とある科学の刀剣使い(ソードダンサー)   作:御劔太郎

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第33話 レベル6(神ならぬ身にて天上の意志にたどり着くもの) 後編

常盤台の寮を抜け出した美琴は、廃墟となった“先進教育局”にやって来ていた。

通用門は、厳重に貼られた立ち入り禁止のテープと共に、門戸は固く閉ざされ、回りはグルっと高い鉄製の囲いに守られている。

しかし、レベル5の美琴には何の問題もない。

 

「よし!これで変装も完璧!」

 

持参したゲコ太のお面で顔を隠し、周囲の目を確認すると能力でスルスルと囲いを乗り越えて、廃墟内に潜入していった。

廃墟の外観を探索し、次は内部の探索をするため、扉の電子ロックを解錠する。

だが、この廃墟には電気が来ていなかった。

 

「電気来てないんじゃ、コレ、要らなかったな……」

 

そう言って美琴は、ゲコ太のお面を外した。

内部の探索をしている内に彼女は、とある部屋まで来ていた。

中はかなりのスペースが確保されており、物々しい機材がいくつか放置されてある。

 

「多分、ここだ……」

 

美琴は察した。

この部屋が人体実験に使われた場所だと……

しかし、それ以上のモノはない。

 

「やっぱ、空振りか……」

 

美琴は残念に思ったが、ここで思いがけない出会いが待っていた。

この部屋を観察するために設置された上の階の部屋に光が入る。

明らかに自分以外の人物がこの廃墟にいると、美琴はその部屋に向かった。

 

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「何も残っていません……ええ、引き上げます。」

 

美琴がいた場所を見下ろすように造られた部屋にいたのは、勾留されているはずの“木山春生”であった。

美琴がその部屋の扉を勢い良く開ける。

 

「ああ……キミか……」

 

木山を見た彼女は驚いた。

 

「ど、どうしてアンタがここに……ッ?」

 

「さあな……ところで私に何か用か………」

 

「今回の事件もアンタの仕業なのッ?」

 

怒る美琴。

睨み付けるように、木山を見据える。

 

「だとしたら、どうする?」

 

美琴とは逆に木山は恐ろしく冷静であった。

落ち着いた様子で、美琴を挑発する。

一瞬の間が空いた。

怒りで回りが見えなかった美琴。

 

「許すわけ……ないでしょッ!!!」

 

その感情に任せて、電撃を放出する。

それが仇となり、廃墟となっていた施設が息を吹き返し、けたたましい音量で警報が鳴り響いた。

 

「えッ!!?ちょ……ッ!!?」

 

「はあ……やれやれ………」

 

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警報鳴り響く施設から抜け出した美琴は、木山の運転で別の施設に向かっていた。

 

「全く持って、やってくれたな……死んでいた施設に電気ショックとはな……」

 

「仕方ないでしょ……やった私が一番驚いているわよ。」

 

「フッ……彼から聞いたとおりのおてんばさんなんだな?」

 

「はあッ!!?いったい何のつもりよ。」

 

美琴は木山を睨む。

 

「そう怖い目をするな……せっかくの可愛い顔が台無しじゃないか。」

 

「はぐらかさないで!それよりも、アンタはどうしてあんな場所にいたの?誰が釈放したの?何が目的なの?」

 

木山を矢継ぎ早に問いただす美琴。

 

「私の車に乗るお嬢さんは、皆、怖い顔で質問するんだな。」

 

「はぁッ!!?」

 

「悪いが質問は後にしてくれ。運転に集中できないからな……」

 

20分ほど車を走らせ着いた場所は、とある病院だった。

 

「ここは……」

 

美琴も見覚えがある。

 

「こっちだ。」

 

裏口から中に入ると、木山がとある部屋に案内した。

 

「こ、これは……ッ!!?」

 

「私の教え子たちだ。キミことだから、私のことを誰から聞いたからあの場所にいたんだろ?」

 

「どういう意味よ。」

 

美琴は最大源に警戒する。

 

「御坂さんは察し悪いなぁ……」

 

その台詞とともに美琴の前に現れたのは、なんと詩音だった。

 

「えッ!!?どうして?どうしてアンタがここにいるの!」

 

詩音の登場で訳が分からなくなった美琴。

 

