とある科学の刀剣使い(ソードダンサー)   作:御劔太郎

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一ヶ月以上開いてしまい、すみませんでした。


第30話 声 前編

花火大会の最中に起きた地震にも似た大きな揺れ“乱雑解放(ポルターガイスト)”

それに巻き込まれた詩音たち五人……

初春と春上に関しては、倒れて来た街灯の下敷きになりかけ命が危なかったが、先進状況救助隊のテレスティーナによってなんとか危機を回避できた。

 

場も落ち着き、テレスティーナは無線で花火大会会場に置かれた本部に連絡を取る。

 

「ええ……幸い負傷は……ええ、それよりもパニックが拡がらないように表向きのアナウンスを………ええ、実際にはこれは地震ではなく…………」

 

「ポルターガイスト……」

 

テレスティーナが通信しているのに割って入るように黒子が口を出した。

黒子の登場に少し唖然とするテレスティーナ……

 

「え?ええ、ポルターガイスト……そうよ。あとはお願い……」

 

テレスティーナは無線を切った。

 

「友人を助けていただきありがとうございました。」

 

美琴と黒子はテレスティーナに頭を下げた。

 

「ケガがなくて何よりでした。」

 

「ところで、あれはこの場に於けるAIM拡散力場の数値の計測をしておられるのでしょうか?」

 

黒子はそう言って崩れ落ちた展望台に目をやる。

彼女の言う通り、そこでは救助隊の隊員が、機器を使ってAIM拡散力場の計測をやっていた。

 

「MARでは事前にAIM拡散力場の異常を探知出来るんでしょうか?」

 

その言葉に一瞬だが、テレスティーナの表情が変わる。

 

「あ、いえ……その……そちらの対応が迅速でしたので……」

 

「あなた、お名前は?」

 

テレスティーナは黒子の名前を聞いた。

 

「ジャッジメント第一七七支部の白井と申します。」

 

「なるほど。一七七支部には優秀な人材が揃っているみたいね?RSPKとAIM拡散力場の関係について、もう把握しているなんて……」

 

テレスティーナは黒子に感心している。

 

「RSPKは何者かによるAIM拡散力場に対しての人為的干渉が原因……その同時多発がポルターガイストを引き起こしている。合同会議の時に教えてくだされば、ジャッジメントとして不審人物の割り出しなど、お手伝いできましたのに……」

 

「それはアンチスキルの管轄……会議でも言ったようにアナタたちジャッジメントには、風評被害対策と日頃の安全対策に専念して貰いたかったのよ?」

 

「AIM拡散力場への干渉……そんな事できる人が他にもいるのでしょうか?」

 

テレスティーナと黒子の会話に美琴が加わった。

 

「他にも?」

 

テレスティーナは、美琴のひと言に興味を示した時だった。

 

「御坂さーん!私たち病院まで付き添って来ますねーー!」

 

佐天が声を掛ける。

 

「ああ。私たちもー!」

 

「行けませんわ。お姉さま……そろそろ寮監の巡回が!」

 

「そうだった。」

 

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その後、寮に戻った美琴と黒子は、初春から春上の無事の連絡を受け、ホッとしていた。

美琴はパソコンで何やら調べ物をしている。

そこへ黒子が抱きついて来た。

 

「お姉さーま!ったら、さっきから何を調べているんですの?……って、“レベルアッパー事件”?どうして、今さらそのような物を?」

 

美琴が調べていたのは、以前、木山春生よって起こされたレベルアッパー事件関連のネット資料だった。

 

「気になるのよ……今回のポルターガイスト事件に似てるって言うか……アレも結局、AIM拡散力場を利用した犯罪だったじゃない?それに……」

 

あの時、木山春生は美琴に向かってこうも言っていた。

“それに今後も手段を選ぶつもりはない……気に入らない時にはまた邪魔しにきたまえ。”と……

 

「なるほど……今回の件にも木山が関係していると……でも、お姉さま?肝心な事をお忘れになっていますわ。」

 

「え?」

 

