とある科学の刀剣使い(ソードダンサー)   作:御劔太郎

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第36話 真・刀剣使い(ソードダンサー)

モニターの明かりのみの薄暗い場所で、能力体結晶のファーストサンプルを眺めながら、テレスティーナは幼い頃の記憶に耽っていた。

 

『レベル6……?』

 

特殊な機械の上に横たわるテレスティーナが聞く。

 

『そう、レベル6だ……お前は学園都市の夢になるのだよ。』

 

「はぁ~♪ワタクシがこの街の夢に~」

 

この時の彼女はまだ何も分かってはいない。

ただただ祖父である木原幻生と学園都市のためになるという幸福感でいっぱいだった。

そんな彼女の頭部が機械に隠れる。

 

『そう、その礎になァ……!!!』

 

幻生の悪魔的に歪んだ表情を浮かべていた。

 

****************************************************************************************************************************

 

『イエローマーブルよりマーブルリーダー、現着しました。これより搬入を開始します。』

 

春上たちの輸送を担当していた隊からテレスティーナのもとに連絡が入る。

 

「了解だ。ブラウンマーブル?そっちはどうだ?青い車は着いて来ているか?」

 

『予定通りです。』

 

「さあて、茶番もしメェだ……盛大にフィナーレと行こうじゃネェか!」

 

陽動部隊からも予定が恙無く進行しているのを確認した彼女は自身も出撃した。

 

****************************************************************************************************************************

 

そして場所は変わり、木山春生はMARの大型車を単身追跡中である。

それがテレスティーナの仕掛けた罠とも知らずに……

 

「待ってろ、私が必ず……!」

 

一心不乱に追いかける彼女の車。

敵は頃合いと見たか攻勢に出る。

木山の目眩ましために走っていた2台のワンボックスカーが、それぞれ左右に履け、木山に道を譲った。

 

「ん……?」

 

次の瞬間、トラックの荷台が展開し、中から量産型の駆動鎧を纏ったテレスティーナの部下が現れ、木山に向けてグレネードランチャーを構える。

 

「な、に………ッ!!?」

 

絶体絶命の木山春生……

しかし、そこへ美琴がダイナミックに登場。

渾身の雷撃を走行中の高速道路に叩き込むと、その衝撃でトラックは横転、テレスティーナの部下たちは車外に放り出されてしまった。

木山は車を巧みに操り、間一髪トラックの横転に巻き込まれることなく難を逃れる。

 

「クッ……いったい何が!!?」

 

木山は車を止め車外を確認するとそこにはレベル5の御坂美琴とその相棒でレベル4の白井黒子が立っていた。

 

「ッたく、何が楽しいのか知らないけど……」

 

「手の込んだイタズラですわ。」

 

「何のマネだ!」

 

車を降りた木山が二人に強い口調で訊ねる。

 

「なぜ君たちがこんな所にッ!!?いったいどういう………ッ!!?」

 

木山が言葉を全部言い終わらないうちに、さらなる加勢がやって来た。

それはバイクに股がった固法と初春、そして佐天だった。

 

「木山先生!この車は囮です!」

 

「子供たちは乗ってません!」

 

「何だって!!?」

 

固法の駆るバイクの後にタンデムしていた初春と佐天は、バイクから急いで降りると、次は木山の車に無理矢理乗り込む。

 

「うわッ、狭ッ!!?初春、おも……ッ!!?太った?」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないですよ!」

 

「キ、キミたち!」

 

「早く乗ってください!私がナビします。」

 

「急いで!子供たちを助けるんでしょッ!!?」

 

木山は戸惑う。

大切な教え子を助けたいが、同じように美琴たちを危険な目には合わせたくはない。

 

「行って!」

 

戸惑う彼女に美琴は自身の思いを伝える。

 

「しかし……!」

 

「迷っている暇はないわ!ここは私たちに任せて……!早くッ!!!」

 

「………すまない!」

 

美琴の強い意思に押し負けた木山は車に乗り込み、初春のナビをもとに目的地へと急いだ。

車を見送った美琴と黒子は、トラックをにらみ付ける。

トラックから敵がわらわらと出てきた。

敵も駆動鎧を着込んでいたおかげで、あの横転事故でもほとんど被害がないようだ。

 

