とある科学の刀剣使い(ソードダンサー)   作:御劔太郎

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第10話 マジョリティーリポート 前編

とある日の正午過ぎ……

初春と詩音はとある人物に呼び出され、その人と待ち合わせをしていた。

 

「うーん…遅いですねー」

 

「ったく…時間が惜しいって言うのに、佐天さんはいったいどこをほっつき歩いているのかな?」

 

そう、二人を呼び出したのは佐天……

何でも、ネットで凄い物を見つけたらしい

二人は彼女を探し、右をキョロキョロ、左をキョロキョロしていた。

 

「今日は水色と白のストライプか~~ッ♪」

 

佐天の声が響く。

彼女のいつもの日課……

ムダに高いスニーキング能力を駆使した挨拶がてらに、必殺のスカート捲りが初春を襲う。

やられた被害者こと初春飾利は顔を赤くし、涙目で加害者である佐天をポカポカと叩いていた。

 

「ハア~佐天さん…いい加減にしないと逮捕するよ?スカート捲りは立派な犯罪なんだからね?」

 

詩音がため息混じりに、彼女を注意する。

 

「大丈夫、大丈夫!別に初春もやられてまんざらじゃないから♪」

 

「ッ////な、何言ってるんですかーッ!!?」

 

「それに詩音くんも目の保養になっていいでしょ?」

 

「まあ~それは否定できない……って、あ………」

 

佐天の口車に乗せられ、詩音は思わずボロを出してしまう。

 

「紅月くんもそう思っていたんですね……最低です………」

 

「ガーン!」

 

「それで?佐天さんが私たちを呼び出した理由って何なんですか?」

 

「あ、そうだった!実はね、昨日の夜にネットをしてたら凄い物を見つけちゃったの!」

 

二人の周りを佐天が嬉しそうに動きまわる。

 

「刮目せよッ!」

 

「ぬわッ!!?」「おぅッ!!?」

 

いきなりの大声に二人が少し驚いた。

 

「今、学園都市で一番の噂になってるアイテム!じゃじゃーーんッ!」

 

佐天は某人気アニメのBGM風に携帯型の音楽プレイヤーを取り出し、自慢気に二人に見せつける。

 

「………?コレって、いつもの音楽プレイヤーですよね?」

 

「佐天さん、頭は大丈夫?」

 

「失礼なッ!!?私の頭はいたってクールだよ!それよりもコレは中身が凄いのよ!ナ・カ・ミが!」

 

「じゃあ、見ても分かんないじゃ……」

 

ごもっともな意見……

 

「まあ、それもそうか。詳しい事はお茶でもしながら、教えてあげるよ♪」

 

「結構、勿体ぶるなー佐天さんって……」

 

佐天を先頭に三人はファミレスへと向かった。

 

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場所は変わり、美琴と黒子の二人は大脳生理学の教授『木山春生』と共にファミレスにいた。

 

「それで?さっきの話しの続きだが、どうして同系統の露出でも下着はダメなのか?」

 

「「いや、そちらではなく……」」

 

妙なシンクロで木山にツッコミを入れる美琴と黒子。

 

「ほう、幻想御手(レベルアッパー)?」

 

「はい、ネット上で広まっている噂なのですけど……」

 

「ふむ、興味深いな……それはどういったシステムなんだ?形状は?どうやって使うんだ?」

 

「それが、まったく分かりませんの………」

 

「それでは、何とも言えないな……で、そんな話をなぜ私に?」

 

「能力を向上させるという事は脳に干渉するシステムである可能性が高いと思われますの。ですから……」

 

「レベルアッパーが見つかったら、私にソレを調査して欲しいと……」

 

「はい。」

 

「構わんよ。むしろコチラから協力をお願いしたいくらいだ。」

 

「ありがとうございます。」

 

黒子は丁寧に頭を下げる。

 

「ところで、さっきから気になっていたんだが……あの子達は知り合いかね?」

 

そう言って、木山先生は外を指差した。

 

そこには、ヤモリのようにガラス貼り付く佐天と、その後ろでコチラ側に軽い会釈をする初春、さらに後ろではボーッとしている詩音の姿があった。

 

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「お待たせしましたー♪フルーツパフェとプリンアラモード……それに当店自慢のメガトン級バケツパフェですね。ごゆっくりー♪」

 

あとから、合流した三人の注文した物を店員が営業スマイルで提供し去っていく。

 

「もしかして、キミはそれを食べるつもりなのかい?」

 

