とある科学の刀剣使い(ソードダンサー)   作:御劔太郎

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第14話 木山せんせい

正体を明かした木山春生は、初春と共に車で移動していた。

 

「参ったよ……私の部屋は普段、誰も立ち入れないようになっているし、来客もほとんど無かったからね……少々、不用心だったかな?ところで、以前から気になっていたんが、その頭の花は何なんだい?キミの能力に関係あるのか?」

 

「……お答えする義理はございません。そんな事より『幻想御手(レベルアッパー)』って何なんですか?どうしてこんな事したんですか?眠っている人たちはどうなるんですか?」

 

助手席に座る彼女は木山先生を厳しく追求する。

 

「やれやれ、矢継ぎ早だな……こっちの質問には答えてくれないのに……良いだろう、まずはレベルアッパーについてだが………」

 

木山先生は自身が造り上げたレベルアッパーの仕組み、そしてソレを造った理由を話し始めた。

 

「まあ、そんな所だ……そんな怖い顔をしないでくれ。シュミレーションが終われば、みんなは解放される。ウソだと思うかい?」

 

木山先生は車を運転しながら、器用に白衣の右ポケットを探っている。

 

「……キミにコレを預けておくのも、一興かもしれないな……」

 

そう言った木山先生は、ポケットから一つのマイクロソフトを出して初春に手渡した。

 

「……えっと、コレは何ですか?」

 

彼女が聞く。

 

「レベルアッパーをアンインストールする治療用のプログラムだ。後遺症はない。全て元に戻り、誰も犠牲になることはないよ……」

 

木山先生は治療用プログラムの説明を淡々としている。

 

「信用できません!臨床研究が十分ではない物を安全だと言われても、何の保障もないじゃないですか!」

 

「ハハ……手厳しいな……ッ!!!」

 

その時だった。木山先生は前方に見えた人影に驚き急ブレーキを踏む。

慣性のチカラが二人に働き、二人は前のめりになり、さらに初春はダッシュボードにおデコをぶつけてしまった。

 

「あうッ!!?イタタタ……いったい、どうしたんですか?」

 

「あ、アレはキミの友達じゃないのか?……」

 

木山先生が指を指す。

そこには、彼女の進路を塞ぐように詩音が立ちはだかっていた。

彼の纏った桜色の振り袖着が炎天の太陽に煌めく。

 

「いったい、あの子は何者なんだ……キミはここで少し待っていなさい。」

 

木山先生は初春を車内に置いて車を降りて詩音と向き合う。

 

「遅かったですね、木山先生……」

 

待ちくたびれた様子の詩音が口を開いた。

 

「どうして、私がここを通ることが分かったのだ?」

 

「コレのおかげですよ。」

 

詩音が装備しているヘッドセットを指差す。

 

「コレは、学園都市が開発したインターフェースです。ネットワークで繋がれていれば、どこにでもアクセス出来るんですよ。まあ、そんな事はどうでも良いか……木山先生、アナタをレベルアッパー拡散の容疑で拘束します。」

 

詩音が愛刀の鍔に指をかける。

 

「フン、面白い事を言うな……今の私はレベルアッパーによって齎されたチカラで、少々手強いぞ?それでもやるというのかい?」

 

「いち科学者がナメたことを言ってくれますね……?」

 

彼女の挑発的な言葉に応えるように詩音が静かに刀を抜いた。

一触即発の雰囲気に車中の初春は心配そうだ。

 

「ならば、止めてみるかい?一万の脳を統べるこの私を……」

 

「ええ、止めて上げますよ。風紀委員長の名にかけて……紅月詩音!いざ、参るッ!」

 

詩音が一気に間合いを詰めようと地面を蹴る。

一方の木山先生はゆっくりと右手を上げた。

何らかの能力なのか、それとも自然の風なのか、

強い風が吹き荒れ砂塵とともに彼女の髪を乱し、左目を赤く染めて、その顔が不吉に歪む。

一瞬だが、木山先生の恐ろしさが垣間見えたように思えた。

それでも詩音は彼女の懐を目掛けて走る。

しかし次の瞬間、木山先生の上げた右手から轟々と哮る火球が現れた。

 

