もんむす・くえすと!の女の子たちがやって来てしまった件について 作:森野熊漢
工夫次第で倒せる敵が増えるってのは雨白いんですけど脳筋な私には苦手なところです。
たまも視点
輝をハーピ―の羽で飛ばした後、ウチも同じ場所……イリアスヴィル前へとハーピ―の羽を使い飛ぶ。
しかし、さっきはくしゃみが出てしまったものの、きちんと羽が発動したから問題ない。今頃向こうで待機していたメンバーが輝をなだめすかしてその気にさせてくれてる頃かの。
なんやかんや言って、あやつも人が良いから、着いてきてくれると思っておる。
「さて、と」
着地した先に、輝とパーティを組ませるメンツが見えた。
ちょっと早いがメンツを紹介しておくかの。
もちろん、ウチもその一員じゃぞ?
~イカれたメンバーを紹介するぜ!~
グランベリア
アルマエルマ
エルベディエ
ウチ
アリスフィーズ16世
イリアス
エデン
ミカエラちゃん
ルシフィナちゃん
アリストロメリア
ハインリヒ
七尾
かむろ
アンフィル
ヴィクトリア
……………………。
「なんじゃこのカオスなメンツは」
「それを今更言うのかしら……」
いつの間にかそばに来ていたアルマエルマに呆れた声を出される。いや、だってそうじゃろ。
「最初はウチを含めた四天王とかむろ、七尾だけだったはずなんじゃが……」
「ふん、魔王たる余にはその輝とやらの実力を知る必要があるからな。余が気に入れば新四天王に入れてやらんこともない」
「あら、女神たる私の傘下に入るのが当然の理ですよ、幼女魔王」
「ふん!幼女というならお主もではないか、このペタンコ駄女神が」
「…………」
「…………」
「「上等だ(ですね)!その喧嘩、買った(買いましょう)!」」
「イリアス様……いてて!何をするんですか二人とも」
「エデンの髪を引っこ抜いてたの」
「禿げちゃえー」
「ちょ、可愛い顔してやってることがかなり陰湿じゃありませんか!?」
「絡みたいわ……輝に絡みたい……」
「……アポトーシスがこんなに一人に固執することあるのね……まあ気持ちはわからないでもないけど」
「仕方ないから、その槍に絡ませて……」
「……えっ、嫌だけど」
「あの、七尾様。私たち、すごく浮いてませんか……?」
「気にしてはダメですよ、かむろ。ルカのパーティを思い出してみて同じこと言えますか?」
「……まあ、あれはあれですごいですけど……こっちのメンツがすごすぎて言葉が出ないというか」
「まあそれには同意しますが……ここで負けてはいられませんので」
「カオス、じゃな」
なんというか、癖の強いメンツばかりじゃった。いや、普通のメンツもいるはずなんじゃが。
「あ、たまも。ようやく来たね」
「待ちくたびれましたわ」
そう言って寄ってきたのは、ポ魔城きってのバカップル……もとい、仲間同士のハインリヒとアリストロメリア。
「すまんの、じゃあ早速出発しようと思うのじゃが……輝はどこにおるのじゃ?」
そういえばさっきから輝の姿が見当たらないのじゃが、どこかに隠れておるのか?
それなら誰かが拘束していてもおかしくなさそうなものなのじゃが……姿が見えぬ。
「ん?たまもが一緒に連れてくる物だと思ってたんだけど、予定を変えたのかい?」
「どういうことじゃ?」
「輝はまだ来てない、ということですわ」
「そんな馬鹿な……確かにウチは羽で輝を飛ばしたんじゃぞ?」
ウチの声で、さっきまで騒いでいたメンツが静かになった。
「お主ら、輝がここに飛んできたのを見てなかったかの?」
「そうですね、女神たる私はそこの自称魔王と喧嘩こそしていましたが、彼が来るのを見逃すはずがありません。つまりまだ来てないということです」
「ソイツに同調するのは癪だが、余も全く同じだ。来たら喧嘩していても気づく。」
「輝が来たら気付くわよね、グランベリアちゃん」
「そうだな、それはお前もだろう、アルマエルマ。それにエルベティエも」
「当たり前……」
「輝センサーが反応しない……絡みたいのに絡めない……」
「いや、何変な能力を開花させてるの……」
これだけのメンツがいて、輝に気付かないなんてことはあり得ない、かの。
では、一体どうして……?
「たまもちゃん、きちんとここに飛ばしたの?」
「当然じゃ!きちんと、イリアスヴィルと…………。……あ」
「どうした、たまもよ」
そういえば。いやでも関係ないじゃろ。
「そういえば、イリアスヴィルと言う前にくしゃみが出ての。でもそのくらいで全く違うところに飛んでしまうなんてことがあり得たりするのかの」
たしか、かふぇくしゅ、みたいなくしゃみじゃったの、と呟くと。
「なんですって!」
「なんだと!」
喧嘩してたはずの魔王様と女神が同時に反応した。どうしたんじゃ一体。
「魔王アリスフィーズよ、あなたも同じことを考えましたか」
「ああ、できれば外れていてほしい予想ではあるが……おそらく貴様も考えている場所で合ってるはずだ」
「「タルタロスを抜けた先にある、異世界のイリアスヴィルに!」」
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「神に逆らう者と交わす言葉などないわ……」
「だから誰も逆らってないんだけど……うわぁっ!?」
予想通りというか、なんというか。まあラナエルさんが出てきた時点である程度察してはいたけどさ。
「ここ異世界のイリアスヴィル近辺だよなあ!」
「神に逆らうものと交わす言葉など」
「今のはお前に言ってねえ!」
律儀に反応してくれるのはちょっと嬉しかったりするけど、ずっと同じ反応だし。というかそもそも会話を拒絶されてるからまったく話が通じないし。神に逆らった記憶がないのに、冤罪で襲われて弁明もさせてくれないし。
何よりHP16万くらいの相手が最初ってこれどんな死にゲー?ってやつだ。
ちなみに賞賛を送ると好感度が25上がります。しかし100になったところで仲間にもならなければ話を聞いてくれるわけでもないから辛い。
「いい加減、断罪されなさい……」
「嫌なこっ……危ねえ!」
やだ、かすった!左腕のあたりをテンタクルブラストが掠りましたよ奥さん!
