とある科学の刀剣使い(ソードダンサー) 作:御劔太郎
一人になった詩音は、何かするわけでもなく、フラフラと街中を歩いていた。
「あら?委員長……」
後ろから声を掛けられる。
振り向くと補佐役で風紀委員の副委員長を務める“瀬田つかさ”が立っていた。
「つかさちゃん……こんな所で奇遇だね?」
「まあ、合同会議の帰りです。委員長、途中で会議から抜け出してましたよね?周りに悟られぬように気配まで消して……」
「さすがはつかさちゃん。君の目だけは誤魔化せなかったね?」
「私を誰だと思っているんですか?」
「僕の大切なパートナーさ……」
「そういえば、いつものアナタと一緒にいる常盤台のレールガンの娘たちは?姿が見えませんが……」
「たまには一人になりたいモノだよ。」
再び詩音は、どこかへ行こうとするが、そんな彼の背中に何か感じたつかさが呼び止める。
「委員長、何かあったんですか?」
「どうしてだい?」
「いつもと雰囲気が違うもので……誰かとケンカでもしました?」
「本当につかさちゃんは何でもお見通しだね?」
二人は近くの喫茶店に入っていく。
その姿を偶然にも目撃した人物がいた。
「詩音くんッ!!?あの綺麗な人って誰?」
それは佐天だった。
「あの人って、固法先輩と同い年くらいだけど……それにあの腕章、ジャッジメントの人ッ!!?」
佐天はこの時から、詩音の詮索を始める。
これがどれ程、危険なことかも知らずに……
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喫茶店に入った詩音とつかさは各々注文をする。
つかさにはホットコーヒー、詩音には特大のパンケーキが提供された。
「うわぁ~」
あまりの大きさに嫌悪感を隠せないつかさ……
「それで委員長は誰とケンカしたなんですか?」
「白井さん……」
「白井?……ああ、委員長が毎日のように入り浸っている一七七支部に所属している常盤台の……?」
「そうそう……白井さんって、けっこう熱い所があってさ、僕にジャッジメントとしての自覚はあるのかって、この委員長である僕にだよ?」
「いちジャッジメントである彼女にしたら、無礼にもほどがあります。アナタにそう言ったことを言えるのは、この私だけなのに………」
二人の話しを盗み聞きする佐天。
「あの二人って本当にどんな関係?それに詩音くんが委員長?わけがわからないよ……!」
佐天は居ても立ってもいられなくなり、詩音とつかさの座る席へと向かう。
そして……
「詩音くんッ!その女の子は誰ッ!!?」
「ル、ルイコ……ッ!!?」
修羅場に発展した。
「どうして、ここに居るのッ!!?」
焦る詩音……
「さっき、白井さんとあんな事があって心配になったから、探しに来てみれば……!」
佐天は怒っている。
しかし、この修羅場の中でやけにつかさだけは落ち着いていた。
「アナタは彼の彼女さんか、何かなの?」
「そうですけど!」
「自己紹介が遅れました。」
「そんなの聞きたくありません!」
「いえ、聞いてもらわないと困ります……私はジャッジメント第一ニ八支部に所属する瀬田つかさと言います。」
「それがどうしたんですか!」
「彼が新人だった当時、私が教育係として目を掛けていたんです……」
つかさが絶妙なフォローを出した。
「そうなんだよ、ルイコ!その関係で仕事に関する悩みとかあったら、時々こうして聞いてもらってんだよ!」
詩音もつかさのフォローに乗っかり、佐天に訴えかける。
「へぇッ!!?じゃあ、二人は~」
「別に付き合っていません。」
「そうだね。僕にとって彼女は面倒見が良い優しいお姉さんってところかな。」
「…………申し訳ございませんでした!」
佐天は深々と頭を下げた。
謝罪した佐天も一緒に三人で話しをする。
「私は佐天涙子、詩音くんとはクラスメイトで……」
「付き合っているのでしょ?お似合いよ?」
