とある科学の刀剣使い(ソードダンサー)   作:御劔太郎

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投稿が遅れてすみませんでした。
前後編と少しバランスが取れず、後編が長くなってしまいました。


第31話 声 後編

花火大会の夜から2日が経った。

風紀委員第一七七支部にて……

支部の時計の針は昼前の11:30を差している。

詩音はいつものようにソファーに座り、愛刀“絶影”の手入れをしていた。

また、ジャッジメントではないが美琴と佐天もいつものように支部に入り浸っている。

佐天は電話で初春と話していた。

 

「自然公園?春上さんと二人で~?ズル~い!何で誘ってくれなかったの~?だいたい非番だと聞いてなかったし~ッ!」

 

どうやら彼女は、親友である初春から遊びに誘われなくて、少々不満そうだ。

 

『ハァハァ……すいません……ハァハァ……』

 

電話の向こうで話す初春の息が荒い。

佐天も不思議に思っている。

 

『ヘェヘェ……たまには……ハァ……ハァ……マイナスイオンも吸うのも………良いかな……って、ハァハァ……』

 

本当に辛そうだ。

佐天との会話がまるでなっていない。

 

「って言うか、マイナスイオン吸い過ぎじゃない?息上がってるよ?」

 

『え?……ハァハァ……荒いですか?……そんなことないですよ?』

 

電話の向こうでは、汗だくになりながら、初春が一生懸命にボートを漕いでいた。

初春はオールを持っているので両手が塞がっている。

その為、一緒に乗っている春上が彼女のケータイを持って会話をアシストしていたのだ。

 

「あ~あ……せっかく遊びに来たのにフラれちゃった……」

 

電話を切った佐天が愚痴る。

 

「ここは遊びに来る所じゃないんだけどね……」

 

佐天の愚痴に愚痴で返す固法……

 

「アハハハ………すいませ~ん。あ、何か冷たいモノでも買って来ましょうか?」

 

「え?そうね………じゃあ、冷やし中華と五目チャーハンとミックスフライと皿うどんと……あと………」

 

出るわ出るわ……いったいその体のどこに、これらの食料が入っていくのか検討もつかない。

 

「食べますね……」

 

佐天も苦笑いを浮かべている。

 

「あと、春巻きとか良いわね~生のヤツ……」

 

さらに追加……

 

「詩音くんは何か食べる?佐天さんお昼買いに行くんだって?」

 

「うーん、そうだな~?じゃあ、僕は白くまアイスをお願いしようかな?ノーマルはダメだよ?絶対プレミアムの方だからね。」

 

「えー!」

 

佐天は不満そうだったが、しぶしぶ買い物に出かけていった。

一方、黒子は美琴と共にノート型パソコンを使い、書庫へアクセスしようとしている。

 

「やっぱり、気が引けるわね?」

 

「しかし、春上さんへの疑念を打ち消すためにも、ここは……」

 

「そうね………」

 

そして美琴は、能力を使い書庫への不正アクセスを行った。

ハッキングにより、春上の個人情報が使用中のパソコンのディスプレイに表示される。

他人の個人情報を勝手に見ることは、世間体的には誉められることではない。

しかし、これは春上のためにやっている。

二人はそう割り切っていた。

そんな二人のもとへ詩音がやって来た。

 

「あれ?二人とも何してるんですか?」

 

パソコンに集中していた二人は、いきなり詩音に声をかけられて、ビクッと反応する。

 

「し、詩音ッ!!?」

 

「いきなり声をかけられてはビックリしますの!」

 

「ああ、ゴメン……それで二人して何を調べているんですか?」

 

パソコンを覗き込もうとする詩音。

 

「いや!別に何でもないわよ?」

 

「え、ええ……詩音さんには関係ないことですので……」

 

「そう言われると、なおさら気になるね……」

 

詩音は止める美琴たちを押し退けてディスプレイを見た。

そこに表示されていたのは春上衿衣の個人情報……

 

「ああ……二人はこれを見ていたんだね?」

 

詩音の声のトーンが重いモノに一気に変わる。

 

「悪いとは思っている……」

 

「ですけど……」

 

「別に謝ることはないさ。それとも何かい?僕がキミたちに謝罪を求めいると思ってる……?」

 

