とある科学の刀剣使い(ソードダンサー)   作:御劔太郎

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第9話 幻想御手(レベルアッパー) 後編

佐天と別れた詩音は、あれから幻想御手(レベルアッパー)を求め、『スキルアウト』……簡単に言えば柄の悪い無能力者を、しかも武装化した不良たちを狩りまくっていた。

そこら辺には、拳銃やナイフなどが散乱し、血を流した不良たちが倒れている。

リーダー格の男一人を残して、取り巻きのメンバーを全員斬殺した。

そんな中で、詩音はリーダー格の男を左腕の力のみで軽々と持ち上げていた。

 

「ねえ、お兄さん?レベルアッパーとかって持ってない?僕、それが欲しいんだけど……」

 

「も、持ってねぇよ!そんな物!」

 

「本当かな~?ウソはダメだよ~♪」

 

詩音は笑みを浮かべている。

しかし、この状況の中とても正気の沙汰とは思えない。

右手には、不良たちの血でべっとりと濡れた愛刀『絶影』が妖しく輝いている。

 

「ウ、ウソじゃねえ!もう、許してくれ!」

 

「うーん……どうやら、本当に持ってないみたいだね?仕方ないか、じゃあ行っても良いよ。」

 

そう言うと、詩音は不良を放した。

 

「た、助かった……」

 

不良の男はその場から逃げ出そうと走り出すが、途中でバランスを崩し倒れてしまった。

下半身に異様な違和感を感じ、男がおそるおそる見てみると、なんと両脚の膝から下が綺麗に斬られて転がっていたのだ。

 

「あ、足がああああぁぁーーッ!」

 

男は自分の在られもない姿を見て絶叫する。

詩音が刀の峰で自身の右肩をトントンと叩きながら一歩、また一歩と男のもとに歩み寄って来た。

 

「な、な、なぜだぁぁッ!見逃がしてくれるって言っただろうッ!!?」

 

「これだから、バカは困るんだよ~。こんな事しといて、お前なんかを逃がしたら、僕、アンチスキルに捕まっちゃうじゃないか……君は口封じの為にここで死んでもらうよ♪」

 

詩音は何の躊躇いもなく刀を振り下ろした。

 

「ちょっと、やり過ぎたかな~?」

 

そう言って、おもむろに携帯電話を出した詩音は、どこかへ電話を掛けるのだった。

 

「あ、モシモシ~僕だけど~………」

 

**********************************************************************************************************************

 

場所は変わり、美琴と黒子はレベルアッパーを使ったと思われる不良たちが集まるファミレスへ来ていた。

 

「お姉様、分かっているとは思いますが…」

 

「ええ、大丈夫よ☆私に任せなさいって~の!」

 

「で、でも、途中で相手に腹を立てて能力を使ったり、なぎ倒してはいけませんのよ…?」

 

「分かってるわよ。何?アンタ、私がまるで暴れん坊とか思ってるの?」

 

「い、いえッ!!?そんな事ないですわッ!!?」

 

「じゃあ、行きましょう♪Let's Go!」

 

イキリ勇んで店内に入ってく美琴を心配そうに見つめる黒子……

 

「(黒子はとーっても、とーっても心配ですの……色んな意味で……)」

 

店内に入った二人はすぐに一番奥の席でしゃべっている不良たちを見つける。

そして美琴のみが、その不良たちのもとに向かい話しかけた。

ちなみに黒子は少し離れた席から美琴を観察し、すぐに動けるように待機している。

 

「あん?幻想御手(レベルアッパー)について教えて欲しいだぁ?」

 

不良のひとりが美琴に対して、凄い睨みを利かせている。

 

「うん♪ネットの書き込みで偶然にもお兄さんたちのことを見つけてちゃって~出来たら私にも教えて欲しいな~って♪」

 

いつもの美琴とは違い、この時ばかりは本当の自分をひた隠しにし精一杯のぶりっ娘を演じて見せた。

そんな彼女を見ながら黒子は顔を赤らめて「ハアハア////」と興奮している。

そうこうしている間に、レベルアッパーの話しはまとまろうかとしていた。

しかし、ある人物の登場で美琴渾身の演技もすべてが台無しになってしまう。

 

「あれ?御坂さんだ♪」

 

「(ッ!!?この声は……ッ!!?)」

 

美琴が声のした方にゆっくりと顔を向けると詩音が笑顔で彼女に向かって手を振っていた。

 

「(ど、どうして、アンタがいるの………)」

 

愕然とする美琴。

 

「あーー?何だ、テメエはーッ?」

 

先ほどとは別の不良が睨みを利かしながら詩音に近づいてくるが、詩音は無視して美琴に話しかける。

 

「ねえ、御坂さん?こんな所で不良相手に何してるんですか?」

 

「おい!シカトかぁーッ!」

 

さらに、しつこく不良が詩音に絡んでくる。

 

「あー!もう!うるさいなぁ!お兄さん、ぶっ飛ばすよッ?」

 

「何だとぉッ!」

 

一触即発の雰囲気に次第に焦りだす美琴。

 

「(ヤ、ヤバいッ!!?このままじゃ、せっかくの情報が……ッ!)」

 

美琴は必死になって不良たちに取り繕ったが、完全にスルーされてしまった。

 

「それに、お兄さん…この人に手を出すのは止めといた方がいいよ。」

 

「はあ?何でだぁッ?」

 

「だいたい、御坂さんはこんなキャラじゃないよ。無愛想でガサツなのに負けず嫌いで……」

 

