とある科学の刀剣使い(ソードダンサー)   作:御劔太郎

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第24話 あすなろ園 後編

作戦決行の日が来た。

あすなろ園にボランティアとして詩音たちが集まる。

 

「今日一日、皆さんと一緒に遊んでくれるお姉さんとお兄さんです。」

 

「「「「よろしくお願いしまーーーす!」」」」

 

詩音たちは一通り挨拶を済ませた。

 

「偉いですね。先生の生徒さん……自分から進んでボランティアなんて……」

 

「え、えぇ……本当に……私自身、感心しています。」

 

「ダイゴせんせー!遊ぼうー!」

 

「ハイハイ。」

 

子供たちに呼ばれ、大圄先生が寮監のもとから離れる。

その隙に寮監は、黒子を掻っ払った。

 

「で……この先どうすれば良いのだ?白井?」

 

「ご安心下さい、寮監様……どうか大船に乗って気持ちで、この黒子にお任せ下さい。」

 

耳打ちで寮監と話した後、作戦が開始される。

 

「では、早速作戦を開始致しますわよ!」

 

「「うん!」」

 

気合い十分の佐天と初春が首肯く。

一方の寮監は、作戦を知らされていないため、どう反応して良いのか分からない。

詩音と美琴に至っては、完全に蚊帳の外だ。

黒子から唯一与えられた二人の任務は、彼女の建てた作戦の最大の障害となる子供たちの相手をしてもらうことだった。

 

「作戦って……?」

 

寮監が美琴と詩音に聞く。

 

「さ、さあ……?」

 

「僕と御坂さんには何の情報も貰って無いので………」

 

「そうなのか………」

 

その後、寮監は佐天に連れられて、厨房に向かった。

 

「寮監さん、厨房に連れて行って来ましたよ。」

 

「これで作戦の第一段階は終了しました。後は…………」

 

黒子が外を見ると、初春が大圄先生の手を引き、厨房へ連れて行く姿があった。

 

「これで厨房には二人っきり!」

 

「二人、共同作業をすることで、自ずと距離が近くなる……これこそ黒子の考えた作戦!名付けて“愛の結晶作戦”ですわッ!!!!」

 

黒子の熱弁に、終始、冷たい目線を送る美琴と詩音。

 

「愛の結晶////な、な、何だかイヤらしい響き……」

 

佐天は顔を赤らめていた。

 

「ねえ、詩音?これって上手くいくのかな?」

 

「さあ?白井さんのお手並み拝見ってことで、良いんじゃないですか?」

 

その時だった。

 

「ねえねえ、お姉さん……遊ぼうよ~」

 

女の子の一人が美琴のエプロンの裾を引っ張る。

 

「お兄ちゃんは絵本を読んで~」

 

詩音は絵本の読み聞かせをねだられた。

 

「じゃあ、お姉さまと詩音さんは子供たちと死ぬ気で遊んで来て下さいな。」

 

「え?」

 

「死ぬ気って………」

 

「打ち合わせしたじゃありませんか。」

 

「まあ、そりゃそうだけど……」

 

「仕方ないか……御坂さん、頑張りましょう。」

 

「そうね!じゃあ、みんな外に行くわよ。」

 

「「「「ワーーーーイ!」」」」

 

「僕たちは何の絵本を読もうか?」

 

「こっちだよ。」

 

詩音と美琴は二手に別れ、上手いこと子供たちを分散させる。

詩音と数人の子供たちは、絵本の納められている本棚の前にやって来た。

桃太郎からシンデレラ……色々な絵本が置かれている。

 

「僕これがいいー!」

 

「私はこれー!」

 

色々な種類の絵本を詩音に持ってくるが、当の本人は浮かない表情をしていた。

 

「お兄ちゃん?どうしたの?」

 

女の子の一人が詩音を心配している。

 

「いや、別に大丈夫だよ。ただね?どれもありきたりな絵本ばっかりでつまらないなぁって、思ってね……」

 

「じゃあ~絵本、読んでくれないの?」

 

「……そうだ!」

 

