とある科学の刀剣使い(ソードダンサー) 作:御劔太郎
白井黒子は悩んでいる。
今回の爆破事件の犯人『介旅初矢』の能力が『書庫(バンク)』のデータと全く違っていたためだ。
白井黒子は悩んでいる。
美琴に気分転換に誘われたカキ氷屋でカキ氷のフレーバーを何にするか……彼女は悩んだ末、美琴と同じイチゴ味に決めた。
「不思議ですわね。気温自体は変わらないのに、風鈴の音色を聞くと少し涼しく感じますの。」
そよ風に心地よい音色が鳴り響く。
「あーー共感覚性ってやつね……」
「へ?きょうかんかく?」
「一つの刺激で二つの感覚を得る事よ。赤系の色を観たら暖かく感じたり、逆に青系の色を観たら冷たく感じたりするでしょ。」
「『暖色』・『寒色』というものですわね。」
美琴と黒子は近くのベンチに座り、カキ氷を頬ばり、「「ン~~ッ!」」と頭を押さえながらジタバタと悶える。
そんな二人の前に佐天と詩音が通りかかった。
「御坂さん!白井さん!それカキ氷ですか?」
「美味しそうですね~ご一緒しても……?」
「ええ、どうぞ。」
「………」
黒子は快く了解するが、美琴はムスッとした表情で詩音を見つめている。
どうやら彼女は先日の爆破事件後に詩音から言われたことを未だ根に持っているのだろう。
「えっと?どうかしました?御坂さん……」
「フン、別に……」
そう言って、ソッポを向く美琴……
「そうですか……」
その後、詩音は緑色のメロンフレーバーのカキ氷を、佐天はさっぱり味のレモンフレーバーのカキ氷を買って美琴らの座るベンチの隣に座った。
「「ン~~~ッ!」」
カキ氷を頬ばった二人は美琴たち同様に頭を押さえている。
「もう、それって夏の風物詩よね~。」
「まったくです。ハハハ……♪」
「そういえば、初春の姿が見えませんの……」
「ああ~初春さんなら夏風邪で学校を休んでるよ。」
「そうなの?それで初春さんは大丈夫?」
「まだ、微熱が下がらないみたいで……まあ、私がこの薬で初春の夏風邪にトドメを刺してやりますよ!」
佐天はヒミツ兵器と言わんばかりに病院から貰ってきた熱冷ましの薬を出しながら胸を張っている。
「あ、それはそうと御坂さん、それってイチゴ味ですか?」
「うん、一口食べる?」
「はい♪ンー懐かしいッ!あ、お返しに私のレモン味もどーぞ!」
それはある意味、女の子同士のやり取りでは至極当然のことなのだろう。
特に何の意識もしていない二人には、ただ純粋に新鮮な味に満足していた。
詩音も頭にくる痛みに慣れたのか、そんな二人を見てホッコリと微笑んでいるが、そのすぐ隣りでなにやら劇画タッチになっている黒子。
「きゃあぁぁーッ!二人とも何をやってますのおぉぉぉーッ!!?」
「え?食べ比べですけど……」
絶叫する彼女とは、真逆の佐天が冷静に答える。
「(ぐ……食べくら……はッ!この手がありましたの!白井黒子!一生の不覚ですわ!)」
どうやら、黒子は何かしら良からぬ事をひらめいたようだ。
詩音は一人、落ち着いた雰囲気で彼女がどんな想像をしているのかを考えながらメロン味のカキ氷を食べている。
「で…では、わたくしとも間接キ…もとい、食べ比べを…」
黒子は自分のカキ氷をスプーンですくい美琴に差し出した。
「いやアンタ、注文したの私と同じじゃない…」
そりゃそうだ。
美琴が彼女の変態思考を一刀のもとに両断した。
「ノォォォォーッ!黒子のバカ!黒子のバカ!……」
黒子は自身を罵りながら、コンクリート相手に何度も頭を打ち付ける。
「……あの~御坂さん?あれ大丈夫なんですか?あのままじゃ、白井さん死んじゃいますよ?」
あまりに痛々しい光景に詩音は白井さんを心配するが……
「大丈夫、気にするだけ無駄よ。」
と、キッパリと美琴に言われてしまう。
「そう言えば、この間の爆破事件って何か進展とかあったんですか?」
カキ氷を食べ終えた佐天が唐突に白井さん聞いた。
「それが全くありませんの……犯人の登録された能力のレベルと被害状況に食い違いがあるケースが多いんです。」
黒子が真っ赤になったおでこをさすりながら彼女の質問に答える。
「やっぱり、コレは幻想御手(レベルアッパー)かな……」
「レベルアッパー?」
「何なの佐天さん?そのレベルアッパーって?詳しく教えて…?」
佐天は黒子たち三人に自身の持つレベルアッパーの情報を教えた。
「使うだけで能力のレベルを格段にあげる?」
「う~ん、実に興味深いですわね…」
「だけど、これはあくまでも噂話しですよ?実体もよく分からない代物だし、噂の中身もバラバラで……」
「まあ、確かに能力の開発って学校で何年もかけてするもんよね。この噂、調べてみる価値はありそう!ねぇ、佐天さん!他に知ってる事はないッ?」
美琴と黒子の喰いギミの目がちょっぴり怖い。
「え……え~~とぉ、自称ですけど“レベルアッパー”を使ったって奴らがネットに書き込みしてるみたいですよ。ただ、怪しいサイトなんでどこまで信じられるか……」
「そうですか。しかし、たかが噂ですけど一応当たってみないといけないのは間違いありませんわね。」
「ありがとね!佐天さん!私たち行ってみるわ!」
足早に美琴たちは立ち去っていく。
その場に取り残された詩音と佐天……
「御坂さんたち行っちゃったね…」
「じゃあ、僕も行こうかな…」
詩音は食べ終えたカキ氷の容器を近くのゴミ箱に捨てると静かに立ち上がった。
「え?詩音くんもどっか行っちゃうの?初春のお見舞いは?」
「ごめんね!僕も別の方向からそのレベルアッパーを調べてみる!本当にごめんッ!」
詩音も佐天のもとを去っていく。
「待って!詩音くん!」
彼女は詩音を呼び止めるが彼は振り返らない。
そんな彼女をしり目に詩音の表情は悪意に満ちた笑みを浮かべていた。
「(まあ~初春さんも一応は大事だけど、フフフ……今の僕には断然、レベルアッパーの方が面白そうなんだよねぇ~♪)」
次回に続く。