とある科学の刀剣使い(ソードダンサー)   作:御劔太郎

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第29話 鬼の住み処

江戸時代後期……

旗本の紅月家のとある日、“紅月詩乃佐衛門”……後の詩音であるが彼は、紅月家現当主である父の“紅月時久”から呼び出された。

 

「失礼します。何用でしょう?」

 

「おお、来たか……」

 

二人きりの空間、父から漂う空気が思い。

 

「これは他言無用だ。近々、あの中が騒がしくなる。」

 

そう言って、父は江戸城に目をやる。

 

「父上、どういう意味ですか?」

 

「今、あの城の中では不穏な空気が流れている。」

 

「不穏な空気……」

 

「そうだ。大老の“松永忠宗”様を暗殺しようとしている一派がいると言うのだ。」

 

「御大老の暗殺……ッ!!?なんと……」

 

「ここ数年来、日の本の……幕府の実権は御大老松永様が握っている。言い換えれば、そんな御大老さえ亡き者にしてしまえば、幕府内の勢力図は一気に塗り替えられる。その企てを行っているのが、筆頭老中“加納実守”……!」

 

「そのような事が城内で……」

 

「嘆かわしいことよ……」

 

「しかし、なぜそのような一大事を息子である私に?」

 

「貴様には頼みたいことがある。私はその内定を御大老から直々に受けて既に部下の“伊能源十郎”を一人、加納一派のもと秘密裏に潜り込ませている。そしてその確たる証拠もつかんだ。」

 

「で、その後の加納一派の粛清を私にと……?」

 

「いや、それは何でも危険すぎる。」

 

「私の腕を信用していないのですか?父上……」

 

「貴様の剣の腕は父として良く知ってはいるが、この件は内密に処理せよと申し付けられておる。」

 

「では、いったいどうするおつもりで……?」

 

「噂に聞いたのだが、この江戸内には闇から闇へと証拠を残さずに事を片付けてしまうという“仕事人”がおるらしいのだ。」

 

「と、いうことは、その仕事人を見つけて奴らに始末させるのですね?」

 

「そう言うことだ。頼む……」

 

「かしこまりました。」

 

「これのことは誰にも知られてはならぬ。妻や妹たち、もちろん送り込んだ部下以外にもな……」

 

「分かっております………」

 

詩乃佐衛門は仕事人探しのために数日間屋敷を開けることになった。

 

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「へぇ~アンタって、初めからその仕事人ってわけじゃなかったのね?」

 

「まあ……でも、僕が仕事人として活動するきっかけにはなりましたよ。」

 

「しかし、いつの時代にもそう言った野心を持った輩はいますのね?」

 

「そうだね。現実を知ってるからなおさらね……」

 

「それで当時の詩音くんは?」

 

「その仕事人と会えたんですか?」

 

「じゃあ、話しを続けようか……」

 

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仕事人探しを初めて三日目……

詩乃佐衛門は仕事人の手掛かりを掴む事になる。

江戸内のとある長屋の一角で殺人事件が起きたのだ。

殺されたのは、この長屋の一件に住む“弥助”という大工職の男。

妻と幼子と弥助の三人暮らし、その弥助は金使いが荒く、毎日のように妻や子を泣かせていた。

大勢の野次馬がいるなかで、見聞のために同心(町の治安を守る役職、下級武士などが主に勤める)等とその手先が数人集まっていた。

 

「これは物取りではないみたいですね……」

 

「え?どうして分かるんでぃ?」

 

「どうしてって、ほら……懐の金子には全く言っていいほど手を付けていませんよ。」

 

そう言った同心の一人は弥助の亡骸の懐に折り畳まれて入れられていた紙を見つけ、それを取り出し中身を確認する。

そこには“仕事人参上”とだけ書かれていた。

 

「渡辺さん、これを……!」

 

「はい?」

 

「仕事人って………」

 

渡辺と呼ばれる同心はその紙切れに難しい顔をしている。

その様子を離れた場所から見ていた詩乃佐衛門は、亡骸の側で泣き崩れる女性を見て確信した。

 

「あの人が亡骸の妻か……という事はあの人に話しを聞けば仕事人の情報が得られる。」

 

その日の夜中、その弥助の妻のもとを詩乃佐衛門は訪ねる。

 

「夜分遅くに済まない……」

 