「あ、いや………」

 

いつもとは違う詩音の雰囲気に二人は押し黙ってしまった。

 

「それに僕自身、昨夜に彼女のことを調べたからね。春上さんはレベル2の“精神感応(テレパス)”……実用段階のチカラではないけど、油断はできない。ほらここ……特記事項欄を見て。特定波長下においては、レベル以上の能力を発揮する場合があるって書いてある。」

 

「ってことは……」

 

「ポルターガイストを起こしている能力者の中に春上さんと関係している人物がいるってことですの?」

 

「僕はそう思ってる。だから必要とあれば彼女には、僕から話を聞くことにするよ。御坂さんと白井さんは、この事に全く関与してない……それで筋を通すんだ。良いね?」

 

「そ、それって!!?」

 

「そうですわ……ッ!」

 

「言い訳は聞かない。春上さんに話しを聞く以上、初春さんからも何かしらの嫌悪感を持たれる。みんなの仲がバラバラになってしまうのは偲びない。って言うことで分かった?」

 

詩音は二人には無理やりにでも納得させた。

 

**************************************************************************************************

 

「うーーん!風が気持ちいいーー!」

 

自然公園に春上と遊びに来ていた初春は、池を一望できるベンチに座りお昼を食べていた。

春上は無心で海苔巻きを食べている。

 

「どうして、こういった場所で食べる海苔巻きは美味しいんでしょ~ハム………」

 

海苔巻きを食べている春上が唐突に話しを切り出す。

 

「この間の夜……初春さんが言ってくれたこと、私ずっと考えていたの……きっと変われるって……そして決めたの!私、変わって見せるの!」

 

「春上さん……」

 

「初春さんにはちゃんと話しておかなくちゃ……私、友達を探しているの。その子とは仲良しで、いつも一緒で……でも、ある日離ればなれになって……でも、その子と約束したの。“また会える”って……だから、待ってた。でも待ってるだけじゃダメなの……自分から探しに行かないと。こうしている時もあの子は……」

 

春上は大切そうに首からかけているペンダントを握っている。

その手を初春が優しく……でも力強く包む。

 

「分かりました!一緒に探しましょう!きっと見つかりますよ!」

 

そう言って春上を元気づける初春であった。

 

「初春さん…………」

 

しかし、ここで春上の様子がおかしくなる。

 

「春上さん……?」

 

昨晩の花火大会の会場で起きたポルターガイストの時と同じように何者かの声を感じとったのだ。

 

「どこ……?どこにいるの……ッ!!?何をそんなに苦しんでいるのッ!!?」

 

「春上さん?どうしたんですか?春上さん!」

 

初春の呼び掛けも完全に彼女に届いていない。

そして、初春は衝撃的な光景を目の当たりにする。

なんと池の上のボートが、5Mほどの高さに浮いているのだ。

しかも、そのボートには男女が乗っている。

言葉が出ない初春。

次に来たのは大きな揺れだった。

激しい揺れに立っている人は皆無、周りからは悲鳴ばかりが上がっている。

公園内に設置されたブランコは荒ぶり、倉庫は倒壊、植えられた樹木は地面ごと掘り起こされるカタチで倒れる。

まさに災害そのモノだった。

 

****************************************************************************************************************************

 

場所は戻り、第一七七支部の昼時……

皆思い思いに過ごしていた。

固法と詩音は食後のデザートにご満悦の様子。

美琴に黒子、それに佐天を入れた三人は楽しそうに談笑をしていた。

 

そこへ緊急事態を知らせるアラームが鳴る。

 

「ん?警報?何だろう?」

 

「さあ?」

 

固法が警報の内容を確認した。

 

「第ニ一学区の自然公園で……大規模なポルターガイストが発生ッ!!?」

 

その言葉に支部内が驚きに包まれる。

 

「え?その第ニ一学区の自然公園って、初春と春上さんがいるとこじゃないですかッ!!!」

 

詩音たちは自然公園へと急いだ。

 

**************************************************************************************************************************

 

ポルターガイスト後の自然公園では、MARが負傷者の救助や避難誘導、それに現場検証などの活動を始めていた。

陸空と迅速に負傷者を病院へと搬送する。

 