「さあて、いっちょやりますか…………って、」

 

やる気満々の美琴たちの目の前に、2機のMAR所属のヘリコプターが防音壁越しにいきなり現れる。

 

「ええェェーーーッ!」

 

レスキュー用のUH-60ヘリコプターには機首下部に米国製M134ミニガンと高性能センサー、左右のスタブウイングにはミサイルにロケットランチャーが特設され無理矢理にガンシップへと転用されていた。

これは予想外だった。

おそらく、高速道路の防音壁に沿って低空飛行で接近したのだろう。

これには美琴たちも驚いていた。

しかし……

 

「ありがとう、詩音さん。ここでよろしくてよ。」

 

一台の車から降りてきたは上品な振る舞いをする女性が横転したMARのトラックに手をそっと添える。

すると、次の瞬間トラックはとてつもないスピードで宙を舞い、美琴たちに射撃を加えようとしていた1機のヘリのテイルローターに直撃させ、バランスを崩すとそのまま2機目に接触、縺れ合うように2機は墜落した。

 

「今の如何わしい能力は……ッ!!?」

 

黒子はヘリを撃墜した人物に大方の検討を付いていた。

そこにいたのは、彼女と同等の能力レベルを持つ婚后光子。

 

「真打ち登場とでも申しましょうか?ここはワタクシの能力、エアロハンドの見せ所のようですわね!」

 

堂々とした立ち振舞いをしつつ、自身愛用の扇子で上品に口元を隠し口上を述べる。

 

「こ、婚后さんッ!!?」

 

「僕もいるよ~♪」

 

婚后の右側に立ったのは詩音。

 

「あと、助っ人だよ~!」

 

詩音の紹介で婚后の左側に立ったのは、なんと風紀委員会副委員長の“瀬田つかさ”だった。

 

「つかさッ!!?」

 

驚いた固法は思わずヘルメットのカバーを開けて、改めて確認する。

 

「ヤッホ~♪」

 

「固法先輩、あの人と知り合いなんですか?」

 

「ええ……私の通っているジムの仲間で友達なの。白井さん、あの子もアナタと同じレベル4よ。」

 

「えッ!!?そうなんですのッ!!?」

 

「彼女もまたあの婚后さんと同じ系統の空力使いよ。」

 

「そうなんですの。」

 

「それにしても、アナタって、車の免許を持ってたのね!」

 

「まあね~♪」

 

「それにその車は?」

 

固法の言うとおり、詩音たちの乗っていた車はアンチスキル所有の某国産のスポーツカーであった。

 

「ちょっとアンチスキルから拝借してきました♪」

 

悪怯れる様子のないつかさ。

 

「まあまあ固法先輩、車のことは僕に任せて今は目の前の敵に集中しませんか?後顧の憂いを絶つためにも……ね♪そうでしょ?御坂さん!」

 

「何だか腑に落ちないことだらけだけど、確かに今はコイツらを突破しなきゃ!」

 

美琴に電流が走る。

しかし、彼女は黒子の能力“テレポート”によって固法のバイクのタンデム席に座らさせた。

 

「え?ちょっ、黒子ッ!!?」

 

「ここはワタクシたちが引き受けますの!」

 

黒子は自身の通学用の鞄から長い皮ベルトに大量ストックした鉄製ダーツを取り出す。

 

「お姉さまは木山春生にお力添えを!」

 

「黒子……分かった!ちゃんと付いて来なかったら承知しないからね!」

 

「ッ////……ワタクシをお姉さまのパートナー!白井黒子と知ってのお言葉ですの!」

 

「ちょっと白井さんッ!!?人の決め台詞を取らないで下さいな!」

 

コントのようなやり取りをしている間に敵は態勢を立て直し、銃口を詩音たちに向けた。

 

「えッ!!?きゃあァァー!!!」

 

先ほどの堂々とした婚后とは違い、敵を目の前に逃げ出す。

 

「白井さん!みんな!行くよ!散開ッ!!!」

 

