とある科学の刀剣使い(ソードダンサー)   作:御劔太郎

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第34話 あなたの目には何が見えていますか? 前編

MARに所属する研究所……

春上衿衣がいる部屋にテレスティーナが訪ねて来た。

 

「春上さん?お友達よ……」

 

春上はテレスティーナと共に別の部屋に向かう。

 

「あの……お友達って初春さんたちじゃないんですか?」

 

いつもとは違う雰囲気に戸惑う春上は、テレスティーナに尋ねたが、とうの彼女は「どうかしら?」はぐらかすばかりであった。

そうこうしているうちに、目的の部屋に到着し中に入る。

部屋の中には、春上と同じ年端の子供たちが、ベットに寝かせられていた。

春上はその子供たちの中に、知っている顔の娘を見つける。

 

「絆理ちゃん!!?」

 

そう、幼い頃からの親友“枝先絆理”であった。

ずっと探していた親友に会えた彼女の目から涙が溢れる。

しかし、春上の必死の呼び掛けにも枝先からは何も反応がない。

そんな二人を見るテレスティーナの表情は歪んでいた。

この世に溢れるあらんかぎりの悪意を集めたような笑みで、そっと春上の耳もとで囁く。

 

「大丈夫よ、春上さん……」

 

「きゃ……ッ!!?」

 

次の瞬間、電気的な強い衝撃が春上を襲った。

 

「うぅ…………」

 

意識が保てなくなった春上は、枝先のベットに突っ伏すような形で一度膝を付いてから、床に倒れる。

 

「テ、テレスティーナさ、ん………」

 

最後の力を振り絞り、テレスティーナの足首を掴み上を見上げると、彼女の右手にはスタンガンが握られていた。

 

「ど、どうして………」

 

春上はそのまま力尽き、気を失ってしまった。

 

「薄汚い手で私に触るんじゃネェよ……置き去り(チャイルドエラー)のガキが……」

 

テレスティーナは自身の足首を掴む春上の手を荒く振り解くと、部下に連絡を取る。

 

「始めんゾ……」

 

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第一七七支部には、詩音を除いたメンバーがいた。

 

「じゃあ、行方不明だった子供たちは全員MARの研究所に保護されたのね?」

 

「はい……」

 

固法からの質問に返答する形で、美琴から報告を受けたみんなは一同にホッとしていた。

 

「見つかったんだ……」

 

初春は拍子抜けしたような表情を浮かべていた。

 

「良かったじゃん!初春!」

 

初春の隣に座る佐天は彼女の肩を叩き、一緒に喜んでくれた。

 

「あ、はい……」

 

「でも、今回の事件にもあの木山が関係していたなんて……」

 

「子供たちが目覚めるなら、学園都市が壊滅しても良いなんて……メチャクチャにもほどがありますわ。」

 

黒子は心底呆れている。

 

「それで、枝先さんたちを起こす方法はテレスティーナさんたちが探してくれるんですよね?」

 

「え、ええ……」

 

あの時、詳しいことを聞く暇がなかった美琴は、佐天に対して歯切れの悪い返事を返すことしかできなかった。

 

「とりあえず、一件落着……ですわね。」

 

そう言って黒子は締めようとしたが、美琴の浮かない表情を不思議に思う。

 

「どうか致しまして?お姉さま……」

 

「え、いや……何でも……」

 

美琴の今の気持ちを見透かしたように黒子は代弁した。

 

「お姉さまのことですから、おおかたのところ木山春生のことをお考えになっていたんでしょ?『彼女から子供たちを取り上げて本当に良かったんだろうか?』……とか。」

 

「そんなこと……」

 

「お姉さまの判断は正しかった。黒子はそう思いますの……」

 

美琴の支えになろうと黒子は彼女の行った行為を肯定する。

 

「うん……ありがとう………」

 

心のモヤモヤは完全には晴れないが、黒子の心遣いに美琴は感謝をした。

 

「ですが…………」

 

次の瞬間、美琴を見る黒子の視線がお説教モードに切り替わる。

 

「へッ!!?」

 

「大概になさいませよ!お姉さま!怪しい場所に一人で乗り込むなんて……もしも、もしものことがお姉さまにあったら、ワタクシ!ワタクシ…………!」

 

