とある科学の刀剣使い(ソードダンサー) 作:御劔太郎
『学園都市』……それは、東京都西部を切り開いて作られた大都市である。
そこでは“超能力開発”と云うものが学校のカリキュラムに組み込まれており、総人口230万人の実に約8割を占める学生達が日々『頭の開発』に取り込んでいる。
そんな学園都市に一人の男子中学生が住んでいた。
その男子中学生の名前は『紅月 詩音』。
シルクのような肌触りの良い黒くて長い髪を一纏めにした美形と称して障りのない女形ような顔付きである。
また彼は、紅月家当主の証である家宝の日本刀をいつも肌身離さず持ち歩いていた。
ちなみ、彼は無能力者(レベル0)でありながら学園都市からかなりの奨学金を受けており、その金額は超能力者(レベル5)と同等である。
理由としては、彼の持つ天賦の剣の才能と超人的な身体能力、鋭い観察眼・洞察力と相まって相手の数手先を読み行動することができ、純粋な戦闘能力では高位能力者と対等に渡り合えると言う。
これにより、彼は高額の奨学金と例外的に刀の帯刀を学園都市より許されている。
次に彼の持つ日本刀についてである。
刀の名前は『絶影』……
幕末の刀匠『新井赤空』が鍛えたとされている幻の“最終型殺人奇剣”……
黒い刀身は妖艶な光りを放ち、刃は赤紫の炎を模した波紋が特徴的である。
この刀は、通常の刀と次元違う強度と切れ味を持っており、また芸術品のような美しさは見る者を圧倒させた。
そして最後に、紅月詩音は風紀委員(ジャッジメント)第177支部に所属している。
************************************************************************************************************
夏休み前の7月半ば、天気は快晴……
その日、詩音は朝からジャッジメントの仕事で第7学区内にある人通りの少ない裏路地を走らされていた。
何でも女子中学生が数人の不良に絡まれているという匿名の通報があったからだ。
「ったく……この暑い中、朝から仕事だなんて……」
やれやれといった感じで詩音は愚痴を吐いている。
『何を寝ぼけた事を言っていますの!詩音さんッ!』
『そうですよ!紅月くん!次の角を右に曲がれば現場です!』
詩音の使う最新のインカム型の携帯電話から二人の少女の声が交互に聞こえた。
一人は『白井黒子』……
レベル4の“空間移動能力者(テレポーター)”であり、所属している風紀委員、第一七七支部で行動班の一翼を担っている。
もう一人は詩音と黒子のバックアップを後方である支部から担当する『初春飾利』……
頭には大量の生花を載せていることからクラスの間では“動く花瓶”とも“生きた花瓶”とも揶揄されている。
ちなみに、詩音と初春飾利は同じ学校の同じクラスだ。
「りょーかーい………」
詩音は初春の指示にしたがって角を曲がり、黒子よりも早く現場に到着する。
それと同時に声を上げた。
「ジャッジメントです!不良に絡まれている人がいると言う通報を受けて来ました!被害者は……って、アレ?……」
現場に着いた詩音はふと思った。
初春の情報では、被害にあっているのは女子中学生のはずだった。
だが、倒れていたのは迷惑行為を行っていたであろう不良たち……
しかも、みんな丸焦げになっている。
「すみません。これをやったのはアナタですか?」
詩音は倒れている不良たちを指差しながら、被害者らしい女の子に聴いた。
「そうよ……余りにしつこいから、テキトーにやっといた……」
腕を組み、ソッポを向いた被害者の女子は淡々と事情を話す。
それを聞いた詩音は……
「はい、アナタの事情は分かりました……アナタを傷害の容疑で逮捕します。」
そう言った詩音は、その女の子に対し警備員(アンチスキル)も使用する対能力者用の手錠を掛けたのだ。
「えッ!!?、チョット!何でこうなるワケッ?!!被害者は私の方でしょう!!?」
手錠を掛けられた彼女は始め何が起きたのか理解できてなかったが、すぐに自身の置かれた現状を把握し、素早くツッコミを入れる。
「だって、この不良さん達はキミをナンパしただけでしょ?たかがそれだけの事で能力を使用したって言うのは、少し飛躍した話だとは思いませんか?」
