とある科学の刀剣使い(ソードダンサー)   作:御劔太郎

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第21話 詩音の過去

支部を後にした詩音は、その足で第十学区の中でもトップクラスに治安の悪いストレンジと言われる地域に向かう。

しかし、そこに着いた時には空は茜いろに染まっていた。

 

副委員長であるつかさから、ビッグスパイダーが根城にしている場所を電話で教えてもらっていた詩音が、そこで見たモノは白目を向き伸びている数人のビッグスパイダーのメンバーと、それを一人でやったと思われる男、美琴と黒子、それに固法だった。

 

「久しぶりだな……美緯。」

 

「先輩、生きていたんですね……」

 

「みたいだな。」

 

飄々とした受け答えをする男。

この流れに着いていけない美琴と黒子は、お互いに首を傾げ戸惑っている。

この時すでに色々と知っていた詩音は、ことの成り行きを見守っていた。

 

「何で!何でッ!!?何の連絡もなかったんですッ!!?私!てっきり……」

 

固法は感情的になる。

彼女と話す男が、固法の右腕に付けてあるジャッジメントの腕章に気づいた。

咄嗟に固法は左手で隠す。

そんな彼女に男は一言「安心しろ、すぐに消える。」とだけ言って立ち去って行った。

 

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数日後、いつものファミレスに集まった、詩音たちいつものメンバー。

 

「固法先輩が黒妻と知り合いッ!!?」

 

佐天が回りを気にせずに大きな声を出す。

 

「はっきりとしたことは言ってないんだけど……」

 

あの場にいた一人、美琴が佐天と初春に説明した。

 

「でも、黒妻って言ったら……」

 

「ビッグスパイダーのボスですよね?」

 

「ぅん……そうなんだけど……」

 

「そんな黒妻と固法先輩がどうしてッ!!?」

 

「寄って掛かって女の子を襲っちゃうヤツとッ!!?」

 

次第にヒートアップする佐天と初春……

 

「だからね?その黒妻じゃないの。えっ、えっと…………」

 

そんな二人に美琴は、ほとほと困り果ててしまう。

一方の黒子は、この件に着いては無関心のようで、紅茶を啜っていた。

詩音も同じようにお気に入りのバケツパフェを頬張っている。

 

「ちょっと黒子も説明しなさいよ!詩音、アンタも!」

 

「縁は異なモノ、味なモノ……ワタクシ、この事に着いては静観させていただきますわ。」

 

「僕も白井さんに賛成だね。人の過去に兎や角口を挟む筋合いはないし………」

 

「あーーん!気になるーーッ!モヤモヤするーーッ!」

 

固法と黒妻の関係がいまいち整理できない佐天は、自身の頭をガシガシとかきむしり、身悶えた。

そして次に彼女が取ろうとした行動は、固法のモトに押し掛けた上で、直接話しを聞くと言うのだ。

 

「ルイコのその芸能レポーター並みの行動力が羨ましいよ……」

 

詩音が苦笑いを浮かべる。

 

「だって気になるじゃん!固法先輩と黒妻の関係!」

 

「そうかな~?」

 

「そうだよ!」

 

「それが……先輩、数日支部には顔を出していないんです。」

 

佐天のやる気に水を差すように初春が固法の現状を話した。

 

「え?」

 

「そうなの?」

 

「こりゃあ、ケッコー重症みたいだね……」

 

佐天と美琴、詩音もこの事は初耳だったらしい。

 

「ケータイにも連絡するんですが、繋がらなくて……例の能力者狩りだって、まだ解決してないのに……」

 

「むしろ、問題はそっちですわね?気を揉んでいても始まりませんし、この際足を運んだ方が……」

 

「足を運ぶってどこに?………」

 

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五人は固法に話しを聞くために、なんと彼女が住んでいる寮へとやって来た。

連絡もなく、支部には顔を出していないので、一番考えられる居場所だったからだ。

寮の呼び鈴を鳴らすと、中から返事があり扉が開く。

顔を出したのは固法ではなく、違う女性だった。

 

「あ、あの……こちらは固法美緯先輩のお部屋です……よね……?」

 

美琴が出てきた彼女に聞く。

 

「ああ、美緯の後輩?ゴメンね。今、アイツ出掛けているの……」

 

「そうですか……」

 

「あー、黒妻の事が聞きたいのに。」

 

がっかりする佐天。

しかし、対応しているルームメイトの彼女は“黒妻”の名を聞いて少し顔色を変えた。

どうらや、その名前の人物を知っているようだ。

 