黒子は説教ついでに美琴に対して過剰とも言えるスキンシップを取り始めるのだった。

 

「初春。何をボーッとしているのよ!」

 

「あ………いえ………」

 

「早く春上さんの所に行ってきなよ!」

 

佐天は初春の手を引き席から立つ。

 

「えっと、はい………」

 

ちょっと強引な佐天に戸惑う初春……

 

「あ、あの……!」

 

「春上さんも喜ぶよ!急げ!急げ!」

 

「ちょっと待って下さいよ~!」

 

初春はまだ頭の中の整理が着かないうちに、春上のもとへ向かうのだった。

 

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風紀委員会(ジャッジメント)本部……

詩音は自身の執務室で高級な革張りの椅子に腰掛け、ボーッと外の景色を眺めていた。

 

「何、黄昏ているんですか?委員長……」

 

書類を持ったつかさが部屋に入って来た。

 

「別に……」

 

ぶっきらぼうな返事を返す詩音……

 

「いい加減に彼女との仲を戻したらどうですか?」

 

「言われなくても分かってるよ……」

 

「ならば…………」

 

「えっと、謝るタイミングが、ね……」

 

「これだから、男は………この意気地無し。」

 

つかさは詩音に毒づくのであった。

 

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「春上さんの喜ぶ顔か……」

 

佐天に促され支部を出た初春は、春上の着替えなどの準備のために一度寮に戻っていた。

 

「えーっと、お菓子にゲーム、ジョイスティックにコントローラー、漫画と………」

 

必要な物を紙袋に入れて支度をする。

 

「あとは………着替え、着替えーっと。」

 

クローゼットを開けると、夏祭りの際に春上が着ていた浴衣が床に落ちた。

その浴衣を見た初春は、以前に春上が言っていたことをふと思い出す。

 

『待っているだけじゃダメなの……自分から探しに行かないと……』

 

彼女の願いが叶い、良かったと初春は思った。

しかし、この気持ちとは別に木山春生のことを考える。

そして、決心した初春は木山の所へ向かった。

 

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木山春生は、教え子を収容していた病院で物思いに耽っていた。

机の上には教え子である枝先万里のカチューシャが置かれている。

それを見つめる彼女はまるで蝉の脱け殻のようだ。

そんな彼女を誰かが訪ねて来た。

 

「先生……私、今は何も……」

 

訪ねて来たのは、あのカエル顔の医者かと思う木山だったが、実際にそこに居たのは初春であった。

 

「あ、あの………」

 

「キミか………」

 

木山は初春の方にチカラなく振り向く。

 

「私の友達に春上さんっているんです。まだ知り合って間もないんですけど、彼女……枝先万里ちゃんと幼なじみだったんです。春上さんはテレパスで、ポルターガイスト事件が起こるたび犯人じゃないかって疑われて……それでも一生懸命に枝先さんの声を聞こうとして……だけど枝先さんが見つかったから……だから……」

 

木山に伝えたい言葉が見つからず、うまく話せない初春。

 

「だから………春上さん、とっても喜ぶと思います。」

 

「何が言いたいんだ?」

 

「分かりません。分からないんですけど………」

 

木山はその場に座り込み、頭を抱える。

 

「もう少しでワクチンは完成するところだった。後はファーストサンプルさえ手に入れば、そうすれば子供たちの暴走を静め、目覚めさせることができた……目覚めさせることが……!」

 

絶望に沈む木山に涙した初春。

そんな彼女を救おうと決心した初春は彼女のもとに歩み寄り、肩に手を置くと声を掛けた。

 

「木山先生!そのデータを持ってMARに行きましょう!きっと役に立ちますよ!それで枝先さんたちに会わせてもらいましょう!」

 

「そんなこと………」

 

初春の必死の訴えにも、木山はネガティブな返事を返すだった。

 

「会いましょうよ!みんなで!会いましょう!」

 

普段おっとりしている初春からは想像できないようなチカラ強さで木山に訴え続ける。

その言葉に折れた木山は軽くため息を吐くと、重い腰を上げた。

 

「まったく、キミには敵わんな………」

 

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MARの研究所にやって来た初春と木山は、所長であるテレスティーナと会っていた。

 

「まあ、それで今までの研究資料を……?」

 

