とある科学の刀剣使い(ソードダンサー)   作:御劔太郎

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第2話 刀剣使い(ソードダンサー) 後編

昼過ぎ、とあるファミレスにて…

只今、御坂美琴と白井黒子の二人はお茶をしながら、誰かを待っていた。

 

「……ふぅ、え?私のファン?」

 

「ええ……ジャッジメント第一七七支部でワタクシのバックアップを担当している娘ですわ。是非、一度お姉様にお会いしてお話しがしたいと事あるごとに…」

 

「はあ………」

 

彼女の言葉を聞いて、「またか……」と深い溜め息を吐く美琴。

 

「もちろん、お姉様が常日頃ファンの子達の無礼な振る舞いに閉口しているのは存じておりますが、初春は分別を弁えた大人しい子…それに、ワタクシが認めた数少ない友人でもありますの。ここは、黒子の顔を立てると思って……」

 

そう言いながら、黒子は自分の手帳を捲っている。

 

「それに、お姉様のストレスを最小限に抑えるべく、今日の予定はワタクシが……って、お姉様ッ!!?」

 

野性的な感か、何かを感じ取った美琴が彼女から手帳を素早く取り上げた。

手帳の表紙には、赤ペンで“マル秘”の文字が……

取り返そうと必死になる白井さんを左手で押さえながら、美琴は手帳の中身を読み始める。

 

「"初春を口実にしたお姉様との『イチャイチャデート』大作戦!"ねぇ……」

 

自身で考えた作戦名を聞いた黒子は冷や汗が止まらない。

 

「なになに~?」

 

その一 ファミレスで親睦を深める。

その二 ランジェリーショップで下着(最終決戦使用)を購入。

その三 アロマショップでソッコー性・蒸散性バツグンの媚薬を秘密裏に購入。

その四 初春駆除ッ!

その五 ホテルにGoッ( ´艸`)

 

「つまりは何? その分別を弁えた大人しい子をダシにして自分の変態願望を叶えようと?……聞いてるだけで凄んげぇーストレスなんですけど~ッ!!?」

 

お仕置きと言わんばかりに美琴は後輩である黒子の頬を抓って引っ張る。

引っ張られる彼女も何を言っているのか分からないが、美琴に謝罪しているのだろう。

たぶん……

やがて、握力の切れた美琴は彼女を解放する。

 

「……まあでも、黒子の友達じゃあ、しょうがないか……」

 

半ば諦めた美琴が、渋々了承した次の瞬間……

 

「おっ…ねえさま~~ッ!!!」

 

「なッ!!?……」

 

「お姉様がそんなにも黒子のことをお思いになってくださっていたなんて黒子は!黒子はもうどうにかなってしまいそうですの!」

 

「この! 離れなさいっての……!」

 

黒子が美琴の膝の上にテレポートし、周囲の迷惑など完全に無視した大音量で騒ぎ出す。

窓の外には丁度、話題に上がっていた初春と今朝方に出会った黒い長髪の少年。

それと、やたら疲れきっている佐天がいて………

 

「あ、あの、お客様? ほかのお客様のご迷惑になりますので……」

 

そして店員もおり、注意された。

 

ゴィィン…ッ!!

 

「うぅ……というわけで、改めて紹介いたしますの。こちら柵川中学一年、『初春飾利』さんですの…」

 

視点変えの効果音に頭を使われた黒子は頭をさすりつつ、ホストとしての役割を全うするべく初春を紹介する。

紹介を承けた彼女も美琴を前に緊張でもしているのか、いつも以上に背筋がピンとしていた。

 

「は、はじめまして。初春飾利です////」

 

「で。えーと、そちらが……」

 

「初春と同じクラスの『佐天涙子』で~す。何でか知らないけど着いて来ちゃいました~ちなみに能力値はレベル0で~~す!」

 

佐天はワザとらしい棒読み調で美琴に自己紹介をする。

 

「後は僕だね。改めて、僕は『紅月詩音』。白井さん、初春さんと同じ支部でチームを組んでます。それにこちらの二人とはクラスメートです。」

 

「初春さんに佐天さん、それに詩音ね。私は『御坂美琴』、よろしくね♪」

 

「では、お互いの紹介もつつがなく終わりましたし、少々予定が狂ってしまいましたが、ここからはワタクシが………!」

 

ゴィィン…ッ!