「被害状況は……?」

 

MAR隊長のテレスティーナは、通信で部下に確認を取る。

 

『負傷者72名。内、重傷者は18名。今のところ死亡者はありません。』

 

「分かった。引き続き救助作業へ当たれ……」

 

『は!』

 

「ふぅ……確かにこれじゃ普通の地震と区別つかないわね。」

 

現場を見た彼女は、率直な感想を吐露していた。

そんな時……

 

「いいから。キミも来なさい。」

 

「私は大丈夫です!私、ジャッジメントですから!まだ私にも出来ることがありますから!」

 

聞き覚えのある声の主は、MARの隊員と揉める初春であった。

 

「あなたはこの間の……?」

 

「テレスティーナさん?」

 

その後、初春はテレスティーナに説得される形で、近くの病院へと移動し、ケガをした膝の治療を受けることになった。

彼女からの連絡で、詩音たちもその病院へと向かう。

 

「初春さん!」

 

まず初春に声を掛けたのは美琴だった。

 

「皆さん………」

 

「大丈夫?ケガは?」

 

佐天が初春のケガを心配する。

 

「私はこの通り、少し擦りむいただけです……」

 

そう言って、初春がケガした膝を詩音たちに見せた。

 

「このくらい平気だと言ったんですけど……」

 

まだ笑顔を見せる余裕のある初春にホッと胸を撫で下ろす。

 

「それにしても、二度もポルターガイストに巻き込まれるなんて、アンタも春上さんもどんだけ………って、そういえば、春上さん?」

 

「先に搬送されたんで、どこかに……大丈夫、ケガはありません。ただ気を失っちゃって……」

 

みんなのやり取りを聞いていた詩音が口を開く。

 

「初春さん……ポルターガイストの直前、春上さんに変わった様子はなかったかい?」

 

「へ?」

 

「だから、この間の花火大会の時のような……」

 

「あの……いったい、何を言っているのか……」

 

この場を包む空気が変わる。

非常に気不味い感じだ。

 

「僕、色々調べたんだよね。春上さんの事……彼女はレベル2ながら、少し変わったテレパスの能力を持っているんだ。もしかしたら、あの時と同じように不審な動きを見せたとなれば……」

 

「何で………」

 

初春の声に静かにだが、怒気がこもる。

 

「何だい?初春さん……」

 

「何で、そんな事を調べたんですか?」

 

「何でって……」

 

「まさか……春上さんのことを紅月くんは、疑っているですか?」

 

「初春さんもおかしな事を聞くもんだ。そりゃあ、ジャッジメントとして当然じゃないか……」

 

詩音は自身が思っていることを、ストレートに口にする。

次の瞬間、初春が詩音の頬を平手で張った。

 

「「「ッ!!?」」」

 

美琴たちは驚愕する。

普段は温厚な初春が、怒りをあからさまにしているのを始めて見てしまった為だ。

 

「最低です。紅月くん……春上さんは転校してきたばかりで不安で、私たちを頼りにしているのに……それなのに!それなのに!」

 

「ちょ、ちょっと落ち着こうよ。初春……」

 

佐天があわてて、二人の仲裁に入る。

 

「あのね初春さん、詩音も別に悪気があった訳じゃないの……」

 

美琴も佐天に加勢した。

 

「そうですわよ、初春……あくまでも、詩音さんはジャッジメントとしての意見を………」

 

黒子もフォローに入る。

 

「白井さんも紅月くんの肩を持つつもりですか……」

 

しかし、春上のことに敏感になっている初春は、攻撃の矛先を黒子にも向けてしまった。

 

「い、いえ、そんなつもりは……」

 

今の初春には、何を言ったところで火に油だろう。

回りにいる他の患者からも注目の的になっていた。

 

「じゃあ二人とも同類です……白井さんとはゼッ…………ッ!!?」

 

次の瞬間、詩音は目にも止まらぬ速さで初春の胸ぐらを掴み上げた。

 

「うく………ッ!!?」

 

「初春飾利……それ以上の言葉は許さないよ。」

 

詩音の瞳には生気が感じられない。

その瞳に心底恐怖する初春……

 

