とある科学の刀剣使い(ソードダンサー)   作:御劔太郎

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第7話 能力と力 後編

7月24日の深夜、とある学生寮の一室…

真っ暗な部屋、電気スタンド一つ付けた不気味な雰囲気の中、一人の少年が勉強机に向かってにやけていた。

また少年は耳にイヤホンを付け、時折ぶつぶつと何かを呟いている。

 

「ククク…新しい世界が来る…僕が僕を救う…僕を救わなかった風紀委員はいらない…!」

 

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そして7月25日、詩音たちは佐天を主犯とした美琴、初春の荷物持ちとして、半ば拉致に近い形で『セブンスミスト』にやって来ていた。

しかし、今日はメンバーの中に黒子の姿がない。

理由としては、一連の事件が気になって仕方ないみたいで休み返上で自身の所属する風紀委員“第一七七支部”で調査をしている。

 

「ヘ~“超電磁砲”って、ゲームセンターのコインを飛ばしているんですか~。」

 

「まあ~色々あって50メートルも飛んだら溶けちゃうんだけどね。」

 

「でも必殺技があるとカッコいいですよね~。」

 

三人は各々、買い物を楽しみつつ美琴の超電磁砲(レールガン)について盛り上がっていた。

一方、詩音は三人の荷物係りとして両手いっぱいに荷物を持たされている。

 

「そう言えば紅月くんも、何か必殺技とかって持ってないんですか?」

 

「必殺技か~まあ、あるよ。」

 

「え?やっぱりあの時、私に能力に使ったのね!」

 

美琴の見幕が変わる。

 

「だから、前にも言ったでしょう?僕はレベル0ですって!あの時、使ったのは『二階堂平法 心の一方』っていう瞳術です。必殺技でも何でもないですよ?」

 

「に、二階堂へい………」

 

「二階堂平法 心の一方です……眼から圧倒的な気を発して、それを相手の眼に叩き込んで金縛り状態にする瞬間催眠術みたいなものですよ。まあ~この術は心の弱い単純な人ほどかかりやすいですね。」

 

「スゴい…紅月くんって催眠術が使えるんですね。」

 

「別にそれ程でもないよ……」

 

「あー、だからあの時、御坂さんはあんなに苦しそうに……」

 

「ちょっと、佐天さん?…それは私が単純ってことかな~?」

 

美琴のこめかみがピクピクして表情が次第に引きつっていく。

 

「ち、違いますよ?それよりも初春!こんな下着はいかがかなッ?」

 

少し気まずくなった佐天は、無理やり話題を変えた。

なんと、彼女が手に取ったのは面積が異様に少ないほとんどヒモのパンツ……

 

「はいッ!!?ムリムリムリです!そんなの穿ける訳ないですかッ////」

 

初春は全力で佐天が手に持つ破廉恥なヒモパンを断る。

 

「う~ん……残念。これなら私にスカートめくられても堂々と周りに見せつけられると思ったのに……」

 

「見せないし、めくらないで下さい!」

 

二人のやりとりを見ながら詩音と美琴はシンクロしたように苦笑いを浮かべていた。

 

「それはそうと、御坂さんは他に買いたい物とかあります?」

 

「う~~ん、そうね~」

 

美琴は顎に手を当て考え始める。

 

「え?まだ、何か買うつもりですかッ!!?」

 

驚く詩音。

それもそうだろ。

彼は両手に三人の買った商品の入った紙袋を六つも携えていた。

割合的には、佐天が一つ、初春が一つ、美琴が四つ。

その全てが洋服などであった為、そこまで重さは感じなかった。

 

「当たり前よ!荷物係りは文句を言わない!」

 

「トホホホ………」

 

美琴は周りをキョロキョロしながら歩いていると寝具売り場の前でピタリと足を止めた。

彼女はディスプレイされているピンク色のファンシーなパジャマに目を輝かせている。

 

「はぁ~////」

 

「ん?御坂さん、何か良いものでもありま……」

 

詩音も美琴が見ている方に目線を向けると、例の可愛らしいパジャマが……

 

「えっと…御坂さんって、こういうのが好みなんですか?」

 

詩音の声で美琴が「ハッ!」と我にかえる。

 

「ベベベ別に、私はこんな子供っぽいパジャマなんかに興味はないわよッ!!?」

 

彼女は必死になって否定するが、まんざらでもない表情だ。

 

「トキワダイのおねーちゃーん!」

 

そんな時、美琴の名前を呼ぶ幼い女の子の声が……

二人が声のする方を見るとこちらに向かって走って来る女の子が姿があった。

 