本日、2発目が着弾。

 

「あうぅぅー………」

 

「まあ、こんな所で立ち話もなんだから、取り敢えず、ゲーセンでも行こっか♪」

 

五人は第七学区の繁華街に向かい歩き出した。

 

「案外、御坂さんって、親しみやすそうな人で良かったね、佐天さん……」

 

詩音がお嬢さま嫌いの佐天に話し掛けるが、「う~ん……」と、彼女はイマイチ美琴に好感を持てていなかった。

 

「ところで、初春はさっきから何のチラシを見ているの?」

 

「ああ……これですか?さっき、貰ったんです。何でもこの近くの広場でクレープ屋さんがお店を開いているみたいですよ。」

 

「本当ッ?!!」

 

クレープ屋の話しを聞いて、詩音の目つきが変わる。

そう、彼はボールいっぱいの生クリームをペロリと食べてしまうくらいの無類の甘党なのだ。

 

「他にも、先着100名には“ゲコ太”マスコットをプレゼントですって。」

 

「ゲコ太マスコット~?」

 

佐天は初春の持つチラシを横から見た。

そこには、口元にチョビ髭を生やした紳士(ジェントルマン)風のカエルのマスコットをあしらったストラップのイラストが描かれている。

 

「何?このヤッスいキャラ…?」

 

「ですよね~。今時、こんなの…って御坂さんッ?!!」

 

いつの間にか、美琴が食い入るようにチラシの……正確には、チラシに載っているゲコ太マスコットを見ている。

 

ちょっと、彼女の目がコワい……

 

「あら~?もしかして、お姉様ったら、そのゲコ太マスコットに興味があるんですの?…」

 

さっきのゲンコツの意趣返しと言わんばかりに黒子がツッコミを入れてくる。

 

「ッ////全く、何を言ってんの!カエルよ?両生類よ?今時、そんな物貰って喜ぶヤツなんて……」

 

美琴は必死にゲコ太好きを否定し、取り繕うとするが何の説得力もない。

なぜなら、彼女の持つ学生カバンからノーマル型のゲコ太ストラップが全身をさらけ出していたのだ。

 

「ぷ(*≧m≦*)ッ!」

 

美琴をからかった黒子は当てつけのように吹き出す。

それは見ていた柵川中の三人はやれやれと言った感じだった。

そうこうしている内に五人は広場にオープンしているクレープ屋にやってきた。

 

「凄い数……」

 

「子供ばっかりですわね……」

 

「タイミングが悪かったんですよ。」

 

「では、ワタクシと初春でベンチを確保しときますわ。」

 

「佐天さん、私たちのクレープ、お願いしてますね。」

 

「お金は後から払いますので~~!」

 

そう言って初春と黒子の二人はベンチの確保に向かった。

 

「ちょ、ちょっと……」

 

佐天は二人を呼び止めようとしたが、聞こえていないのか彼女の声に振り返ることはなかった。

助けを求めることに失敗した彼女は軽く嘆息し、残った美琴と詩音らとクレープ屋の列に並ぶ。

順番は佐天、美琴、詩音の順だ。

 

「あの…良ければ、変わりましょうか?…」

 

佐天がおそるおそる、美琴に話し掛ける。

その理由としては、腕を組み、指を叩き、脚でリズムを小刻みに刻むの美琴の姿にあった。

親の仇でも見るかのように前方の列を睨んでは刻むリズムのテンポを上げている。

彼女の言葉に美琴の表情がパアっと一瞬だけ明るくなるが、すぐに強がり、ソッポを向いた。

 

「わーい!ゲコ太ゲットー!」

 

「私もーー!」

 

しかし、どんなに強がっていても、列のすぐ脇を通っていく子供たちからは目を離すことが出来ない美琴である。

 

「早く、ゲコ太ストラップ貰えると良いですね?」

 

小学生低学年と同等の感性を持つ美琴を弄ることに目覚めてしまった詩音が、発破をかけるように彼女をからかう。

 

「本当に待ち遠しいわ…って、違うわよ!いきなり、アンタは何を言わせるの!私はクレープさえ買えれば良いのよ////」

 

そんな詩音の気持ちを分かっていない美琴は、案の定、彼の思った通りの反応を見せた。

 

「まあまあ、次、御坂さんの番ですよ?」

 

詩音の言うとおり、佐天がすでにゲコ太ストラップを店員さんから貰っている。

 

「はい、これが最後ですよ♪」

 

この一言がマズかった…

空は青くて、嫌でもソロソロ夏だなぁと感じさせるくらいの気温、広場の噴水も涼しげでいい感じ……

 

なんだけど………

 

「はああぁ~~~」

 

そんな、落ち込む要素の欠片も無いような空間で 四つん這いでダークサイドに今にも落ちそうなくらいにうつむいて深いため息をつく美琴がいた。

 

「まさか、あのゲコ太っていうカエルのストラップでこんなになっちゃうとは……」

 

「効く人には効くんだね。恐るべしゲコ太パワーってところかな?」

 

そんな彼女を見かねた佐天は、優しくストラップを美琴に差し出した。

 