「わ、私は……春上さんを傷つけるアナタたちが心の底から嫌いです!」

 

苦しみながらも、初春は怒りを爆発させる。

その言葉を聞いた詩音も怒りを爆発させた。

初春をその場に落として、腰から刀を抜く。

周囲から一気に人が履けた。

 

「僕を否定するのは構わないが、白井さんまで巻き込むつもりか?」

 

「私は何も間違ったことは言っていません!」

 

「そうか……」

 

「詩音さん!別にワタクシは大丈夫ですわ!」

 

黒子は詩音を止めようと必死になるが、そう簡単に行くはずもなく、美琴は最終手段として能力の行使を考える。

佐天はショッキングな光景に泣くことしかできなかった。

 

「初春飾利……最後に墓石には何て書いてやろうか?」

 

詩音の問に対して初春は……

 

「“馬鹿に着ける薬ない”とだけ書いといて下さい。」

 

と詩音のことを皮肉るように言い放った。

 

「減らず口を………」

 

詩音は刀を振り上げて、狙いを初春の首に定める。

 

「ダメ〰️〰️〰️ッ!!!!!!」

 

佐天は叫んだ。

美琴も覚悟を決めて能力を行使しようとする。

 

「はい。茶番はそこまでよ。」

 

詩音の振り下ろした刃が、初春の首もとスレスレで止まった。

 

「分かっていましたか……」

 

詩音は刀を鞘へと納める。

心臓が止まる思いをした一行……

声の主はMARの隊長のテレスティーナだった。

 

「ヒヤヒヤしたわ……」

 

「テレスティーナさん……」

 

「テレパスがAIM拡散力場の干渉者になる可能性は少なからずあるわ……ここはもう収容出来ないな。次は第一五学区の病院へ搬送させろ。」

 

「はっ!」

 

「あの……ッ!」

 

「ただし、それにはレベル4以上の実力が必要だし、よほど希少な能力と言わざる負えない……レベル2にその可能性はほとんど無いと思うけど、念のために詳しく検査した方が良いのかもしれない。そのお友達のお名前は?」

 

「春上衿衣さんです。」

 

「ッ!!!紅月くん!」

 

未だに怒りを抑えることが出来ない初春が詩音に噛みつく。

 

「被災者を一人そちらの研究所に送る。車を一台まわせ。」

 

テレスティーナは通信で春上の移送準備を指示した。

 

「あの!………」

 

「潔白を証明させるためだと思いなさい。大丈夫。ウチには優秀なスタッフが揃っているから安心して……それと病院内ではお静かに。」

 

テレスティーナに言われて、初春はようやく落ち着くことができた。

五人は春上と共にMARの研究所へと移動する。

 

***************************************************************************************************************************

 

春上はMARの研究所本部に到着すると、すぐに精密検査を受けた。

詩音たちは彼女の検査が終わるのを待つために、待ち合い室に用意されているベンチソファーに座っている。

ケンカをした詩音と初春は、同じベンチに座っているが、お互いに背を向け、一言も喋ろうとはしない。

黒子もずっとしょんぼりしている。

そんな険悪なムードを変えようと、気を利かせた佐天は、人数分の缶ジュースを買ってきた。

 

「はい。初春……♪」

 

佐天はジュースを初春に手渡そうとする。

 

「いりません………」

 

しかし、呆気なく断られてしまった。

 

「じゃあ、詩音くんは?」

 

「いらない……」

 

詩音も初春同様に、佐天の差し入れを拒否する。

 

「はあ~アンタたちねぇ……」

 

頑固な二人に呆れる佐天………

 

「じゃあ、私、スイカ紅茶を頂こうかしら?喉カラカラだし、ほら黒子も……」

 

この雰囲気に堪えられない美琴……

佐天からジュースを貰い、さらに落ち込む黒子のために別の一本を差し出した。

 

「お姉さま、申し訳ないですが、ワタクシはそう言った気分ではございませんの……」

 

黒子もジュースの差し入れを断る。

佐天と美琴は互いに苦笑いを浮かべていた。

そこへ、春上の検査を終わらせたテレスティーナがやって来た。

 

「検査が終了したわ。」

 

「あ、あの!春上さんはッ!!?」

 