木山からテレスティーナに研究資料が渡る。

 

「それで、あの……枝先さんたちに会わせていただきたいんですけど………」

 

木山に続き、初春が申し出る。

 

「残念だけど無理ね。」

 

「え?…………」

 

まったく理解が出来なかった。

面会を断られる理由が見当たらない。

 

「子供たちは移送することになったの……ここよりも設備の整った施設に行くのよ。」

 

「どこの施設ですか?」

 

「それを教えることは出来ないわ。あの子たちのことはこちらに任せてちょうだい。」

 

明らかに何かを隠したがっているテレスティーナに木山は懐疑的な目で見る。

 

「私たちMARが責任を持って治して見せるわ……あ~そうそう、春上さんもいっしょだから……♪」

 

「どうして……?」

 

「だって、ずっと探していた仲良しの子が見つかったんだから、いっしょに居たいんじゃないかな?」

 

「でも……」

 

その時だった。

テレスティーナはポケットからチョコレート菓子入った筒を取り出した。

訳の分からない初春は戸惑ってしまう。

 

「さあ、選んで~?」

 

「え?……はい?……」

 

テレスティーナの言動に置いてけぼりを喰らう初春……

 

「アナタが選んだ色が出たら春上さんでも枝先さんでも誰でも会わせてあげる♪」

 

「えっと……ちょ……」

 

「仕方ないわね~?黄色にしとく?ハイ♪」

 

初春の手のひらにチョコレート菓子が一粒落ちた。

 

「あ~ら、ざんね~ん♪茶色♪」

 

「ふ、ふざけないで下さい!」

 

テレスティーナのふざけた態度に、初春は声を荒らげる。

 

「あら?私は真面目よ?」

 

テレスティーナは態度を正すどころか、ますます増長した。

彼女は、木山から受け取った研究資料をわざとらしく床に落とし、データの入ったUSBメモリを踏みつけ破壊したのだ。

 

「あら~ゴメンなさいね~♪」

 

突然のことにショックを隠しきれない二人……

怒りすらも込み上げてくる。

 

「どちらにしろ、こんなデータ役に立たないから。」

 

テレスティーナの二人を見る目は、とても普通ではない。

そこに彼女の部下らしき科学者がやって来た。

 

「お時間です。“木原所長”……」

 

「分かった、すぐに行く。」

 

「木原………」

 

木山はその名前に聞き覚えがあった。

そう、自身の人生を狂わせた元凶“木原幻生”と同じ名字だったのだ。

 

「あら?知らなかったの?私のミドルネーム……木原よ。」

 

テレスティーナは笑顔で答える。

 

「そう、木原……私の名前は“テレスティーナ・木原・ライフライン”よ♪」

 

「き、貴様ーーーーッ!」

 

彼女の名前を聞いた木山は、怒りに身を任せテレスティーナに掴み掛かった。

しかし、テレスティーナは慣れた手付きで木山を往なすと、彼女の髪を無造作に掴み、さらに木山の鳩尾に蹴りをお見舞いする。

 

「うぐッ!!?」

 

「木山先生ッ!!?」

 

うずくまる木山に初春は慌てて駆け寄った。

 

「木山先生!大丈夫ですかッ!!?……木山先生!」

 

初春は必死に木山を庇う。

さらにテレスティーナのもとには、パワードスーツを纏った部下が現れた。

 

「私たち忙しいの。さっさとお引き取り願えるかしら?」

 

テレスティーナが本性を見せる。

彼女は木山の髪の毛を二人見せつけるようにその場に捨てたのだった。

 

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場所は変わり、風紀委員第一七七支部……

 

「お茶どうぞ♪」

 

佐天は固法のデスクにマグカップを置く。

 

「ご機嫌ね?佐天さん♪」

 

「当たり前じゃないですか、固法先輩♪ポルターガイスト事件が一件落着したんですよ?また、みんなで遊びに行けるじゃないですか♪」

 

「そうね。アナタたち最近、ちょっとギクシャクして変だったけど、これでもと通りって感じ?」

 

「ですよね?白井さん?」

 

「ワタクシは、ずっといつも通りでしたわ。」

 

とは言っているものの、黒子も何かと思うところがあった。

佐天から自身のマグカップを受け取り、お茶をすする。

そんな彼女の姿を美琴はそばで見ていた。

そこへ詩音がやって来た。

 