「えッ?!!良いのッ?!!」

 

「ええ…どうぞ……。」

 

「ありがとーーッ!!!!!!」

 

先ほどまでの落ち込みからウソのように立ち直った美琴は彼女からゲコ太ストラップを受け取る。

その後、クレープも予定どおりに買った美琴は足取りも軽く初春たちが、確保していたベンチに向かった。

 

「(^з^)~~♪♪」

 

「ハム、ムグムグ……」

 

詩音たち柵川中の三人は仲良くベンチ座り、クレープを頬張っている。

一方、美琴は黒子に追い回されていた。

 

「いかかです?ワタクシのも一口……ッ!」

 

「絶対に嫌ッ!!!何よ!トッピングに生クリームと納豆って、アンタの舌おかしいんじゃないッ?!!」

 

「あぁん、お姉様のイケず~ッ!」

 

「本当に仲が良いいよね、あの二人……」

 

「確かに……先輩、後輩の間柄じゃないみたい。」

 

「あ、だけど、さすがに白井さんのトッピングは有り得ないかな?御坂さんの気持ちが分からないでもないよ。そもそも、甘いクレープに納豆って、甘党の僕にしては、クレープへの冒涜だと言っても過言でもないよ……」

 

「それ、詩音くんも言えた義理なの?トッピング、生クリームだけって……しかしもメガ盛り……見ているだけで胃もたれしそう。」

 

佐天の冷ややかなツッコミに驚く詩音であった。

 

「えッ?おいしいのに~。」

 

「それでどうでした?佐天さん……御坂さんは?」

 

「う~~ん……お嬢さまっぽくなくて、意外にも接しやすかったかも……」

 

「だったら、佐天さんを連れて来て良かったです。」

 

初春と佐天はお互いに笑顔を浮かべた。

そんな二人の会話を隔てるように詩音が口を挟む。

 

「ん?ねえ、二人とも……」

 

「どうかしたんですか?紅月くん………」

 

「あの、銀行……こんな真っ昼間から防犯シャッターを降ろして、なんか怪しくない?」

 

詩音がそんな事を言った瞬間、銀行の防犯シャッターが爆発した。

 

「えッ?!!いったい何ッ?!!爆発ッ?!!」

 

佐天は軽いパニックに陥っている。

 

「落ち着いて、佐天さん!大丈夫だよッ!白井さんッ!」

 

「ええ、了解ですのッ!!!初春はアンチスキルに連絡と怪我人の有無の確認をッ!」

 

「はい!分かりました!」

 

「それから……」

 

「黒子、私も……ッ!」

 

「いいえ…学園都市の治安維持はワタクシたちジャッジメントのお仕事…お姉様はそこでお行儀良く待っていて下さいな。行きますわよ、詩音さん!」

 

「了解!」

 

詩音と黒子はジャッジメントの腕章を着けると現場に急いだ。

 

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そして、風紀委員として銀行に向かった黒子と詩音は三人組の強盗犯と対峙する。

 

「風紀委員(ジャッジメント)ですのッ!器物損壊および強盗の現行犯で拘束しますのッ!どうぞお縄に…!」

 

彼女の言葉に強盗犯たちは驚くが、直ぐに二人のことを小バカにするように笑い出した。

 

「ぎゃははははッ!どんな奴が来たかと思えば、ジャッジメントも人手不足だなぁッ!」

 

彼らの態度に黒子と詩音は思わずムッと腹を立てる。

 

「そこをどきな。お嬢ちゃん……」

 

三人の中でも一番の体格を持った男が黒子の前に立ちはだかった。

 

「早くどかないと、ケガしちゃうぜーッ!」

 

男が黒子に襲い掛かろうと手を伸ばすが、彼女は強盗犯を簡単にあしらい倒してしまう。

 

「はあ……そういう三下な台詞(セリフ)は死亡フラグですわよ?って、もう聞いていませんわね……」

 

黒子は、倒した男を見ながらカッコ良く決め台詞を言う。

 

「野郎ッ!ナメやがって!!!!!!」

 

リーダー格の男の手のひらに轟々と炎が揺らめく。

どうやら発火能力者(パイロキネシスト) のようだ。

 

「フン!どうだ、ビビったろ!」

 

自慢気に自身の炎を詩音に見せつける。

 

「……別に~全っ然、コワくないよ……」

 

「何ッ!!?こんのォォ……!消し炭になんなーッ!!!」

 

男が燃え盛る炎を詩音に投げつけるが、詩音は消えるように向かって来る炎を易々と回避した。

最初、詩音がいた場所に着弾した火炎弾が爆発、周囲数mを焼き尽くす。

 

「き、消えたッ!!?」

 