「なッ!!?能力ッ!!?」

 

木山先生からのいきなりの攻撃に驚いた詩音は咄嗟に回避行動を取る。

彼の跳び退いた場所に着弾した火球は爆発し、その場を黒く焼いた。

 

「フフフ……驚いているね。」

 

木山先生は不適な笑みを浮かべている。

 

「しかし、まだ、これだけでは終わらないよ……」

 

木山先生が能力を再び行使すると、次は道路のアスファルトが波を打ったようにうねり、詩音を捕らえるために足に絡みつこうと迫ってきた。

だが、詩音は並外れたジャンプ力で垂直に飛び上がる。

 

「鍔鳴り・凱鳥ッ!」

 

詩音は宙返りをしながら十八番の飛ぶ斬撃である『凱鳥』を放ち、迫り来るアスファルトの触手を切り裂いた。

 

「驚きましたよ。木山先生は能力を使えるんですね……それも、幻とされる多重能力者(デュアルスキル)ッ!」

 

「いや、その呼称は適切ではないな。私の能力は理論上不可能とされるアレとは方式が違う…」

 

「じゃあ、いったい何なんですか?」

 

「ならば、少しばかり、科学について教鞭を振るってやろう。だが、私も忙しい……今のキミは私に取って邪魔そのものだ。攻撃の手は緩めるつもりは無いのでそのつもりで……」

 

「望むところです……♪」

 

詩音から笑みがこぼれる。

久々に味わう命の駆け引きに心が踊っているからだ。

 

「そもそもにおいて、幻想御手とは使用者の能力を引き上げる物ではない…………」

 

彼女の言うとおり、詩音に対する木山先生の攻撃は苛烈を極めた。

水流を操り、無数の風刃を撃ち出す。

そして、隙あらば磁力を使い、周囲の鉄製の物を詩音に差し向けた。

だが、一方の詩音も負けてはいない。

木山先生の攻撃を避けて、往なして立ち回る。

 

「能力の強度レベルが上がる原理についてだが、同じ脳波のネットワークに取り込むこまれる事で一時的に能力の幅と演算領域が拡大されているに過ぎない。」

 

「と言うことは、実際には、使用者のレベル事態が上がっているわけじゃなくて、ただ単に底上げされているだけ……」

 

「そうだ……一人の能力者の力が弱くとも、ネットワーク内で一体化する事で能力の処理能力が向上し、更に同系統の能力者同士の思考パターンが共有される事により効果的に能力を扱えるようになるんだ。私的には『多才能力者(マルチスキル)』と呼んで貰いたい。」

 

次の瞬間、詩音の足下が崩落する。

 

「おわッ!!?」

 

詩音は高架橋から10mほど下の地面に落下した。

しかし、詩音は高架橋を支える鉄筋コンクリート製の太い柱に愛刀を突き立て、落下スピードを落とし無事に着地する。

普通なら折れてしまう事をしても、この『絶影』なら大丈夫のようだ。

 

「やれやれ、往生際の悪いなキミは……素直にここらで、やられて貰うと嬉しいんだが………」

 

呆れた様子の木山先生がため息を付きながら、高架橋からゆっくりと降りてきた。

 

「そうもいかないですよ。一応、僕はジャッジメントで、頭を張ってるんでね……」

 

「ほう、単なる都市伝説かと思っていたが、本当に風紀委員長というモノが存在していたとは……」

 

「あ、この事は秘密で♪……」

 

茶目っ気たっぷりに、詩音がはにかむ。

 

「さて、カラダも温まってきたし、そろそろ僕も本気を出してみようかな?」

 

「何だい?キミはまだ、本気を出していないと……」

 

「ええ…まだ、三割も出してないですよ♪」

 

