叢雲工業産のネタ兵装ギア   作:Shukurea

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はい、私の考えたネタ兵装ギア第1弾でございます。
正直言う、主任キックをやりたくなった。ただ、それだけ。
でも、積んではいけない理由なんてないし、積むと逆に面白そうだから別にいいよね?

追記(4月20日):一部テキストにおける、名前の元ネタを追記しました。


G-CHK-bc09・お前らボールな!

それは、地球が奪われてシャードという居住コロニーで人類が暮らす時代に存在した、ロマンを求めた変態技術者共の話である。

 

 

 

—203X年 5月12日 午前8時50分

 

成子坂製作所・地下開発室—

 

 

 

まだ始業時間前であるにも関わらず、薄暗い部屋にはU字型ハゲが進行し、機械油の跡が残る作業着を着ている男が居た。

 

その男はナニカを作っているようだが、狂気を含んだ笑みでソレをニヤニヤと見ていた。まるで新しい玩具を見つけた子供のように。

 

その男がドライバーを手に、そのナニカに手を加えようとしたとき、照明を点けたために部屋が一気に明るくなって、背後にはV字型のハゲが進行した頭を帽子で隠し紳士服を着た男性が立っていた。

 

「おはようさん、昨日行われた例の企業別アクトレスギア展覧会行ってきたぞ、釣男。」

 

帽子の男は作業着を着た男・釣男に向かって話しかけた。

 

「お!そりゃあご苦労さん、八ちゃん!早速だけど、今回のカタログを見せてもらえる?」

 

釣男は八ちゃんと愛称で紳士服の男・平八に答え、平八が行った展覧会のカタログを見るために作業を中断した。

 

「ああ、こいつが今回のカタログだ。ま、俺が見て分かったことや、予測されることも言っておくぞ。」

 

そう言って、平八は企業別アクトレスギア展覧会の資料を差し出す。

 

この企業別アクトレスギア展覧会とは年に4回行われるアクトレス産業関連企業の発表会のようなもので、技術資本主義を貫く「ヤシマ重工株式会社」や、高火力と高耐久性を主軸とする「アーリー・ファイヤーアームズ(EFC)」などの各企業が新製品をプレゼンし、アクトレスとの契約や資本投資などの契機を得るためにそれぞれがしのぎを削る「戦場」のようなイベントである。

 

紳士服の男・平八はこのイベントを視察して、各企業がやってないことや現在の新型ギア開発で臨まれる需要などを分析し、どんなものが必要かを判断する頭脳派のアーキテクトである。

 

「へぇ、今回も十人十色が少し薄まったって感じ?まちまちな奴も多いし、次までは期待できるかなぁ?」

 

「だろうな、新興企業も追い越しに行くかのように新型の発表してたしな。だが、今回乏しいなと思ったのは、近接型スキルや、性能向上型スキルを保有した新型が全くなかったことだ。最近は何処も彼処も攻撃型スキルを持ったものしか開発してないから、多様性には欠ける部分があるだろう。」

 

「あらら、そりゃつまらないなぁ。ってなると、だ。次のギアはそれを主軸に吹っ飛んだヤツを作ればいいってことだな?ハハハッ。」

 

「まあ、そうすれば場外からのストライクボールともなるだろう。ただし、余りにも吹っ飛び過ぎたやつは作るなよ?吹っ飛ぶ過ぎはボールどころかデットボールになりかねないからな。まあ、そうなってもいつも通りに俺が訂正するだけだが。」

 

「ギャハハッ!ま、そうだよねー、ってイテテテテテ!!」

 

慣れたような手つきで平八は釣男の頭を思いっきり鷲掴みにする。

 

「お前なぁ・・俺がいつもどんな気持ちで訂正してるのか分かってるのか?確かに、お前とはマブダチだが何度言ってもわかんないやつにはお仕置きが必要だよな?そうだよな?うん?」

 

「スミマセンデシタ、ヘイハチ=サマ」

 

「なんでそこだけ棒読みなんだ?…まぁ、いいさ。取り敢えず、今日はあの隊長君(本ゲームの主人公)がスカウトしたアクトレスの模擬戦闘の試験稼働をするらしいから、それを見に行ってくる。もうじき彼女も来るだろうから、また思いついたら連絡入れてくれ。」

 

鷲掴みを外しながら平八は出る前にそう伝える。

 

「あいよ、面白い奴作るぞぅ!」

 

「まあ、空振りはしないように…な。」

 

そう言うと平八はそのまま部屋を出用とした、そのタイミングで地下開発室への階段を降りる音が聞こえてきた。

 

「おはよう、蓮香さん。噂をすれば来るとか、明日はヴァイスの雨でも降るか?」

 

階段を降りて来た女性・蓮香は平八のジョーク混じりの挨拶に対して、

 

「ヴァイスの雨⁉︎私、そんなに厄病神みたいな存在と思われてるんですか⁉︎」

 

「あー、違う違う。いつもは俺より早く来るからさ。ま、相変わらずのコミュ障って奴か。」

 

「それは、そうですけど…うう…私は悲しい、ポロロン。」

 

