もんむす・くえすと!の女の子たちがやって来てしまった件について 作:森野熊漢
ーたまも視点ー
「よし、着いたぞ」
魔王様の言葉通り、ウチたちは異世界のイリアスヴィルに到着した。もちろんハーピ―の羽を使っての移動じゃ。
まずは手分けしてイリアスヴィルの中にいないかを確認する。ウチは自分を含めた四天王の四人で探すことになった。
「輝、どこに行ったのかしら」
「あいつは腑抜けてはいるがバカではない。私たちがいないと分かった時点でなんらかの行動を起こして入ると思うが……」
「……入れ違いになった、とかはないかしら?」
「それはなかろう。ウチは途中で勝手に離脱することを懸念して羽は持たせておらんかったからの」
しかし、こんな状況になってしまうくらいだったら、逃げようが何しようが持たせておいてもよかったと思う。
「こっちにはいなかったよ」
「輝……どこ? 絡みたい……」
「七尾様と探しましたが……こちらにもいなかったです……」
他メンバーも帰ってきたようだが、どうやらいなかったようだ。
「ねえ、ちょっと思ったんだけど」
アルマエルマが皆の注目を集める。
「輝、もしかして私たちを探して外に出てる……とかあり得ないかしら?」
「それはないのでは?こんな大天使がごろごろ徘徊してるようなところをうろつくとは……」
「それは私たちなら、の話でしょ?」
ヴィクトリアの言葉をアルマエルマは途中で遮った。
「輝は一人でたまもちゃんに飛ばされた。イリアスヴィル前に来たけれど、合流するはずの私たちがいない」
「そうだ、だからこそ外に出るなんて」
「それが異世界のイリアスヴィル、と知らなかったとしたら?」
「いや、それでも外に出るとは……」
「い、いや……あり得る……」
ウチは思わず呟いてしまった。おそらく、顔色は真っ青。
「あやつ、「まあイリアスヴィル周辺ってスライム娘とかバニースライム娘とかが出るんでしょ? 逃げるくらいなら頑張ったらできるとは思うけど」と言っておったのじゃ……」
「それが一体どう関係すると……まさか」
「そうじゃ、イリアスよ。おそらくあやつはウチたちを探しに先に外に出たのではないか?」
全員に緊張が走った、その次の瞬間。
「!?」
凄まじく禍々しい気配を感じた。この場にいた全員も同じものを感じたようじゃ。
「急ぐぞ!場所は……全員わかるな!」
グランベリアが声を上げ、走り出す。ウチたちもその声で気をとり直し、後に続いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
到着した場所の感想を一言で言うと、「なんじゃ……これは」であった。
異世界のイリアスヴィルは元の世界と比べると、かなり荒廃した世界じゃが……ウチたちが到着した場所は荒廃なんて言葉では生ぬるかった。
地面のあちこちがえぐられ、所々深い穴が開いている。よくよく見れば、何かの液体があちこちに付着していたりもする。
「風でだいぶ薄れてはいるが……確かに人間の臭いがするな。輝とやらがここにいたのはほぼ確実だろうな」
魔王様がかむろや七尾たちとあちこちを嗅ぎまわりながら帰ってきてそう言った。ウチも少しだけだが回ってみたが、かなり薄れているものの、人間の臭い……輝の臭いがした。
それともう一つは嗅ぎ慣れない臭いがしたが……輝め、天使と出会ってしまったの。
「あそこの穴の中から、すごく嫌な気配がしました……」
「かむろ、その穴まで連れて行ってくれるかの」
絶賛陰陽師の修行をしているかむろは他の者よりも気配に敏感だったようじゃ。
案内してもらったのは他の穴と同じように、底が見えないくらい深い穴じゃったが……。
「確かに、何か感じるわね……」
アルマエルマが顔をしかめながらそう言う。
「……同類、ここにいるの?絡みたいわ……」
アンフィルはいつも通り絡みたい宣言をしておるが……はて。
「同類、とはどういうことじゃ」
「そのままの意味よ……ああ、絡みたいわ……」
はっきりした答えは返ってこなかったが……こやつの同類というと、アポトーシスかの?
この世界では発見したことはなかったとルカから聞いたのじゃが……。
「……!? みんな、戦闘準備だ!」
ハインリヒの声が聞こえたかどうかというところで、地面が大きく揺れた。
直後、地面から何かが飛び出す。あれは……?
「ラナエルに……何故、あれがここに」
「ふん、天使の方はわからんが……確かに何故あいつがここにいるのかというのは余も同感だ」
ラナエルという名らしい天使が、共に出てきた何かに消滅させられる。
「「アドラメレク……!」」
イリアスと魔王様の声に反応したのか。それはこちらを向いた。
「敵意、感知。消去、問題なしと判断」
「あら、こっちに敵意を向けてるけれど……相手するの?」
「あまり……相手取るのは得策ではなさそうだよね」
アルマエルマとハインリヒがつぶやく。
「撤退したほうがよさそうですね。全能たる私が言うのですから間違いありません」
「貴様が全能とかは特に関係ないだろう……。あやつ、余たちが相手したときよりも回復しているから、相手取るのは避けるという点は同意するが」
「で、でもルカさんたちは一度勝ったんですよね!? なら、私たちでも……」
かむろの言うことは最もだと思う。じゃが、そうはいかないのじゃ。
「確かに余たちを含めて、ルカはあやつを退けた。じゃが」
「その時はラ・クロワがアドラメレクの力を95%を削ってくれたからです……全快している今とでは次元がまるで違います」
「そ、そんな……!」
「だけど、そうも言ってられなくなったみたいですね……」
ヴィクトリアが若干声を震わせながらそう言う。
なぜじゃ、と。そう言おうとして振り返って、目に飛び込んできたのは。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
「な……!?」
音もなくウチたちの背後をとっていた、異形の者。
「な……!?」
「何故あなたが……!?」
どうやら魔王様とイリアスはそれが何かをわかっているようじゃが……わからん。
「とにかく、逃げるぞ!活路を開け!」
「珍しいわねグランベリアちゃん!最初から逃げの一手を選ぶなんて!」
「これが個人的なものなら逃げるなどもっての外だかだな。今は輝のことがある!そのくらいは私でもわかるさ」
「そうね、私も同じことを考えてたから……はぁっ!」
アルマエルマがアドラメレクの破壊の翼を受け止め、カウンターを決める。当て身光掌……相変わらずの威力じゃの。
うちはうちで、九つの月を使ったりして応戦しているものの、なかなかに苦戦しておる状態じゃ。
……と。
「■■■■■■■■■■■■■■」
「おっと、土の力をもってしてもあぶな……え?」
飛んできた爪を回避し、シャドウフレアを月光きゃのんで相殺した瞬間に、見た。見てしまった。
「なぜそこに、お主がおるんじゃ!? 輝!」
アドラメレクと呼ばれたのとは違う方の謎の敵の胸部に、身体が半分ほど沈み込んだ状態で輝がいた。
「ヤンデレって誰のことですか(2話の後書き)」という質問をいただき、返信して数日後。
「あれ、ヤンデレじゃなくね?」と気づきました。訂正しておきますので、またよろしければ確認してやってください。