夫を仕事人に殺された彼女は、いきなり現れた詩乃佐衛門に脅えていた。

 

「拙者はソナタに危害を加えることはない。ただ仕事人の話しが聞きたいだけだ。」

 

そう言って詩乃佐衛門は懐から小判5枚を彼女に見せる。

その後、仕事人の情報を聞き出した詩乃佐衛門は、古臭いお堂の前にやって来た。

そして、彼は叫ぶ。

 

「五つどきにここに来れば、如何なる殺しも請け負うと聞いてやって来た!それは誠かッ!!?」

 

詩乃佐衛門は、何かの気配を感じ取ると素早く腰に携えた得物に指をかける。

彼の目の前に現れたのは、濃紺の羽織袴と三度笠に般若の面で顔を隠した侍だった。

 

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「とうとうその仕事人とアンタは会えたのね!」

 

「ええ……奴らと話し、頼み料を払い仕事の段取りは着けましたよ。これで一安心だと当時の僕は思っていた……」

 

「詩音さん、何か歯切れが悪いみたいですけど……」

 

「僕はね?与えられた仕事を終えて屋敷に戻る途中に街中に立てられた立て看板に、たまたま目が行った……そこに書いてあったのは父の切腹の報だった。」

 

「切腹ッ!!?それって……」

 

「武士なりのけじめのつけ方……」

 

「でも、どうしてなのッ!!?詩乃佐衛門さんのお父さんは悪事を暴こうとしてた!正しいことをしてたじゃない!」

 

「初めから敵の狙いは、父上の時久を葬ることだったんだよ。御大老に信頼を寄せられていた父上は、加納一派に取っては邪魔だった。だから亡き者にし、あわよくば大老の席を狙う。」

 

「何てこと……理不尽過ぎますの。でも、アナタのお父様が送り込んだ密偵の方は?」

 

「密偵として送り込んだ“伊能源十郎”も加納一派に金の力で飼われ、奴らの犬になり下がってしまった。城での審議の際に大老に嘘の報告をし紅月家を裏切ったんだ……」

 

「じゃあ、その御大老さんは?アナタのお父さんに内定の命令をしたんだから、部下が裏切ったところで……」

 

「奴も簡単に父上を切り捨てた。面倒だと言ってね………」

 

「そんな……」

 

「ヒドイ……」

 

「当時の僕は急いで屋敷に戻った。切腹の日は翌日だったから……」

 

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「詩乃佐衛門!ただいま戻りました!」

 

急いで戻った彼を待っていたのは、彼の母と妹たち……

 

「今までどこに行っていたのですか!紅月家の一大事に!」

 

「皆、心配してたんですよッ!!?」

 

「済まなかった。父上から受けた使いが少し長引いて……それよりも、父上が切腹とはどういうつもりですか?」

 

「詳しいことは妻である私も知りません。アナタの方が何か知っているのでは……」

 

「私は別に……」

 

「お兄様、これを……」

 

妹が詩乃佐衛門に文を手渡した。

宛先は詩乃佐衛門。

差出人は父の時久だった。

文を受け取り、自身の部屋に籠ると書かれていることを呼む。

そこには、父の無念と介錯の願いだった。

 

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「詩音くん、介錯って?」

 

「切腹の手伝いをする役の人だよ。」

 

「え?」

 

「簡単に言うと、腹を切った人にとどめを刺すんだよ。」

 

「詩音さん!それはお父様を手に掛けるということですのッ!!?」

 

「そうだね……」

 

「でもどうやって……?」

 

「太刀で首を跳ねる……ッ!」

 

「「「「……ッ!!?」」」」

 

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切腹当日……

詩乃佐衛門は加納の屋敷に来ていた。

そこで介錯人用の黒の羽織袴に着替え、専用の太刀を携え、切腹場所になっている白洲へと向かう。

途中、敵対している筆頭老中の加納実守と時久を切り捨てた大老松永忠宗に頭を下げる。

そして、白洲で待っていたのは死装束を着た父“時久”の姿だった。

 

「来たか……」

 

「はい。」

 

「拙者の無念、読んでくれたか?」

 

「はい。」

 

「そうか。ならば最後に……右肩の上げ過ぎには気をつけろ。的がぶれるぞ……」

 

「分かりました……」

 

「両名、刻限でございます。」

 

加納方の仕切り役に言われ、介錯人の詩乃佐衛門は浄めた太刀を天高々と振り上げ構える。

時久も短刀を持ち、腹にその切先をあてがい大きく息を吸った。

そして…………ッ!!!!

