ゴタイ荘の「ほっとすぱーず」   作:公私混同侍

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六人の過ごし方

 

あかり「あ~あ、結局ゴールデンウィークはどこにもいけなかったー」

 

隆太「しょうがないよ。ゲルマさんの調子が悪くて兄さんとサリーさんがつきっきりだったんだから」

 

ゲルマ「ごめんな、あかりはん。ワイかて体がなまってな、なんやこう体の底から――ウズウズしてたまらんのや」

 

恭夜「おい……てめぇが勝手に動くから背中の配線が切れちまったじゃねぇか!」

 

サリー「コイツはほんとどうしようもないな。工場に持ち運ばなければ首から下が動かせないぞ」

 

ルナ「私、頭持ってく」

 

あかり「バカじゃないの?頭だけ持っていってどうするの?」

 

隆太「か、体をみんなで運べってことじゃないかな?」

 

恭夜「それが無理なんだよ。連休だし工場も休みなんだ」

 

サリー「まったく貴様のお陰でろくに外にも出られない」

 

隆太「サリーさん、そんなにゲルマさんに怒らないで下さい。買い物に日替わりで兄さんたちが来てくれるのはなんだが新鮮な気分で僕は楽しかったですよ。色んな話もできましたし」

 

あかり「そうだね。最近、あんまりみんなと一緒にいられる時間も少なかったから」

 

ルナ「今から行く?」

 

サリー「私はゲルマを見ていなければならない。恭夜が隆太の買い出しを手伝ってやればいい」

 

恭夜「サリーを一人にできるかよ。ゲルマが暴れたりしたら心配だし」

 

ゲルマ「そないな言ってどないなんねん。か弱い乙女たちに荷物を持たせるとでも言うんかいな。隆太はんは男の風上にも置けへんわ」

 

隆太「なんか僕が悪者にされてる……」

 

ルナ「ふふふ、ゲルマの喋り方面白い」

 

あかり「ルナお姉ちゃんに持たせればいいんじゃん」

 

隆太「そんなことさせられないよ。それに冷蔵庫には2日分の食材が入ってるから、買い物はまた今度でも大丈夫――」

 

ゲルマ「ほんじゃ、何もやることねぇから身の毛のよだつおぞましい話でもするかね」

 

隆太「こ、怖い話ですか……?」

 

あかり「ふーん、どうせやることないんだしいいんじゃない?」

 

ルナ「蝋燭持ってきた」

 

サリー「電気は消すぞ。窓は全部閉めてエアコン点けるぞ」

 

恭夜「おい、まだ昼間だろ!夜まで待てねぇのかよ!」

 

あかり「隆太お兄ちゃん、テレビ消しといて。あたし、カーテン閉めてくる」

 

隆太「急にみんながイキイキしてる」

 

――

―――

 

ゲルマ「ある男の話だ。その男はリサイクルショップで家電を見るのが日課だった」

 

あかり「そういうのって、人が使った家電なんか見て買いたいとか思ったりするもんなの?」

 

隆太「中古でも気にならない人なら買っちゃうんじゃない?」

 

サリー「私の靴は古着屋で買ったものだぞ」

 

ルナ「私の服は橋の下で拾った」

 

恭夜「胸に刺さるから貧乏自慢やめろ」

 

ゲルマ「男はいつもなら見て帰るだけのつもりだった。たが店の片隅にある()()に目を奪われる。冷蔵庫だ。男は何かに取り憑かれたように足を運ぶ。それが悪夢の始まりとも知らずに……」

 

あかり「そんないい冷蔵庫だったの?」

 

ゲルマ「それが値札の商品の状態が書いてあるんだが、そこに『この冷蔵庫を買ったお客様にオマケとして食材がついてきます』と書いてあったのだ」

 

サリー「その男はどういう神経をしているんだ?」

 

隆太「常識的に考えて、いつから入ってたか分からない食材なんて欲しくないですよね……」

 

ゲルマ「男は不安を感じてはいたが、同時にワクワクした気分を抑えつつ中身を確認しないで買ってしまったのだ」

 

恭夜「すげぇな……中も確認せずに普通買うか?」

 

ルナ「福袋かな?」

 

ゲルマ「ところが、その中身がとてつもなくヤバかった……((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル」

 

あかり「急にスマホみたいに振動しないでよ……!」

 