詩音が何か思い付いた。

 

「ねえ?こんな絵本よりも、もっと面白い昔話があるけど、どうかな?」

 

「「「「聞くーーー!」」」」

 

子供たちは声を合わせて答える。

 

「じゃあ、キミたちにも分かりやすく話すからね。」

 

詩音が静かに、物語を話し始めた。

 

「時は西暦1868年……日本最後の内乱、つまり戦争が日本国内で起きたんだ。今じゃ考えられないけど、同じ国の人たちで殺し合いさ……」

 

子供たちは固唾を飲んで詩音の話しに耳を傾ける。

 

「僕のご先祖もこの戦争の初戦、旧幕府軍として出陣したんだ。ご先祖の前に立ちはだかるの敵は約150人……当時最新鋭の武器、銃を全員が携帯している。絶望的だろ?」

 

「って、言うことはお兄ちゃんのご先祖様は、敵に降参しちゃったの?」

 

「降参?するわけないじゃん……ご先祖はこの刀一本で、敵に戦いを挑んだよ。」

 

詩音は立て掛けていた自分の愛刀を、子供に見せた。

 

「敵は銃を撃ってきたけど、ご先祖様には絶対に当たらなかった。襲いくる敵を斬り殺し、ご先祖様の体は返り血で真っ赤に染まっていた。」

 

「どうして、そこまでして戦うの?」

 

「そりゃあ、侍は忠義に熱いからね。僕のご先祖も旗本として幕府に仕えていたし、その恩は自身の命を持って報いないと……」

 

「お侍さんってカッコいいんだね!」

 

話しを聞いていた男の子たちは、目を輝かせていた。

 

「別にカッコよくはないさ……ご先祖に取っては忠義立ては只の建前、本当の目的は、この戦争に参加していた最強クラスの剣士と戦うため……そして会ったんだ。飛天御剣流の使い手、人斬り抜刀斎とね……彼は心踊ったらしいよ。相手もすでに何十人と人を斬り殺している。」

 

詩音の昔話もクライマックスに入ろうとした時だった。

 

「アンタはいったい何やってんのよ!」

 

後ろから美琴がツッコミの手刀を頭に喰らわせる。

 

「あ、痛ッ!……御坂さんこそ何してるんですか?外で遊んでいたんじゃ………」

 

「ちょっと、喉が乾いたから、一緒に遊んでいた子たちと水分補給に来たの!アンタこそ何教育に悪い話を聞かせて上げてくれちゃってんの!!?」

 

「ねえ?お兄ちゃん、もうお話は終わり~?」

 

「そうだね、ビリビリのお姉さんが邪魔したからね。」

 

「あ、アンタ!私のこと、またビリビリって言ったわね!」

 

美琴に青白い電流が流れる。

 

「さあ!みんな!今から、鬼ごっこだよ!鬼はこのお姉さんだ!」

 

「えッ!!?」

 

「逃げろーーーッ!!!!」

 

「「「「わあぁーーーッ!!!!」」」」

 

詩音の合図で子供たちが一斉に逃げ出した。

 

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「詩音くんと御坂さん楽しそう。」

 

と、初春が羨ましそうな感じで一言。

 

「でも、白井さん?私たち寮監さんの恋が成功することしか、考えてないけど、万が一失敗したらどうするんですか?」

 

ごもっともな意見を述べる佐天。

 

「大丈夫ですわ。どんなことがあってもワタクシのプランには、色々なバックアップを用意していますの……」

 

黒子はない胸を張っていた。

そんな時………

 

「ぎゃああぁぁーーーーッ!!!!」

 

厨房から寮監の断末魔のような叫び声が!

