もんむす・くえすと!の女の子たちがやって来てしまった件について 作:森野熊漢
ほんとお待たせしてしまい、申し訳ないです。
毎度読んでくださる方がいるかなって心配になってるチキンですが、どうぞよろしくお願いします。
あとキャラとか口調もぶれてる気がしますが、そこらへんもまた感想等で優しく教えていただけたらと(メンタル弱者)
「さて、準備はこんなもんかなっと」
アタシは今日買ってきた諸々を、ポ魔城の自室に広げていた。
ほとんどが食料品だったりするのだが、そればかりではない。
「うし、とりあえずこれは後で使う予定として……その前に予定を取り付けないといけないよな」
予定を取り付ける。そのことを考えるだけで緊張してしまうアタシがいた。
「だーもう!そんなガラじゃねーだろアタシは!いつも通りいけば問題ないっての」
そう自分を叱咤するが、慣れないことをするとわかっているからかどうしても意識してしまう。
どう誘うのがアタシらしいのか。それすらわからなくなりかけていた。
「っし、まだ時間はあるな。とりあえず誘い文句の練習くらいはしておくか」
噛むと恥ずかしいからそのためだよ、と誰が聞いてるわけでもないのにそんな言い訳をしてしまうアタシはその後、6時間ほどひたすら自室で練習しては悶えていた。
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「あ、明日、駅前に集合な!」
仕事が終わり、休日が楽しみで仕方ない金曜日の夜。
突如俺の部屋にやってきた彼女はそんなことを言い放ってきた。
ふむ、明日出かける予定が追加か。
「らしいぞ、きつね。遅くなるようならちゃんと七尾さんに連絡しとけよ」
「えっ?私?」
部屋で俺と某様々なメーカーキャラが出てくるバトルゲーをしていたきつねに話を振ってみた。
「いや、どう考えてもきつねだろう。今ここにいるのはきつねと俺だけだぞ?」
「わたし的にはどう考えても輝以外ありえないんだけど!?」
いやいや、そんなことないだろ。普通休日って言ったら仲の良い奴と出かけるだろ。
女友達と出かけるのがごく自然なことだ。どこにおかしいと思う要素があるのだろうか。
……おかしいな、なぜか目から汗が出てくるんだが。
「そうか、きつねが誰かと遊びに行くっていうことに俺は喜びを感じているんだな」
「ちょっと待って、わたし友達いないって思われてる!?」
「だってお前が誰かと遊びに行くって話を聞いたことがないし。帰ってきたらいつも家にいるし」
「そりゃ輝が仕事して帰ってくる時間を考えたら普通じゃないかな!?一応小学生ってことになってるから仕方ないよね!?」
「……えっ、『一応』ってことは、きつね……お前、小学生じゃなかったのか」
「年齢的にはね!むしろ小学生って思われてたの!?」
「……うちのクラスで割と成績悪いほうの組だよな」
「今まで学校とか行ったことなかったんだから仕方ないよねえ!?わたしは身体を動かすことが得意な代わりにちょっと勉強が苦手なだけだよ!」
なるほど、かむろはきつねと正反対で勉強はよくできるが、反面運動が少し苦手だったな。まああくまで体育に必要とされる鉄棒とかのような技術のいるものがって意味だから、体力面とか瞬発力とかそういったところはきつねには劣るものの学年でも良いほうだ。
「っと、そろそろいいか」
「ん?」
「その、アタシが誘ったのは、輝なんだが」
「なん、だと……?」
「ほら言ったでしょ、輝の負けー」
きつねは一体俺と何を勝負してたんだ。
「えと、それで言ったはいいけど、もしかして都合が悪かったりしたか?」
「い、いや。明日は特に何もないが……急にどうしたんだよ」
「その、こ、この前のアレだよ」
「この前のアレ……?」
「しょ、賞品!料理対決の賞品だよ!」
「……ああ、なるほど」
つまり、俺への一日命令権の行使ってわけか。
「まあそれなら俺に拒否権がなくなるわな、うん」
「そ、そうだな!つまり明日はアタシのために一日使ってもらうぞ!」
「へいへい、了解でござんすよ」
どうやら俺に何か命令するために使うって考えたほうがよさそうだな。この間のクローディアは一緒に出掛け、遊園地も一緒に行き、一緒に帰ってくるという別に賞品を使わないでもよさそうなことに使ってきたわけだったが。あれか、持ってても使い道なんてないし、どうせならさっさと使ってしまおうという魂胆か。それはそれで悲しいものがあるな。俺が決めたわけでもないのに。
「なに、クローディアがもう先に、だと?本当か?」
「ん?ああ、そうだが……ってもしかして、口に出してたか」
尋ねると、大きく頷かれた。マジか。
「くそ、先を越されるとは……まあそこまで大きなことをしたわけでもなさそうだからまだ大丈夫か?」
何やらブツブツと呟いているが大丈夫だろうか。
「いーな、輝とお出かけ。私もしたいな」
「今は黙っててくれませんかねホリィさんや。公に君らのことを知られるのはまずいんだけども」
