とある科学の刀剣使い(ソードダンサー)   作:御劔太郎

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第4話 狙われた常盤台 前編

7月18日金曜日 夕方…

学園都市 第七学区内 学舎の園…

 

どこの大都市にも、必ずと言ってもいいほどに存在する人通りの少ない場所。

そんな場所を上品に歩く一人の常盤台の生徒。

 

「…………どなたッ?!!」

 

誰かに着けられている気配を感じた女子生徒は振り向くが自分以外誰もいない。

おかしいなとは思いながらも、再び歩き出すが、やはり誰かいる。

その生徒は手に持っていた扇子で口元を隠しながら、さっきよりも強めの口調で叫んだ。

 

「どなたッ?!!ワタクシを常盤台中学のレベル4!『婚后光子』と知っての狼藉ですのッ?!!」

 

「……………。」

 

やはり、何の返答もない。

気味が悪くなった彼女は足早にこの場所から立ち去ろうとした。

しかし、次は何かにぶつかってしまう。

 

「あくまでも、ワタクシを馬鹿にするつもりですわね……ッ!!?」

 

居るのか居ないのか分からない幽霊のような相手に闘う覚悟を決めてた婚后は戦闘態勢を取る。

しかし、一瞬体に激しい電流が走ったのちに昏倒させられてしまった。

気絶する婚后光子を見下す一人の女子中学生。

やはり、倒された彼女以外にも別の誰かがいたのだ。

 

「フ………」

 

一瞬、ニヤリと笑みを浮かべる少女の手には物騒なスタンガンと黒のマジックペンが一本……

そして、彼女はそのペンのキャップを取った………

 

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7月19日土曜日 PM2:40過ぎ…

天気はあいにくの雨…

 

佐天、初春と詩音の三人は学園都市内を廻る路線バスに乗り、お嬢様の集う“学舎の園”へ向かっていた。

バスの中では初春さんのテンションが異常に高かい。

 

「楽しみですね~学舎の園♪」

 

「って言ってもさー、ただ女子校の集まっただけの街なんでしょう?」

 

「フッフッフー甘いですよ、佐天さん!その集まっている女子校が普通じゃないんですか。常盤台中学を始め、入っている学校のどれもが名だたるお嬢様学校!今回は白井さんたちが招待してくれたから中に入れますけど、本来なら私たち庶民には無縁の場所なんですよ?」

 

「初春さんは卑屈だね~大体さぁ………」

 

「ん?何ですか?コレ……」

 

初春が詩音の学生カバンの中に入っている雑誌に目がいく。

そして、おもむろにその雑誌を取り出すと中を見始めた。

雑誌のスイーツコーナーのページには、赤ペンでたくさんのチェックマークが付けられている。

 

「んなッ////ちょっと、初春さん!何を勝手に人の物見てんのッ!!?」

 

「ねえ、もしかして、詩音くん……コレ全部制覇するつもり?」

 

初春と一緒に雑誌を見ていた佐天が少し呆れたように彼に聞いた。

 

「もちろんだよ!だって、“パステ・チェリアン・マルカーニ”なんだよッ?!!イタリア本国と同じ材料、寸分違わぬレシピで焼き上げたケーキはどれも芸術品って書いてあるじゃん!甘党代表としてコレは是非とも!……」

 

「甘党代表って……」

 

「意外と紅月くんもミーハーなんですね♪」

 

『次はー学舎の園、入り口前ー学舎の園、入り口前ー。』

 

そうこうしている内にバスは目的の場所着いた。

 

「うわぁ~スゴい雨……」

 

「この雨じゃ、一歩も動けないじゃん……」

 

バス停の屋根の下からシトシトと雨を降らせ続ける空を見上げる詩音と佐天。

 

「ふっふっふ……大丈夫ですよ佐天さん。――3、 2……1!」

 

初春のカウントダウンとともに雨粒は少なくなり、雲の切れ間に晴れ間が見え始める。

ドヤ顔の彼女を見ているとまるで彼女の力で晴れたように思われるがこのカラクリは学園都市の誇る予測演算による天候予測である。

その的中率は秒単位での天候の変化ですら100%を誇っていた。

三人は早速、学舎の園の正面ゲートに向かう。

美琴や黒子の話しによると、ココできちんと自分の所属校を申告し、招待状を提出しなければ、即座にアンチスキルや警備ロボットが集まるという。

 