「こんにちは。」

 

「詩音くん?」

 

「あ、ルイコ……いたんだね?」

 

「今日はやけに遅かったわね?今までどこに行っていたの?」

 

「すみません。固法先輩……ちょっと考えごとをしていて……初春さんいますか?」

 

「今はいないよ。春上さんの所に行ってるよ。」

 

「そう、ですか……」

 

「あ、そうだ!初春にいつ頃春上さん退院するのか電話して聞いてみよう♪」

 

佐天はケータイを取り出し、初春の番号に電話をかける。

彼女の電話が数回コールすると、相手の初春が出た。

 

「あ、もしもし?初春?」

 

何だか初春の様子がおかしい……

電話の向こうで彼女のすすり泣く声が聞こえる。

 

「もしもしッ!!?もしもし!初春!どうしたの……ッ!!?」

 

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「テレスティーナ・木原・ライフライン……そう言ったんですのッ!!?」

 

初春から理由を聞いた美琴たちは絶句した。

あれほど信用していた人が裏切ったのだから……

しかし、詩音だけはいつも通り平然としていた。

 

「アンタ、知っていたのね!!?」

 

「ええ、まあ……」

 

「どうして……どうして言わなかったァァ!」

 

美琴は感情に任せて詩音の胸ぐらを掴んだ。

 

「ちょ、ちょっとお姉さま!!?どうしたんですの?」

 

「そうですよ、御坂さん!」

 

この騒ぎに初春はより一層涙を流す。

収集の付かない状態を見かねた固法は声を上げて一括した。

 

「アナタたち!いい加減にしなさい!」

 

彼女の声に驚いた美琴たちは静まりかえる。

 

「ったく……ここで言い争っても埒が明かないってことぐらい分かるでしょ!」

 

「はい……すみません……」

 

美琴は詩音を解放した。

 

「それで昨日は何があったのか、話してくれるわね?」

 

「はい……」

 

美琴は昨晩の出来事をみんなに話した。

 

「じゃあ、その時に詩音くんがテレスティーナさんを止めていれば………」

 

「だから余計に腹が立つのよ……ッ!」

 

美琴は悔しさから、より一層拳を強く握る。

 

「それで、詩音くんはどうしてそんな事したの?」

 

「御坂さんの言うとおり、僕はテレスティーナの裏の顔を知っていた。だけど動こうにも、彼女はなかなか尻尾出さなかったんだ。」

 

「だ、だから……紅月くんはテレスティーナさんを泳がせて、さらに春上さんや枝先さんを利用して……」

 

「そうだよ、初春さん……否定はしない。」

 

「そんな、ワタクシはアナタを信じていたのに……」

 

「白井さんにも済まないとは思っている。以前、僕を庇ってくれたのに……すべて終わったら、気が済むまで僕を殴れば良いさ。僕は目的のためなら友人すら利用する最低な男さ……」

 

「ワタクシは、アナタを殴るとかそんなことを言わせたいんじゃありませんの!」

 

「そうだよ!自分を最低だとか殴れとか言わないで!」

 

「ルイコ……ごめん。」

 

「そうね。私もそんな弱気な詩音くんは見たくはないわ。それでキミは他に何か知っていることはあるの?」

 

「あります。木山先生が探しているファーストサンプルはテレスティーナが持っているはずです。」

 

「え?どうしてそんなことが言えるのよ?」

 

「能力体結晶の投与の最初の被験者は彼女ですから。」

 

「なんですって!!?」

 

「それにその後、彼女は幻生の助手としても一緒に働いていましたし……」

 

「と言うことは、テレスティーナは春上さんたちを利用して自身の研究を完成させようとしているのね?」

 

「ええ、事態は一刻を争います。」

 

「ならば、私が行きます!」

 

「お姉さま!!?それは危険ですわ!」

 

「でも、詩音が言うには事態は一刻を争うんでしょ?私ならば春上さんたちを助けられるかも……!」

 

そう言って美琴は支部を飛び出して行った。

 

「お姉さま!お待ちに………!」

 

「白井さん!御坂さんのことは僕に任せて!」

 

詩音も美琴に続いて支部を飛び出して行く。

 

次回に続く。

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