先輩である美琴を前にして彼女の事を言いたい放題の詩音。

さすがの美琴もだんだんと怒りのボルテージが溜まっていく。

 

「はっきり言って、こんな“ジャジャ馬”お兄さんたちの手に負える相手じゃない、可愛い容姿に騙されちゃダメぞ☆」

 

詩音の一言に対し、美琴の怒りのボルテージがMAXになりメーターを振り切る。

完全にキレたのだ。

 

「アンタは、よくも私の事を好き勝手に言ってくれたなああぁ〰〰〰〰ッ!!!!!!」

 

キレた瞬間、美琴の体からおびただしい数の電流がほとばしる。

 

「「「ぎゃあああああぁーーッ!!!!!!」」」

 

美琴の放った高圧電流に晒された数人の不良たちから断末魔が聞こえる。

この放電は十数秒間続き、不良たちはこんがりと焼き上がっていた。

また、この放電でファミレス内の照明を含め、全ての電源がダウンする。

 

「アハハハ!御坂さんがキレた~ッ♪」

 

そして、この騒動の中でもひとり楽しそうに詩音は笑いながら店内から飛び出していった。

 

「待てやぁッ!ゴラアァァァァァ〰〰ッ!!!!!!」

 

美琴は絶対に見ることはないだろう、鬼のような形相で詩音のあとを追いかける。

どのくらい走っただろうか、美琴は詩音はこの間、勝負をした河川敷へと来ていた。

 

「逃がさないと言ったでしょう!」

 

電撃が逃げる詩音の足元に落ちる。

 

「おっと……!」

 

美琴の電撃に詩音はついに足を止めた。

 

「ハアハア……やっと、追いついた……」

 

「あの~御坂さん?まだ怒ってます?」

 

わざとらしく、詩音は美琴に対して聞く。

 

「当たり前じゃない!アンタせいでせっかく手に入りそうだったレベルアッパーの情報がパーよ!」

 

「だって、それは御坂さんが不良全員をのしちゃうから……」

 

「うぅ、うるさいッ!アンタがあんな事を言うからでしょうが!この責任、ちゃんと取ってもらうからね!」

 

「どうやって……」

 

「真っ黒コゲになりなさい!」

 

美琴が電撃の槍を放つが、詩音はヒラリと避ける。

電撃が当たった地面は黒く焼け焦げていた。

 

「そんな無茶苦茶なッ!理不尽です!」

 

「関係ないわ!観念しなさい!」

 

美琴は詩音に向けて何度も何度も電撃を放つが、全く当たる気配がない。

 

「何でッ!!?何で当たらないのッ!!?私の電撃の方が圧倒的に速いはずなのにッ!!?」

 

「確かにそうだけど、それを扱うのが御坂さんじゃねぇ~♪」

 

「ど、どういう意味よ……」

 

「知ってます?どんな能力者でも能力の発動までには、ちょっとしたタイムラグあるんですよ。僕はそれよりも速く動けるんです。あと、ハッキリ言わせてもらいますけど、御坂さんは隙だらけ……すでに、10回以上は死んじゃってますよ?」

 

詩音は満面の笑みで驚くべき事を美琴に伝える。

 

「ッ!!?」

 

一瞬だが、美琴は動揺した。

しかし、すぐに平常心を取り戻す。

 

「アンタ、何を言っているか理解してんの?私はレベル5でアンタはレベル0……はっきり言って次元が違うのよ。」

 

その一言に反応した詩音が静かに口を開いた。

 

「へー思い上がりにしては、良い自信だね……」

 

詩音の目つきが変わる。

以前、謎の女侍こと『神裂火織』と会い見えた時のような冷酷な視線だ。

 

「ア、アンタ、いきなりどうしたの……?」

 

「別に……そうだ、この前のリベンジマッチをしませんか?御坂さん、この前負けたっきりで悔しいんじゃない?」

 

「べ、別に悔しくはないわよ////、良い度胸ね!良いわよ!相手になってやるわ!」

 

美琴もまんざらではない様子……

態勢を整えた彼女は戦闘モードに入る。

 

「じゃあ、僕からも一言……さっき、御坂さんはレベル5とレベル0は次元が違うって言ってたけど、レベルの違いが勝敗の決定的な条件だとは限らない事を教えてあげる……!」

 

「え……ッ!!?」

 

次の瞬間、美琴の体がバツ字に斬られた。

一瞬の出来事……

彼女の体からは噴水のように鮮血が吹き出す。

 

「(あ、あの時と同じだ……な、何も見えなかっ……た………)」

 

美琴はそのまま仰向けに倒れてしまった。

白目を剥いて気を失っている。

 

「どうだい?ジャッジメントの最高位“風紀委員長”にやられる気分っていうのは?」

 

倒れている彼女もとへ詩音が近づき見下していた。

美琴自身の視点では確かに斬られたはずなのに、実際には吹き出した血どころか、刀傷すらなかった。

それはなぜか……

 

「学園都市 第三位と言ってもこの程度か……二階堂兵法、心の一法応用編。只の幻術にこうも簡単に引っ掛かるなんて……」

 

そう、実際に美琴は詩音に斬られてはいなかった。

あの時、美琴が見て感じたのは只の幻……

この間、常盤台狩りの犯人を取り押さえた時に使ったのと同じ原理だ。

 

「御坂さん?所詮、キミは僕に刀を抜かせる価値もないってことだよ……」

 

そう言って、詩音は美琴をお姫様抱っこの要領で抱き抱えると、学園都市の闇の中に消えて行った。

 

次回に続く。

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