「仕方ないですよ……」

 

「そうだね……これ以上はこの人に迷惑だから……」

 

初春と詩音が、佐天をフォローする。

 

「分かりました。また出直します。失礼しました。」

 

美琴たちは頭を下げて、帰ろうとした。

だが女性は五人を引き留め、中に招き入れる。

 

「ったく……あの子って来たら、後輩にまで迷惑掛けちゃって……」

 

彼女は五人に麦茶を汲みながら、固法に呆れていた。

出された麦茶を五人が、飲み始めるとそれに合わせてルームメイトの彼女が口を開いた。

 

「黒妻が帰ってきたのね?」

 

その言葉を聞いた五人は飲むのを止める。

 

「まさか、生きていたとはね……」

 

美琴が立ち上がった。

 

「黒妻をご存知なんですか?」

 

「固法先輩と黒妻の関係って……ッ!!?」

 

さらに佐天が続いて立ち上がり、彼女に迫る。

詩音と黒子は、終始落ち着いた様子で、初春はポカーンと成り行きを見ていた。

 

「ま、まあ、ちょっと二人とも落ち着いて……まずはそっちの話しから聞かせて………」

 

彼女は五人から色々と聞いた。

今の固法の状態や、数日前の夕方にストレンジであったことなど……

 

「そっか……どおりでね。」

 

「それで、固法先輩はどうして黒妻の事を知っているんですか?前に黒妻を捕まえた事があるとか?」

 

美琴の質問に彼女は笑顔で答える。

 

「違う違う。美緯はね?昔、ビッグスパイダーのメンバーだったの……」

 

「「「「えぇぇーーッ!!!!!!!」」」」

 

詩音以外の四人が驚いた。

静観すると決め込んでいた黒子までもだ。

 

「あ、あり得ない!いくら何でもそれはない!」

 

「だって先輩はジャッジメントなんですよッ!!?」

 

初春までも興奮する。

 

「ああ見えて、昔はヤンチャだったのよ。」

 

「ヤンチャって……」

 

「御坂さん、人にはそれぞれの過去があるんだし、僕たちが首を突っ込む事ではないよ。」

 

「詩音さんの言う通りですわ、お姉さま……しかし、仮にも固法先輩はレベル3の能力者……いくらでも寄り道はあったでしょうに……なぜ、よりにも寄って無能力の集団であるスキルアウトとなんかと?」

 

「アナタにはない?能力の壁にぶつかった事?それをなかなか越えられなくて、暗い気持ちをもて余した事……」

 

佐天は彼女の言葉を聞いて、以前の自分を思い出していた。

 

「あの頃の美緯も同じように居場所がないって感じだった。そんな時、彼らが輝いて見えたの……疎外感、自分探し、学園都市にいる時に誰でも掛かる麻疹のようなモノに、あの頃の美緯は掛かっていたのかも……」

 

ルームメイトは固法の過去の話しを終える。

彼女の昔話を聞いた詩音たちは納得したかに思えた。

ある一人を除いて……

 

「でも、麻疹に掛かるのは一度だけです。」

 

美琴だった。

 

「お姉さま……?」

 

黒子は顔色を伺う。

 

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その後、詩音たちは固法の寮を後にして、帰り道を歩いていた。

そんな中で美琴が歩を止める。

 

「分からない……」

 

「一体、どうしたんですか?御坂さん?」

 

詩音が聞く。

 

「固法先輩がスキルアウトだったのもショックだけど、だからって、何でジャッジメントを休んでいるの?関係ないじゃない!」

 

「まだ、そんな事を引きずっているんですか?」

 

「そんな事じゃないわよ!だいたい昔は昔!今先輩はジャッジメントを頑張っているんだし、私たちに優しくて、たまには厳しくて、頼もしい……そんな先輩が好きなのに何で今さら……!」

 

美琴は怒っていた。

固法の不甲斐なさに対してだろう。

そんな美琴に佐天が口を開き、説くように話し始めた。

 

「そんな簡単に割り切れ無いんじゃないかな?過去の自分があって、今の自分があるわけだし、それにその過去が特別なモノだとしたら、なおさら…………」

 

佐天の説法にも似た話しに詩音たちは聞き入っている。

 

「って……え、と、べ、別に御坂さんに反対しているわけでは……」

 

「んーーやっぱり、分からないよ。」

 

「んまあ、要するにルイコが御坂さんに言いたかった事は、もっと大人になれって事だよね?」

 

「いやいや!違う違うッ!!?そんな事は全然言ってない!」

 

「え?違うの?」

 