 

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詩音たちを包む空気が一気に重くなった。

 

「あれから随分と時が経ったけど、未だにあの時の手の感触が忘れられない……」

 

「それは、そうよ……いくら頼まれたからって、肉親の首を跳ねないといけないのはツラいことよ。」

 

「事後処理を終わらせ、屋敷に戻った頃は既に日も暮れていた。屋敷では母や妹らに、随分と責められたよ……」

 

「じゃあ、詩音くんは家族の人たちに全部話したの?」

 

「いや、何も言ってない。当時の僕はこの事を死ぬまでね……」

 

「どうしてッ!!?詩音くんは……詩乃佐衛門さんは何も悪いことはしてないのに……ッ!」

 

「仕方ないことだよ。武士っていうのは頭が固い不器用な連中なんだ。」

 

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詩乃佐衛門の中の鬼が目覚めたのはその時だった。

翌日の夜中、彼は介錯人時に着ていた黒の羽織袴を纏い、そして衣装に合わせた色合いの菅笠を目深にかぶり顔を隠すと、父の無念を晴らすために加納実守の屋敷へと乗り込む。

 

しかし、屋敷で待っていたのは加納方の手下たちだった。

紅月家を裏切った伊能源十郎が密告し、仕事人を警戒した実守が警備を厳重にして待ち構えていたのだ。

 

「何者だ!」

 

彼の前には敵が約20人……

数の上では圧倒的不利だが、詩乃佐衛門は臆することなく、腰から刀を抜き構える。

 

「オメェさんにどもに語る名など持ち合せていませんよ。」

 

相手の武士からは詩乃佐衛門の口角が釣り上がる所だけが見えた。

彼から並々ならぬ殺気が漂い、敵側の侍たちは一層警戒を強める。

詩乃佐衛門の持つ刀の刃が焚かれた松明に煌めいた。

そして……ッ!

 

「いざ、参る……ッ!」

 

「やああぁぁーーーッ!!!!」

 

敵たちが一斉に詩乃佐衛門に襲い掛かった。

彼は並みい加納一派の武士たちを次々と斬り捨てて行く。

斬り殺した敵の血で屋敷は汚れ、それはそれは凄惨な現場となっていた。

まさに復讐の鬼と化した詩乃佐衛門には、似合った場所である。

 

「実守様!敵襲でございます!」

 

加納方の筆頭組頭“日下部正吉”が報告した。

 

「仕事人め来よったか……ッ!人を集めろ!なぶり殺しにしてやるのだ!」

 

「ははぁッ!」

 

実守は日下部に指示を飛ばすと一番奥の部屋へと一人避難する。

しかし、その部屋の天井裏には真の仕事人が潜んでいた。

的を殺るためにその仕事人は、細長い錐のような仕事道具を構え虎視眈々と的を狙う。

いざ仕事の好機と見た仕事人は、事を遂行しようとしたが思いがけないトラブルが起きた。

それぞれが多種多様なお面で顔を隠し、武装した者どもが、屋敷の正門より襲撃を仕掛けて来たのだ。

その輩たちは先日、詩乃佐衛門が仕事を以来した者たちだった。

 

「仕事人参上!」

 

「仕事人参上!」

 

面を着けた仕事人たちが屋敷内に次々と侵入する。

それにより一気に屋敷の中は混乱の坩堝に陥った。

一方の詩乃佐衛門は、とある人物と対面する。

 

「アンタ、町方の……ッ!!?」

 

その人物は弥助の殺害現場に居た、“渡辺”と呼ばれていた同心だった。

 

「ふ、オレのこと知ってるのかい?ならば……ッ!」

 

十手を下げた町方の男は、口封じのために詩乃佐衛門に容赦なく切りかかる。

だが、詩乃佐衛門も負けじと自身の刀で受け止め、鍔迫り合いに持ち込んだ。

 

「アンタも仕事人か?」

 

「そうだとしたら?オメェはどうするよ?」

 

「仕事人は面で顔を隠しているはずだが?」

 

矢継ぎ早に詩乃佐衛門が男に聞くが、奴は鼻で笑うだけだった。

二人は一度は間合いを取る。

 