木山が唖然とした表情で詩音の前に置かれたポリバケツに盛られた超ド級のパフェを見ている。

 

「え?まあ……」

 

逆に詩音は当然とした表情だ。

 

「木山先生……気にするだけムダですよ。コイツの甘い物好きは筋金入りですから……」

 

美琴がジト目で詩音を見ている。

そんな彼女も目にくれずパフェを表情も変えずに、ものすごい勢いで食べ進める詩音。

 

「へぇ~木山先生は脳科学の学者さんなんですか~♪ハッ!白井さんの脳に何か問題でもッ!!?」

 

何だか、ワザとらしいと思えるほどの天然発言をする初春。

 

「何をバカなことを……レベルアッパーの件で相談してましたの。」

 

レベルアッパーの話をする面々に佐天が反応する。

 

「あ、レベルアッパーですか?それなら私………」

 

どうやら、佐天はレベルアッパーについて何か知っているようだ。

巨大パフェに挑戦している詩音は、食べるのに集中しながらも佐天の言葉を聞き逃さなかった。

 

「ワタクシが思うにレベルアッパーの所有者を捜索して保護する事になると思われますの。」

 

「え?……」

 

佐天が出そうとする右手が途中で止まる。

偶然か必然か、その行動は説明を行っている黒子に全員の目が向いているため気付かれることは無かった。

 

まあ、それは詩音を除いての話だが……

 

「……まだ調査段階ではっきりとしたことは言ませんが、使用者に副作用がある可能性と、急激にチカラを付けた学生が容易に犯罪に走りやすいという傾向があるからですの。未だどのようなものかは分かりませんが……」

 

「なるほど~佐天さん?どうかしたんですか?」

 

「えッ!!?あ、いや、別に……ッ!」

 

佐天は取り出しかけたものを慌ててしまい、何事もないと手を振る。

振りに振ったその手は、軽い音を立てて中身満載のコップへぶつかり、狙ったように木山先生の太ももの辺りを盛大に濡らす。

 

「あ……」

 

「わあ、ご、ごめんなさいッ!」

 

「いや、気にしないでいい。ストッキングに掛かっただけだ……」

 

大慌ての佐天に対して、大人な対応の木山先生だった。

しかし次の瞬間、おもむろに立ち上がってスカートを脱ぎだした。

 

「ストッキングを脱いでしまえばどうということは無いよ……」

 

ストッキングを脱ぐためには、確かにスカートを下ろす必要があるが……

 

「な、何をいきなりストリップしてますのッ!」

 

黒子が咄嗟に、木山先生のストッキングとスカートに手を触れて元に位地に戻し、ストッキングだけを取り外すという能力まかせの荒業でこの場を乗り越える。

 

「いや、しかし起伏の乏しい私の体を見て劣情を催す男性がいるとは……」

 

「趣味嗜好は人それぞれですの! 世の中には殿方でなくともゆがんだ情欲を抱く同性もいますのよッ?!!」

 

「そうですよ!女の人が公の場でパンツ見せるようなことしちゃダメです!えっと、零しちゃったの私ですけど…ッ!」

 

「(……鏡を見てその台詞を言ってみなさい)」

「(まったくです……)」

 

主にその歪んだ情欲を向けられている美琴と、下着を晒されたばかりの初春の心からの声であった。

 

詩音は、もちろんバケツパフェを完食するのに忙しい。

木山の恥ずかしい姿を見ている暇はない。

 

周囲にいる一般の客は、カオスな席を遠巻きに見て若干、楽しんでいたという。

 

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「本日はお忙しい中、ありがとうございました。」

 

「いや、こちらこそ色々迷惑をかけてしまったようですまなかった。教鞭をふるっていた頃を思い出して楽しかったよ。」

 

木山先生の意外な発言に全員がかすかな驚き見せる。

その反応に納得すらしているのか、苦笑とも微笑みとも見れる笑顔を浮かべる。

 

「まあ、昔の話さ……それではコレで失礼するよ……」

 

木山先生の小さくなっていく後姿を全員で見送る。

佐天が何も告げずにフラリと去っていったのは、その直後のことだった。

 

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「(やっぱり、手放したくない。まだ、使ったわけじゃないし、黙ってれば良いよね……)」

 

自身を無理やり納得させて、逃げてしまった。

 

親友に何も告げることができず、そのまま……

 

言わなければいけないことを言わず、恐らく自分が持っていることを伝えれば、絶対役に立てただろうと確信すら抱けているにも関わらず、告げることが出来なかった。

 

「せっかく手に入れたんだもん……」

 