「木山春生は一七学区の特別拘置所に勾留されていますわ。あれほどの重犯罪者、そうそう出て来れるはずありませんの。」

 

「それもそっか……」

 

「それより、黒子には気になることが……」

 

「何?」

 

「春上さんの様子ですわ。」

 

花火会場でポルターガイストが起きた時、春上はそこにはいない誰かを探すような素振りを見せていた。

 

「今回のポルターガイスト事件、AIM拡散力場への人為的干渉が原因……と言うことは、おそらく能力者による仕業……」

 

黒子は自分なりに仮説を立て、それを踏まえて推理する。

しかし、この推理が正しければ、ポルターガイスト事件に少なからず春上も関係していると言うことになる。

美琴も最悪なケースを想像してしまった。

 

「って、アンタまさか……!」

 

「いいえー!ワタクシだってそのような事は考えたくはありませんの……!」

 

再び、黒子は美琴に抱きつく。

過剰なスキンシップである。

このスキンシップに嫌がる美琴は黒子を押し戻すのに躍起になっていた。

 

「だいたい、そんな事あるわけないじゃない!春上さんは転校してきたばっかだよ?確か……」

 

今日の昼間、佐天が春上にこんなことを聴いていた事を美琴は思い出していた。

“そう言えば、春上さんが前にいた第一九学区でもポルターガイストが多発していたんでしょ?”と……

 

「佐天さんがそんな事を……?確かに第一九学区ではポルターガイストは発生しておりませんの。変わりとばかりにここ第七学区で……」

 

一抹の不安が残る二人。

 

「偶然よ、偶然!」

 

美琴はその不安を無理やりにでも、取り除きたかった。

 

「あんな大人しい子がポルターガイストと関係するはずないじゃない!」

 

「ですわよね……我ながらどうも疑り深くなっていけませんわ。固法先輩からの電話ですが………アッ!!?」

 

黒子は固法との電話がポルターガイストの影響で、通話が強制的に切れてしまってからそのままの状態だった事を思い出す。

恐る恐る彼女に電話を掛ける黒子。

呼び出し音が数回鳴り、固法が電話に出た。

 

「あ、モシモシ?固法先輩?ご機嫌麗しゅう……」

 

『白井さんッ!!?アナタ今まで何をッ!!?無事なら無事と!だいたいね!アナタは………!』

 

白井は固法から電話越しにめちゃくちゃ怒られた。

それも黒子を心配しての怒りだった。

しかし、幾分勢いが凄かった。

電話の向こうの固法の様子が伝わって来そうなくらい……

 

「先に寝るね~お休み~」

 

美琴はどこ吹く風か……

怒られる黒子を無視し、布団に横になった。

 

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場所は変わり、ここは初春と春上の部屋……

病院での診察を終えた春上を詩音、佐天、初春が協力して部屋まで連れて来たのだ。

春上は寝間着に着替えベッドで眠っている。

 

「良く眠ってるね……」

 

「確かに……これでひと安心だね?」

 

「わざわざ二人には付き合ってもらって、すみませんでした。」

 

「気にしない、気にしない。別にアンタのせいじゃないんだし……」

 

「そうそう。それに初春さんのルームメイトは僕やルイコの親友候補なんだからね?」

 

詩音の言葉が嬉しかったのか、初春から笑みがこぼれる。

 

「でも、今日は何だか、紅月くんや佐天さんにお世話になりっぱなしでした……」

 

「「今日もでしょ?」」

 

見事にシンクロし、お兄さんお姉さん風を吹かせる二人。

 

「う~!」

 

二人のツッコミが気に入らない初春は小動物のように頬を膨らませていた。

 

「それにしてもビックリだよね?春上さん……あの地震のことを何も覚えていないなんて……」

 

「ええ……病院の先生が仰ってたように軽いショック状態だったんだろうって……」

 

「怖かったもんね……」

 

「はい……」

 

春上の事は初春に任せて、詩音と佐天は帰宅することにした。

玄関まで初春が見送りに出る。

 