「待っていたぞ!仕事人ッ!」

 

詩乃佐衛門と仕事人“渡辺”がにらみ合いを続ける中に現れたのは、紅月家を裏切り加納方についた“伊能源十郎”であった。

二人は源十郎を睨みつける。

 

「待っていたのはこちらその方です……」

 

皮肉めいたことを詩乃佐衛門は口にした。

 

「何?……貴様!何者だ!」

 

「おや?主君の顔を忘れたとでも……?」

 

源十郎に顔が見えるように詩乃佐衛門は、被っていた菅笠を取る。

 

「あ、アナタ様は……ご子息の詩乃佐衛門様ッ!!?なぜここにッ!!?」

 

「なぜとは笑止!……貴様の裏切りによって腹を切ることになった父時久の恨みを晴らすためだ!」

 

詩乃佐衛門は菅笠を捨て、改めて源十郎に向かい剣を構えた。

 

「お役人……ソナタは一度この場から離れよ。この乱戦の中では仕事をこなすのは無理があろう。」

 

「フ、青二才が嘗めたことを言ってくれるじゃねぇか……」

 

仕事人の渡辺は闇に消えるように撤退していく。

この場に残ったのは、詩乃佐衛門と裏切り者伊能源十郎の二人のみ、互いに眼光鋭く睨み合い先に動いたのは、源十郎の方だった。

気合いを乗せた剣で、詩乃佐衛門に切りかかる。

源十郎の猛攻に詩乃佐衛門は防戦一方だった。

 

「貴様の首を取ったとなれば私の地位は確かなモノに……!」

 

「やはり、伊能源十郎……!父上が一目置いていただけあって強い!」

 

とうとう詩乃佐衛門は部屋の片隅に追い込まれる。

彼には退路は残されていない。

 

「これまでのようだな……貴様も父親と同じ場所に送ってやろうぞ!」

 

詩乃佐衛門の首もとに、源十郎が自身の刃をあてがう。

 

「くッ!!?こ、これまでか……ッ!」

 

「覚悟!」

 

源十郎が刀を振り上げ、そのまま詩乃佐衛門の首もと目掛け振り下ろした。

だが、詩乃佐衛門の首が落とされることはなかった。

彼は切られると思われたその刹那、源十郎の斬撃を紙一重で躱すと、驚異的な足裁きで源十郎の背後に回り込み、形勢が逆転する。

 

「い、今のは……足裁きはッ!!?」

 

「縮地……」

 

「なッ!!?こ、これが幻の………」

 

次の瞬間、詩乃佐衛門は源十郎を背後から、袈裟懸けに切り捨てた。

斬られた源十郎は、この世の者とは思えないような苦悶の表情を浮かべ、そのまま膝から崩れ落ち絶命する。

 

「源十郎よ。暇を出してやる。地獄巡りでもして来い……ゆっくりとな。」

 

詩乃佐衛門は、静かにそう言い放った。

 

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「これが、僕の過去の記憶……僕は思い知った。あれだけ真面目に働いた父も簡単に死んだ……無意味なんだよ。いくら頑張ったところでね……」

 

「分かりましたわ。アナタが背負っているモノも少しは知ることも出来ました。だけど、ワタクシの気持ちに変わりはありませんの!自分の信じた正義は決して曲げない!これだけは誰にも譲れません!」

 

「私もです!白井さんと志は変わりません!」

 

黒子と初春の詩音を見る目は、やる気に満ち満ちていた。

 

「まあ、それはそれで結構なこと……だが、君たちの信じる正義……ソレに喰われ絶望しないことだ。」

 

逆に二人を見る詩音の目は、氷のように冷たかったという。

詩音の過去話を聞きながら六人は、佐天の知る打ち上げ花火の見える穴場スポットへと到着した。

詩音たちが到着した頃には、既に花火が空に大輪の華を咲かせている。

 

「スゴ~い!」

 

「綺麗………」

 

打ち上がる花火に、詩音たち六人は魅入っていた。

佐天の隣に立つ詩音は、そっと彼女の手を繋ぐ。

 

「綺麗だね、ルイコ……」

 

「うん。私、こうやって詩音くんと一緒に見れて幸せ……////」

 

佐天も詩音に肩を寄せていた。

 

「僕、思うんだ……こうして、ずっとずっと一緒に居られたなあって……」

 