「何処のヒドヅマニアだお前は。あ、そうだ。さっき釣男に展覧会の資料渡したから、見たかったらお好きにどうぞ。」

 

「え?平八さん、展覧会行ったんですか⁉︎あの会場、私も行きたかったなぁ…」

 

「ハハ、前に行くって開発室で言った時に行きたいって言ってくれたら連れて行ったのにな。話をしない君が悪いんだぞ?(ニッコリ)」

 

「むー、なんかムカつく笑顔ですねッ!愉悦って奴ですか⁉︎いいでしょう。なら、今度新作ロボゲーの「ソウルギア」でボコボコにして…って、もう居ないし!勝ち逃げなんてずるいー!」

 

「ギャハハ!朝から盛り上がってるねぇ!」

 

…と、何気ない話を聞きながら他の技術屋達が仕事に入る中、彼らの日常業務は始まるのである。

 

 

 

———————

 

 

 

とは言えども、日常業務は予算が示されてなければ基本はパソコンワークなので、特に釣男は先程弄っていたナニカを触りたくてうずうずしていた。

 

「はー、早くアレ弄りたいなぁ…」

 

「弄りたいなら手を動かさないとダメだと思いますよ。私だって積みロボゲーありますし。」

 

「ま、そうなんだけd…ん?」

 

釣男のデスクにあった電話が鳴る。

 

「はい。あ、八ちゃんか!…え?もう予算額出たって?…ほーん。中々いい金額じゃない?これなら充分望めそうだ。…あー、まだアイデア出てないし、これからって所かな?…ああ、りょーかい。また後でなー。」

 

そう言って電話を切る。内心、嬉しい顔をしながら。

 

「お?予算がかなり出たんですか?」

 

「そゆこと。コレは吹っ飛んだナニカが出来るぞー。」

 

「まあ、出来ないと意味ないんですがね。」

 

「勘のいいガキは嫌いになっちゃいそうだ…」

 

そう言って黙々とパソコンワークを続ける彼ら。

 

と、蓮香がパソコン画面で成子坂所属アクトレス達のヴァイス討伐報告を確認していると、こんな事を言い出した。

 

「あ、そー言えば疑問に思ったことがあるんですけど。」

 

「何?どしたの?」

 

「今のアクトレス用ギアでギアスキルってあるじゃないですか。ふと、思ったんです。なんで近接ギアスキルは腕装備だけなんだろうかって。」

 

「つまり?脚がなんで無いのか…ってことか…脚…ん?」

 

その話を聞いた釣男は突如、真顔になった。

 

「どうしました?急に真顔になって。」

 

「ピーンと来たかもしれない…よーし!さっさと仕事終わらせて設計書くか!八ちゃんに後で言っておいて、新兵装思いついたって。」

 

「え?あ、はい!」

 

 

 

—————-

 

 

 

所変わって、Aegisの模擬戦闘区画。成子坂所属アクトレスの様子を見ていた平八の携帯に着信が入る。

 

「もしもし、どうした?蓮香さん。…マジか。もう頭に浮かんでいるのか。…ほう、脚…か。それなりに鍛える必要もあるが…まあまあ面白くなりそうだ。分かった、一応Aegisにも新兵装の試験稼働をするって伝えておくよ。…ああ、そちらは取り敢えず設計を完成してくれ。頼むぞ。」

 

そう言って携帯を切ると溜息をついて

 

「やれやれ、また脳汁吹き出してるな?釣男。」

 

 

 

—————

 

 

 

午後2時 成子坂製作所

 

地下開発室

 

 

 

Aegisから帰ってきた平八は、蓮香と釣男の書いた設計図を見ていた。

 

「ふむ…これまでに存在しない脚の近接ギアスキル持ち兵装か…アイデアとしては悪く無いと思うがな。」

 

「また私の疑問からこんなゲテモノを…すみません…」

 

「いや、蓮香さんもグッジョブだと思うけどな。今回は君の疑問が導いた新兵装だ。だが、問題点を挙げるとすればスキル使用中にどうやって通常のブースト稼働をするかって点と、エネルギー効率だな…」

 

「ですね…これまでアクトレス達が使用した近接ギアスキル保有型はいずれも肩パーツの質量兵装でしたし、この設計図の段階で前方への膝蹴りや突き蹴りができるようにする為に、膝と足先の変形機構持たせても機動力への影響が考えられますね…。」

 

「一応、ランス系のクロスギアと同じく離脱向上機能は持たせたんだけどねぇ。何かが足りないなぁ…」

 

「スキル稼動時に通常と変わらない機動力を保持するために必要な要素…か。逆にエネルギー系の刃や仮想の半月板ではショット型と変わらないし、矢張り質量兵装にしたい部分はあるな。」

 

「…待ってください、膝と足先で蹴り飛ばすなら半月板にこだわる必要は無いと思うんですが。それこそ膝先の側面に補助翼として付けて、それを使用時のみ膝蹴りの刃にするなら質量兵装として機能すると考えてます。」

 