詩音の合図を皮切りに黒子、つかさ、婚后の四人はMARの陽動部隊との戦闘に入った。

 

「固法先輩!」

 

「オッケー!」

 

黒子たちが戦闘状態に入ったことを見送った美琴は、固法の操るバイクで先に向かった木山春生の車を追うのだった。

 

「さあ!行くわよ!」

 

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詩音たちは高速道路上でテレスティーナの部下たちと激しい戦闘を繰り広げていた。

 

「剴鳥・鍔鳴り!八連!」

 

詩音の繰り出す飛ぶ斬撃が敵を次々と斬り伏せる。

 

「私も委員長に負けてはいられませんね。」

 

つかさは能力で空気の足場を作り、それを利用することで爆発的な加速力を生み出し敵に肉薄した。

 

「“圧縮爆弾(バースト・ボム)”!」

 

懐に飛び込んだつかさが腹部に手をあてがった瞬間、敵は高速回転しながら吹き飛ぶ。

つかさの能力は“空気銃(エアーガン)”……

空気の弾丸を音速の3倍で撃ち出すことができ、さらに能力の応用も幅広く、空気の層を足場に縦にも横にも自在に高速で移動、威力も任意で調整が可能だ。

ちなみに最大威力は戦車をも吹き飛ばす。

 

黒子はダーツをテレポートで敵の重火器に転送し誘爆を誘う。

婚后光子も能力で敵を次々と無効化していた。

しかしながら、敵の数はまだまだ多い。

 

「いったい、どれだけ出てくるんだか……絶技、爆爪閃裂撃!」

 

詩音の放った一閃は進路上にいた五人の敵を吹き飛ばす。

 

「キリがないな……つかさちゃん!」

 

「何でしょう?委員長。」

 

「あと、頼める?」

 

「委員長のためなら……」

 

つかさの了承を取った詩音は自分たちの乗ってきた車に向かって走り出した。

 

「ちょっ、詩音さんッ!!?いったいどこへ?」

 

黒子の言葉に耳を傾けることなく、縮地を使い車にたどり着くと運転席に乗り込み、エンジンを始動する。

そして、慣れた運転で黒子のもとへ向かった。

補助席側の窓が開き、詩音が黒子に声をかける。

 

「白井さん!乗って!」

 

「詩音さんッ!!?どうして……」

 

「いいから!あとはつかさちゃんがどうにかしてくれるから!」

 

「ええ……あとは私とアナタのお友達に任せて下さい。空気弾(エアロバレット)!」

 

「わ、分かりましたわ!あとはお願いしますの!」

 

黒子は詩音の隣に乗り込んだ。

彼女が乗ったのを確認すると、詩音は車を急発進させて先に行った美琴たちを追いかける。

 

「えッ!!?詩音さまと白井さんはどちらに行かれましたのッ!!?」

 

「二人は先に行ったみんなのもとへ向かいました。ここの守りは私とアナタの肩に掛かっています。申し訳ないけど、アナタにはもう一勝負付き合ってもらいますからね?」

 

「………もちろんですわ!と言うか、そのお言葉!ワタクシを婚后光子と知って言ってますのッ!!?」

 

二人は敵のもとへ走り出した。

 

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美琴たちを追いかける詩音と黒子。

 

「詩音さんって、車の運転が出来たのですか?」

 

「まあ……ね、学園都市に来る前に父さんに教えてもらったから。」

 

「詩音さん。アナタは何者ですの?以前はスキルアウト摘発のためにアンチスキルを動かしたりしてましたよね?」

 

「白井さん、それ以上は探らない方が良い。これは友達としての忠告だよ。」

 

詩音の横顔に異様な雰囲気を感じた黒子は、彼に対するそれ以上の詮索をすることはなかった。

しばらく走ると前方の道路が大きく寸断されていた。

やむを得ず詩音を車を止める。

二人は車から降りて道路の裂け目を見た。

 

「詩音くんッ!!?どうしてここにッ!!?」

 

裂け目の向こう側には固法がいる。

 