隆太「生首状態なのが余計に怖い……」

 

ゲルマ「最初に髪の毛みたいなのがブワァァァッ……と落ちてきて」

 

サリー「それは……昆布では?確か値札に『食材がついてきます』って書いてあったんだろ?」

 

ゲルマ「次に全体が緑色の顔のない生首ィ~」

 

ルナ「キャベツだね」

 

恭夜「キャベツと生首の区別がつかないんだったら眼科行け」

 

ゲルマ「次に肌が紫色に変色した腕ェ……」

 

隆太「サツマイモォッ!」

 

あかり「思い込み激しすぎ」

 

サリー「今までどうやって生きてきたんだ?」

 

ゲルマ「次に色白でムチムチした太ももぉ」

 

隆太「大根だけいやらしい」

 

恭夜「大根をどんな目で見てんだ?」

 

ルナ「ムッツリだね」

 

ゲルマ「次に焼かれた目玉ッ!!」

 

隆太「ヒッ……!?」

 

サリー「どんな表現だ!?」

 

恭夜「目玉焼きでいいだろ」

 

あかり「ていうかなんでもう調理されるの?」

 

ルナ「残飯だね」

 

ゲルマ「取って置きがマヨネーズの容器に入った血液?」

 

ルナ「ケチャップ」

 

隆太「マヨネーズの容器って……」

 

サリー「そこまで理解できて何故血液に変換されたんだ?」

 

ゲルマ「男はあまりの気味悪さから食材だけ返品したのだった」

 

恭夜「全部してこいよ……」

 

あかり「やっぱり食材は新品の方がいいよね」

 

隆太「家電も新品の方がいいに決まってるよ」

 

ゲルマ「確かに新品の方が安全性も品質も保証されている。客観的に考えれば人に使われたものよりも新品の方を選ぶだろう。だが必ずしも中古品が全ての面で劣ってるわけではない」

 

ルナ「どうして?」

 

サリー「経済的な問題や生活環境によって左右されることも考えられるからだ」

 

恭夜「中古品は新品と比べて安い。それに一人暮らしの人なら家電や家具は小さい方が便利だしな」

 

隆太「僕たちは六人で住んでるから、大きい方が使い勝手がいいってこと?」

 

ゲルマ「そうとも言えるが、このおんぼろアパートに六人はかなり窮屈だが」

 

恭夜「モノの価値観なんて人それぞれだし、誰かに押し付けられるもんでもないから」

 

サリー「休みの日だからといって外に出なければいけないわけでもない。家の中にいても考え方次第で充実した生活も送ることはできる」

 

隆太「そうですよ。みんなで知恵を出しあえば過ごし方も有意義になりますよ」

 

あかり「あたし、ずっとみんなと一緒にいられるって思ってた。でもみんなと一緒にいられる時間って当たり前じゃないんだよね……」

 

ルナ「あかり?」

 

あかり「ううん。でもこうやっていつまでずっと暮らせたらやっぱり幸せだよ」

 

ゲルマ「人間なら当たり前の生活に慣れてしまうのは仕方のないことだ。だが大事なのはその当たり前の生活ができなくなった時だ」

 

サリー「普段の生活ができなくなれば誰でも戸惑う。そして生きる希望すらなくしてしまう人もいるだろうな」

 

恭夜「こういう時こそ生きてることを実感できるんだ。生きることは当然なのかもしれない。でももしかしたら俺たちの周りにも助けを求めて苦しんでいるかもしれない。その時、俺たちは試されているんだよ。苦しんでいる人に手を差し伸べるのか、それとも何もせずに見捨てるのかって」

 

ゲルマ「当たり前の生活を当たり前ではないと考えるのは難しい。それでも我々は当たり前の暮らしを噛み締めながら生きなくてはならない」

 

サリー「ずっと一緒にいられるとは限らないからな」

 

ルナ「うん」

 

恭夜「なんか湿っぽくなっちゃったな」

 

あかり「お腹すいた~」

 

サリー「フッ、食べてばっかりでは牛になるぞ」

 

ゲルマ「モーイヤー、ダイエットスル」

 

恭夜「急にロボットに戻るな!さっきまでいいこと言ってたのに台無しじゃねぇか!」

 

ルナ「オムライス食べたい」

 

隆太「よーし、みんなの好きなもの作ります!」

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