「私は絶対に詩音くんから離れないよ……キミの過去を含めて全てを私は受け入れたい。」

 

「ありがとう。ルイコ……////」

 

誰の目から見ても、明らかに二人の特別な空間がそこにはあった。

 

「何だが、あの二人……スゴい雰囲気……」

 

「これは負けていられませんわね……お姉さま!あのお二人に負けないように、ワタクシたちも燃え上がりますわよ!そう!あの打ち上げ花火のように!」

 

黒子は意味の分からない闘争心に駆り立てられ、美琴とイチャつき始める。

 

「お姉さま!さあ!さあ!……」

 

「ええい!ベタベタと暑苦しい!くっつくな!」

 

「御坂さんと白井さん、本当に仲が良いの……」

 

春上がそんな二人を見ながら、昔の思い出に浸っている。

 

「ちょっと、変わってますけど……」

 

いつも二人に苦笑いを浮かべる初春……

 

「初春さん、あのね?私にも昔あの二人みたいに…………」

 

春上は初春と話している途中、急に虚ろな表情となり話の節を自分で折ると、とぼとぼとどこかへ歩き出した。

 

「春上さん?」

 

「どうしたの初春?」

 

「春上さんもどうしたんだろう?」

 

「分かりません。急に……あ、春上さん。」

 

初春と佐天は、春上のあとを追いかける。

 

「御坂さん。ちょっと春上さんたちが心配だから僕も行きますね?」

 

「あ、うん……」

 

詩音も遅れて三人のあとを追った。

美琴と一方的にイチャつく黒子から、離れて行く詩音……

 

「本当にどうしたんだろう?」

 

「さあ?」

 

すると、黒子のケータイがなった。

相手は第一七七支部の固法美偉からだった。

 

「あら?固法先輩?今さら何ですの?」

 

『聞いて!聞いて!ポルターガイストのことなんだけど!』

 

「調べ物も良いですけど、少しは息抜きした方が良いですわよ?花火もキレイだし……」

 

『良いから、聞いてってば!RSPK症候群の同時多発の原因はAIM拡散力場への人為的干渉って言う可能性があるの!』

 

「AIM拡散力場への……」

 

『つまり一連のポルターガイストは偶発的な事故じゃなくて……!』

 

その時だった。

大きな縦揺れが詩音たちのいる展望台周辺を襲う。

 

「こ、これは!ポルターガイストッ!!?」

 

「きゃあぁぁぁ〰️〰️ッ!!!」

 

詩音の目の前で佐天は手すりに捕まり、身動きが取れない状況に陥っていた。

 

「ルイコ〰️〰️!」

 

詩音は激しい揺れで足元がおぼつかない中、佐天の側に急ぎ、彼女を庇う。

 

「ルイコ、大丈夫ッ!!?」

 

「う、うん……ありがとう。」

 

展望台でも一部が崩落した。

それに美琴が巻き込まれたが、黒子のテレポート能力に救われる形で難を逃れる。

一方、初春と春上は危機的な状況にあった。

二人の直上に支えを失った街灯が倒れ掛かって来たのだ。

 

「初春〰️〰️!」

 

叫ぶ佐天……

詩音も激しい揺れによって、二人を助ける事は愚か、立ち上がることもできない。

 

「間に合わない!」

 

詩音はこの後のことを覚悟した。

佐天と詩音は、唖然としている。

なんと、初春と春上に倒れ掛かってきた街灯は、ピンク色の“駆動鎧(パワード・スーツ)”によって支えられていたのだ。

揺れも収まり、美琴と黒子も詩音たちに合流する。

 

「間一髪だったわね……大丈夫?ケガは無かった?」

 

パワード・スーツから女性の声がした。

声の主は合同会議の時に出席していたMAR所属のテレスティーナだった。

初春と春上を心配した詩音たちが、二人に駆け寄る。

 

「初春さん、春上さん大丈夫?」

 

「え、ええ……」

 

詩音に呼びかけられ、春上もムックリと起き上がった。

 

「無理しないで……」

 

佐天も春上のことを気遣う。

 

「どこ?どこなの……どこにいるの?……」

 

しかし、当の彼女は大切にしているペンダントを握りしめ、ぶつぶつと呟いていた。

そんな彼女の行動に、その場にいた人間は困惑するばかりである。

一人を置いて……

 

次回に続く。

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