とある科学の刀剣使い(ソードダンサー) 作:御劔太郎
ジャッジメント第177支部……
同支部所属の高校生『固法美偉』から呼び出しを受けた詩音たち三人は支部へとやってきた。
「はあ~せっかくの非番の土曜日でしたのに…」
「ケーキ……私のケーキが~~。」
休みを潰された黒子と初春がグズグズと不満を言いながら支部に入る。
「あう……」
「イタ……」
「来た早々、ボヤかないの……!」
三人の先輩であり、指導者でもある固法は先に中に入ってきた黒子と初春の頭を丸めた本で軽く叩いた。
「あれ?そういえば、詩音くんの姿が見えないけど……」
「ああ、それでしたら……ほら、何してますの?早く入ってきなさいな……」
「い、嫌ですよ。こんな恥ずかしい格好、固法先輩に見せられません……」
詩音は扉の影でモジモジして一向に姿を見せようとはしない。
「いいから!早く出て来なさい!」
しびれを切らした黒子は詩音の手を取ると無理やり、支部内に引き入れた。
恥じらう乙女よろしく、詩音は頬を赤らめている。
「か……かわいいーーーッ////」
そんな彼の姿を見た固法美偉は、目を輝かせて詩音を抱きしめた。
「何々ッ!!?この可愛さ、異常なんですけどー!」
固法美偉の暴走は止まらない。
(く、苦しい………けど、顔は天国……最高だ~♪)
これが数分間続き、その後、詩音は解放される。
(し・あ・わ・せ……)
「だ、大丈夫ですか?」
初春は心配して詩音に声を掛けた。
「う、うん……」
「初春?紅月さんの心配は無用ですわ。彼、固法先輩に抱きしめられて嬉しそうでしたから……」
「最低です。」
「そんな……」
初春の冷めた視線と言葉でショックを受ける詩音だった
「固法先輩も落ち着きました?」
「え、ええ…ゴメんね、詩音くん…」
「いえ、もう良いですよ。それで、何か事件でもあったんですか?急な呼び出しだなんて……」
「ええ……昨日、金曜日の昼過ぎから夕方にかけての短時間に六人の常盤台生が何者かに襲撃を受けたわ。」
「場所はどこなんですか?」
「学舎の園よ。形跡から見て、犯人はスタンガンを使っているみたいなの。」
「へえ~最低でもレベル3の常盤台生をいとも簡単に仕留めちゃうなんて、けっこう凄そうだね。」
少しばかり、詩音が笑みを浮かべる。
「それで、被害にあった人たちは大丈夫だったんですか?」
「スタンガンによるケガはさほどでもなかったけど、被害者たちは昏倒された後、犯人から顔にイタズラ描きをされてるの……見たい?」
急に固法美偉の表情が深刻になった。
「もちろんですッ!」
「ワタクシ達はジャッジメント……この位の覚悟はできていますわ。」
意を決して三人は被害者の画像を彼女から見せて貰った。
「こ、コレは……ッ!!?」
画像を見た三人は言葉を失ってしまった。
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場所は変わり、ここは学舎の園 常盤台中学内に置かれたジャッジメント専用の部屋。
そこにあるソファーに佐天涙子は寝かされていた。
何でも、彼女は詩音たちジャッジメント組と別れた後、すぐに例の常盤台狩りに襲われたのだ。
その連絡を美琴から受けた三人は急いで常盤台中学まで引き返していた。
「佐天さんの容態は……?」
詩音は心配そうに彼女のことを美琴に聞く。
「保健の先生が言うには、別に大したことはないって。少し横になってれば、大丈夫だろうって……」
「良かった……」
ジャッジメント組はホッと胸を撫で下ろした。
「それで、初春さん……何か犯人の手掛かりは掴めたの?」
「それが……手口からして、私たちも最初は光学操作系だと思って書庫(バンク)に問い合わせてみたんですけど、能力者全員にアリバイがあって……」
