえ、クローディアには悪いことをしたな。優しいから許してくれたけど、次からは少しは察せられるようになろうと思った俺だった。
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クローディア視点
すごく楽しかった。輝と出かけるって決まってから、どんな服を着ていくかとか、どんな話をしたいかとか。そんなことを考えるのがとても楽しかった。
けど、実際に出かけてみると自分が思っていたよりももっと楽しかった。
ほかのもん娘にも少し手伝ってもらったとはいえ、頑張って選んだ服を褒めてもらって。いっしょに映画を見て
一緒にご飯を食べながら感想を共有して。そして一緒に次の予定を立てて行動する。すごく、すごく楽しい。
(まあ映画は思い切りボロ泣きしちゃったんだけど)
前情報で「感動の大作!涙なしには見られない!」みたいな売り文句は聞いてたけど、まさかあそこまでとは。
何やらほかの子からは「泣くぞ、すぐ泣くぞ、絶対泣くぞ、ほら泣くぞ」と、以前何かでおっさんが言ってるのを見た気がするのとまったく同じセリフを言われたんだけど、現実になってしまって悔しい思いをしていたりする。
(まあそのおかげで輝の優しさに触れられたんだけどね)
親切にも彼は自分のハンカチを渡してくれた。あまりの涙の量にすぐにびしょびしょになってしまったんだけど。
ちなみに私が洗って返す予定にしている。
(でも仕方ないわよね。思った以上に感情移入してしまったし。何より題材が「異国の女性とのラブストーリー」だったんだから)
思いっきり、自分に当てはめてしまった。だからこそラストの別れのシーンが辛かった。
(私は……ずっと輝といっしょにいれるのかしら)
そんな不安が去来する。思わず握っている彼の手に力を入れてしまう。
「ん?どうした?」
私の行動に何かを感じたのか、彼が尋ねてくる。
何もない。ないから大丈夫。
そう彼に伝える。ちゃんと、伝えられたはず。
「……そうか」
一言そう言うと、私の手を離す。あっと思わず声が出そうになったがぐっと我慢する。
だって、彼はただ手を離したわけではなく、流れるような動作で私の帽子をとり、自然に私の頭に手を置いてくれたから。
「なんかあったら言えよ。今日は一緒に楽しむ日なんだろ?」
そう言いながら優しく撫でてくれる。
ずるい、ずるい、ずるい。輝はずるい。
私が彼を求めているのをどこかで察知して、きちんと行動に移してくれる。
普段は冗談ばかりなのに、求めているときには迷いなく行動してくれる。
こういうところが彼のずるいところで、彼の良いところ。惹かれているもん娘はたくさんいる。
かく言う私もその一人なんだけど。
「ん、わかった」
映画館に行く前にしたように、彼の手をつかんで私の頭に固定する。好きに撫でて、という意味ともっと撫でてという意味を込めて。
彼はずるい。いつでも頭を触ってもらってもいいって思わせられてしまうくらいに上手にしてくれるから。
彼はずるい。いつでも私たちに優しいから。口では何て言っていても、みんなのことを大事に思っているから。
彼はずるい。みんなが想っているのに気づいていないから。
だから今日は。今日くらいは。勝ち取った権利で輝との時間をたくさん楽しむんだ。
向かっている遊園地は閉演時間まで三時間ほどしかないけど。
きっとどんな3時間よりも素敵な三時間になるって確信できた。
自分でもどうしてこうなったって感じはある。
あ、評価、感想等々お待ちしてます。
感想くださった方、評価してくださった方、本当にありがとうございます。
返せていませんが、また折を見て返信等々できたらと思っています。