「あ、この間のカバンの子……」

 

「知ってる子ですか?」

 

「え、まあ~ちょっとね……今日はどうしたの?お買い物?」

 

「うん!あのね?オシャレな人はここに来るって!テレビで言ってたの♪わたしもオシャレするんだもん♪」

 

「そうなんだ、良かったわね。」

 

その後、女の子は詩音と美琴と別れて子供服売り場に向かっていった。

 

「詩音……私、ちょっと、はずすわね?」

 

そう言って、美琴も詩音のもとを去っていく。

 

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そして場所は変わり、第一七七支部にいる黒子はそこの先輩である『固法美偉』と共に事件現場に残された遺留品を見ながら煮詰まっていた。

 

「はあ…まったく、分からないですわ。」

 

「そうね~サイコメトリーに掛けても何の手がかりもないし、このままじゃ新たな被害が…」

 

そう言いながら、二人はお茶を口に含む。

 

「……んく、ふぅ~同僚が九人も負傷していますのに、ただ手をこまねいているだけだなんて……」

 

黒子のふとした言葉に固法は何か思い当たる節があるのか顔をしかめた。

 

「……?どうかしたんですの?固法先輩?」

 

「ねえ、おかしくない?同僚が、同僚だけが九人も負傷するなんて……」

 

「まさか!爆弾魔の狙いって……ッ!」

 

その時だった。机の上に置いてあるノート型パソコンから盛大にアラームが鳴り響く。

 

「衛星が重力子の爆弾的な加速を確認!」

 

「場所はどこですのッ?」

 

「第七学区の洋服店!セブンスミスト…ッ!」

 

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携帯電話の呼び出し音が鳴った。

 

「初春さん、ケータイ鳴ってるよ~」

 

「あ、ホントだ。」

 

詩音に言われ、初春が携帯電話に出る。

相手はどうやら、黒子からのようだ。

彼女と会話するうちに初春の表情が深刻なものになっていく。

そして、初春は黒子との会話が終わらないうちに一方的に電話を切った。

 

「皆さん、落ち着いて聞いて下さい……例の爆破事件の犯人の次のターゲットが分かりました。」

 

「え……?」

 

「ここです。私はこれから避難誘導に入ります。御坂さんは私といっしょに誘導に当たって下さい!」

 

「うん!分かった!」

 

「紅月くんは、先に佐天さんを避難させて下さい。その後は私たちと……」

 

「うん、了解!行こう!佐天さん!」

 

「二人とも気をつけて……」

 

詩音は佐天の手を引き、セブンスミストから避難させると、彼女に荷物を預けて初春のもとへ戻った。

 

その後、十数分後……

避難誘導をし終えた美琴が先に店内から出てくる。

 

「御坂さーーん!」

 

荷物を持った佐天が彼女のもとに駆け寄る。

 

「御坂さん!みんなの避難は終わったんですか?」

 

「ええ……今、初春さんと詩音が最後の確認で店内に残ってる。もうすぐ、出て……あれ?カバンの女の子がいないッ!!?」

 

「え?」

 

「さっき会ったの!別れてから、さほど時間も経ってないし、もしかしたら、まだ店内に……」

 

「だったら、大事じゃないですか!」

 

美琴は、再び佐天を置いて急いで来た道を引き返し、店内に戻っていく。

 

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「初春さーーん!こっちは大丈夫だよー!」

 

「了解です!よし!避難は完了!」

 

初春が店内で最終確認をしていると、血相変えた美琴が二人の元へ走ってきた。

 

「初春さーん!詩音ー!」

 

「御坂さんッ!!?どうしてッ!!?」

 

「何してるんですか!避難してないとダメじゃないですか!」

 

「私のことはどうだって良いの!それより詩音!さっき会った女の子を見てない?」

 

「いえ、見てませんけど?……まさか、避難してないんですか?」

 

「多分……」

 

「女の子?」

 

「この間、カバンを無くしたって言ってみんなで探したじゃない?」

 

「あ~あ、あの時の~って、その子がここに居るんですかッ!!?」

 

その時、初春の携帯電話が再び鳴り響いた。

電話の主は黒子……

やはり、この電話には続きがあったみたいだ。

 

「あ、白井さん!」

 

『初春ッ!!?今、どこにいますのッ!!?』

 

「まだ、セブンスミストにいます!」

 

『だったら、アナタたちもすぐにそこを離れなさい!』

 

「ダメです!まだ全員の避難が確認できていないんです!」

 