 

「えッ!!?今の声って寮監さん?」

 

「いったい何ッ!!?」

 

初春と佐天はビックリしているが、黒子だけは終始落ち着いている。

 

「二人とも安心してくださいな、今こそ黒子の考えたバックアップが機能するときですわ。」

 

三人は寮監と大圄先生のいる厨房へと向かった。

 

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厨房に着いた三人が扉を開けると、そこは大惨事だった。

何か爆発でもしたのかと、思われるくらいに薄力粉が辺り一帯に飛散し、空気中に粉が舞い上がり、寮監と大圄先生は真っ白になっていた。

 

「あらまー!何と言うことでしょー!」

 

黒子のわざと過ぎるくらいの演技でリアクションをとり、寮監にきっかけを作る。

 

「あ……いや、私がいけないのだ。小麦粉の入った袋を開けようとしたら………」

 

「開けるだけで、こんなに………」

 

佐天はちょっと引いてしまった。

 

「開けると言うか、袋を力任せに破ったみたいですね……」

 

初春も唖然としている。

寮監も大圄先生と一緒に作っていたケーキを台無しにしたのか、落ち込んでいた。

 

「だ、大丈夫ですよ、先生……やり直せば。ね?」

 

大圄先生の優しいフォローに元気を取り戻す寮監。

そこへ黒子が割って入った。

 

「それでは、お誕生日会には到底間に合いません。今すぐケーキを買って来て下さいですの。」

 

「そ、それもそうだね……」

 

大圄先生は一人でケーキを買いに行こうとするが、黒子に寮監を一緒に連れて行けば、美味しいお店を紹介すると同伴を勧める。

 

「お、おい!白井!私は……」

 

「大丈夫ですわ、アチラの二人が案内しますわ。」

 

「「へぇッ!!?」」

 

「本当か?」

 

「「もちろんです!」」

 

ということで、寮監と大圄先生は、佐天、初春の案内のもとケーキの買い出しに向かった。

 

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施設内でそんな事があっていたなんて知る筈もない美琴と詩音は、子供たちと鬼ごっこに勤しんでいる。

 

「捕まえた~!」

 

女の子が詩音に抱きついた。

 

「あー残念!捕まっちゃった!」

 

「詩音が鬼か。みんな捕まらないように逃げるわよ!」

 

「ほーら、みんな!死ぬ気で逃げないと鬼になっちゃうぞーーー!」

 

詩音がやる気ともに殺気を出した。

 

「「「「「ぎゃああぁぁーーーーッ!!!!」」」」」

 

 

純粋な子供たちとそれ同等の感性を持つ美琴である、詩音の背後に何かを感じたのか、絶叫しながら全力で逃げ回る。

子供たちは泣き、美琴も半べそをかいていた。

 

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昼になり、昼食がてらのお誕生日会の開催である。

テーブルには、ケーキにピザ、ポテトサラダにジュースが並んでいた。

なぜか寮監と大圄先生は傷だらけ……

詩音は理由を佐天にそっと聞いてみる。

 

「ねえ、どうして二人はあんなに傷だらけなの?」

 

すると彼女はため息混じりに答えた。

 

「もう、スッゴい大変だったよ……寮監さん、ダイゴのことで頭いっぱいみたいでさ、犬のしっぽを踏んで追いかけ回されたり、車に轢かれそうになったり、挙げ句の果てに川に落ちそうになったりで……」

 

佐天が遠い目をしている。

 

「たかが、ケーキを買いに行くだけで……」

 

子どもたちがケーキやピザを食べる様子を詩音たちは、しばらく眺めていると、詩音が何かを感じたのか、ボソッと呟いた。

 

「………地震が来る……」

 

「え?詩音くん、何いってるの?」

 

佐天の問いかけを無視して一人テーブルの下へ避難する。

その場にいた全員の頭に?マークが出た。

するとどうだろう。

テーブルに置かれた食器が、カタカタと揺れ始める。

そして次の瞬間、大きな揺れが施設を含む辺り一帯を襲った。

地震にパニックになる子どもたち……

 

「全員、テーブルの下に避難しろ!急げ!」

 

寮監が素早く指示を出した。

子どもたち、美琴ら四人もテーブルの下に潜る。

テーブルの下には、先に避難していた詩音が……

 

「詩音。アンタ、地震が来るって分かっていたの?」

 

「ええ、まあ……御坂さんは分からなかったんですか?」

 

「分かるわけないじゃない。」

 