「神に逆らうものに奥さんと呼ばれる筋合いはない…」
「パターンを変えてきやがっただと⁉︎」
どうでもいいけど、なんか腹立つ!あと神に逆らう云々関係ねぇ!
「消えなさい…」
無情に飛んでくるテンタクルブラスト。こいつの使う技は物理技であるこれ以外ないのだが、いかんせん威力が高いため、普通のパーティだと毎ターン回復するくらいしないとジリ貧になる。
普通のパーティなら、だ。
「うわあああぁぁぁ!」
ところが今ここにいるのは俺一人。レベルはわからないがおそらく1。職業もさっき転職したばかりだから戦士レベル1。1続きで悲しくなってきた。
まあ、簡単に言うと、つまりは、だ。
一撃でも当たったらほぼ確定で死ぬ。良くて戦闘不能だけど、まあ末路は死ぬことに変わりないだろうな。
なんとか避けて避けて、を繰り返しているが…レベル1の俺がこれだけ避けられてるのを不思議に思う人もいるかもしれないな。
今の俺の装備は、疾風の服、紅猫の帽子。そしてかっこいいからという理由でつけてたエルフのマントである。ゲーム的に言うと回避率40%上昇してる状態である。前にルカさん一人でラナエル討伐した時も、これに似た回避率重視の装備だった気がする。まああの時はシルフを使って回避をさらに上げて、としてたんだけどね。前章の話だから、帽子が多分違う気がするし。
まあ装備でだいぶ避けやすくなってるものの、それでも6割は当たることになる計算なのだが、どうやら前々からのグランベリアとの特訓(と言う名の一方的なイジメ)によって、攻撃の軌道が少し見えるようになってきていたらしい。余裕はないが避けることはできている。
まあ、それも俺の体力が続けば、の話なのだが。
「ハァ…ハァ…」
当たらずにいるものの、掠めたりはしているし、当たったら一撃でやられる攻撃がいつ当たるかという恐怖と緊張でどんどん疲労していく。
グランベリアとの特訓なら、頃合いを見て休憩になるのだが、ラナエルさんがそんな親切を働かせてくれるわけもない。
「いい加減、消えなさい…」
っと、また来た。避けなければ…⁉︎
「ぐぅっ…」
叩きつけられた触手が巻き上げた砂が目に入ったことにより視界が奪われた。更にはそろそろ限界が近づいてたのだろう。足が思うように動いてくれない。
そうなると、当然。
「ガッ…は、ぁ…っ」
直撃。左肩に叩きつけられた衝撃で無様に地面に這いつくばる。
認識が出来てるということは即死はしてない。が、これはある種の不幸でもある。ここはもんむす・くえすと!の世界。敗北した男の末路は一つである。
「くっ…そ……?」
少しだけ回復した視界に映るのは動かないラナエルさん。なんでトドメ、というか拘束しに来ない…?
「対象、発見、補足。投薬準備」
背後から聞こえてくる声。なんだろう、凄い聞き覚えがあるんだが。
「ガッ…⁉︎」
首に鋭い痛みが走る。同時に何かが入れられるような圧迫感。
「投薬完了。対象の状態、オールグリーン。効果、想定通り。術式の使用、可と判定。適合率…想定、以上」
何をこいつは言って…?
(身体が、動く…?)
地面に転がっている間に体力が戻ったのだろうか。いや、それにしては身体が軽すぎる。
「結果良好。経過、要観察。撤退」
何かはそう言い残し、どこかへ去ったようだ。背後からの気配が消えたことによりそう判断する。
「さっきのは…なんだ?私が動けないなど…」
ラナエルさんが何か言ってるけど、俺はそれどころではなかった。
身体を起こし、相対するが…集中できない。
さっきから頭の中に文がずっと流れていてループする。
「我、混沌を呼び覚ま◾️者なり」
すっと、口をついて言葉が紡がれる。
「全◾️◾️飲み込◾️し原初の◾️沌を率◾️◾️者なり」
「我の名に◾️いて、◾️を◾️喚する」
「邪魔が入りましたが、関係ありません。潰します」
ラナエルさんが向かってくる。でも、何故だろう。
俺の心は落ち着きを崩さなかった。
「身を削ら◾️◾️も、◾️◾️を◾️◾️◾️る◾️◾️持つ◾️◾️、我が◾️◾️◾️け◾️応◾️◾️!」
それは、きっと。
「◾️◾️◾️◾️レ◾️」
(何故かは知らんが、お前が力を貸してくれるとわかっていたからだろうな)
「消去対象、天使ラナエル。消去、消去、消去」
「な、お前はさっきの…⁉︎」
(なあ?そうだろ?)
俺の背後に現れたそいつは、明確な言葉を発さなかったものの、その背中は俺の思いに応えてくれているような気がした。
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