『なんですってッ!!?良く聞いて下さいな!過去8件の事件の全てで人的被害はジャッジメントだけですのッ!犯人の真の狙いは観測地点周辺にいるジャッジメント!今回のターゲットは初春と詩音さんのどちらか、もしくは両方ですの!』

 

彼女の話しを聞いた初春は一瞬、体が硬直してしまう。

それと同時に向こう側からヘンてこなカエルのぬいぐるみを持った女の子が走ってきた。

 

「おねーちゃーん!」

 

女の子の姿を見た詩音と初春、美琴の三人はホッと胸を撫で下ろす。

 

「ねえ~お姉ちゃん!メガネを掛けたお兄ちゃんがコレを渡してって!」

 

女の子がぬいぐるみを初春に手渡そうとしたその時だった。

ぬいぐるみが変な音を立てて歪み始める。

これが爆弾だと感づいた初春は、女の子からぬいぐるみを奪い取るとすぐに投げ捨て、女の子を庇うように背を向け盾になった。

 

「皆さん!逃げて下さい!あれが爆弾ですッ!」

 

彼女の言葉に美琴がいち早く反応し、その場にうずくまる二人の前に出た。

 

「(超電磁砲で爆弾ごと吹き飛ばす…ッ!)」

 

美琴は必殺の“超電磁砲(レールガン)”を発射しようとポケットからコインを取り出そうとしたが、手元が狂いコインを落としてしまった。

 

「(マズった!間に合わな……)」

 

非常にもぬいぐるみ型の爆弾は大爆発を引き起こし、超高温の熱波と衝撃波が周囲の物を凪払う。

 

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この爆発は外からも確認でき、大量の黒煙が一気に立ち上った。

そんな、地獄絵図を見上げながら愉悦を浮かべる線の細い学生がいる。

誰もが騒然とし中にまだ人がいたらと顔を青くする中、一人だけ何事もなかったように踵を返し、その場から立ち去っていく。

ジャラジャラと金属の音が背後から絶え間なく、ニヤケそうになる顔を必死に抑えているのだろうが、口の端は上がり目じりが下がってしまって台無しだが誰に見咎められることもない。

なぜなら、いまだ爆発の余韻を見せる建物が全員を釘付けにしているのだ。

ニヤケる顔を、込み上げてくる笑いを抑えきれなくなったのか、学生は近くの路地裏に向かった。

 

「ハハハ…やった…ッ! すごい、コレが僕の…アレが僕の力だぁッ! いいぞ、いいぞこの調子だ!… この調子でいけば、他の無能なジャッジメントの連中とあの不良共も全部まとめて ――ッ!」

 

物を自分の意思で破壊した際の優越感。

そして、耳についているイヤホンから、自分に力を与えてくれた音が流れている。

 

だからだろう……

 

すぐ背後で、渾身の回し蹴りをぶちかます直前の美琴の存在になど全く気付くことはない。

当然、彼は避けられることも出来ず、重い音を響かせてその学生を文字通りぶっ飛ばされた。

 

「ハーイ♪私が何をしに来たか言わなくても分かるわよね? 爆弾魔さん?」

 

「なッ!!? …何のことだか僕にはさっぱり……」

 

あくまでも、自分は犯人ではないとシラを切り通す男子学生。

 

「まぁ、確かに威力は凄かったけどでも残念♪さっきの爆発、死傷者どころか誰一人かすり傷一つ負ってないわよ?」

 

「そ、そんな馬鹿なッ!!?僕の最大出力だぞッ!!?」

 

彼女の言葉に動揺した学生は思わずボロを出した。

 

「へぇ~『最大出力』ねぇ~♪」

 

「しまった」と口を閉ざしてももう遅い。

ニヤリと笑う美琴の顔は彼が犯人だと確信を抱いている。

 

「あっ、いや…外から見ても凄い爆発だったんで中の人はとても助からないんじゃかと思って……」

 

だけど、まだ挽回できる。

今ここで、彼女の口を封じれば十分に逆転できる。

常盤台の制服だから、何らかの能力者であろうと簡単に予測できたが、今ならば大能力者の大半を相手にしても勝てるという自身が彼にはあった。

足元に転げるバックの中から幸運にもアルミ製のスプーンが半分飛び出している。

能力を付与して投げるまで数秒と掛らないだろう。

即興であったため時間の設定は出来ないが威力は人ひとりを吹き飛ばすには十分過ぎる威力を込めた。

 

当然、それを投げることが出来ればだが……

 