「……////あ、ありがとうございます。」
佐天は顔を赤くしていた。
「あ、それで二人が話していた時につかささん、詩音くんのことを委員長って呼んでませんでした?」
佐天の言葉にパンケーキを食べる詩音の手が止まる。
空気が一瞬で変わる。
「あ、アレ……?二人とも……なんか私、マズイこと言いました?」
「いや、別に……」
「そうですね……あ、私、今日の合同会議の資料をまとめないと……」
つかさが席を立ち伝票を持つとレジに向かう。
「あ、つかささん。自分のモノは自分で払います。」
「気にしないでください。今日は私のおごりです。」
「ありがとうございます。」
支払い額を見たつかさは固まった。
金額はなんと税込5040円……
金額の大半を占めているのが、詩音の注文した特大のパンケーキだ。
支払って店を出るつかさの背中は、落胆の色に染まっていた。
「良かったの?詩音くん?あのまま行かせて……」
「大丈夫、大丈夫……それでルイコ、僕に言いたいことがあるんじゃない?」
「あ、そうだ!今夜、花火大会があるんだって!みんなで行こうよ!」
「みんな?」
「そう!みんな!」
「ねえ、ルイコ……僕、白井さんとケンカしたんだよ?」
「分かってる。だからこそ!お互いの気分転換になるし、なにより素直に謝れると思う。だからね?」
「………わかった。やっぱり、ルイコには敵わないや……」
笑顔で答える詩音であった。
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一方、黒子は自身の寮へと帰ってきていた。
そのまま、自分のベッドにうつ伏せになるようにダイブする。
「はぁ……ワタクシの志は、詩音さんにとってはただ単に暑苦しいだけなんでしょうか……?」
その質問に答える者は、部屋にはいない。
虚しくなるくらいの静寂が彼女の心に刺さる。
数十分、部屋は彼女一人だった。
「黒子、帰ってたのね……」
突如として、部屋の扉が開き美琴が現れる。
「お、お姉さまッ!!?どうしてここにッ!!?」
「アンタを心配してよ。当たり前でしょ?」
「お姉さま……」
黒子の表情に明るさが戻った。
状態を起こした彼女の横に美琴が腰かける。
「黒子、辛かったわね……」
「い、いえ……お心遣いありがとうございます。」
「何、辛気くさいかおしての!いつものアンタじゃなきゃ、こっちまで気が滅入っちゃうわよ!」
「すみませんですの。でも、詩音さんのあの一言が気になって仕方ありません。ワタクシはあの人からしては、ただの暑苦しいだけの女なんでしょうか!」
黒子の目にうっすらと涙が浮かぶ。
「そんな事ない!初春さん、固法先輩に佐天さん、私だってアンタがジャッジメントの仕事に一生懸命に取り組んでいるのは知ってる!だから、胸を張りなさい!」
美琴の言葉に、今まで黒子の中で溜まっていたモノが、一気に溢れ出した。
美琴の膝に顔を埋めて黒子は泣いた。
「辛いことは、今ここで全部吐き出しちゃいなさい。」
優しい言葉を掛けながら、黒子の頭を撫でる。
今の黒子にとって美琴は良き姉のように感じた。
落ち着いた黒子が顔を上げる。
「あらあら、目まで赤くしちゃって。」
「お見苦しい所をお見せしました……」
そんな時だった。
美琴のケータイの着信音が鳴る。
相手は初春からだった。
『あ、もしもし?御坂さんですか?』
「ええ。」
『どうです?白井さんは見つかりました?』
「こっちは大丈夫。黒子も落ち着いているわ。ほら黒子、初春さんも心配しているわよ?」
美琴は黒子と電話を変わる。
「あ、初春?色々と迷惑を掛けてしまいました。ごめんなさいですの。」
『良かったです。白井さん……ところで白井さん?』
「何ですの?」
『今夜、花火大会あるんですよ。みなさんで行きませんか?』
「花火大会?」
「良いわね!花火大会!みんなで浴衣でも着て……!」
「初春?それには詩音さんも……?」