テレスティーナに駆け寄る初春……

 

「慌てない……結果が出るまでには、もう少し掛かるの……ついてらっしゃい。」

 

そう言ったテレスティーナは五人をとある部屋へ案内した。

彼女が招き入れた部屋は、可愛らしい動物モノのインテリアで飾られている。

 

「何か……全然、研究所って言う雰囲気じゃないですよね?凄いセンスというか………?」

 

佐天は側にいる美琴に声を掛けるが、彼女からの返事ない。

 

「ん?……」

 

不思議に思った佐天が美琴を見ると、

 

「はぁ~~////……………」

 

ファンシーな置物に、まるで子供のような純粋な瞳を輝かせている美琴の姿があった。

 

「あぁ………」

 

「女がてらに災害救助なんてやっていると、こんな純粋な物が好きって、以外に思われるのよね……」

 

「じゃあ、これって……?」

 

「そう、私の趣味……さて、改めまして。先進状況救助隊付属研究所所長のテレスティーナです。」

 

テレスティーナは自身の役職を詩音たちに話した。

 

「「所長ッ!!?」」

 

美琴を佐天は、声を合わせて驚く。

 

「ってことは?MARの隊長さんで、研究所の所長さんで……えぇっと、あとは何ですか?」

 

「フフ、それだけよ。そういえば、白井さん以外はまだ名前を聞いていなかったわね?アナタは?」

 

テレスティーナは正面に座る美琴の名前を聞いた。

 

「私は御坂美琴です。」

 

「まさか、常盤台の?」

 

テレスティーナは驚いたリアクションを取る。

やはり学園都市最強のレベル5の名は伊達ではなかった。

 

「こんなところで、あの“超電磁砲(レールガン)”と会えるなんて光栄だわ。」

 

「あ、いえ……」

 

「で、そちらは?」

 

テレスティーナは美琴の隣に座る佐天に話を聞く。

 

「佐天涙子です。どうも……」

 

「アナタも常盤台?」

 

「いえ、柵川中学です。」

 

「御坂さんのお友達と言うことは、アナタも相当な能力者なのかしら?」

 

佐天に期待を持つテレスティーナ。

 

「あ……そういうわけでは………」

 

「まあいいわ。よろしく……」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

「それから………」

 

テレスティーナは佐天の隣に座る初春にも名前を訪ねようとしたが、初春は自発的に名乗った。

 

「ジャッジメント第一七七支部の初春飾利です!」

 

「よろしく。最後にそこのキミは?」

 

「僕は紅月詩音。一応ジャッジメントです。」

 

素っ気ない感じで詩音は自身の紹介をする。

 

「じゃあ、白井さんや初春さんと同じなのね?」

 

「そう言うことにしといて下さい。」

 

「あの!テレスティーナさん!」

 

「どうしたの?」

 

「あの!春上さんは干渉じゃ……犯人じゃないですよねッ!!?」

 

春上の検査結果が、早く知りたくて堪らない初春は、もどかしい気持ちでいっぱいだった。

 

「試してみる?」

 

テレスティーナの言った言葉の趣旨が分からなかった。

初春を始め皆の頭に?マークを浮かべる。

 

「好きな色は?」

 

そう言ってテレスティーナは、ジャケットのポケットからチョコレート菓子の入った円筒形の容器を取り出した。

 

「え?……何でも好きですけど、強いて言えば黄色とか……」

 

「黄色ね?」

 

テレスティーナは、お菓子の入った容器を数回軽く振り、容器の蓋を取る。

 

「手を出して……」

 

初春に手を出すように促した。

 

「何なんですか?」

 

テレスティーナの行動に、懐疑的な初春の手の平には、黄色のチョコレート菓子が一粒……

 

「あら、幸先良いじゃない♪着いてきなさい。」

 

「「「「「へ………?」」」」」

 

****************************************************************************************************************************

 

詩音たちは、テレスティーナの案内で、研究所内にある別の施設へ、移動していた。

途中、詩音たちがとある部屋の前を通り掛かる。

 

「詩音さまー!ワタクシです!婚后光子ですわー!」

 

その瞬間、詩音の名前を誰かに呼ばれたような感じがした。

 