「後ろはつかさちゃんと婚后さんに任せてきました!それにしても、この大きな裂け目は何なんですかッ?」

 

「テレスティーナよ!彼女、大型の作業機械で……」

 

なんとテレスティーナは自身の組織で所有していた大型作業機械で美琴たちに奇襲を仕掛けて来たのだ。

 

「詩音さん?これでは向こうに行けませんの!」

 

焦る黒子。

しかし、詩音は極めて冷静だった。

 

「白井さん、乗って!」

 

「えッ!!?何を言ってますのッ!!?見て分からないですか?この大きな裂け目……向こうに行くのは不可の………」

 

「ここのコブをうまく使えば……大丈夫。行ける……!」

 

詩音にはこの割れ目を越える自信があった。

彼の自信に満ちた表情を見た黒子は察する。

 

「まさかとは思いますが……」

 

「ふふ~ん♪」

 

そう、詩音はこの大きな裂け目を飛ぶつもりだ。

車内に戻る二人を見ながら、固法も黒子同様に彼が何をするのか察する。

詩音は車を300mほど後退させた。

車のエンジンを拭かせる詩音。

3.8リッターV型6気筒エンジンが唸りを上げる。

 

「本当に行きますの?」

 

「もちろん、じゃないと前のみんなに追い付けない!」

 

一言言った詩音の目付きが変わった。

そして、彼はギアを1速に入れる。

アクセルを一気に踏み込み、タイミング良くクラッチを離すと、車は一瞬横滑りして発進した。

強いGによって二人は座席に押し付けられる。

2速3速とギアを上げていった。

 

「詩音さん!詩音さん!本当に大丈夫ですのッ!!?」

 

黒子の顔はひきつり、心底、心配でならない様子。

 

「大丈夫!僕を信じて!」

 

道の裂け目まで120mのところで詩音の車の速度は時速200km近くになっている。

詩音は車を操り、狙ったとおり車はコブに乗り上げた。

次の瞬間、車は宙を舞う。

 

「ひゃああーーーッ!!!飛んでる!ワタクシたち飛んでますわぁーーーッ!!!」

 

20mほどの裂け目を飛んだ車は、強い衝撃のもと無事に着地した。

 

「もう、アナタの運転する車には絶対に乗りませんからね……!」

 

黒子は顔は、ちょっと死んでいた。

 

****************************************************************************************************************************

 

時間は少し戻り、詩音たちがテレスティーナの部下と戦っていた時、木山の車は初春のナビゲーションで目的地に向かっていた。

その後方には、いつの間にか美琴を乗せた固法の駆るバイクがいる。

 

「さっきの部隊が出発したあと、民間を装った輸送車がMARの本部から出て行くのを、アンチスキルの監視衛星から目撃されていました。おそらく……」

 

「そちらが本物。私はまんまとダミーを掴まされていたと言うわけか……くッ!」

 

「急ぎましょう!そいつら、もう目的地に着いてるみたいなんです!」

 

「場所はッ!!?」

 

「二十三学区の使われていない推進システム研究所!この先の分岐を左に……ッ!」

 

木山は初春の言うとおりに車を走らせた。

しかし、この動きはテレスティーナに筒抜けだった。

 

「ほぉ……良いねェ、やるじゃねェかァ……最もそのくらいやって貰わねェと…………」

 

次の瞬間、道路が崩落し、下からテレスティーナの駆る“大型作業機械(ワークローダー)”が現れる。

 

『ブッ殺しがいがねェもんなァァーッ!!!』

 

透視能力者の固法はいち早く異変に気づいて、回避行動を取ろうとしたが、あと一歩間に合わず、美琴を乗せたまま大きくジャンプしてしまった。

 

「行って!御坂さん!」

 

咄嗟に彼女は美琴を一本背負いの要領で前方に投げる。

 

「こ、固法先輩ッ!」

 

投げられらた美琴は、電撃を木山の車に向けて放ち、電磁石の要領で車の屋根に着地した。

彼女の着地した衝撃で車が揺れる。

 

「「キャッ!!?」」

 

「何ッ!!?今のッ!!?」

 

『ほらほらァッ!命懸けで逃げねェと……』

 