「常盤台中学一年の白井黒子さんに招待されました、柵川中学一年の初春飾利と……」

 

「佐天涙子……」

 

「紅月詩音です。」

 

初春が三人の代表として招待状の提出など入場の為の手続きをしていた。

 

「はい、結構です。」

 

どうやら、手続きも無事に終わったようだ。

そして、先に初春と佐天がゲートを通過し、詩音も彼女たちの後に続いて通り抜けようとした時だった。

 

「そこの君……紅月詩音くんでした?ちょっと、待って貰っても良いですか?」

 

いきなり、係の女性警備員に詩音だけが呼び止められる。

 

「え?どうかしました?」

 

「紅月くん?」

 

先にゲートを通った初春たちが彼を心配して戻ってきた。

 

「あ、大丈夫だよ。心配しないで、すぐに行くから…」

 

「分かりました。」

 

「じゃあ、門を出た所で待ってるからね……」

 

「うん…」

 

初春と佐天は先に行く。

二人を見送った詩音は警備員の女性と話し始めた。

 

「ちょっと、君の……その腰の物は何ですか?確認させて下さい。」

 

女性警備員が確認の為に詩音が腰に携えている物の提出を促す。

 

「あ、はい、分かりました。」

 

詩音は素直に腰に携えていた愛刀『絶影』を鞘袋から出して警備員に見せた。

 

「こ、これはッ!!?」

 

警備員は驚く。

それもその筈だろう。

詩音が出したのは一振りの刀、人を傷つけるための凶器なのだから……

 

「アナタ!コレはれっきとした銃刀法違反ですよッ?!!即刻にアンチスキルに通報させてもらいます!」

 

「あ、それなら、大丈夫ですよ。この刀に関してはきちんと統括理事会からの特別許可証があるから……」

 

そう言って詩音は女性警備員にカードタイプの許可証を提示した。

 

「言わば、これは合法です。それに僕はジャッジメントの第177支部に所属してますし……」

 

「でも、いくら合法とは言ってもこればかりは……」

 

確かにこんな物を学舎の園の中に入れた暁には園内は大パニックに陥るだろう。

警備員の女性は許可を出し渋っている。

 

「良いですよね?」

 

「し、しかし……」

 

ここで不可思議な事が起きた。

警備員の女性もとにいきなり電話が掛かって来たのだ。

女性が電話に出る。

 

「はい……はい……わ、分かりました。では……」

 

彼女が切れた電話の受話器を置いた。

 

「たった今、上から電話があってアナタの通行許可が降りました。」

 

「そ♪じゃあ、いくね?」

 

詩音は難なくゲートを通過する。

 

「あの子って、いったい何者?……」

 

女性警備員は懐疑的な視線で詩音を見送るのだった。

 

「あ、紅月くん…大丈夫でした?」

 

「ん?ああ、別に……」

 

「今、電話もしてたけど……」

 

「大丈夫だから……それに急がないと待ち合わせに遅刻しちゃうよ?」

 

「あ、本当だ!」

 

正面ゲートを通った先にある広場の大時計を見ると待ち合わせの時間まで、あと10分を切っていた。

三人は時間に間に合わせようと走り出そうとした。

次の瞬間、佐天は水溜まりで足を滑らせてしまう。

 

「あッ!!?」

 

足の縺れた彼女は、とっさにバランスを取ろうと詩音にしがみついた。

 

「ちょ、ちょっ!佐天さんッ!!?」

 

いきなり、しがみつかれた詩音は堪ったもんじゃない。

彼女を支えることが出来ず、二人まとめて水溜まりの中にダイブしてしまった。

 

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場所は変わり、ここは常盤台中学の正門前……

待ち合わせの三時を回り、黒子はしびれを切らしていた。

 

「………はぁ~いったい、初春たちは何時になったら来ますの?お姉様をこんなに待たせるなんて……」

 

「まあまあ、そこまで目くじら立てるほどじゃ……」

 

「ですけど、三人から連絡すらないというのも少々心配ですの。遅れるなら、一言連絡を入れるくらいはするでしょうし……お姉様、少しその辺を探してきましょうか?」

 