詩音は笑顔で答えた。

 

「フ、ナメられたものだな……」

 

木山先生は、空気中の水分を操作し、水摘の弾丸を作り出してマシンガンのように発射した。

 

「さすが、マルチスキル!何でもアリですね……だけど、遅い……遅すぎる!縮地・影縫!」

 

詩音は華麗なステップで嵐のような攻撃を避けて回る。

 

「なぜだ……これだけの攻撃が当たらないッ!!?」

 

木山先生も次第に焦りの色が出てきた。

これ以上、詩音に時間を掛けるとアンチスキルが到着してしまうからだ。

 

「焦ってますね?木山先生……なら、さらに先生の動揺を誘ってみようかな?」

 

「どういう事だ……キミはいったい何が言いたい?!」

 

「木山先生がこんな事をした根幹には、あの実験があったんでしょう?」

 

「ッ!!?どうして、それを……」

 

詩音の言うとおりに木山先生が動揺する。

詩音はそんな彼女を見てにやけていた。

 

「僕は風紀委員長であり、半分は暗部(アチラ)側の人間ですから、このくらいは知っておいて当然ですよ。『暴走能力の法則解析用誘爆実験』とか………」

 

「キ、キミは、いったい、どこまで知っているんだ?」

 

木山先生の脳裏に実験の被験者となった教え子の笑顔が浮かぶ。

 

「どこから、話します?被験者になった子たちの生体情報(バイオメトリクス)からでも話しましょうか?」

 

「や、やめろォォォーーッ!」

 

木山先生は激昂する。

次の瞬間、彼女はゴミ箱から大量の空き缶を空中にばらまいた。

詩音は、この時、すぐに感づく。

これは『虚空爆破(グラビトン)事件』の時に使用された能力『量子変速(シンクロトン)』だと……

 

「絶技、爆爪閃裂撃ッ!!!」

 

詩音が絶技を放つ。

その瞬間に空き缶が連鎖的に爆発を起こした。

凄まじい爆音が鳴り響き、高熱が周囲を焼き尽くす。

常人では生きていようがない状況だったが、なんと舞い上がった、粉塵の中から無傷の詩音が姿を現したのだ。

 

「いったい、キミは何で出来ているんだッ!!?」

 

恐怖を感じた木山先生は、思わず後ろに下がる。

その隙を詩音は見逃さなかった。

木山先生が気づいた時には、詩音はすでに彼女の懐に潜り込んでいた。

 

「もらったァァッ!」

 

瞬時的に愛刀を持ち変えた詩音は峰打ちを繰り出す。

 

「ガハッ!!?」

 

木山先生の腹部に刀の峰が食い込む。

彼女は激痛が走る腹部を利き手で押さえ、数歩下がってその場に方膝を着いた。

 

「さあ、これで終わりですね。」

 

詩音はポケットから手錠を取り出す。

満身創痍の木山先生だったが、その瞳には未だに闘志が宿っていた。

 

「まだだ……まだ、終わっていない………あんな悲劇、二度と繰り返させはしない!そのためなら、私は何だってする!この街の全てを敵に回しても、止める訳にはいかないんだぁぁぁーーッ!!!」

 

木山先生が叫んだ時だった。

尋常ではない頭痛が彼女を襲う。

 

「ぎッ!!!あぁぁぁぁーーッ!!!」

 

「えッ!!?ちょ、ちょっと……ッ?!!」

 

詩音もあまりの事に驚き木山先生を気に掛ける。

 

「がッ…ぐ……ネットワークの暴走ッ!!?いや、これは…『AIM(虚数学区)』の…………ッ!!!」

 

木山先生が倒れると同時に、詩音の前に得たいの知れないモノが現れた。

 

「何だ、アレは……ッ!!?」

 

「〰〰Giovsduobvnrwuーーッ!!!」

 

得体の知れない何かが、けたたましい叫び声を上げる。

 

次回に続く。

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