『もちろんです。向こうは佐天さんが誘いに行ってます。』
「あの初春……ワタクシ、詩音さんとケンカしましたのよ?その状態で彼と会うというのは、ちょっと気が引けます。」
『だからこそ、会わないといけないんです!大丈夫です!白井さんには私たちが着いてます。』
「初春……分かりましたわ。もう一度、ワタクシの気持ちを詩音さんにぶつけてやります!」
黒子は覚悟を決めた。
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その日の夕方、詩音は浴衣に着替えて佐天と待ち合わせた場所に行く。
待ち合わせ場所には佐天の姿はまだない。
「ちょっと、早く来ちゃったかな?」
5分後、佐天の姿見えた。
「詩音くーん!」
佐天が手を振っている。
詩音と合流した佐天。
「ど、どうかな////」
「綺麗だよ。スッゴく似合ってる。」
「詩音くんこそ、粋な感じでカッコいい。」
「あ、ありがとう////」
「ねえ、早く行こ♪」
佐天は詩音の手を引く。
そんな時、佐天のケータイが鳴った。
相手は初春からだった。
「もしもし?初春?どうしたの?」
『さ、佐天さん!た、助けて下さい。』
電話から聞こえる初春の声は一刻を争う状況だ。
「初春?どうしたの?どこにいるの!」
『じ、自分の部屋で、す……きゃああぁぁ〰️!』
最後は初春と春上の叫び声と共に電話が切れる。
「何があったんだろう?」
「とにかく行ってみないと!」
二人は初春のもとへと向かうのだった。
初春の寮へ到着し、詩音と佐天は彼女の部屋に突撃する。
「初春さん!大丈夫ッ!!?………って、あ……」
「へッ……!!?」
目の合った二人……
この空間の時間が止まったように感じた。
「ヒャアァァ〰️〰️ッ!!!」
開口一番に初春が叫ぶ。
初春は春上とともに腰紐に雁字搦めにされた状態で床に倒れていた。
浴衣の裾は捲れ、初春の下着が顔を覗かせている。
「アンタたち何やっての?」
佐天も彼女たちの姿に呆れていた。
すぐに二人を助けだし、着付けを始める。
佐天は初春を、詩音が春上の着付けを担当した。
女の子ばかりの空間の中で普通に溶け込んでいる詩音……
「春上さん、きつくない?」
「うん、大丈夫なの……でも、詩音くんスゴいの……着付けもあっという間で……」
「まあ、普段から慣れてるから……」
「はあ……私、もうお嫁に行けません……」
詩音の慣れた手つきに感心する春上とは逆に、初春はずっとため息ばかりついている。
「まだ、そんなこと言ってんの?たかが下着を見られただけでしょ?初春さんに取っては日常茶飯事じゃん。別に減るモノなんて無いんだし……」
「私にだって減るモノくらいありますよ……ッ////」
「ほら、初春?あんまり動かないの。着付け、終わらないでしょ?」
「す、すみません……」
「あ~あ、こんな事になるくらいだったら、はじめから佐天さんに頼めば良かったです……」
「でも、初春頑張ってんじゃん。」
「そうだね。それだけは間違いないよ……」
「ありがとうございます。今度は私がチカラになる番ですから。」
「今度?」
「ほら私ってトロい性格だから、昔、ジャッジメントの試験になかなか合格できなかったじゃないですか。そのせいで他のことにも自信が持てなくなって……」
「あーそういえば。あの頃の初春さんを見てると、けっこう苦労をしてたみたいだし。」
「そうそう、何だかほっとけない感じ?っていうか……」
「そんな時に佐天さんや紅月くんは相談とか励ましてくれたりとチカラを色々と貸してくれたんで……だから私、ジャッジメントになれたんですよ。」
「そうだっけ……」
「はい!なんで、今度は私が春上さんのチカラになれたらいいなって……あ、私だけじゃ不安でしょうけど……」
「うんうん……初春さんがルームメイトで本当に良かったの……頼りにしてるの。」
「まったく~いつの間にかこんなに大きくなって……姉さんうれしい♪」