「ほう、中々面白いじゃない?それなら足先の展開機構は10式G型/Tみたいな刃の展開を同じようにすれば、ブーストの排出口に影響無いと思うし。」

 

「まあ、離脱向上機能がある時点で通常の稼働状態に近づけるのが解決すべき点だからな。補助翼として通常時に機能するなら、彼方も文句は言わないだろう。後は他近接ギアスキルと同じく、使用中に発生する性能向上を装備すればいい感じに仕上がるだろう。」

 

「でも、補助翼として機能するなら、高機動型はまず無理ですね…せいぜいバランス型として機能するのがベストですね。重装型なんて論外なんで。」

 

「よし、大体纏まったな。タイプはバランス型、ギアスキルは稼動時にランス系の途中離脱向上機能有りの5連続突き、装備補助翼を展開して相手を蹴り飛ばす…以上を理解した上で設計図を訂正しよう。」

 

「んじゃ、後頼めるかい?八ちゃん?今度焼肉奢るからさぁ。」

 

「…わーかったよ、ボイレコに録音したから必ず守れよ?」

 

「へいへーい。…って徹底し過ぎじゃないか⁉︎」

 

「うるさい、俺は炭酸飲料と酒でストレス発散するんだ!お前も、付き合えよ?(ゲス顔)」

 

「うわぁ…絶対色んな意味で勝つ気満々だこの人…」

 

こうして、新型兵装のコンセプトは決まり、成子坂の製作班に委託された設計図は1週間で仕上がり、テストパイロットである蓮香に装備させて試験稼働を行うことになった。

 

—————

 

1週間後 Aegis東京シャード本部

模擬戦闘区画

 

「ヒャッハー!ヴァイス、お前らボールになれやぁ!」

 

と世紀末じみた言葉を吐きながら、蓮香は模擬ヴァイスの的を次々と破壊していく。

Aegisの上官もこれには白目を剥いて

 

「こ、こんなゲテモノ装備して問題点は本当に無いのかね⁉︎明らかに某世紀末アニメみたいな感じなんだけど、アレ。」

 

それに対し平八は

 

「ご存知ありませんか?彼女、ロボゲーで有名な方でして、実は火力全振りとかが好きらしいです。元々、アクトレス適正はあったらしいんですが、当人の体力があっても兵装をマトモにこなせなかったらしいです。ですが、私たちがテストパイロットとして正規雇用したことによって、一種の不満解消に繋がったのでしょう。」

 

「…まあ、仕方ない事か。多分、試験を受けたのは10年くらい前だから当時はロクに扱える兵装も無かったからな。」

 

「ま、当人はこんなに飛べて満更でもないようですが。」

 

「全く、釣男くんといい、君らといい、なんでこんなゲテモノ作れたんだ?」

 

「うん?そりゃ、決まってますよ。我々は吹っ飛んだヤツを作りたいんで。頭の悪いアイデアから生まれた兵器が過去の戦争で活躍したって話があるでしょう?それ故ですよぉ。」

 

「バーカ☆」

 

「上官さん、それ、釣男に対しては褒め言葉にしかならないから。罵倒しようとしても無意味だから。」

 

「面妖なヤツらめ!!!!」

 

上官の嘆きを側に、試験稼働は概ね成功する様子を見ているマブダチ共であった。

 

————

後に行われた企業別アクトレスギア展覧会で、他企業の技術者から「面妖な変態技術者共め!」と罵倒という名前の褒め言葉を貰ったのは言うまでもない。

 

そして、発表時の開発したギア形式番号は

G-CHK-bc09

と発表され、一部アクトレスから専用装備化を申請されるほどの反響を呼ぶ事になる。




G-CHK-bc09

(属性未定、ソックス装備、バランス型、専用装備申請有り)

通称:主任キック
ギアスキル:ケンカウリノケリ(使用制限1回)
50秒間近接攻撃を5連続ランス系足蹴りにして、防御を大アップさせる。(2〜4段目でランスと同じくキャンセル離脱可能)

旧叢雲工業の開発チーム「GINPATI」が有志集結し、自由に作ったネタ兵器ギア。
男達のロマンを求める精神を表したネタ兵器ではあるが、案外使い勝手が良いらしく、現在は専用装備申請すらある状況。
使用時は脚部装甲の補助翼が展開して刃になり、膝蹴りや突き蹴りもできるようになる。

——————-

はい、ということでACVやVDをやった傭兵ならお馴染みのブーストチャージから来たネタ兵装です。

勿論、ギアの形式番号にも元ネタがあり、主任(chef)、ハングドマン(Hungdman)、蹴り(kick)から来ています。
え?9は何かって?あの作品群にある忌まわしい数字、とだけ言っておきます。

私も、ACVDからこのゲームに似たナニカを感じて始めたのですが、まだまだロマン要素が足りない…と思う部分はあります。
とはいえ、待ってるだけはつまらない。
だから書いた。ただ、それだけです。

正直、私は文才が無いので4500字以上書くのも辛かったです。
だけど、勢いとノリで考えた兵装とか文とかのウケがいいと、此方も嬉しくなるよ…ね?

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