「まあ、御坂さんケッコーおおざっぱなところが、ありますもんね?」

 

「何ですって……!」

 

「お姉さま。今は非常事態、落ち着いて下さいな。」

 

「ご、ごめん……」

 

「詩音くんもあまり御坂さんをからかわないで!」

 

「は~い。」

 

詩音と美琴がテーブルの下でひと悶着を起こしている頃、男の子の一人が、恐怖からか喚きながら揺れる室内を走っていた。

激しい揺れで棚の上に置かれてあった電気ポットが、男の子の頭上目掛けて倒れてくる。

その様子に咄嗟に寮監が反応し、男の子に駆け寄るとその身を挺して男の子を助けた。

十秒ほど揺れただろうか、地震はすぐにおさまる。

 

「せ、先生ッ!!?大丈夫ですか?」

 

慌てた様子で、大圄先生が寮監のもとに駆け寄った。

 

「こら!だから、落ち着けって言ったでしょ!」

 

自分のことはそっちのけで、男の子を叱る。

これも男の子を身を心配してのことだ。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「どこか痛いとこはない?」

 

寮監は優しい表情で、男の子に聞いた。

 

「うん!」

 

彼女のおかげで男の子は無事だった。

 

「先生、さすがです。尊敬します……」

 

大圄先生に好意を持たれた寮監。

その日の夜、寮に戻った彼女は、ロビーのソファーに腰掛け呆けていた。

脳内では、昼間の出来事がずっとリプレイされている。

 

『尊敬します……』

 

『大圄先生……』

 

『だから、結婚してください。』

 

彼女の頭の中では、すでに大圄先生との結婚にこぎ着けていた。

そこへ門限を大幅に超えて帰ってきた女子生徒が……

普段なら制裁を受けるレベルの事態である。

 

「すみません。門限を過ぎてしまって……」

 

女子生徒が頭を下げた。

寮監がいきなり立ち上がる。

女子生徒は恐怖からギュっと目をつぶった。

 

「仕方ないな……今度から気をつけるように。」

 

「は、はい。」

 

 

しかし、寮監は制裁を加えるどころか、門限を破った彼女を見逃したのだ。

この様子を見ていた美琴は驚愕する。

 

「信じられない、あの寮監が規則破りを大目に見るなんて……」

 

「恋は人を成長させますよの……」

 

黒子は自身を持って美琴に答えた。

その時、寮監のケータイがなる。

電話の相手は大圄先生からだった。

電話の内容は今から相談したい事があるので、会って欲しいとの

ことだ。

 

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その後、寮監と大圄先生は近くのファミレスに入る。

席に座り、大圄先生は寮監に相談した。

少し離れた位置から美琴と黒子、そして召集をかけて集まった詩音に佐天、初春が見守る。

 

「プロポーズかぁ~いよいよ大詰めですね。」

 

「なんだか、私までドキドキして来ちゃったよ~」

 

二人の展開を期待し、緊張する初春と佐天。

 

「でも、どうしてファミレスなのかな?」

 

「確かに、御坂さんの言う通りだ……」

 

美琴と詩音は疑問符を浮かべる。

普通、プロポーズをするならもっとムードの良い場所でするはずだ。

 

「これだから、彼女いない歴=年齢の男は困るんですよ。」

 

黒子はただ呆れていた。

 

「やっぱり、プロポーズって言ったら海辺の綺麗なレストランですよね~」

 

初春が自身の理想を口にする。

 

「えぇー!そこは、夜景の綺麗なレストランでしょ~ねえ?御坂さん。」

 

佐天は初春と違った理想だった。

そのまま、彼女は話しのネタを美琴に振る。

 

「そうね~それで、プロポーズに成功したら、海から花火が上がるのとかが良いな~♪」

 

美琴の理想は初春や佐天の斜め上を行っていた。

 

「「「「えぇぇ…………それはちょっと…………」」」」

 

彼女の感性が分からない……詩音を始め、四人はドン引きの様子。

 

「えぇーッ!!!!」

 

一方の寮監と大圄先生は……

 