テレスティーナの駆る作業機械に設置された外部スピーカーから、彼女の悪態をつく声が大音量で聞こえた。

 

『ペシャンコになっちまうぞォッ!!!』

 

「あの女か……ッ!」

 

木山は苦虫を潰したような表情となる。

トントン……何やら彼女の車のガラスを外から叩く音がした。

なんとガラスを叩いていたのは、美琴だった。

 

「えッ!!?御坂さんッ!!?」

 

最初に声を出したのは、佐天……

 

「何してんですかッ!!?こんな所で……ッ!!?」

 

初春も驚く。

ガラスが下がると、美琴の声が良く聞こえるようになった。

 

「もっと、スピード出してッ!」

 

「言われなくてもやっている!」

 

「ごめん……私、間違ってた。」

 

唐突に美琴が木山に謝る。

 

「気にするな。私も立場が違えば、同じことをしていたさ……」

 

木山の言葉に美琴も心にあった重石が取れたようだった。

表情が軽くなり、気合いのこもった瞳になる。

 

「この失敗埋め合わせは……」

 

美琴は屋根の上にたち、鋭い眼光でテレスティーナを睨み付けた。

 

「ここで……するからァァーーッ!!!」

 

叫んだのと同時に、テレスティーナの作業機械に向けて電撃を放つ。

しかし、テレスティーナの作業機械は対電対策をしているせいか、美琴の電撃にびくともしない。

 

「私の電撃が弾かれるッ!!?」

 

『アギャハハハハッ!!!』

 

彼女の電撃を防ぐテレスティーナは下品に笑った。

 

『そんな攻撃がこの私に効くとでも思ってんのかァッ!!?』

 

テレスティーナが攻撃体勢を取ろうと車との距離を詰める。

しかし、間髪入れずに美琴はポケットから取り出したゲームセンターのコインを指で弾き、コインが宙を舞っている間に狙いを見据えた。

彼女の得意技“超電磁砲(レールガン)”を放つ気だ。

 

「アレか……」

 

テレスティーナは瞬時に状況を見極めて、作業機械を巧みに操り、急ブレーキで距離を放す。

するとどうだろう、美琴のレールガンはテレスティーナに届くことなく消滅した。

彼女がレールガンとして使うコインはステンレス製で熱に弱く、最大射程は50mが限界だった。

 

「なッ!!?よけたッ!!?」

 

『分かってんだよ!テメぇのレールガンの射程が50mしかねェッつうことも含めて、テメぇのデータは丸っと書庫(バンク)に晒されてるんだからな!』

 

テレスティーナが反撃する。

作業機械のアームをロケットパンチよろしく飛ばしてきたのだ。

しかし、彼女の攻撃も木山の運転で当たることはなかった。

 

「何てヤツ……!」

 

美琴は電撃やレールガンを防がれて悔しそうにする。

一方、車内では木山が初春のナビをもとに、第二十三学区に向けて分岐を曲がっていた。

 

『コレじゃあ、ずっとこっちのターンのままだなァッ!』

 

外ではテレスティーナが下品に喚く声が聞こえる。

その時、初春が詩音から預かっていたヘッドセットから、アンチスキルの通信が入ってきた。

 

「つ、通信……?」

 

「どうしたの?初春?」

 

「アンチスキルからの通信です。今、スピーカーに出しますね!」

 

初春はヘッドセットに聞こえるアンチスキルの通信内容を自身のノート型パソコンのスピーカー機能を使い、木山にその通信を聞かせる。

 

****************************************************************************************************************************

 

 

「チョロチョロと……マジでネズミみたいだな。」

 

作業機械を操るテレスティーナは木山の車の進路をマップデータと照らし合わせる。

そして、先に分岐入り口付近で待機しているはずの部下たちに命令を出した。

 

「まあ良い。グリーンマーブル?そっちへ行ったぞ。潰せェ!」

 

『こ、こちら!グリーンマーブル!』

 

通信の向こうの部下の様子がおかしい。

何やら銃撃戦の音がする。

 

『只今、アンチスキルからの攻撃を……ッ!うわぁッ!』

 