「違うよ!」

 

「アンタって奴は……何回、私をバカにすれば……ッ!」

 

美琴の体に青白い電流が流れ始めた。

慌てて、黒子と初春が止めに入る。

 

「お姉さま!落ち着いて下さい!」

 

「そうですよ!紅月くんも面白がってるでしょう!」

 

そんなこんなで何とか美琴の放電を押さえる事が出来た。

再び、五人は歩き出す。

 

「ねえ、御坂さん?」

 

「なによ……」

 

「支部に着くまでには、もうちょっと時間が掛かる事だし、僕の昔話でも聞いてみない?」

 

「アンタの昔話?」

 

「そう?正確には僕の先祖の話……」

 

「面白そうね?興味があるわ。話してみなさい。」

 

「じゃあ……最初に言って置きますね?僕はレベル0だけど、先祖の記憶を受け継いでいるんだ。特異体質みたいモノと思ってくれて構わない。」

 

「分かった。」

 

支部までの道のりを歩きながら、詩音は先祖の昔話を始めた。

 

「今から話すのは、遠い過去、江戸時代中期に生きていた二代目の話しさ………その時代は理不尽に溢れていた。悪事を働き、己の懐を肥やそうする役人、その役人に手を貸す悪党に商人、その役人や悪党たちのエサにされる町民……色々いたっけな。」

 

「役人と悪党が手を組んだりしたら、公正に裁く事が出来ないではないですの!」

 

「そうさ……それどころか、エサにされた者は骨の髄まで吸われ、挙げ句の果てには、斬り捨てられる。」

 

「ひどい……」

 

「どうにも出来ないじゃない。」

 

「そうだね。ルイコの言う通りだよ……あの頃の時代は弱肉強食って言葉良く合っていたね。」

 

「それで、その話とアンタは何か関係あるの?」

 

「まあ、ここからが良いところ。僕の家は代々将軍家に使える由緒正しい旗本だったんだ。」

 

「旗本って?」

 

「将軍の出席するイベントに参加できる権利を持っていて、世間からは殿様って呼ばれる位の高いお侍さんの事だよ。」

 

「って事は詩音くんは殿様なのッ!!?」

 

「次期ね……今は父さんが家督は持ってるけど、将来は僕が継ぐことになっている。ルイコは僕のお姫様になるんだよ。」

 

「佐天さん!玉の輿!玉の輿ですよ!私の願望の最終形態を叶えるなんてぇぇへへへへ………」

 

初春がトリップし始めた。

 

「初春!どうしたのッ!!?戻って来て!」

 

「もうダメみたいですわよ、佐天さん?まあ、しばらくすれば帰ってくると思いますわ。」

 

「だから、殿様であるアンタのご先祖と虐げられる町民に何の関係があるの?」

 

「まさか、アナタのご先祖も悪事をッ!!?」

 

「違う違う。二代目には裏家業として理不尽に虐げられた町民の恨みを金で買って、その恨みを晴らしていたんだ。」

 

「人の命をッ!!?」

 

「お金で買って恨みを晴らす……」

 

「信じられませんわ……しかし、そういった事は許されるはずないですの!」

 

「だけど、現に当時はたくさん居たんだよ。恨みを晴らしたい者、それを代わって晴らす者。二代目の他にも表の顔は町役人、町民、中には元お坊さんって人も居たね。十人十色それぞれの殺し技がある。ちなみに僕のご先祖の二代目はスレ違い様に的の首を跳ねるんだ。」

 

「うっ……」

 

「大丈夫ですか?佐天さん……」

 

「戻って来たんだ?初春さん……」

 

「え、まあ……」

 

「それでどこまで話ったけ?……あ、そうそう、二代目の殺し技でしたね。」

 

「アンタにはその二代目の記憶を持っている。一体、何人を切ってきたの?」

 

「さあ、切った悪党の数なんて覚えてませんよ……奴らはどこからでも湧いて出でくる。ムシのようにね……」

 

「その……裏家業の料金とかって……」

 

「金の重さは気にしていない。僕たちは恨みの重さで仕事をする。きちんと詮議……下調べをしてから、闇夜に紛れてね……」

 

詩音の話を聞いている内に、五人は支部入っている建物の前までやって来ていた。

 

「着いちゃったね。僕はもう帰るから……」

 

「詩音くん!」

 

佐天が詩音を呼び止める。

 

「ルイコ?こんな僕だけど、これからもよろしくね?」

 

詩音はそれ以上は語らず、四人のもとを去って行った。

 

次回に続く。

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