「それに、園内の監視カメラにはきちんと犯人の姿がこの通り映っていますの。」
「被害者本人……肉眼では視認できない能力……」
「厄介この上ない能力者ですわね……」
「せめて、能力名でも分かれば検索できるんですが……」
美琴たち三人は頭を抱える。
そんな中、詩音がハッと何か閃いた。
「初春さん!ちょっと、変わって…!」
「えッ!!?いきなり、どうしたんですかッ?!!」
「もしかすると……」
初春とパソコンを変わった詩音がバンクの検索欄にキーワードを打ち込んで、最後にエンターキーを押した。
「やっぱり、あった……犯人の能力はコレだよ。」
パソコンに表示された能力名は“ダミーチェック”。
『対象物を見ているという認識そのものを阻害する能力。
他者からすれば、さながら透明になってるように見える。
ただし、肉眼でないと効果を発揮せず、鏡や監視カメラなど間接的な視覚には効果がない。』と記されていた。
「この一連の事件の犯人は、この人で決まりでしょう。」
この能力を保有するのは学園都市でもただ一人、関所中学在校の二年生『重福省帆』だ。
詩音は彼女が犯人だと確信している。
「でも、紅月くん?彼女はレベル2。完全に姿を消すことは出来ないって、研究結果には書いてありますよ。」
「確かに、これじゃあ、彼女を犯人にするには……」
「ワタクシも二人に同感ですわ……」
美琴たち三人は詩音の推理に難色を示している時だった。
ソファーで横になっていた佐天が目を覚ます。
「ん……私……いったい………」
「あ、佐天さん。目が覚めたんだね。」
「まだ、無理しない方が………」
「「「「あ…………」」」」
そこで、みんなの表情が固まり、吹き出しそうになる感じを必死に抑えている。
「え?どうしたんですか……?」
「いや、コレを見みれば分かるわよ。」
そう言って、美琴が手鏡を彼女に渡した。
「ああぁぁーーーッ!」
その鏡越しに自分の顔を見た佐天は絶叫する。
なんと、彼女の眉毛は見事なゲジ眉になっていたのだ。
詩音たち四人は爆笑の渦に飲まれている。
「そこ!笑いすぎッ!!!」
「ご、ゴメンごめんなさい、佐天さん……だけど……プッ!……」
「初春もあとから、覚えてろよ~~!」
「でも……佐天さんもこの位、前髪があれば良かったですのにね。」
黒子は佐天とパソコンの女の子を交互に見ている。
それに釣られ彼女もパソコンに出ている女の子を見た。
「コイツだ〰〰〰〰ッ!!!!!!」
佐天は叫んだ。
「本当にッ?!!」
「うん!気を失う瞬間、鏡に映ってた…ッ!」
「じゃあ、決まりだね!この子を傷害容疑で拘束するよ!初春さん、白井さん、準備を…ッ!」
詩音の指示に二人が行動する。
「作戦は簡単!僕が囮になって彼女をおびき寄せるから、そのあとは白井さんも合流して、この公園に追い込む。御坂さんと佐天さんはここで待っていて下さい。」
「分かったわ。」
「待ってろよ~!前髪オンナーーーッ!」
特に被害者の彼女の熱の入れようは半端ではなかった。
「それにしても凄い機材の量だね。」
さっきよりも多いパソコンに美琴が目を見張る。
「まあ~こうでもしなきゃ、処理が追いかつかないんですよ…それで、良いんですか?学舎の園は私たち177支部の管轄外ですよ?」
「ええ、上からの許可も取り付けましたわ。」
「じゃあ、初春!ドーンといってみようかー!」
「はい、ドーン……!」
総司令官ヨロシク、佐天が作戦開始のGOサインを出した。
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それぞれが持ち場に向かう。