黒子の意見ももっともだろう。

しかし、すれ違いの可能性も高いため美琴も容易に許可を出すことができない。

 

「す、すいません、お待たせしました~。」

 

黒子出動のカウントダウンが始まるかと言うときに、聞きなれた間延び声が……

しかも、どこか困り気味な感じの声だ。

 

「遅いですわよ!初は……へ……?」

 

当然、詰問しようとした黒子はそのまま言葉を失ってしまうというより頬を引きつらせる。

美琴も眼をパチクリさせて、佐天と詩音の姿に驚いていた。

 

「どーして、二人共ヌレヌレのグチョグチョですの?」

 

黒子が二人に聴いた。

 

「……アンタが言うと、とんでもなく変態チックに聞こえるのは何故かしらね……っていうか、本当にどうしたの二人共?」

 

「まあ、色々あったんですよ……えぇ、色々とね……」

 

以前、ゲコ太ストラップを手に入れそこなったかつての美琴を遥かに超える暗黒面に没入している詩音。

佐天は、そんな彼を気遣っているのか、謝罪しているのかよく分からない。

まあ、とりあえず詩音がこうなったのは彼女のせいだということは確かだろう。

佐天も濡れているが、詩音の濡れ方はもっと凄い。

服を着たまま、どこかで泳いできたのかというレベルだ。

詩音自慢の長い黒髪はべっとりと顔に張り付き、制服は濡れてドロだらけ……

 

「あの…着替えとかって、あります?」

 

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その後、詩音と佐天は常盤台中学内の“帰様の浴院”いわゆる、シャワールームへと案内され用意された服に着替える。

先に着替え終わった佐天が個室から出てきた。

続いて、詩音も……

 

「どう?サイズの方は…?」

 

二人に対し、美琴が聞く。

 

「サイズはピッタリなんですが……スカートが短いせいか、どうも足下がスースーします。」

 

まずは佐天が答えた。

 

「僕的には、どう?って言われても、もっと別の……男のモノの服は無かったんですか?」

 

そう、詩音は常盤台中学の制服を着ていた。

しかも違和感もなく、着こなしている。

お嬢様を崇拝する初春の羨む視線が刺さるように痛い。

 

「あるわけ無いですの。ここは、常盤台中学……れっきとした女子校ですわよ?今回はその制服で我慢して下さいな?」

 

「えぇ~~」

 

黒子から言いくるめられる詩音であったが、やはり腑に落ちない。

 

「ならば、私の制服と変えましょう!それがいい!いえ、それでいい!」

 

とうとう、欲望が爆発し、暴走した初春が詩音に襲いかかってきた。

彼女は物凄い勢いで詩音の胸元に頬ずりをする。

 

「ちょっと、初春さんッ!!?みんなが見てるから!それに、僕が欲しいのは男物の服だよ!」

 

「じゃあ、私も二人と同じように水溜まりで……」

 

「少しは落ち着きなさい……!」

 

「あぅ……」

 

暴走する彼女を抑える為に佐天がツッコミの一撃を入れる。

 

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その後、みんなは目的のケーキ屋“パステ・チェリアン・マルカーニ”へやってきた。

 

「ああ~////迷う~迷います~これにしようかなぁ~あ、こっちもいいな~。」

 

初春が、どのケーキを選ぶか迷いに迷っている。

 

「佐天さんはもう、決めた?」

 

「え、はい。私は最初からチーズケーキって決めてましたから……」

 

「詩音さんは……って、コレ全部食べる気ですのッ!!?」

 

「あ、うん、もちろんそうだけど……?」

 

ケーキの話で盛り上がっていると、初春の携帯電話が鳴る。

彼女が電話に出た。

 

「はい…はい…はい、分かりました。すぐに行きます。」

 

「初春さん、呼び出し?」

 

「ええ……固法先輩からです。」

 

「まあ、何と間の悪い……」

 

「ああ~~まだ、ケーキ決めてないのに……」

 

初春は目の前のケーキに未練タラタラだ。

 

「仕方ないか……ほら、初春さん急ぐよ!」

 

「あ、はいッ!」

 

ジャッジメント組は美琴、佐天と別れると第177支部へと向かうのだった。

 

次回に続く。

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