「ああ?どう言うことだッ!!?」

 

先回りして待機していた部隊は、出動した黄泉川の指揮するアンチスキルの分隊に頭を抑えられていた。

 

「こっから先は一歩も通さないんだからァァーッ!!!」

 

黄泉川の同僚である鉄装綴里もアサルトライフルを構えて勇敢に戦っている。

 

「そうだ!こっちの分岐は私たちが抑える!悪いが上からの圧力が強くて、これが精一杯じゃん!」

 

『どうして……アンチスキルが……』

 

通信の向こうの木山は言葉を詰まらせていた。

 

「良いから!とっとと子供たちの所に行くじゃん!」

 

『す、すまない………』

 

テレスティーナの野望を阻止し、囚われの子供たち助けるためにみんなの心が一つになっていく。

 

「チッ!役立たずのゴミどもが……ッ!」

 

テレスティーナは徐々に劣勢になっていく状況が面白くなかった。

 

『だったら、自分でヤってやるよォォーッ!!!』

 

悪態をつきながらも、彼女は作業機械を操り射出した腕部をパージすると、予備の腕パーツをつけ直しさらに一気に加速して美琴との差を詰める。

 

「しっかり、捕まっていろ!」

 

車の窓が開き、木山が叫んだ。

次の瞬間、テレスティーナは作業機械の巨大な腕で美琴もろとも車を叩き潰そうと何度も振るう。

それを木山はハンドルとブレーキ、アクセル操作で巧みによけて見せた。

二発目のロケットパンチもかわして舞い上がる土煙から木山の車とテレスティーナの作業機械が勢い良く飛び出す。

それに続き一台のアンチスキルカスタムのスポーツカーが現れた。

そう詩音が運転している車だった。

 

「アンチスキル……なぜこんな所に?」

 

バックビューモニターに映る映像には詩音の駆るスポーツカーがいる。

テレスティーナの気を引くために、詩音はサイレンをならしていた。

 

「マジで、うぜェェ……!」

 

詩音を止めるためにテレスティーナは、作業機械に搭載されているスペアの腕を投棄する。

 

「前のを潰すのには一発残ってれば良いんだよォッ!」

 

投棄された腕パーツが回転とバウンドをしながら、詩音と黒子の乗る車目掛けて迫ってきた。

 

「詩音さん!前ッ!前ェェーッ!」

 

「任せて!」

 

詩音はどこで培ったテクニックかは分からないが、腕パーツが跳ねたタイミングを見計り、車を横滑りさせながらギリギリのところでくぐり抜ける。

そして、体勢を立て直し再び加速するとテレスティーナの作業機械の股下をくぐり抜け、そのままテレスティーナの前に踊り出て木山の車の左側に並んだ。

 

「この車、確か詩音が乗ってたヤツよね……アイツが連れて来た助っ人の人が運転しているかしら?」

 

美琴はてっきりそうだと思った。

しかし、運転側の窓が開き詩音が顔を覗かせる。

 

「し、詩音ッ!!?」

 

「ヤッホー♪」

 

「アンタ、車を運転出来たのッ!!?」

 

「まあね♪昔取った杵柄だよ♪」

 

車を運転する詩音の姿に驚いたのは美琴だけではなかった。

 

「本当にキミは……」

 

「えッ!!?えッ!!?佐天さん!紅月くんが車を運転してますよッ!!?」

 

「う、初春……!狭いんだから、あんまり動かないで……って!」

 

「苦戦しているみたいですね、御坂さん!」

 

「ウッサイわね!じゃあアンタにアレがどうにか出来るのッ!!?」

 

「もちろんですよ。」

 

そう言って詩音はシートベルトを外す。

 

「ちょ、ちょっと詩音さんッ!!?いったい何をするつもりですのッ!!?」

 

隣に座る黒子には、状況が分かっていない。

 

「テレスティーナを斬ってくる……」

 

「無茶苦茶な!テレスティーナはアレに乗っている以上、無理がありますわ!それに貴方がこの車を離れれば、誰が運転しますのッ!!?」

 

「白井さん……当たり前じゃん。」

 