「それじゃ、春上さんのことはしっかりと面倒見るんだぞ?」

 

「任せてください!あ、佐天さん。紅月くん……ありがとうございました。」

 

初春は二人の見送りを済ませて部屋に戻り、着ていた浴衣から寝間着に着替えようとしたとき、春上が目を覚まし起き上がった。

 

「あ、起きちゃいました?」

 

「ここは………」

 

「寮の部屋ですよ。気分はどうですか?何か飲みます?」

 

「大丈夫……もしかして、アタシみんなに迷惑かけちゃったのかな?」

 

「ああ、そんな事ありますよ。」

 

「アタシ、変なの……また、みんなに嫌われちゃうのかな?変わってるって……」

 

「そんな訳ないですよ。第一、春上さんには私がついています。あ、そうだ!紅月くんがお見舞いに良いものを買ってくれたんですよ?ちょっと、待っててくださいね?」

 

そう言うと初春は台所に向かうと何かを冷蔵庫から取り出し、手早く切り分け、お皿に用意した。

初春が持ってきた皿に乗っていた物は赤く熟した美味しそうなスイカだった。

スイカのお供にアジシオまで用意してある。

それを二人で仲良く頬ばった。

 

「うーん!甘くて美味しいですね。」

 

「うん……こんなに美味しいスイカははじめてなの……」

 

「このスイカ、熊本産なんですよ。紅月くんがたまたま自身の出身地のがあったから、学園都市で栽培されたのは味気ないいし、断然こっちの方が美味しいよって……」

 

「優しいの……初春さんと佐天さん、詩音くんも……みんな……アタシ一人じゃ何もできないの……ただ待つだけしかできないの……そんな自分が嫌なのに……変わりたいのに………」

 

春上の悩みを聞き、初春は少し思い詰めるがすぐに優しい笑顔を浮かべ、うつむく彼女を元気づける。

 

「大丈夫、変われますよ。私もみんなのおかげでジャッジメントになれました。春上さんにもみんながついてます。だから、きっと………!」

 

「変われるかな?」

 

「もちろん、私が保証します。さあ、いっぱい食べて元気出してください。」

 

「うん………」

 

初春と春上はその日の晩の内に、詩音が買ってくれたスイカを平らげてしまったと言う。

この話しを後々聞いた詩音はふと思った……

“アレ?僕が買ったのは確か3L玉(8kg以上9kg未満)のスイカだったような……”

 

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初春と春上の寮を後にした詩音と佐天は、二人並んで歩いていた。

二人が公園の前に差し掛かった頃……

 

「あっ……」

 

ルイコが立ち止まる。

 

「どうしたの?ルイコ……」

 

「下駄の鼻緒が切れたみたい……」

 

詩音が佐天の足元を見ると、彼女の言うとおり、利き脚である右側の下駄の鼻緒が切れていた。

 

「本当だね……だけど運が良かった。ちょうど公園の中で……ルイコ、僕が直すよ。」

 

「詩音くん、直せるの?」

 

「まあね。まずはキミを座らせないと……」

 

そう詩音は言うと、佐天をお姫さま抱っこで抱えると、公園内のベンチに座らせる。

そして詩音は、佐天から鼻緒の下駄を借りると直し始めた。

 

「詩音くん凄いね……」

 

「まあ、昔の……先祖の記憶を持っているからね……」

 

「あ、そうか。あの時代はみんな靴なんて履いてないもんね?」

 

「そう。だから、当時こういう事ができる男の人はポイント高いんだよ。」

 

「へぇ~って言うことは、当時の詩音くんはモテたんだ……」

 

「えッ!!?、別にそんな事ないよ////だいたい、あの時代の僕が愛したのは生涯一人だったよ。」

 

「そうなの?」

 

「うん、だけどその思いを寄せてた人は町娘だったから……」

 

「ダメだったの?」

 

「当時は身分やら世間体やら、色々厳しいからね。武士は特に……まあ、僕はその子と祝言を上げたけどね?」

 

「良かった……それで、そのお嫁さんってキレイ?」

 