「簡単な理由さ……木山先生の保釈に許可を出したのは、この僕だからね……」

 

「いったい、どういう事ッ!!?詩音、アンタに木山を保釈するなんて権限、あるはずがないじゃない!」

 

「いや、彼にはあるよ。その権限がね……」

 

そう言って、現れたのは“カエル顔の医者”だった。

美琴もレベルアッパー事件の時に何度かあった事のある人物だ。

思わず頭に着けていた変装用のゲコ太のお面と見比べてしまう。

 

「キミも彼女に教えて上げたらどうだい?本当のことを……」

 

「そうですね……」

 

カエル顔の医者に促される形で、詩音が口を開いた。

 

「御坂さん……」

 

「何よ……!」

 

「この事は他言無用です。僕は風紀委員長……ジャッジメントを統括してます。それだけではありません……この学園都市の治安維持活動を一手に引き受けています。」

 

「う、嘘よ……いつもグータラしてるアンタがッ!!?今がどんな状況か分かってんのッ!!?冗談もほどほどにしないと……」

 

「残念だが、本当のことだよ。彼の持っている権限は凄まじい。キミがいくらレベル5の能力者だろうと、彼のチカラの前では抗えないよ。」

 

カエル顔の医者が淡々と話す。

 

「とは言っても、僕自身、まだ中学生だし色々と学校生活を楽しみたい……だから、この事は他の人たちには秘密にして下さい。」

 

「わ、分かった。私とアンタの仲だし?黒子たちには黙っといてあげるわ。」

 

「ありがとう……」

 

詩音は美琴に優しく微笑んだ。

 

「ッ////……それで?どうしてアンタは木山先生の保釈に許可したの?」

 

「レベルアッパー事件の後、木山先生のことを色々と調べていた時にとある項目が目に着いたんです。」

 

「何なの?」

 

「“能力体結晶”……」

 

「能力体結晶?」

 

「まあ、詳しいことはそちらの専門家の方々から説明をお願いします。」

 

「まず、暴走能力者の脳内では通常とは異なるシグナル伝達回路が形成され各種の神経伝達物質、様々なホルモンが異常分泌されているんだね。」

 

「それら分泌物質を採取し、凝縮、精製した物が能力体結晶だ。」

 

「木原幻生……彼が全ての始まりなんだ。」

 

「ヤツの目的はこの能力体結晶を使って、レベル6……すなわち、“神ならぬ身にて天上の意志にたどりつく者”を人為的に生み出すこと……」

 

「木山先生の教え子たちに行った人体実験“暴走能力の法則解析用誘爆実験”すら真実を隠す建前だったんだ。」

 

「実際に行われた実験は、能力体結晶の投与実験だ。」

 

美琴に衝撃が走った。

 

「そんな……レベル6なんて取っ掛かりも見つかってないようなモノために?そんなイカれた実験のためにこの子たちは、こんなにされたって言うのッ!!?」

 

美琴はやるせない気持ちでいっぱいになる。

だが、その気持ちをぶつける相手がいない。

 

「私にできることは、医者としてこの子たちを救うことだ。彼の協力もあったおかげで子供たちを集めるのに、そう時間は掛からなかった。」

 

「多少はごちゃごちゃしましたけどね……」

 

「彼や先生には、場所や設備など、色々と無理強いをしてしまった。協力してくれたことに感謝してます。」

 

「水くさいですよ。木山先生……」

 

「おかげで子供たちを目覚めさせる目処は着いた。」

 

「じゃあ、助かるの?」

 

「いや、別の問題が発生したんだ。」

 

「問題?」

 

「覚醒が近くと、AIM拡散力場が異常値を示した。」

 

「それって……」

 

「能力の暴走だ。そしてこの子たちは、RSPK症候群の同時多発を引き起こした。」

 

「なんで?」

 

「木原幻生の研究はそこまで進んでいたってことだよ。御坂さん……」

 

「彼の言うとおり、僕の知っていた能力体結晶ではポルターガイストなんて起こるはずがないんだ。だが、改良を加えられた能力体結晶は………」

 

「この子たちを眠りながら暴走能力者にしてしまっていた。」

 

「じゃあ、どうすれば良いって言うのよ!」

 