「あのー大圄先生?それで私に相談とは?」

 

「えっと………単刀直入に聞きますけど……

 

「はい……!」

 

「あの……結婚相手が年下ってどう思いますか?」

 

その問いかけに、寮監の目の色が変わる。

 

「え、えぇ、け、結婚ですか……?」

 

「はい。例えば、僕みたいな……」

 

その時、寮監の脳内では貰ったと言わんばかりに、特大のホームランを放っていた。

 

「け、結婚に年は関係ないと思います////相手を尊敬し、思いやる心があれば……////」

 

「あぁ!やっぱり……ありがとうございました。先生に相談できて本当に良かった。」

 

「い、いえ……////」

 

その後、学生寮に戻った寮監は先回りしていた黒子たちから祝福を受けた。

クラッカーや拍手で寮内に迎えられる。

 

「「「「「おめでとうございます~!」」」」」

 

「あぁ……見ていたのか……」

 

完全に呆けている寮監。

 

「やりましたわね!寮監さま!あとはご両親への紹介!式場選びからの新婚初夜!」

 

いよいよ、寮監の恋もクライマックス!

黒子の白熱っぷりは以上だった。

 

「白井……すまないが、私の頬をつねってくれないか?」

 

「へえ?」

 

「これが夢なら早く醒めて欲しい……」

 

「わかりました。」

 

黒子はおもいっきり寮監の頬をつねる。

 

「痛い……最高に痛いぞ。白井……」

 

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次の休みの日。

寮監たっての頼みで、彼女のコーディネートをするため、黒子たちは第七学区内に置かれたセブンスミストに来ていた。

そこで寮監の服を選んで、寮に戻ってから詩音を除いた女の子たちから、おめかしをしてもらい、寮監は今まで以上の美人に変身する。

これぞ寮監の最終決戦仕様と言ったところか。

そして、あすなろ園でボランティアを続けている大圄先生に会った。

 

「大圄先生、ちょっと良いですか……」

 

作戦に参加した五人は、二人の恋の行方をそっと様子を伺う。

寮監と大圄先生はブランコに座って話しを始めた。

 

「今日は、何だかいつもと雰囲気が違いますね。」

 

大圄先生が話しを切り出す。

緊張しながらも寮監も話した。

 

「あ、あの……この間の……」

 

「ありがとうございました。先生に相談できたお陰で、やっと決心がつきました。」

 

「え?」

 

そう言って、大圄先生はプロポーズの際に渡す婚約指輪を、寮監に見せた。

 

「こ、これって……////」

 

寮監の顔が赤くなる。

運命の刻であった。

 

「彼女にプロポーズしようと思って……」

 

次の言葉に、ボルテージMAXの寮監のテンションが一気に冷める。

 

「彼女…………?」

 

「ええ。」

 

「彼女って……………」

 

「ええ。」

 

そう、大圄先生が本当に好きだったのは、あすなろ園の園長だった。

残念ながら、寮監の思い違いである。

 

「あの時、先生から結婚に年は関係ないと言われて勇気が出ました。ありがとうございます。」

 

「いえ……」

 

失恋のショックに涙が出そうになる寮監だったが、グッとその心を胸の奥に仕舞い込み、笑顔で大人な対応を見せた。

 

「お役に立てて良かったです。お幸せに大圄先生。」

 

大圄先生は立ち上がると、寮監に頭を下げて、園長と子どもたちの和の中に戻って行った。

 

「さて……」

 

寮監も持っていたカバンから、眼鏡を取り出し装着すると、いつもの彼女に戻る。

そして、寮監も子どもたちのもとに向かった。

その様子に美琴と黒子、佐天に初春は本当に残念そうな表情をしていた。

 

「あ~あ。上手くいくと思っていたのに……」

 

「何だかな~」

 

「そのうち、良いことあるよ……」

 

「寮監さま好い人ですから……」

 

「そうだね。僕たちも行こうか!」

 

「はい!」

 

「ええ……!」

 

「「うん!」」

 

詩音たちもあすなろ園に向かうのだった。

 

次回に続く。

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