哀れな姿になっている不良たちに静かに手を合わせた。
「しょうがないでしょ?それにコイツらは死んでない!縁起が悪いわよ!」
二人がヤイヤイしている事、数分………
相方の黒子がようやく現場に到着した。
「すいません、遅れましたの!それで不良たちの被害にあっている方はどこですの……って、お姉さまッ!!?」
黒子が手錠をされた女の子を見て驚いている。
どうやら、彼女ことを知っているみたいだ。
「え?白井さん?この人と知り合いなの?」
詩音が黒子に聞く。
「ええ、わたくしの先輩ですわ。」
確かに彼女の言うとおり手錠をした女の子は黒子と同じ常盤台の制服を着ていた。
その後、彼女から頼まれた詩音は女の子に掛けていた手錠を外し解放する。
「はあ~朝っぱらから、ヒドい目にあったわ……」
手錠を掛けられた常盤台の少女…『御坂美琴』は自分の手首をさすりながらブツクサと何か言っている。
「自業自得ですわよ、お姉さま。いつも言っているでしょうに……仮にもお姉さまは常盤台のエース。もう少し、そこら辺に気を配って行動して貰わないと……」
「そうです。学園都市の治安維持はジャッジメントとアンチスキルに任せて下さい。」
「だって、しょうがないじゃない……アンタたちが来る前に全部終わっちゃうんだもん。それに今のところ私、全然負けてないし!」
鼻息荒くガッツポーズを取る美琴。
「まったく、何言ってるんだか……いくら、御坂さんみたいな高位能力者でも所詮は一般人なんですよ?分かっていますか?権限のないアナタが無闇に暴れていると上から睨まれますよ?」
その様子に呆れた顔で忠告をする詩音。
「何?その言い方……まるで、私がジャジャ馬だとでも言いたいの?」
「さあ……別にそんなことは言った覚えはありませんのー。あれ?もしかして、自覚があるんですか?」
黒子の口癖を混ぜながら、美琴をからかう詩音……
「何かムカつく……」
ビリッとスパークが走り美琴のこめかみが引きつき、ボルテージが上がっていく。
「(あわわ……このままではヒジョーにマズいですわ。お姉さまなら、要らぬ暴力沙汰を起こしかねませんの……)」
色んな意味で美琴と詩音の事を心配した黒子は話を別の方向に振った。
「そ、そう言えばお姉さま、今日は能力測定(システムスキャン)がありましたわよね?」
「ん?ああ、そうだった……」
「このままでは遅刻してしまいますわ、お姉さま……それでは詩音さん、ごきげんよう。おほほほ……」
黒子は詩音に軽く会釈をすると、美琴の手を取りテレポートを繰り返しあっという間に詩音の前から去っていくのだった。
**********************************************************************************************************************
そして、黒子たち二人と別れた詩音は自分の通う“柵川中学校”へやって来た。
教室に向かう途中、同級生の同じジャッジメントの支部に勤める初春飾利と出くわす。
「あ、紅月くん。今朝はご苦労さまでした。」
「初春さんこそバックアップ大変だったでしょ?」
「いえ、私は全然……紅月くんたち、行動班に比べたら楽ですよ。それで被害者の方は無事だったんですか?」
「それが現場に着いたら、不良たちは全員その被害者にヤられて伸びてたよ。しかも、その被害者って言うのが白井さんの先輩なんだって……正直、驚いたよ。」
“白井さんの先輩”……そのフレーズを聞いた初春さんの耳がピクピクッと反応した。
「あ、あの!白井さんの先輩って、まさか御坂美琴さんじゃないですか?」
「え、そうだけど…もしかして、初春さんもその人と知り合いなの?」
「いえ…直接、会ったわけじゃないですけど、その名前を聞いて知らない人はいません!学園都市にわずか七人しかいないレベル5の第3位!常盤台のエース!御坂美琴さん!」
初春さんは鼻息を荒く熱弁を振るっている。
「それに今日の放課後、念願叶って御坂さんのことを白井さんから紹介して貰うんですよ~!はあ~////憧れます、常盤台のお嬢様……////」