「暴走を鎮めるワクチンソフトを開発している。」

 

彼女の言葉に一条の希望が見えたのか、美琴に笑顔が戻る。

しかし、木山が発した次の言葉に美琴の表情が曇った。

 

「ただ、能力体結晶の根幹を成しているのは、ファーストサンプルと呼ばれる最初期の人体実験の被験者から採集・精製された成分だ……ワクチンソフトを完成させるには、そのファーストサンプルのデータの解析が必要なんだ。」

 

「もしかして、さっきの研究所にいた理由も……」

 

「ああ、そのデータを探していた。何も残されてはいなかったがね……でも、諦められるものか。あのデータは能力体結晶の研究に必要なモノだ。そう簡単には廃棄はされないはずだ。必ずどこかに……私は見つけ出して見せる!」

 

「でも、もしも、そのデータが見つからなかったら、どうするつもりなの?」

 

「その時は……この子たちを覚醒させる。」

 

「ッ!!?正気なの?そんなことしたら学園都市が崩壊するレベルでポルターガイストが起きてしまうのよ!」

 

「これ以上、この子たちを眠らせてはおけない!」

 

「だからって!そんな……ッ!」

 

その時だった。

この施設と外を隔てる扉が開く。

 

「そう、そんなことはさせない!」

 

現れたのは、MARのテレスティーナだった。

彼女の他にも駆動鎧(パワードスーツ)を着こんだ部下の姿もある。

 

「テレスティーナさん!」

 

「ゴメンね。後を着けさせてもらったわ……」

 

「えッ!!?」

 

「いったい……?」

 

「先進状況救助隊です。この子たちを保護します。おとなしく指示にしたがって下さい。」

 

「それは命令か?」

 

「ええ、もちろん。レスキュー隊として、この学園都市に被害を出させるなんて、言語道断。断固阻止させてもらいます。令状も用意していますが、我々としては自発的に引き渡してもらうと助かります。」

 

令状を受け取ったカエル顔の医者は中身を確認して、令状が本物であることを確認する。

医者の言葉に木山は歯痒さを隠しきれない。

 

「安心して下さい。我々は人命救助のスペシャリストです。能力者を保護し、治療する設備は整っております。」

 

「しかし……ッ!」

 

「あなたがアクセス出来ないデータも、我々なら合法的にアクセス出来ます。今、お話しになっていたファーストサンプルのデータも入手出来る可能性が高いのです。」

 

一時の沈黙がその場を包み込む。

美琴にしろ、木山にしろ、それぞれの葛藤があった。

その沈黙を断ち切るようにテレスティーナが部下へ指示を出す。

 

「保護しろ。」

 

その指示にパワードスーツを着こんだ部下たちが従い行動する。

 

「待ってくれ!」

 

子供たちを手放したくない木山は、テレスティーナたちMARに抵抗しようとした。

しかし、それは美琴によって妨害されてしまう。

 

「何のつもりだ。」

 

「気に入らなければ邪魔をしろと言ったのはアンタでしょ……」

 

「どけ!あの子たちを救えるのは私だけなんだ!」

 

木山の思いが爆発する。

 

「救えてないじゃない!」

 

感情の赴くままに美琴の発した一言は、木山を一撃で絶望の淵に立たせてしまった。

 

「レベルアッパーを使って、ポルターガイストまで起こして、まだ誰も救えていない……」

 

「あと少し、あと少しなんだ……だから!」

 

「枝先さんは“今”助けを求めているの。春上さんが私の友達が彼女の声を聞いているの……」

 

その後、MARによって木山の教え子たちは運び出させれ、運搬車に乗せられた。

研究所に戻ろうとするテレスティーナを美琴が呼び止める。

 

「あの!テレスティーナさん……ッ!」

 

「どうしたの?」

 

「あの………子供たちをよろしくお願いします。」

 

「もちろんよ。」

 

子供たちを乗せた大型車両が次々と出発していく。

それを見送る美琴たちであった。

 

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帰り道……

 

「御坂さん?」

 

「何よ……」

 

「あれが御坂さんの信じる正義ってことで良いんですよね……」

 

「何が言いたいの……」

 

「別に……」

 

互いにそれ以上は語ることはなかった。

 

次回に続く。

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