男は驚愕した。

 

「えッ、何ッ?!!詩音も黒子と同じテレポーターなのッ?」

 

離れた場所から見ていた美琴たちも驚いている。

 

「い、いいえ…紅月くんはレベル0の無能力者ですよ?」

 

「そうですよ。私と初春は、彼にシステムスキャンの結果を見せて貰いましたし……」

 

「で、でも、あの動きはむちゃくちゃよ……」

 

一方、詩音は鼻歌混じりに攻撃を避けながら、男を翻弄していた。

 

「な、何で当たんねえだよッ?!!」

 

「アハハハ!教えて上げよか?これは『縮地』っていう歩行術だよ。初速から最高速まで加速して相手の間合いを侵略する幻の体技……!まあ、これでも本気じゃないけど……ねっ!」

 

次の瞬間、男は勢い良く仰向けに倒される。

 

「あぐ…ッ!!!」

 

詩音が目にも止まらぬ速さで男に肉薄し、足払いを掛けたのだ。

時間にして二秒もかかっていない。

その身体能力は、まさに人間離れしていた。

痛みに耐えながら、尚も抵抗しようと男が起き上がろうとする。

 

「へえ~まだ、抵抗する気ですか?見上げた根性ですね。でも、そこまでですよ?強盗のお兄さん?それ以上、動いたら………」

 

男の首筋に“絶影”の冷たい刃が当てられる。

 

「ひぃッ!!?……」

 

「これ以上の抵抗は………分かるよね?」

 

「ま、参った……」

 

詩音はレベル0ながら、レベル3に匹敵する強盗を難なく無力化してみせた。

 

「はい、二人目~♪」

 

また、残った強盗は黒子と詩音のタッグに恐れを成して、どさくさに紛れてその場から逃げ出していた。

 

「全く、今日はツいてねえ!デクとアニキには悪いが、三十六計逃げるに如かずだ。」

 

男は周到に用意していた車に向かって走り、急いで乗り込むとエンジンを掛けた。

そして、一気にアクセルを踏み込み車を急発進させその場から逃げようする。

 

「アイツ!仲間を見捨てて逃げる気ッ!!?」

 

それを見ていた美琴はポケットから一枚のコインを取り出し狙いを定めると、青白い電撃に乗せフルパワーでコインを撃ち出した。

10億ボルトという超高圧電流から生じた強力な磁力によって誘導されたコインは一条の光となって車を薙払う。

 

しかし、ここで予想外の出来事が起きてしまった。

彼女の放った超電磁砲(レールガン) の衝撃波に煽られ、天高く舞い上がった車が初春と佐天が見守る歩道に回転しながら落ちてきたのだ。

 

「し、しまった!」

 

思いがけない展開に焦る美琴……

 

「お姉様、何をやっていますの!」

 

黒子もアワアワとしている。

パニックになって「「わああぁぁーーッ!」」と叫びながら、その場を右往左往する初春と佐天の二人。

しかし、その中で詩音だけが落ち着いていた。

 

「『縮地・影縫い』!」

 

詩音は、先ほどとは比べものにならない位の超スピードで初春たちのもとに移動した。

 

「……ったく、はた迷惑なレベル5だ……」

 

そう言いながら持っていた絶影を鞘からゆっくりとぬいた。

夏の日差し晒された刀の刃が怪しく光る。

 

「えッ?!!いつの間にッ?!!って、早く逃げなさい!」

 

美琴はいつの間にか車の落下地点に移動していた詩音に向かって逃げるように叫んだ。

だが、当の本人は逃げるどころか深呼吸をして心を落ち着けている。

 

そう、精神統一をしているのだ。

 

そして、落下してくる車に向かって絶影を下から上へと軽く優雅に振り上げた。

次の瞬間、『ギンッ!』と聞いたことない大きな音ともに車が前と後ろで真っ二つになり、詩音たちの後方に勢いよく転がったのだ。

あまりのことに車中の強盗はショックで泡を吹いて気を失っていた。

 

「……また、つまらない物を斬ってしまった。」

 

「た、助かったのかな………」

 

「た、たぶん……」

 

周りが唖然としている中でも詩音だけは凛としている。

その後、初春の通報により駆けつけたアンチスキルにより強盗犯たちは連行されていった。

 

しかし、事件現場となった銀行前の通りは凄まじいことになっていた。

美琴の超電磁砲(レールガン)によってごっそりと抉られた道路……

詩音の放った一撃によって真っ二つになり歩道を越えて公園内に転がるスクラップの乗用車とその残骸……

当時、駆けつけたアンチスキルの隊長『黄泉川愛穂』はこう思ったのだという。

 

「ここは、戦場かい!」

 

と………

 

次回に続く。

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