俺の耳元にホリィが小さな空間を開けて話しかけてきたので、小声で対処する。こいつらが帰ったら少しは相手してやることでなんとか気を収めてもらってもらい、空間を閉じてもらう。
「? 輝、今誰かとしゃべってた?」
「気のせいじゃないか?」
危うくきつねにバレるところだった。危ない。さすが忍者鋭い。
「じゃ、じゃあ明日はアタシが迎え……いや、起こしてやるからな!覚悟しろよ!」
「なんかすっげえ物騒な言い方ですねえ!」
すごく不安になってしまったが、彼女の笑顔を見るとそんなことはどうでもよくなってしまった。
「じゃあ明日はよろしく頼むぜ……ミナ」
名前を呼ぶと、彼女……ミノタウロス娘のミナはすごくいい笑顔で部屋から出ていった。
「……あいかわらずのたらしだねえ」
「きつね、訳のわからんことを言うほど疲れてるならさっさと寝ろよ」
「……はぁ、こりゃ七尾さまも苦労するわけだ」
何故かきつねに呆れられた。納得がいかない。
その後きつねや別部屋にいたきつね一家をリビングのパソコンからポ魔城に送り返すや否や、待ってましたとばかりに飛び出してきたドッペル四姉妹と話とゲームをし、相変わらずホリィが他のメンツにボコられるという結果になった。もんぱら世界って風属性もちのアホの子がこういう扱いになりやすいのだろうか、とふと気になったので、四精霊にも同じゲームをさせてみることをひそかに決意したのだった。
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「朝だぞ、輝。起きた起きた」
シャッという音とともに視界が明るくなる感覚。
「ん、あと5時間」
「長いな!? ほら、約束してたんだからしっかり起きてくれよ」
約束ってなんだっけ?と思いながら、唸りつつ目を開ける。
「お、おはよう輝。朝飯、できてるぞ」
「……!?」
2、3秒ぼうっと声の主を見つめてから驚きが走った。
「み、ミナ……!?」
「おう、そうだが……どうしたんだ一体、変な顔して」
「い、いや、なんでもない」
なんでもないとは言ったがなんでもないことはなかった。
なんだあれは。いつもの「ミノタウロス娘です!」って恰好をしたミナはどこへいった!?
「お、おいおい。そんなにじっと見られると恥ずかしいんだが……やっぱり変だったか?」
言われて、改めてミナの恰好を観察してみる。
上は変に胸元が開きすぎてない白目のTシャツで、下は涼しげなショートパンツ。
ジーパンとかでもすごい似合いそうなんだが、さすがにこの暑さでは厳しいものがあるのだろうな。
そして腕に巻いてるのは……いつも頭に巻いているバンダナか。
なんというか、すごいオシャレである。クローディアの時も驚いたが、ミナの変身ぶりにはより驚かされた。
「いや、変じゃない。というかむしろ似合いすぎててびっくりしてる」
「……ふぇっ?」
「いやマジで、ミナってこういう服を着ないと思ってたからさ。いつもと違うってだけでも新鮮なんだけど、今着てるのがすごいミナに合ってるからさ。すごいスポーティって感じがする」
「そ、そうか。輝はこういうの、好きな方か?」
「まあ俺は好きだと思うが……ミナがしたいファッションでいいと思うぞ」
「そう、だな。でも輝の意見も欲しかったからな」
そんなものなのか。もん娘の考えはよくわからん。
「俺の意見なんかアテにはならんと思うが、ミナはそういう感じの、アクティブな感じがいいと思うぞ」
あくまで俺の適当な意見だがな。
「そ、そうか。うん、キャロルたちとも同じ意見だから輝はもっと自分のセンスに自信をもっていいぞ」
「キャロルさんと同じ?」
「ああ、アタシ一人では服はよくわからなかったからな。キャロルたちにも少し手伝ってもらったんだよ」
そうだったのか。キャロルさん(ハイミノタウロス)と同じってなら嬉しいものだ。
ジニタウロスのトーラやミズタウロスのオデットとも相談したのか、と尋ねたところ、今回はキャロルだけだったらしい。二人に相談するほどの時間がなかったとのこと。
独特なセンスをしてるからかなあ、とか思ってしまったので申し訳なさでいっぱいになった。
「着替えたな?よし、早く食べるぞ!ちなみにアタシが作ったから感想も教えてくれ!」
なるほど、机の上にはいつも俺が食べるような朝食ではなく、温かい湯気のたつ見るからに美味しそうな朝食があった。
「こっちでは健康的な朝食として、ご飯と味噌汁が基本って聞いたからな。それをベースにしてみた」
「なるほど」
ふむ、他には卵焼きにほうれん草のお浸しか?なんというか、ミナだからかなり量を作るのでは、と思ってしまったのだが、控えめだな。
「あ、アタシだっていつもいつもガッツリな訳じゃないからな!人に作るときはきちんと合わせるに決まってる」
「ミナ……ありがとうな」
思わず礼を言ってしまった俺に「べ、別にそんなんじゃねーし」と顔を赤くしながら明後日の方向に背けるミナが可愛かった。
後編に続きます。