手に持ったスプーンが『何か』に持っていかれる。

そしてその余波、それだけで先ほど蹴り飛ばされた以上に吹き飛んで大きく転がった。

路地裏を切り裂いた光は美琴の代名詞。

それはあまりにも有名過ぎてこの学生でさえ知っている。

 

「い、今のは超電磁砲……ッ!!? ハハハ……今度は『常盤台のエース』様かよ!まただ、いつもこうだ…何をやっても力で地面にねじ伏せられる……ッ!」

 

大能力者を越える存在『超能力者(レベル5)』……

学園都市最強の七人の中の第三位……

 

「ッ!…殺してやる…お前らみたいなのが悪いんだぁッ! ジャッジメントだってそうだ!力のある奴はみんなそうだろうがぁぁッ!」

 

その叫びは空しく響く。

 

「チカラ、チカラって!歯ぁ食い縛れぇぇッ!」

 

バチバチと帯電させていた電流を無理矢理に抑えつけ、美琴本人の……

ただの女子中学生の握り締めた拳が学生の頬を的確に捉えた。

最初に蹴られた時よりも、超電磁砲の余波で吹き飛ばされた時よりも深く……

そして重い…

イヤホンが外れ、外の音がいやによく聞こえる。

爆発に駆けつけたアンチスキルの車両のサイレンが大きく、どんどん増えていく。

アレだけの爆発だ。

飛び散ったガラスで怪我をした一般人もいるだろう。

そしてすぐ隣りに、何がが着地したようだが今はそちらに目を向ける余裕はなかった。

 

「殴られて当然ですの。お姉さまは貴方の様な『チカラを言い訳にする』ことを何よりも嫌う人ですもの……ご存知でしたか? 常盤台の超電磁砲も元々はレベル1……それを並々ならない努力で今に至っている。」

 

「ッ!……」

 

学生は言葉が出なかった。

 

「ですが、例えレベル1でもお姉さまはアナタの前に立ち塞がったでしょうけど……」

 

観念した犯人の男子学生はアンチスキルに連行されていった。

 

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現場に戻った黒子は、爆心地を見ながら腑に落ちない表情を浮かべている。

 

「(本当にお姉さまが?初春たちがいた場所だけ全くの無傷……能力をどう使ったらこういう風になりますの?)」

 

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次の日、美琴はいつもの公園で誰かを待っていた。

否、待ち伏せていた。

 

「(あの時、私の超電磁砲は間に合わなかった。実際に初春さん達を救ったのは……)」

 

美琴が自動販売機の影から姿を現す。

 

「(コイツだ……)」

 

そこに居たのは、いつものように愛刀『絶影』を腰に携えた詩音……

そう今回の事件で初春さん達を助けた真の功労者である。

あの時、爆弾が炸裂する瞬間、詩音は驚異的なスピードで前に出ると刀を抜いた。

しかし、その抜くと云う動作は目には見えず、ただ鍔と鞘が当たった際の『キン!』っと甲高い乾いた音が一度、響いただけだった。

 

「我流、抜刀剣術、絶技!爆爪閃裂撃!」

 

詩音から放たれた目には映らない斬撃は初撃で爆弾を店の隅っこまで弾き飛ばし、さらに襲いかかる猛烈な爆風を二撃・三撃と刀で切り裂いていたのだ。

美琴はその光景が未だに信じられないでいた。

 

「あ、御坂さん!どうしたんですか?こんな所で…」

 

「ねえ、アンタ……昨日のアレ、やっぱり何かしら能力を使ったんでしょ?」

 

「またですか?しつこいですね?別に何もしてませんよ?ただ単に爆風を切っただけで……」

 

「そんな訳ない!アンタ、私を馬鹿にしてるでしょッ?!!レベル0が爆風を斬るなんて……ッ!」

 

「うーん、それが僕にはできちゃうんだよな~♪何せ僕の剣術は一振り数億の価値があるから♪こんなサービスは滅多にしませんよ☆」

 

そう言って、詩音は彼女の前から立ち去っていく。

 

「あ、そうそう……一言、言い忘れてました。御坂さんはもう少し自分に素直になった方が良いですよ?僕的にあのパジャマ、御坂さんに似合ってると思います♪」

 

そう言って、詩音は彼女の元から去って行く。

そんな、詩音の笑顔に動揺した彼女は顔を赤くしながら、自販機に八つ当たりをしたそうな……

 

「ッ////何アイツはスカシてんじゃあぁぁッ!それに自分に素直になれだぁッ?!!何様のつもりだぁぁッ!ムカつくぅぅぅッ!////」

 

次回に続く。

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