至極全うだが、無茶苦茶な要求をする。

 

「無理ですわよ!ワタクシが運転なんて!」

 

「ここまで来たんだ!女なら覚悟を見せろ!」

 

詩音は黒子にハンドルを持たさせる。

 

「僕は外に出るから、一番右側のペダルはアクセル。真ん中がブレーキ。左はクラッチ……クラッチの操作は今は必要ないから。あとは任せたよ!」

 

運転を変わった詩音が車外に出て走行中の車の屋根の上に立った。

そして、詩音は愛刀の“絶影”を静かに抜き放つ。

炎天に輝くの太陽の光に絶影の刃が煌めく。

 

「絶影……終わらせるよ。」

 

絶影の刀身を利用し、詩音は自身に瞳術を掛けた。

 

「我は最強……我に斬れるモノ無し!二階堂兵法、心の一方!影技“氷鬼憑神の術”!」

 

次の瞬間、詩音の中に眠る修羅が目を醒ます。

彼の血肉は沸き踊り、限界を超えた毛細血管は破裂し、涙腺や鼻から流血した。

 

「行くぜェェェーッ!!!」

 

詩音は一度刀を鞘へ戻し、鍔に指を掛けると車の屋根を勢い良く蹴って時速150km以上のスピードで走る車から飛び降りると、そのままテレスティーナの元へ向けて駆け出す。

 

『死にに来たカァーッ!!!』

 

テレスティーナは本命である美琴たちの為に取って置いたロケットアンカーを詩音に向けて放った。

 

「鍔鳴り、5連!」

 

「キン!」と言う鍔と鞘の当たる音が聞こえたかと思うと、テレスティーナの放ったロケットアンカー粉砕される。

 

『斬った、だとォッ!!?』

 

あり得ない光景にテレスティーナは絶句していた。

 

「これで終わらせてやんよ。絶技ニノ型“妖華狂月爪”ッ!!!」

 

詩音がテレスティーナの駆る作業がすれ違う様に交差した瞬間、彼女の作業機械は大爆発する。

全体力を使い切った詩音はその場に倒れた。

引き返して来た、木山たちは唖然としている。

 

「凄い………」

 

車から降りた佐天は、倒れた彼を見つけると抱き起こした。

 

「し、詩音くん!」

 

「ル、ルイコ……」

 

「大丈夫?どうして、こんな無茶をしたのッ!!?」

 

痛々しい詩音の姿に涙ぐむ佐天。

 

「ゴメン……心配かけたね。」

 

「ありがとう……キミのおかげで…………」

 

「木山先生、まだ終わってませんよ。」

 

「そうね。詩音の言うとおり……木山先生、まだ子供は助け出せてないわ。」

 

「僕は少し休んでから行きます。」

 

「じゃあ、私も詩音くんの側に着いてます。」

 

「ルイコ、君も御坂さんと一緒にいた方が良い……」

 

「どうして?」

 

「何だか分からないけど嫌な気する……だから!」

 

詩音に言われ、木山たちは子供たちの囚われている研究所に向かう。

それを見送る詩音。

 

「行ったか……さて、しぶといな。」

 

詩音は破壊した作業機械の方を見た。

なんと燃え上がる炎の中からテレスティーナが現れる。

彼女は自身の着ていた駆動鎧のおかげで、頭部の軽い裂傷以外はほとんど無傷のままだった。

 

「ヤってくれたな……このクソガキが!」

 

テレスティーナは詩音を見下す。

一方の詩音は辛うじて首が動くだけだった。

 

「まったく、しぶといな。アンタは………」

 

「テメェたちのおかげで計画が滅茶苦茶だよ!」

 

テレスティーナは鬱憤を晴らすように詩音の腹部を蹴り飛ばしす。

 

「ガハッ!!?」

 

激しい痛みと衝撃と共に詩音は数メートル吹き飛び転がった。

彼はそのまま気を失う。

 

「スゥーとしたぜェ……」

 

テレスティーナは詩音の髪を掴み上げると引き摺り、部下との合流場所へと向かうのだった。

 

次回に続く。

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