「ん?誰か呼んだ………?」

 

「詩音くん。どうしたの?」

 

「あ、いや、別に………」

 

***************************************************************************************************************************

 

テレスティーナに連れられてやって来た場所は、春上の検査状況が見える場所だった。

下では、春上が仰向けの状態で機材備え付けのベッドに寝かされていた。

 

「春上さん!」

 

二階の特殊ガラス張りの部屋から初春の声は届くはずもない。

そんな彼女を尻目に、テレスティーナは部下の研究員に春上の検査結果を聞く。

 

「結果は出た?」

 

「はい。」

 

「どれどれ………?」

 

研究員に変わって、テレスティーナが結果を確認した。

 

「あの………」

 

「安心して……彼女は干渉者ではないわ。」

 

テレスティーナの言葉に、美琴と佐天はホッと胸を撫で下ろし、嬉しかったのか初春は笑みを浮かべている。

 

「確かに、彼女はレベル2のテレパス……しかも受信専門ね?自ら思念を発することはないわ。」

 

テレスティーナの説明に黒子の表情は浮かない。

詩音に至っては、未だに納得していない様子だ。

 

「だけど、“書庫(バンク)”に登録されたデータでは、特定の波長下では、例外的にレベル以上のチカラを発揮するとも記載されています。」

 

テレスティーナに対する詩音の質問に、初春はまたもや表情を険しくする。

 

「紅月くん!まだそんなことを!」

 

「テレスティーナさんはそこの所をどうお考えですか?」

 

「検査結果を見る限り、どうやら相手が限られるってことね。その相手だけは、距離や障害物の有無に関わらず確実に捕らえることが出来る。いずれにしろ、彼女がAIM拡散力場への干渉することは到底考えられない。不可能ね……」

 

テレスティーナは、詩音の質問にそう断言した。

 

「ほら!ほら!」

 

初春は詩音を責める。

非は明らかに、彼にあるのだと……

 

「僕は、ジャッジメントとして、ただ………」

 

「でも、だとしたら、本物の干渉者はいったい……」

 

美琴がそう言ったことを口にし、勘ぐり出した。

 

**************************************************************************************************************************

 

検査を終えた春上は個室のベッドで眠っていた。

彼女が目を覚ますのを詩音たちは待っている。

すると、春上が目を覚ました。

 

「春上さん?」

 

「ん……初春さん……私……」

 

「ああ、大丈夫ですか?無理はしないでください。」

 

自身の置かれている状況が、いまいち掴めず、不安な春上は御守り代りの大切なペンダントにすがろうとする。

 

「え?ない……私の……」

 

しかし、今の彼女の手元にはそのペンダントはなかった。

さらに不安を募らせる春上……

だが、春上のペンダントは初春が保管していた。

そっと彼女に手渡す。

 

「はい。これ、とっても大事な物なんですよね?」

 

「ありがとう、初春さん……このペンダントは友達との思い出なの……」

 

「友達って、春上さんが探してるって言う……」

 

「声が聞こえるの……」

 

「声?それってテレパスの……」

 

「たまにだけど……でもそれを聞いていると、ボーッとしちゃって……」

 

「じゃあ。花火大会や、今回の時も……?」

 

彼らの会話を聞いているテレスティーナの表情が一瞬だけ曇る。

 

「中に何か入っているんですか?」

 

「うん……」

 

春上のペンダントは写真を入れることが出来る、ロケットタイプの物だった。

その写真は、詩音が以前に木山春生と敵対した際、彼女への精神攻撃の一環として、用意した学園都市の表沙汰に出来ないデータに記載されていた少女の写真だった。

 

「枝先絆理……」

 

学園都市の裏事情も多少は知っていた詩音でも、さすがに驚いてしまい、思わず口を滑らせてしまった。

 

「え?詩音くん、絆理ちゃんのことを知っているの?」

 

「あ、いや……その……」

 

どう説明したら良いか分からず、珍しく戸惑う詩音。

周囲も困惑している。

 

「あのね……私も“置き去り(チャイルドエラー)”なの……」

 

次回に続く。




今回、詩音と黒子、初春の間には、深い溝が出来てしまいました。
果たして、三人は仲直り出来るのでしょうか?

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