「当たり前だろう?」

 

「どんな人?」

 

「美人で器量が良くて……それに町娘出身だけど身分の高い人にも怖じけ付くことないし、強いて言えばルイコみたいな………って、僕に何言わせるの!」

 

「ゴメンゴメン……だけど、やっぱり女の子として気になるじゃない?恋話ってさ……」

 

「もう……」

 

「でも、そのお嫁さんは私と似てるんだ……なんかテレるな////」

 

詩音は昔の恋愛話を話している間に、佐天の下駄の修理をしてしまった。

 

「どうかな?」

 

「凄ーい!ありがとう!詩音くん!」

 

「大したことないよ。それじゃ帰ろうか?」

 

「うん……////」

 

二人は手を繋ぎ、再び歩き出す。

 

「どう?調子は……」

 

「大丈夫みたい……」

 

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佐天を寮まで送った詩音は自身のウチに帰宅途中に一件の屋台の前に立ち止まった。

 

「お腹すいたな……」

 

詩音は屋台の暖簾をかき分け、木製のベンチ席に座る。

屋台には強面の店主と先客の女性が三人……

 

「らっしゃい。」

 

店主がぶっきらぼうに一言。

そして、詩音の手元に手早くおしぼりと割りばし、御通しが用意された。

 

「おじさん、オレンジジュース。」

 

「あいよ。」

 

「あとは乾きモノとかテキトーにお願い……」

 

「あいよ。」

 

詩音も慣れた感じで注文をする。

出されたおしぼりを手に取り、手を拭きながら何気に隣にいた先客にチラッと目がいった。

すると先客の女性の一人が詩音の目線に気がついたのか、こちらと目が合う。

 

「…………ッ!!?お前は!」

 

「黄泉川先生ッ!!?」

 

詩音が言ったとおり、なんと先客は“警備員(アンチスキル)”に席を置く黄泉川だった。

 

「小萌先生に鉄装先生も……奇遇ですね?」

 

「お前がどうしてこんな所にいるじゃんよ!!?もう完全下校時間は過ぎてるじゃん!」

 

「この格好で分かりませんか?今日は花火大会があったんですよ。それでポルターガイストに巻き込まれて……」

 

詩音は花火大会中起きたポルターガイストの経緯を話しながら、先に出されたオレンジジュースを飲む。

 

「そうか……大変だったじゃんか。ならば今日のことは目を瞑るじゃん。」

 

「ホッケ、お待ち……」

 

「あ、どうも……」

 

「大将、こっちには串盛り頼むじゃんよ。」

 

「あとは、テビチにチラガー、バイン・セオもお願いするですぅ♪」

 

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屋台で遅めの夕食を済ませた詩音は途中のコンビニで好物の“ハイメガプリン”を買って帰宅した。

浴衣を脱ぎ、シャワーを浴び汗を流すと、寝間着に着替える。

そして、寄り道で買ったプリンを持って書斎に行き、革張りの椅子に腰掛ける。

机に置かれたパソコンの電源を入れた。

起動したパソコンをいじり、詩音はあることを調べる。

 

「春上衿衣……レベル2の念話(テレパス)か。」

 

詩音は風紀委員長として、書庫(バンク)にあるデータベースに無制限にアクセスできる権限を持っていた。

その権限で調べたのは、転入してきた春上だった。

理由としては前述している黒子と同じ理由だ。

 

「受信専門のテレパスってことは、相手のAIM拡散力場への干渉は不可能ってわけなのか……」

 

プリンに舌鼓を打ちながら、春上のデータを詩音は見ていた。

そして、詩音は彼女のデータの備考欄の記述に目を止める。

 

「ただし、特定の波長下に置ける者との交信の場合、レベル以上の能力値になる………と言うことは、春上さんがポルターガイストを引き起こしている能力者に干渉している可能性も捨てられないと言うことか………」

 

その時だった。

詩音のケータイが鳴る。

 

「この番号は………モシモシ?ああ、アンタか…………」

 

次回に続く。




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