能力が無くても良い、などと言ってどうでも良かったあの頃とは違う。

切実に能力を欲していた。

あの輪の中にいる為には、普通だけじゃ全然足りない。

なにか特別な……そんな要素が必要だった。

 

「……どうしたの? 佐天さん」

 

いきなり声を掛けられて驚く佐天。

後ろを見ると、その逃げ出した私を少し息を弾ませて追いかけてきた美琴の姿があった。

走って早くなったこと以上に心臓の鼓動が加速する。

 

「み、御坂さんッ!!?どうして……」

 

「だって、突然いなくなるんだもん……心配するじゃない。」

 

ギュッと、早くなった鼓動を打ち心臓が握り締められたような気がした。

ただ何も告げずに走り去っただけの自分をそれだけの理由で心配して追いかけてきてくれる。

そんな大切な友人を今、自分は裏切っているのだと……

 

「な、なんでもありませんよ!」

 

「でも……」

 

「だって、ほら!私って、その……事件とか関係ないじゃないですか。ジャッジメントじゃないし……」

 

後ろ手にしまった音楽プレイヤー……

そして、わざとおどけて見せることで自分はなんともないのだとアピールをする。

 

その時だった。

 

一つのお守りが軽い音を立てて地面に落ちる。

それを拾った美琴は、汚れていないことを確認して佐天さんに手渡す。

 

「それって、いつも佐天さんが鞄にさげてるやつでしょ?」

 

「……ええ、そうなんです。母から貰ったもので……今時、お守りなんて科学的根拠も何一つ無いんですけど……」

 

それは最後まで学園都市行きを反対していた佐天のお母さんが、いくつもの言葉と共に手渡してくれた大事な物……

 

学園都市に来る前日に不安になって、言い出すことも出来ずに一人ブランコをこぐ娘に、彼女の母親が優しくその手に握らせたものだった。

 

「……ほんと、迷信深いっていうか、こんな物で身を守れるわけないですけどね?バリアとかじゃないんですから……アハハハ……」

 

「……優しいお母さんじゃない。それだけ佐天さんのこと、想ってくれてるってことだもん。」

 

今でも思い出せる、自分を案じてくれた母の言葉。

それらは鮮明に思い出され、それだけの言葉をかけてくれた母に未だ佐天は何の成果も伝えられていない。

 

「分かってるんです……でも、それが……その期待が、重い時だってあるんですよ……何時までたっても、レベル0のままだし……」

 

「レベルなんて……どうでも良いことじゃない。」

 

レベル5である美琴が何気に言ったその一言は、レベルを気にする佐天の心に深く突き刺さり大いに傷つけてしまった。

 

「それは御坂美琴……レベル5のアナタだからいえる言葉なのだ!」という思いの丈を叫びたかった。

それらの思いと共に彼女は強くお守りを握り締める。

 

「じ、じゃあ私、そろそろ時間なんで!」

 

「あ、うん……またね……」

 

そう言って走り去る佐天の後ろ姿を美琴は見送るだけだった。

 

「レベルなんかどうでもいい?……ひどい事を言うじゃないですか?盤台のエース様は……」

 

どこからともなく、詩音の声が聞こえる。

 

「アンタ、私と佐天さんの話しを盗み聞きしてたの!」

 

「ええ、一部始終……」

 

「最低ね……」

 

「御坂さんほどでは無いですよ……御坂さんはさっき、佐天さんを元気付けようと声を掛けたつもりなんでしょうが、逆に彼女を傷つけてしまったんですよ。」

 

「そ、そんな事はない!私は……私は別に間違ったことは言ってないわ!」

 

「それは思い上がった御坂さんのちっぽけなエゴでしょ?はっきり言ってやろうか?アンタのやったことは偽善だ。悪事を働くことよりも質が悪い……偽善は自分を侵す毒にもなるからな……その証拠に優越感に浸って気持ちいいだろう?」

 

詩音の情け容赦ないに、美琴は押し殺していた感情を爆発させる。

 

「アンタこそ何様のつもりよッ!出て来なさい!私の電撃で焼いてやるわ!」

 

「ククク……やれるもんなら、やってみれば?まあ、いくらアナタが頑張ったところで僕には勝てる要素は無いんだけど……」

 

その後、詩音の声は一切聞こえなくなる。

その場に座り込む美琴……

 

「そんなこと言わなくても分かっているわよ……」

 

そう言って、自身の無力さを嘆き、美琴は涙を流すのだった。

 

次回に続く。

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