今まで熱弁を振るっていた初春さんが次はいきなり別の世界へトリップしている。
「(初春さんって、けっこう忙しい性格をしてるんだな……)」
そんな彼女の元へ素早く忍び寄る怪しい影が……
「うーーいーーはーー……………」
その姿はまるで、あの世界的隠れん坊の名人“某蛇氏”のようだ。
完璧に気配を消して標的に接近した影は、初春さんのスカートをおもいっきり捲りあげる。
「るーーーーッ!おっはよーーーん!」
「ふぇ……ッ!!? ひゃわあぁああぁぁあぁぁーッ!!!!」
人知れず忍びより結果は周囲の誰も見逃さない。
そんな矛盾した行為をやってのけた長い黒髪の少女は一度うなずいてその内容をゆっくりと吟味する。
「今日は淡いピンクの水玉か―――ッ!」
黒髪少女こと佐天涙子が絶叫した内容に『それ』を見てしまった周囲の男子生徒達が顔を赤くして足早にその場を去っていく。
当然、見た内容と聞いた内容をきっちりと記憶しながら。
もちろん、詩音も例外ではない。
「な、何をするんですか佐天さんッ!男子もいる往来でこの暴挙…ッ!」
「おやおや~?クラスメートに敬語とか相変らず他人行儀だねー♪……よし!初春との親睦を深めるためなら、アタシはいくらでも鬼になろうッ!」
「そんなのならなくていいですし、連続でスカート捲らないで下さーーーーい!」
前を守れば後ろが………
後ろを守れば前が………
「両手使って前後を守れよ!」とツッコミを言われるかもしれないが、初春飾利は只今、そんなことも考え付かないほどテンパっているのだと皆様にはご理解いただきたい。
詩音を始めとする周囲の生徒たちが“初春飾利のそれ”を見たところで、佐天涙子による公開処刑は終了した。
「いや~ゴメンゴメン。そこに初春のスカートがあったもんだからつい……」
「酷いですよ……しかも全然反省もしてないし……」
親指をグッと立てて謝罪しても逆効果なので注意(イエローカード)である。
スカート捲りをした彼女は「お詫びに自分のスカートを……」などと言って周囲の男子の目を集めるが初春当人と詩音にキッパリと拒否されたため仕方なく下ろした。
周囲から複数の馬鹿正直な舌打ちが聞こえたような気がしたが空耳だろう。
きっと……
**********************************************************************************************************************
そして、その日の放課後……
「ねえねえ、二人はどーだった? システムスキャンの結果…?」
「私は相変らずのレベル1でした。担当の先生からも『お前の頭の花は見せかけかッ!!?その頭の花咲きパワーで能力値でも咲き誇れーっ!』て、怒られちゃいましたし……」
苦笑いの初春……
「何ていうか、その先生ってツッコミどころ満載だね……まあ、僕は相変わらずのレベル0だったよ。」
「私も詩音くんと同じレベル0だった。」
「クヨクヨしてても仕方ないし、次があるよ。」
「そうだね!次は頑張ろうッ!……それで初春たちはこの後、用事とかあるの?」
「私たちはこれから同僚の白井さんに御坂美琴さんを紹介してもらうんですよ~♪」
「御坂美琴って、あの常盤台の超電磁砲(レールガン)でしょ?どうせ威張り散らしたいだけのいけ好かない女なんじゃないの?ああいう人って私たちみたいな人を小バカするじゃん?私、ああいうのが一番嫌いなんだよね……しかも、常盤台のお嬢様なんて……」
「うわ……全否定……」
「良いじゃないですかお嬢様!いいえ、むしろお嬢様『だから』良いんじゃないですか!」
朝同様に初春は熱弁を振るい出す。
「アンタ、ただ単にセレブ族にあこがれてるだけなんじゃ……」
そんな彼女をやや冷めた目線で見る佐天……
「そんなことはナイデスヨ……そうだ、どうせなら佐天さんも一緒会いに行きましょう!」
半ば強引に彼女の手を引き待ち合わせ場所に初春は待ち合わせ場所に向かう。
「ちょ、ちょっと!私、これから新しいCDを買いに…………って人の話しを聞け〰〰ッ!」
学園都市に佐天の叫びが虚しくこだました。
次回に続く。
ご意見、ご感想がありましたら、ヨロシクお願いします。