詩音はお淑やかな常盤台生に扮し、学舎の園を歩き始めた。
もちろん、刀は目立つために公園で犯人を待ち受ける佐天に預けてある。
詩音が人通りの少ない場所へやってきた時だった。
後ろから着ける何者かの気配を感じ取る。
「来た……ッ!」
歩きながら詩音がそう感じとった瞬間、背後からスタンガンが迫った。
しかし、詩音はそのスタンガンを見ることも無く、宙返りをする感覚で回避すると犯人の背後を取る。
「えッ!!?ウソッ!!?避けたッ!!?」
犯人は初めて見るアクロバティックな動きに驚愕した。
「はじめましてだね?常盤台狩りの犯人さん?いや、関所中学校 二年の重福省帆さんと言った方が良いのかな?」
「ど、どうして、私のことを…ッ!!?」
動揺した犯人が姿を現す。
「やっぱり……♪」
詩音の口角が若干つり上がった。
「ジャッジメントです。重福省帆さん、アナタを常盤台生を狙った一連の傷害事件の容疑で拘束します!」
「くッ!こんな所で………!」
再び彼女の姿が消え、足音が遠のいていく。
どうやら、逃走を始めたようだ。
「へえ~鬼ごっこかぁ~♪面白くなってきたー!」
詩音は意気揚々と犯人を追いかけた。
常盤台狩りの犯人こと重福省帆は詩音を撒こうと、ワザと人混みの多い中を逃げ回るが、いくら走っても詩音から逃れる事ができない。
「どうして?どうしてなのッ?!!しかも、ジャッジメントがもう一人増えてるし!」
逃げながら、彼女は混乱していた。
そして、時間も経ち、能力使用も限界になった重福省帆はとある公園まで来ていた。
「はあはあ……もう、ダメ……」
体力も無くなり、彼女が肩で息をしていると……
「これで、追いかけっこは終わりね。」
待ちくたびれた美琴がブランコから降りて、重福省帆に向き直った。
「追い詰めましたわよ……」
「詩音くん、はい、これ。」
「あ、サンキュー佐天さん。」
詩音は預けておいた愛刀を佐天から受け取り、絶影を抜いて逃げ道を塞ぐ。
「こっちに来たら八つ裂きにするぞー」と言う雰囲気を醸し出し、牽制をかけた。
「これで終わりだね。重福省帆さん?」
「どうして、私の能力が効かないのッ?!!」
「さあ、どうしてでしょう?」
「これだから、常盤台の連中はぁーーーッ!」
しらばっくれる詩音にヤケを起こした重福省帆はスタンガンを構えて、彼の懐に飛び込んだ。
「やれやれ…」
次の瞬間、詩音は彼女のスタンガンだけを一回二回と切り捨てる。
剣の達人である詩音だから出来る芸当でもある。
「えッ!!?」
詩音は彼女に腹部に柄頭を打ち込み、事件に決着を着けた。
「はい、終~了~♪初春さ~ん、アンチスキル呼んじゃって良いよ~♪」
「あ、アンタ!何をしてるのッ?!!」
慌てて、倒れた犯人を抱き起こした美琴は焦った表情で詩音に聞く。
「別に~ちょっと、柄頭を当てただけですよ。僕には女を切る趣味はないんで……」
「そんなの関係ないでしょ!女の子に手を上げるなんて……ッ!」
「そ、そんなことして大丈夫なの?詩音くん……」
逆に佐天はかなり不安そうだ。
「大丈夫~大丈夫~♪ちょっと、気を失ってるだけだから♪」
そんな二人を尻目に詩音は飄々としている。
「確かに詩音さんの言うとおりですわ。このようだと直に目も覚ますかと……」
その後、重福省帆はアンチスキルに連行されていった。
彼女がこのような犯罪に走った動機は、常盤台の生徒に彼氏を盗られた事とその彼に眉毛が“ヘン”だと言われた事だった。
「でも、おかしいですわね…彼女はレベル2…完全には姿が隠せないはず……」
「ええ…だけど、実際には消えていた。」
「何ででしょう……?」
詩音たち四人は終始、その事が気にかかっていた。
次回に続く。