「もちろん、お兄ちゃんも……♪」
「う〰️誕生日、私の方が二人より早いのに〰️!」
小動物のように頬を膨らませる初春。
結局のところは詩音と佐天から、妹キャラ扱いを受けてしまう初春であった。
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着付けが済んだ、初春と春上も一緒に花火大会の会場へと向かう詩音と佐天。
「紅月くん?」
「何?」
「お昼のケンカのことですけど、白井さんにあんなことを言った理由を教えてくれませんか?」
「………断る。」
「どうしてですか?私だってジャッジメントの端くれです!あの時、私自身も白井さんと同じ気持ちでした。」
「私も詩音くんの本当の気持ちを知りたい!」
「……どうしても、聞きたいの?」
「聞きたいです!」
「分かった。白井さんと合流してから話すよ。だけど、その話しが示すのは修羅の道だ……」
待ち合わせの場所に行くと、既に美琴と黒子がいた。
「すみません。お待たせしました。」
「ううん、私たちも今来たところだから……それにしても、みんな可愛いね。似合ってるわよ♪」
「御坂さんに白井さん、綺麗です。」
「佐天さんたちも♪」
「詩音さんもお似合いですわよ。」
「あ、ありがとう……」
全員集まった。
花火会場となっている河川敷には多くの出店がある。
「うう~ん!良い匂い!行こ♪詩音くん♪」
「あ、うん……」
佐天に手を引かれ、土手を降りて行った。
「私も行こうっと♪」
「お姉さま!ワタクシも!お姉さま!お姉さま!」
詩音たちに続き、美琴も土手を降りる。
子供のようにはしゃぐ美琴が心配な黒子は、あわてて彼女のあとを追いかけた。
「春上さん、私たちも行きましょう。」
「うん……!」
5人は出店を心から満喫した。
金魚すくいをし、射的、輪投げ、色々と……
「お姉さま……またそんな物を……」
黒子はまたかと感じで頭を抱えている。
なぜかと言うと、美琴がゲコ太のお面を買っていたのだ。
「良いじゃない!雰囲気よ。雰囲気……!」
一方の詩音も美琴と似たような状況になっている。
右手には通常の数倍はあろうかと思われる綿菓子、また左手にはソフトボール大のリンゴ飴を交互に食べていた。
「うう……気持ち悪い。」
「胸焼けしそう。大丈夫なの?」
「別に……綿菓子なんて僕にとっちゃ空気と同じだからね。」
「詩音くん、尊敬するの~」
「いや、春上さん?そこはちょっと違うと思うよ……」
天然系不思議っ子ちゃんの春上に対し、佐天はため息混じりに突っ込んだ。
「ところで、あの車って?」
美琴が会場横に駐車している大型車に気づく。
「ああ、あれはMAR……先進状況救助隊のトレーラーですわ。ここ最近頻発しているポルターガイストへの対策だと思いますの。」
「ポルターガイストッ!!?やっぱりマジなんだ!」
佐天の目が輝いていた。
「ほらほら、ルイコ?落ち着きなさい。」
「こんな人の多いところでポルターガイストが起きたら大変ですし……」
「それにしても、こんな警備下で花火見物とは……風情もへったくれもありませんの……」
「だったら、良い穴場があるんですよ♪」
佐天の案内で詩音たちは移動する。
彼女が案内している途中、詩音が静かに口を開いた。
「白井さん、ゴメンね……」
そして、黒子に向かって唐突に謝る。
「いえ、ワタクシこそ……あの時はカッとしたからとはいえ、いきなり手を上げてしまって、申し訳ありませんでした……」
「でも、あの時にあんな事を言った理由があるんだ。」
「何でしょう?」
「僕が昼行灯になっている理由、それは遥か昔……江戸時代にさかのぼる。当時の僕は二代目として、先代である父のもとで勉強がてらに補佐をしていたんだけどね……」
「それで、それがアンタの怠け癖とどう関係しているのよ?」
美琴が聞いた。
その問いに詩音が答えるように語りだす。
次回に続く。